• 作成日 : 2025年7月9日

テープなしで契約書を製本するには?準備と手順を解説

契約書は、企業活動や個人の権利義務関係を定める上で極めて重要な書類です。そのため、内容の正確性はもちろん、不正な変更が加えられていないこと、正当な権限者によって作成されたことを担保する必要があります。契約書の「製本」は、これらの要素を物理的に保護し、契約全体の信頼性を高めるための重要なプロセスです。特に複数ページにわたる契約書の場合、製本によってページの散逸を防ぎ、一体性を維持できます。

近年、伝統的な製本方法や環境に配慮した方法への関心が高まり、市販の製本テープを使用しない「テープなし製本」もその一つです。適切に行えば、テープを使用した製本と同等以上のセキュリティとプロフェッショナルな外観を契約書に与えることが可能です。

この記事では、テープなし製本の中でも代表的な「袋とじ(紙製バンドを利用する方法)」と「こより綴じ・紐綴じ」に焦点を当て、その具体的な手順、メリット、注意点を解説します。

テープなし製本に必要な準備

テープを使わずに契約書を美しく、かつ安全に製本するためには、事前の準備が重要です。

準備する道具一覧

  • 契約書本体:全ページが正しく印刷され、ページ順に揃えられたもの(A4サイズが一般的)。
  • ホッチキス(ステープラー):契約書の枚数や厚みに応じた適切なサイズのものと針。
  • 袋とじ用(紙製バンド)の場合
    • 製本バンド用の紙:契約書用紙と同じ種類・色の紙が望ましい。
    • のり:液体のりやスティックのりなど。
    • 定規、カッターまたはハサミ
  • こより綴じ・紐綴じの場合
    • 穴あけパンチ:通常2穴タイプ。
    • 綴じ紐またはこより:十分な長さを準備。
  • その他共通で役立つもの
    • 捺印マット
    • クリップ

契約書用紙の確認と印刷のポイント

  • 印刷内容の確認:最終稿であること、ページ番号、順番、向き、枚数に誤りがないか確認。
  • 印刷品質:文字が鮮明で、かすれや汚れがないか確認。
  • 余白(マージン)の設定:ホッチキスで留める部分や穴を開ける部分(綴じ代)には十分な余白を確保。

テープを使わない契約書の製本方法

代表的なテープなし製本方法である「袋とじ(紙製バンド)」と「こより綴じ・紐綴じ」の手順を解説します。

袋とじ(紙製バンドを利用)

袋とじは、ページの差し替えや抜き取りを防ぐ効果が高く、見た目も整然とします。

1:契約書のホッチキス止め

契約書をページ順に正確に揃え、左端をホッチキスで留めます。紙の端から5mm程度内側が目安で、枚数に応じて2~3箇所留めます。

2:製本バンド(帯)の作成と取り付け方

  • 帯の作成:契約書本体と同じ紙で、ホッチキスの針が隠れ、契印スペースが確保できる幅(例:2~3cm)の帯を作成します。長さは契約書の縦より数センチ長くし、上下を内側に折り込めるようにします。A4サイズの契約書の場合はB4サイズの用紙を使うなど、少し大きめの用紙を使うのがポイントです。
  • 帯の取り付け
    1. 帯の片面にのりを均一に塗ります。
    2. 契約書の表紙側、ホッチキス部分を覆うように帯を貼り付けます。
    3. 帯を契約書の背に沿って裏表紙側へ回し、同様に貼り付けます。
    4. 上下のはみ出した帯は、きれいに内側(裏表紙側)に折り込んで糊付けします。

3:袋とじ製本における契印の押し方

契約当事者全員が、契約書の署名捺印に使用したものと同じ印鑑で、製本バンド(帯)と契約書本体の紙とにまたがるように押印します。押印箇所は、表紙側か裏表紙側、または両方です。信頼性を高めるには両面への押印が望ましいです。

こより綴じ・紐綴じ

伝統的な製本方法で、和紙などで作成された書類に適しています。

1:穴あけパンチでの穴の開け方と注意点

契約書を揃え、左端に穴あけパンチで2穴または3穴を開けます。文字や図表にかからないよう注意し、枚数が多い場合は少量ずつパンチします。

2:こより・綴じ紐の通し方と結び方

開けた穴に「こより」または綴じ紐を通し、しっかりと結びます。解けにくく、見た目も整然と仕上げます。結び目をパンチ穴の一つに押し込む方法や、二回しっかりと片結びする方法があります。

