- 更新日 : 2024年9月3日
印鑑廃止はいつから?企業の対応方法を紹介
日本人に馴染みのある「はんこ」。コロナ禍の影響で、法人登記・商業登記や銀行の口座開設、生命保険の手続き、e-Taxなど、各領域で印鑑の廃止が進んでいます。
世間の印鑑廃止の動きに乗り遅れないためにも、契約書をはじめ、見積書や発注書、請求書などの書類の電子化を検討することをおすすめします。今回は企業が印鑑を廃止するメリットや、クラウド契約サービスの活用などの印鑑廃止対策について解説します。
目次
さまざまな領域において印鑑廃止(電子化)が進んでいる
印鑑の廃止は行政手続きや銀行口座開設、企業が発行する各書類など、さまざまな領域で進んでいます。ここでは、企業や日常生活に関連する印鑑廃止の動きを紹介します。
法人登記・商業登記の際、印鑑提出は必要?
法人を設立する際に行う法人登記や商業登記。従来はこれらの登記申請をオンラインで行う場合でも、書面で印鑑届出書を提出する必要がありました。
しかし、2021年2月15日より登記申請をオンラインで行う場合は、印鑑届出書もオンラインで提出できるようになりました。
法人登記・商業登記の印鑑廃止に関する改正内容は、以下のとおりです。
【従来】
- 法人登記、商業登記の際は、書面による印鑑の提出が必須
【2021年2月15日から】(オンラインによる登記申請の場合のみ)
- 印鑑の提出は任意
- 登記申請と印鑑の提出を同時に行う場合、どちらもオンラインでの手続きが可能
※ただし登記申請を書面で行う場合は、従来どおり印鑑届出書も書面で提出する必要があります。
このように、会社・法人設立時においても印鑑廃止が進んでいます。
法人の印鑑届出書や印鑑登録については以下の記事で解説しているので、興味がある方はご覧ください。
銀行への届出印
ネット銀行の口座開設では、以前から銀行印の届け出が不要なケースがありました。さらに、近年は大手金融機関でも銀行印の届け出が省略された「印鑑レス口座」が登場しています(主に個人向け)。
印鑑レス口座を開設すると、窓口での本人確認はキャッシュカードで行います。
印鑑レス口座といっても口座振替時は任意の印鑑が必要であり、完全な印鑑レスではありません。しかし、印鑑の盗難・紛失リスクがないといったセキュリティ面のメリットがあるため、今後は印鑑レス口座が普及するでしょう。
生命保険の加入における印鑑
生命保険の加入手続きには、営業職員による対面での手続きやインターネットでの手続きなど、販売チャネルによってさまざまな方法があります。
インターネットで申し込める生命保険会社では、数年前に印鑑を廃止しました。近年はコロナ禍の影響もあり、対面で契約手続きを行っていた生命保険会社においても、オンラインでの新規契約を検討するところが増えています。
税務書類の印鑑(e-Tax)
確定申告においても、e-Taxによって印鑑廃止が進んでいます。e-Taxは、2004年に開始された確定申告・納税のシステムです。
納税する地域の税務署に届け出ることで、e-Taxでの確定申告が可能になります。
e-Taxについては以下の記事で解説しているので、興味がある方はこちらもご覧ください。
契約書類における印鑑
コロナ禍でのテレワークの普及や、2021年に可決した「デジタル改革関連法」の影響で、これまで以上に需要が高まっている契約書類の電子化。業務委託契約書などの契約書においても印鑑廃止が進んでおり、近年は印鑑を押す機会が減っています。
しかし、電子契約に対応していない企業に勤めている方の中には、緊急事態宣言の最中にはんこを押すために出社した方もいるでしょう。そのような出社は「はんこ出社」と呼ばれるようになりました。
契約書を電子化すれば、オンラインで契約手続きを印鑑なしで完結できるため、物理的な負担も軽減されます。
見積書・発注書・請求書など経費処理に必要な印鑑
近年は契約書と同様に、見積書や発注書、請求書など経費処理に必要な書類についても電子化が進んでいます。各書類の電子化に対応するサービスを導入している企業の方は、印鑑を押す機会が減ったことを実感しているでしょう。
そもそも法律上は、特別な場合を除いて書類への押印は必須ではありません。しかし、社内で慣習化している、意思表示や記録のために押印するといった企業も少なくないでしょう。
このように、各領域では印鑑廃止の動きが進んでいます。世間の動きに合わせて、印鑑廃止を検討することをおすすめします。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
「送信料0円」の電子契約が選ばれる理由
多くの電子契約サービスは送信料がかりますが、近年では「送信料0円」の電子契約サービスへの乗り換え・新規導入が多くなっています。
送信料0円の電子契約サービス導入のメリット・デメリットをまとめていますので、ぜひご活用ください。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
電子契約サービス比較マニュアル
日本には多数の電子署名・電子契約サービスがありますが、各サービスを比較する中で「ここだけは事前に確認しておくべき」と考えるポイントを5つまとめました。
電子署名・電子契約サービスが、そのポイントを満たしているかどうかを確認するのに、ぜひお役立ていただければ幸いです。
電子契約導入後のよくある悩み3選
電子契約サービスの導入後に発生しがちな、3つの「新しい課題」をまとめた資料です。
電子契約の導入を検討中の方はもちろん、電子契約を導入した後に課題を感じている方にもご活用いただけます。
印鑑廃止によるメリット
印鑑の廃止にはコスト削減や業務効率化など、企業にとって多くのメリットがあります。ここでは、企業が印鑑を廃止するメリットを紹介します。
コスト削減
企業が印鑑を廃止する最大のメリットは、コストを削減できることでしょう。企業が印鑑を廃止すると、以下のようなコスト削減が期待できます。
【印鑑廃止によるコスト削減の例】
- 収入印紙代
- 印刷にかかる費用や人件費
- 郵送費や郵送にかかる人件費
- 書類の保管スペースにかかる費用 など
上記のようなコストを削減すれば、それを従業員に還元したり、新規事業に投資したりすることもできます。
収入印紙とは?金額は?領収書に貼る際の印紙税額一覧と貼り方・購入方法を解説
業務効率UP
印鑑を廃止すると、コスト削減だけでなく業務効率の向上も期待できます。
「書類に印鑑を押す必要があるので、作業が思うように進まない」といった経験はありませんか?
