• 作成日 : 2025年7月4日

駐車場契約書の保管期間はいつまで?紛失した場合も解説

車を所有する方にとって、駐車場契約は生活に欠かせない契約の一つです。自宅に自動車を駐車するスペースがない場合は近隣の駐車場の契約が必要ですし、マンションやアパートなどの集合住宅の場合は敷地の駐車場を賃貸借契約と同時に契約します。契約時には契約内容をしっかり確認しますが、一度契約してしまうと、契約書の存在を意識することは少なくなるかもしれません。

しかし、この「駐車場契約書」は、契約期間中はもちろんのこと、契約が終了した後にも非常に重要な意味を持つ書類です。契約期間中や契約終了後にトラブルが発生した時に、契約書がなければ契約内容を証明することができなくなるためです。

この記事では、駐車場契約書をいつまで保管すべきか、もし紛失してしまったらどうなるのか、そして日頃どのように管理すれば良いのかについて、分かりやすく解説します。

なぜ駐車場契約書の保管が大切なのか?

駐車場契約書は、貸主と借主の間で交わされた駐車場の賃貸についての契約内容を明文化したものです。具体的には、以下のような重要な情報が記載されています。

  • 契約期間:いつからいつまで借りるのか
  • 賃料(使用料):月々の料金はいくらか、支払期日はいつか
  • 敷金・保証金:金額はいくらか、返還条件はどうなっているか
  • 解約条件:解約する際にいつまでに告知が必要か、違約金は発生するか
  • 使用上のルール:駐車できる車のサイズ、禁止事項など
  • その他:更新の有無、原状回復義務、禁止事項など

これらの情報は、契約期間中に契約内容を確認する際に必要となるだけでなく、契約中や契約終了後に万が一トラブルが発生した場合に、双方の権利や義務を証明するための重要な証拠となります。特に民事訴訟になった場合では、主張した事実を裏付けるためには証拠が必要で、証拠が提出できなければ主張した事実はなかったものとされてしまい、自己の主張が正しくても裁判では聞き入られなくなってしまいます。

駐車場契約書の保管期間に法的な定めはない

「駐車場契約書は〇年間保管しなければならない」というように、駐車場契約書の保管期間を直接的に定めた法律は、日本には存在しません。

ただし、契約書を保管する実務上の必要性は、以下の要素から生じます。

  • 契約内容の証明:契約期間中および契約終了後のトラブルに備え、契約内容を証明する必要があるため。
  • 消滅時効:契約に基づいて発生する債権(賃料請求権、敷金返還請求権、損害賠償請求権など)には消滅時効があるため、その期間は契約書を証拠として保管しておく必要があります。
  • 税務上の要請(事業者や不動産所得がある場合):駐車場経営をしている個人事業主や法人、あるいは賃料を必要経費として計上する法人の場合、税法で定められた帳簿書類の保管義務(通常7年間)に関連して、契約書も保管が必要になります。

このように、駐車場契約書の保管期間は、法的な直接義務ではなく、関連する法律(消滅時効、税法など)や、将来起こりうるトラブルへの対応を考慮しなければなりません。

駐車場契約書の保管期間の決め方

では、駐車場契約書の保管期間はどのように決めれば良いでしょうか。

契約期間中はもちろん保管

これは当然のことですが、契約期間中は賃料の確認、解約条件の確認、使用上のルールの確認など、契約書を参照する機会や、トラブルが発生した時のために、必ず手元に保管しておきましょう。

契約終了後のトラブルに備える(消滅時効を考慮)

駐車場契約に関して起こりうる主なトラブルと、関連する消滅時効について考慮します。

  • 賃料債権の消滅時効:未払い賃料を請求できる権利は、原則として支払期限が到来しているのを知った時から5年または支払期限が到来してから10年で時効にかかります(民法第166条)。
  • 敷金・保証金の返還:敷金・保証金の返還請求権の時効は、契約が終了し請求できることを知った時から5年または請求できる時から10年です。契約書には敷金等の金額や返還条件が明記されているため、返還を請求する際や、返還額に納得できない場合に、契約書が重要な証拠となります。
  • 原状回復費用や損害賠償:駐車場を汚損・破損した場合の原状回復費用や、契約違反による損害賠償請求権が契約で規定されています。この債権は、債務不履行に基づくものであるため、請求できることを知った時から5年または請求できる時から10年で時効にかかります。

これらの時効期間を考慮すると、契約が終了した後も、少なくともこれらの請求が可能となる期間(5〜10年程度)は契約書を保管しておくべきでしょう。

税務上の理由(事業者・不動産所得がある場合)

駐車場を貸している個人事業主や法人、あるいは事業で駐車場を借りている個人事業主・法人の場合、賃料は収入または経費として税務申告に関わります。税法上、これらの取引に関する帳簿書類(契約書を含む)は、原則として7年間の保管義務があります(法人税法所得税法など)。そのため、事業に関わる駐車場契約書は、契約期間の終了後、税務上の保管期間に合わせて7年間保管すべきといえます。

