• 作成日 : 2025年5月7日

ポスティングの業務委託契約とは?契約書のテンプレート・例文、委託の注意点を紹介

ポスティングの業務委託契約とは、チラシなどの配布を外注するための契約のことです。契約時には契約書を作成することが大事。そのため、留意すべき契約書への記載事項や書き方を本記事でご確認ください。そのほかポスティングの外注に関しての注意点なども紹介しています。

ポスティングの業務委託契約とは?

ポスティングの業務委託契約は、企業のマーケティングに関わるチラシやパンフレットなどを配布する業務を外部の事業者に依頼するときに交わす契約です。

この契約では、委託者(依頼する側)と受託者(ポスティング業者)の間で、業務内容や報酬、期間、枚数などを設定するとともに双方の権利義務を定めます。

ポスティングは地域密着型のマーケティング手法として効果的である反面、配布エリアの選定、配布員の手配などの面で専門的なノウハウも求められるため、これらを得意とする業者に委託して実施するケースもあります。

ポスティング業務を委託するケース

自社の従業員に直接ポスティングをしてもらうことも可能ですが、次のケースに該当するような状況下では業務委託を検討するとよいでしょう。

  • 広範囲に配布する必要があるとき(全国規模や複数の地域にわたってポスティングを行う場合には業界内のネットワークを利用した方が効率的)
  • 大量のチラシを配布するとき(自社では対応しきれない枚数のチラシを短期間で配布する必要がある場合など)
  • 別の業務に集中する必要があるとき(自社スタッフが別の業務に集中したい状況、人員不足によってポスティング作業に割ける余裕がない場合)

そのほか、業者によってはクレームにも対応するなど独自のサービスを展開していることもありますので、そのサービスに合ったニーズがあるときにも業務委託を検討する価値があります。

業務委託契約と雇用契約(正社員)との違い

特定の作業を外部に依頼するときの「業務委託契約」と、正社員を雇うときの「雇用契約」にはいくつか重要な違いがあります。

1つは、業務委託契約には雇用契約と違って指揮命令権が発生しないという点です。

雇用契約では使用者である企業が従業員に対して具体的な指揮命令を行いますが、業務委託契約においては業務遂行の方法に関して受託者の裁量に委ねられるのが原則となります。

また、労働時間や就業場所についても違いがあります。

雇用契約では企業が定めた勤務時間や就業場所での勤務が原則ですが、業務委託では基本的に受託者が自らの判断で時間や場所を決定できます。ポスティング業務の場合、契約締結時に「いつ」「どのように」配布するかを定めることはできますが、指定がなければ受託者の裁量に任されることとなります。

報酬面でも違いがあります。

雇用契約では毎月定額の給与が支払われ、社会保険や福利厚生などの制度も適用されます。一方の業務委託契約では成果物(配布完了報告など)に対して報酬を支払うのみであり、委託先について発注者が保護・保証を行う必要はありません。

業務委託契約の種類

業務委託契約はいくつかの種類に分類することができます。法的には法律行為を専門家に依頼する委任契約、法律行為以外の事実行為を依頼する準委任契約、成果物の納品を求める請負契約などがあります。この分類でいうとポスティングの外注は準委任契約か請負契約に該当することになるでしょう。

※業務委託契約の基本、種類や締結の流れについてはこちらの記事も参照。

また、契約内容の実態に着目して、例えば特定のキャンペーンやイベントに向けて単発で契約するタイプ、定期的なチラシ配布を行う継続的なタイプに分けることもできます。

報酬体系に着目して、ポスティング後の成果達成に応じて報酬が変動する成果報酬型、配布エリアや枚数に基づいて一定の報酬が支払われる固定報酬型に分類することも可能です。

業務委託契約書はどちらが作成する?

法律上、業務委託を含む契約一般は口頭でも成立します。しかしトラブル防止の観点からは書面化することが強く推奨され、特に事業活動の一環で締結をするのであれば契約書の作成は実務上必須であると考えておきましょう。

契約書の作成者については、特に決まりがありません。どちらが作成しても構いません。

しかしこれは契約書の草案の話であって、一方が契約書を作成することでそこに記載したルールを強制させられるわけではありません。最終的には当事者双方が内容を確認のうえ、納得がいけばサインをして契約書が完成し、契約も成立します。

ポスティングの業務委託メリット・デメリット

ポスティング業務を専門業者に委託する場合の一般的なメリットは次の通りです。

  • 専門業者のノウハウを活用でき、マーケティング効果の向上につながる
  • 自社でスタッフを雇用する場合に比べ、固定費をカットでき、コスト効率を向上できる可能性がある
  • 従業員は自社のコア業務に集中でき、労務管理の必要もない
  • 全国展開している業者であれば、自社だけで対応が難しいエリアにまでリーチできる など

一方デメリットとしては、適切にポスティングサービスを活用できなければ十分な費用対効果が望めず、社内で対応するよりコストが上がる可能性もあります。また外注とはいえ、配布するチラシの内容を考えたり、委託先とのやり取りを行ったり、自社でしないといけない作業が完全にゼロになるわけではありません。

