• 作成日 : 2025年7月18日

社員総会議事録とは?書き方・作成者・保存期間まで解説

社員総会議事録は、法人の重要な意思決定を正式に記録し、法的な証拠として残すための必須文書です。作成が義務付けられている法人も多く、登記や税務、内部統制など、あらゆる場面で活用されます。記載項目や署名のルール、保存期間などには法的な要件があり、形式や内容に不備があると、法人の信用や運営に支障をきたす恐れもあります。

本記事では、議事録の基本構成から作成者・署名のルール、電子化の可否、注意すべきポイントまで、実務に役立つ知識を解説します。

社員総会議事録とは

社員総会議事録は、法人における重要な決議を正式に記録するための文書です。法的証拠や内部共有のために重要な役割を果たします。ここでは、社員総会と議事録の基本を解説します。

社員総会とは?株主総会との違い

「社員総会」の「社員」は従業員ではなく、法人の構成員(出資者や正会員)を指します。一般社団法人では、社員総会が法定の意思決定機関であり、事業報告や役員選任などを決議します。医療法人やNPO法人でも同様です。合同会社では、社員総会の設置義務はありませんが、定款で設けることが可能です。議決権の配分や意思決定の方法を定める目的で、導入されることがあります。

一方、株主総会は株式会社の最高意思決定機関で、構成や権限、開催義務などが異なります。法人形態により、会議体の位置づけが変わる点に注意が必要です。

「社員総会」と「株主総会」の主な違いを表にまとめました。

社員総会(合同会社)社員総会(一般社団法人)株主総会(株式会社)
対象法人合同会社一般社団法人、医療法人など株式会社、有限会社
参加者社員(出資者)社員(構成員)株主(出資者)
議決権(原則)1社員1議決権(定款で変更可)1社員1議決権(定款で変更可の場合あり)1株1議決権
会議開催義務定款による法令により義務法令により義務
議事録作成義務定款による(実務上作成推奨)法令により義務法令により義務

社員総会議事録の定義と役割

社員総会議事録は、会議の内容や決定事項を記録した文書で、法的証拠となる場合もあります。

主な役割は、①決議内容の証明(登記や税務対応)、②情報共有による認識統一、③業務推進のための責任明確化、④将来参照のための記録保存、⑤手続きの証拠としてのリスク管理です。

作成義務がある法人もありますが、義務がない場合でも、組織運営の透明性と信頼性を確保するため、作成が推奨されます。

社員総会議事録が必要になるケース

社員総会議事録は、重要な決議がなされた際に作成します。以下のような場面が該当します。

  • 一般社団法人:定款変更、役員選任、決算承認、解散など
  • 合同会社(定款で定めた場合)役員報酬決定、定款変更
  • 医療法人・NPO法人:事業所開設、役員選任、予算承認など

書面や電子での「みなし決議」を行った場合も、内容を記録した書面を残すのが一般的です。必要性の有無は、法人形態や定款によって変わるため確認が重要です。

社員総会議事録の法的義務と保存期間

社員総会議事録の作成・保存義務は法人ごとに異なります。一般社団法人法や医療法、NPO法などでは法定義務とされています。一方、合同会社は社員総会の法定制度はありませんが、定款に基づき議事録が作成されることがあります。ここでは、議事録に関する法的根拠や記載内容、保存期間、不備によるリスクについて解説します。

各法人法に基づく義務と記載事項

議事録の作成義務は、法人の種類によって異なります。一般社団法人や医療法人、NPO法人などでは、法律により社員総会の議事録作成が義務づけられています。合同会社では法律上の義務はありませんが、定款で定めていればそれに従う必要があります。たとえ義務がない場合でも、税務調査や内部管理の観点から作成しておくことが望ましいとされています。

また、法律や定款によって定められている場合、議事録には所定の記載事項があります。たとえば一般社団法人の場合、開催日時と場所、議事の経過と結果、出席者や議長の氏名、議事録の作成者名、監事の意見、利害関係者の情報などが求められます。これらに加え、実務上は決議の背景や理由、保留事項、担当者と期限を含めたアクションプランなども記録しておくと、後々の業務遂行や社内確認に役立ちます。

保存義務・保管期間は何年?