3:こより・紐綴じの場合の契印について

最も確実な方法は、ホッチキス留めのみの場合と同様に、全てのページの見開きに契印を押すことです。あるいは、表紙と裏表紙の綴じ紐付近に、紐と本体にまたがるように契印を押すことも考えられますが、全ページへの契印が基本です。

ホッチキス止めのみの場合の契印

製本せずホッチキスで留めただけの場合は、契約書のすべてのページの見開き部分に、両方のページにまたがるように契印を押します。これにより、ページの不正な操作を防ぎます。

製本済み契約書の保管方法

適切に製本された契約書も、保管方法が不適切であればリスクに晒されます。

保管場所

湿気、直射日光、極端な温度変化は紙の劣化を早めます。温度・湿度が比較的安定し、直射日光が当たらない場所(施錠可能なキャビネット、書庫、耐火金庫など)を選びます。水害リスクを考慮し、地下室や1階の床に近い場所は避けます。

整理・管理のポイント

必要な時に迅速に見つけ出せるよう、体系的に整理・管理します。契約相手の名称別、契約締結日順、案件別などでファイリングし、契約の種類、相手名、締結日などを明記したラベリングを施します。契約管理台帳を作成すると検索性が向上します。製本された契約書は、原則として製本を解かずにそのまま保管するのが望ましいです。

推奨される保管期間と法的留意点

保管期間は法律や契約内容、社内規定で異なります。会社法では重要資料は10年間、法人税法では帳簿書類は原則7年間、労働基準法では原則5年の保存義務があります。契約終了後も、紛争解決や監査対応のため、最低でも契約有効期間プラス数年間(消滅時効期間などを考慮)は保管するのが一般的です。社内で明確なルールを設け、専門家に相談することも推奨されます。

安全な廃棄方法

保管期間が満了した契約書は、情報漏洩を防ぐため安全に廃棄します。シュレッダー(クロスカット方式やマイクロカット方式推奨)や専門の書類溶解処理業者を利用します。廃棄記録を残すことも重要です。

契約書をテープなしで製本するメリット

契約書を製本する主な目的は、物理的な一体性を確保し、改ざんや偽造といった不正行為を抑止することです。テープなし製本も、この目的を達成するための有効な手段です。

改ざん・偽造防止と契約書の信頼性向上

製本された契約書は、ページの抜き取りや差し替えといった改ざん行為を物理的に困難にします。袋とじや紐綴じのようなテープを使用しない製本方法は、一度綴じてしまうと分解や再構築が容易ではなく、不正な操作が加えられた場合にはその痕跡が残りやすくなります。

特に袋とじの場合、契約書本体と製本に使用する紙製の帯(バンド)にまたがって押される「契印」が、改ざん防止において重要な役割を果たします。この契印により、帯の不正な剥離やページの差し替えがあった場合、印影の不一致や欠損でその事実が明白になります。

契印の手間削減と効率化

製本されていない契約書の場合、原則として全てのページの見開き部分に契印を押す必要があります。これは枚数が多い場合、非常に手間と時間がかかります。

一方、袋とじなどで適切に製本された契約書では、契印は製本部分に1箇所、または表裏合わせて2箇所程度で済みます。これにより押印作業が大幅に簡略化され、契約締結プロセス全体の効率が向上し、押印ミスのリスクも低減します。

プロフェッショナルな外観と相手への好印象

適切に製本された契約書は、見た目が整然としており、取り扱いやすく、契約相手に対して丁寧で信頼できるという良い印象を与えます。袋とじや紐綴じといった伝統的な手法は、手間がかかる分、その契約に対する真摯な姿勢を示すものとして好意的に受け取られることがあります。また、紙製のバンドや自然素材の紐を使用することは、環境負荷低減という現代的な価値観にも合致する可能性があります。

丁寧な製本で契約書を作成しよう

この記事では、テープを使用しない契約書の製本方法として「袋とじ」と「こより綴じ・紐綴じ」を中心に解説しました。これらの方法は、契約書のセキュリティと品位を保つ有効な手段です。丁寧な製本は、契約内容を尊重し、相手方との約束を大切にする姿勢の表れとも言えます。

近年では電子契約システムも普及しつつありますが、依然として紙ベースの契約書が主流である場面も多く、この記事でご紹介した製本技術は今後も重要なスキルであり続けるでしょう。


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