例えば、書類に印鑑を押す場合、当事者が同じ時間に集う必要がある、複数の部門担当者にはんこを押してもらう必要があるといったケースがあります。当事者が増えるほど手続きに時間がかかり、作業が進まなくなりますよね。印鑑を廃止すれば、そのような煩わしさを解消できるでしょう。
多様な働き方の促進
企業が印鑑を廃止すると、従業員の多様な働き方の促進につながるでしょう。
はんこを押す際は当事者が同じ場所、同じ日時に集う必要があるため、物理的な手間がかかるものです。印鑑を廃止して各種業務を電子化するとテレワークを導入しやすくなり、従業員が自由に使える時間も増えます。
印鑑廃止に向けて必要な対策
企業が印鑑の廃止を進める際は、まずどの書類の印鑑を廃止するべきかを洗い出すことをおすすめします。印鑑の廃止が進んでいるといっても、法律で印鑑を要する書類や相手方の事情で電子化できない書類もあります。
現状で印鑑が必要な書類、電子署名で代用できる書類、押印が不要な書類に分類してみましょう。
分類したら、自社の方針や用途に適したサービスを調べて比較検討します。ここでは企業が印鑑の廃止に向けて取るべき対策と、クラウド契約サービスの活用について解説します。
国が出している情報・申請プラットフォームを押さえておく
前述のとおり、法人登記・商業登記やe-Taxなど、行政上の手続きでは印鑑の廃止が進んでいます。それにともない、企業も行政の対応に合わせるのが望ましいでしょう。企業が印鑑を廃止する場合は、従来のワークフローを変更する必要があります。
しかし、企業が従来のやり方を変更する際は、時間とコストがかかります。そのため、国の方針について常に最新情報を収集し、変化に対応できるように環境を整えておくことが大切です。
政府の公式サイトは企業や個人向けにさまざまな情報を発信しているので、それらを活用するとよいでしょう。不動産業界であれば国土交通省、金融業界であれば金融庁など、業界に関連する各省庁をチェックするのも有効です。
また、近隣地域の県や市区町村の公式サイトでも、有益な情報を発信していることがあります。自社に関係する省庁や、自治体の公式サイトを確認してみましょう。
【企業の参考になる政府公式サイトの一例】
参照:法務省
参照:経済産業省
参照:厚生労働省
クラウド契約サービスを活用する
利便性の高さ、コスト面を重視したい企業には、クラウド契約サービスが有効な手段の一つです。スムーズに印鑑の廃止が進められるでしょう。
クラウド契約サービスは、契約書や領収証などの各種書類への電子署名サービスや、オンライン上で作成した電子契約データの管理サービス、その他の関連業務をクラウド上で行えるサービスの総称です。
自社で保守体制や機器を整備する必要がなく、簡単に有効な電子署名ができ、パソコンやタブレットなどのデバイスとインターネットに接続できる環境があれば、外出先でもアクセスできます。
印鑑の廃止に向けて必要な対策をとっておこう!
今回紹介したように、行政の手続きや日常生活に関するさまざまな領域で印鑑の廃止が進んでいます。世間の動きに対応できるように、早めに社内環境を整えておくことをおすすめします。
この機会に、電子契約などのサービスの導入を検討してはいかがでしょうか。
よくある質問
どのような場面で印鑑の廃止が進んでいますか
法人登記・商業登記、銀行取引、契約書類や経費処理に関する書類など、さまざまな領域で印鑑の廃止が進んでいます。詳しくはこちらをご覧ください。
印鑑廃止によるメリットは何ですか
印鑑廃止によるメリットには、コスト削減や業務効率向上、多様な働き方の促進などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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