作成した議事録は、法律に従って一定期間保管する必要があります。一般的には、社員総会の開催日から10年間、法人の主たる事務所に備え置く義務があります。これは、各法人法に基づく基本的なルールです。

また、閲覧の必要性に応じて電子データで保存し、速やかに閲覧できる環境が整っていれば、書面の備え置きが免除されることもあります。議事録は、社員や債権者が正当な理由をもって請求した場合には、営業時間中に閲覧または写しを求めることができます。

保存期間は10年が基準ですが、法人の重要な意思決定に関する議事録については、10年以上の長期保存が推奨されることもあります。電子化してクラウドや外部メディアに保管するなど、紛失や改ざんを防ぐ体制も求められます。

作成しない場合のリスク

議事録の作成や保管を怠ると、法人として多くのリスクを抱えることになります。まず、各法人法の規定に違反すると、代表者や役員に対して100万円以下の過料が科される場合があります。加えて、議事録が存在しないことで、実際に行われた決議の正当性を証明できず、無効とされる可能性も否定できません。

また、登記申請の際に議事録の提出が求められる場合、議事録がなければ手続きが進まず、法人の運営に支障をきたす恐れがあります。加えて、適切な内部統制がなされていないと見なされ、監査や取引先からの信用を損なうことにもつながります。

さらに、議事録の不備や未作成が原因で損害が発生した場合、役員が善管注意義務違反として損害賠償責任を問われるリスクもあります。特に、後から虚偽の内容で議事録を作成した場合には、公正証書原本不実記載罪など、刑事罰の対象となるおそれがあり、極めて重大です。議事録の作成と適切な保管は、法律を守るだけでなく、法人の信頼と安全を守る行為でもあるのです。

社員総会議事録の書き方

社員総会議事録は、単なる記録ではなく、法人の意思決定の証拠となる重要な文書です。ここでは、実務に役立つ議事録の基本構成と記載のポイント、よくあるミスを解説します。

議事録の基本構成

社員総会議事録には、以下の項目を順序立てて記載するのが一般的です。法人の定款や社内ルールに応じて内容を調整することもあります。

  1. 表題:「第〇回定時社員総会議事録」など、会議の種類と回数を明記します。
  2. 開催日時・場所:年月日、開始・終了時刻、開催場所を正確に記載し、オンラインの場合は参加方法も明記します。
  3. 出席者情報:社員や役員の氏名、役職、総社員数、出席者数、議決権数を記載し、定足数を満たしていることを示します。
  4. 議長の氏名と選任経緯:誰が議長を務めたか、その選任の流れを簡潔に記します。
  5. 議事の経過と議決内容:議題ごとに審議の概要と決議事項を具体的に記載し、必要に応じて票数や反対意見、今後の対応事項(担当者や期限)も記載します。
  6. 議事録作成者の氏名:議事録を作成した者の氏名を記載します。
  7. 署名・記名押印欄:定款や慣例に従い、議長や出席役員などが署名または押印する欄を設けます。

書き方のポイントと注意点

議事録は読み手にとって分かりやすく、かつ正確であることが求められます。専門用語を多用せず、平易な表現で簡潔にまとめることが重要です。特に決議内容や今後の対応事項については、担当者名や期限を明確にすることで、実務に直結する議事録になります。

記載する情報は正確でなければならず、日付、氏名、議決結果、数値などには細心の注意が必要です。また、客観的な記述を心がけ、作成者の主観や憶測は含めないようにします。事実と意見は明確に区別することが信頼性につながります。

さらに、法的に必要な情報に加えて、実務に必要な次のステップや責任の所在が分かるように構成を工夫することも大切です。社内フォーマットや表記ルールに従い、「だ・である調」で文体を統一することで、書類としての整合性が保たれます。会議後は速やかに作成・共有し、記憶が新しいうちに内容を固めましょう。