駐車場契約書の保管期間の推奨目安

上記の考慮事項を踏まえると、駐車場契約書の保管期間として、以下の目安が考えられます。

  • 最低限の目安:契約期間中+契約終了後5年間
    • 賃料請求権や敷金返還請求権の時効期間をカバーするため、最低限この期間は保管しておきたいところです。
  • より安全な目安(税務・長期的なリスク考慮):契約期間中+契約終了後7年~10年間程度
    • 税務上の保管期間(7年)や、契約終了から時間が経過した後に発覚する可能性のある問題(隠れた瑕疵など)も考慮すると、7年~10年間保管しておけば、多くのリスクに対応できると考えられます。事業用として契約している場合は、税法上の7年間は必須と考えましょう。

個人の月極駐車場契約など、税務申告に直接関わらない場合でも、原状回復や敷金トラブルに備える意味で、契約終了後5年間は保管しておくことを強く推奨します。念のため10年保管しておけばより安心です。

駐車場契約書を紛失したらどうなる?

もし、大切に保管していた駐車場契約書を紛失してしまったら、どうなるのでしょうか。

直ちに契約が無効になるわけではない

まず、契約書を紛失したからといって、契約そのものが無効になるわけではありません。契約は、当事者の合意によって成立するものであり、契約書はその合意内容を証明するための「証拠」です。証拠がなくなったからといって、合意そのものが消滅するわけではありません。

契約内容の確認が困難になるリスク

契約内容を正確に確認することが難しくなるリスクがあります。賃料、支払日、解約時のルール、敷金の金額や返還条件など、いざ確認が必要になった時に、契約書が手元にないと、自分の記憶やメモなどに頼るしかなくなります。

トラブル発生時の証明が難しくなる

万が一、貸主との間で賃料の支払い、敷金の返還額、駐車場の原状回復費用などを巡ってトラブルになった場合、契約書がないと、自分が主張する契約内容を証明することが非常に困難になります。民事訴訟では、主張した事実を証拠によって証明する必要があり、駐車場契約書を紛失すると事実の証明ができずに不利となります。

紛失した場合の対応策

駐車場契約書を紛失したことに気づいたら、速やかに以下の対応をとりましょう。

  1. 貸主または管理会社に連絡する:契約をする際に契約書は2通作成されており、通常 、貸主や管理会社が、もう1通を保管しています。正直に紛失した旨を伝え、契約書のコピーを提供してもらえるか相談しましょう。多くの場合、快く応じてもらえるはずです。
  2. 契約内容の確認:コピーを受け取ったら、改めて契約期間、賃料、敷金、解約条件など、重要な項目を確認しておきましょう。
  3. 再発行の依頼(可能であれば):コピーではなく、改めて正式な契約書を締結し直す(再発行)ことが可能か相談することも考えられます。ただし、これに応じる義務は貸主にはありません。コピーで十分なケースが多いでしょう。

紛失しても慌てず、まずは貸主や管理会社に相談することが最も現実的な対応策です。

駐車場契約書の適切な保管方法

契約書を紛失するリスクを減らし、必要な時にすぐに見つけられるように、以下の方法で適切に保管しましょう。

一元管理とデジタル化

重要な契約書は、まとめて一箇所に保管場所を決め、他の書類と紛れてしまわないようにします。また、契約書をスキャンしてPDFなどの電子ファイルとして保存し、パソコンやクラウドストレージにバックアップを取っておくと、いつでも内容を確認でき、紛失や劣化のリスクに備えられます。

契約内容の概要を記録する

契約書を保管すると同時に、契約相手、契約期間、賃料、敷金、解約予告期間などの主要な情報をまとめたリストや簡単な書類を作成しておくと、契約書全体を見返さなくてもすぐに内容を確認できて便利です。

安全な場所での保管

水濡れ、火災、盗難などのリスクがない、安全な場所を選んで保管します。鍵のかかるキャビネットなども有効です。

駐車場契約書は大事に保管しておこう

駐車場契約書に法的な保管期間の定めはありませんが、契約期間中の確認、契約終了後のトラブル対応、そして税務上の要請(事業者・不動産所得がある場合および費用として計上する場合)のために、適切な期間保管しておくことが重要です。

契約期間中はもちろん、契約終了後も、消滅時効(5年~10年)や税務上の保管期間(7年)を考慮し、最低5年、できれば7年~10年間程度を目安に保管することをおすすめします。

もし契約書を紛失しても、契約自体が無効になるわけではありませんが、トラブル時に契約内容を証明することが難しくなります。紛失に気づいたら、すぐに貸主や管理会社に連絡してコピーをもらいましょう。


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