よくあるミス例

議事録作成では、さまざまなミスが発生しがちです。日時や出席者、決議事項、今後の対応事項などの記載漏れは基本的なミスですが、それ以外にも曖昧な表現や担当者が不明確な記述が混ざってしまうことがあります。

また、社内ルールに反する形式、誤った署名や押印、記載者の主観が混じった記述なども、信頼性を損なう原因になります。決議結果が明確に示されていない場合も、何が決まり、誰が何をするのかが不明確となり、実務に支障をきたします。

さらに、署名者の誤りや印鑑の種類の間違い、議事録の作成や共有の遅れも問題です。これらのミスは、議事録単体の問題にとどまらず、会議そのものの準備や進行、事後の確認体制の不備によって起こることもあります。議事録の質を高めるためには、会議運営全体を見直すことも有効な手段です。

社員総会議事録の作成者と署名のルール

社員総会議事録は、誰が作成し、誰が署名・押印するかによって、その信頼性と法的有効性が左右されます。ここでは、議事録の作成者や署名方法、電子化の可否、実務での運用例について解説します。

誰が作成する?

法律上、社員総会議事録には「議事録の作成に係る職務を行った者の氏名」を記載する必要がありますが、誰が作成しなければならないかまでは明確に定められていません。実務では、議長(たとえば代表理事や代表社員)が作成を主導する、あるいは書記担当者が原案を作成し、議長が最終確認・責任を負うというケースが一般的です。いずれにしても、重要なのは、記録内容に責任を持てる人物が作成または監督を行うことです。

電子署名やクラウド保存は可能?

社員総会議事録は、紙ではなく電子データとして作成・保存することも可能です。近年は、物理的な署名・押印の代わりに、クラウド型の電子署名サービスが活用されることが増えています。法的に有効とされるためには、「誰が署名したか」という本人性の証明、「改ざんされていないか」という非改ざん性、そして「内容が正しく確認できる状態にあるか」という可視性が確保されている必要があります。これらはタイムスタンプの付与などによって証明されることが一般的です。

電子化のメリットは多く、遠隔地からの署名が可能になるため業務の効率化が図れますし、印刷・郵送コストの削減、データの検索性や保存性の向上なども期待できます。ただし、利用するサービスが法的要件を満たしているかを確認することが不可欠です。また、定款で「署名」や「押印」の方法が定められている場合には、電子署名を導入するために定款変更が必要なこともあります。電子化は業務全体の見直しとセットで進めることが成功のポイントです。

実務でよくある署名・押印の運用例

法律で署名や押印が義務付けられていない場合でも、定款や社内慣行、リスク管理の観点から署名・押印が行われるのが一般的です。署名する人物としては、議長や出席役員、議事録署名人などが想定されます。合同会社では、出席した社員全員が署名することもあります。

署名に使われる印鑑としては、議長または代表者が法人実印を用いるケースが多く、登記申請時にはこの実印と印鑑証明書が求められることもあります。出席者には実印または認印を使用する場合もあります。署名方式についても「署名」なのか「記名押印」なのかで異なり、定款に記載があればその通りに従う必要があります。「署名」は自筆のため押印不要とされる一方、「記名」は印字などであり通常は押印が求められます。

実務では、物理的な署名や押印を回覧するには手間がかかるため、電子署名の導入が効率化に貢献しています。ただし、最終的な運用は自社の定款に依存するため、まずは定款の内容を確認することが重要です。規定がない、または曖昧な場合には、明文化しておくことが後々のトラブル回避につながります。

社員総会議事録は法的にも実務的にも重要な記録

社員総会議事録は、法人の意思決定を正確に記録・証明するための重要文書です。作成者や署名者には法的責任が伴い、電子署名の活用も進んでいます。定款や法令を確認し、正確・迅速・客観的に作成することが信頼性の確保とリスク回避に直結します。作成や保管をおろそかにすると、後々大きなトラブルにつながることもあります。あなたの法人でも今一度、議事録の作成体制や運用ルールを見直してみましょう。


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