ポスティングの業務委託契約を締結する流れ

ポスティングを業務委託する際の一般的な手順は次の通りです。

  1. 業者の選定と比較
    まずはポスティング業者の選定が必要。複数の業者に見積もりを依頼するなどして比較検討を進めると判断しやすくなる。
  2. 業務内容と条件の明確化
    選定した業者と具体的な業務内容や条件について話し合う。配布エリアや配布数量、配布期間などを具体化していく。
  3. 契約書の作成・確認
    協議した内容に基づいて契約書を作成していく。契約書は自社で作成、または業者側が作成したものを確認する。いずれの場合も契約内容は慎重にチェックすることが重要。
  4. 契約の締結
    各条件が合意に至れば、契約書に署名・捺印して契約を締結。電子契約の場合はクラウド上で契約を完結させることも可能。

業務開始後も定期的に進捗を確認し、ポスティングによる効果を検証していきましょう。

ポスティングの業務委託契約書のひな形・テンプレート

ポスティングの業務委託契約書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードできます。適宜加筆修正して活用してください。

ポスティングの業務委託契約書に記載すべき内容

ポスティングに関する業務委託契約書をどのように作成するのか、主な記載事項別に解説をしていきます。

配布物やその取り扱い

何を配布するのか、受託者はどのように取り扱わないといけないか、といったルールを定めていきます。条文で明示する方法もありますし、情報量が多いときは「甲は乙に対し、別紙1の配布物を提供するものとする」と定める方法もあります。

また配布物の取り扱いに関しては、次のように条文を置く例が考えられます。

例文)
第○条 乙は、配布物が破損・汚損しないよう丁寧に取り扱い、雨天時には配布物がぬれないよう適切な措置を講じる。
2 配布物が故意または過失によって破損・紛失した場合、乙はその責任を負うものとする。

配布エリアや配布の方法

どのエリアを対象に配布するのか、「○○市」と示すほか、必要に応じてより詳細な条件を設けて配布エリアを指定することも検討します。

例文)
第○条 乙は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までの○日間に全てのチラシを配布する。なお、本件業務の委託地域は○○市内とする。
2 乙は、甲に対し、作業日ごとに、甲指定のフォームによる業務報告を行う。
3 乙は、本件業務の一部または全部を第三者に再委託することができない。

また、配布の方法に関して再委託を認めるのかどうか、配布の結果について報告を必要とするのかどうかについても検討しましょう。ルールが細かく決められているときは「本件業務の詳細は、別紙記載のマニュアルによるものとする」と定めることも可能です。

業務遂行の条件

ポスティング業務を遂行するうえで発生した費用の負担、その他トラブルやクレーム対応などに関する条件もあれば契約書で明記しておきましょう。

例文)
第○条 本件業務を実施するにあたり発生した費用については乙の負担とする。ただし、甲の指示により費用が発生した場合については、甲がこれを負担する。
2 本件業務中に生じたトラブルについては、乙が責任を持って対応するものとする。

また、個人情報保護の観点から次のように守秘義務を設けることも検討します。

例文)
第○条 乙は、本件業務に関して知りえる個人情報につき、第三者に開示・漏えいしてはならない。
2 甲は、業務上知りえた乙の個人情報につき、第三者に開示・漏えいしてはならない。
3 前項の規定は、本契約終了後もなお効力を生ずる。

報酬体系とその支払方法

報酬がいくらになるのか、客観的に判断できるように明記しましょう。固定の金額を定めるほか、次のように算定根拠を定めるという方法もあります。

例文)
第○条 甲は乙に対し、本件業務の委託料として、チラシ1枚配布につき金◯円を支払う。支払いは、月末締め、翌月○日に、甲が乙指定の銀行口座に振り込む形で行う。振込手数料は甲が負担する。

どのように支払うのか、支払い期日も含めて定めておくことをおすすめします。

ポスティングの業務委託をする際に確認したいこと

想定したターゲット層にチラシが届かず広告効果が得られない、法令に抵触したチラシにより行政指導を受ける、といった問題に直面する可能性があります。そこで業務委託の前に、以下の点を確認しておいてください。

ターゲット層に適したエリアの選定

ポスティングの効果を最大化するためには、ターゲット層が集中するエリアを見極めることが重要です。自社がポスティングを行う目的を業者に伝え、ターゲット層の特性(年齢・性別・世帯構成・所得層など)を特定し、最適なエリアを選定しましょう。

ポスティング業者が、公的な調査データや独自の分析に基づいて提案をしてくれることもあります。

ポスティングの適法性

ポスティングに関連する法令上の規制もあります。チラシの中身に関して景品表示法の規制を受けることがありますし、特定商取引法の規定にも注意が必要です。

例えば根拠なく「○○は顧客満足度1位!」と表示する行為は景品表示法違反に該当します。また、チラシの表示と実態が乖離しているとき、申込みを受けたとしても特定商取引法に基づいて消費者側に取消権が認められるケースがあります。

またポスティングの方法が適切でなければ、それが明らかな違法行為でなくとも、消費者からの印象を悪くしてしまう恐れがあります。

費用対効果の測定

事前に配布エリアなどを入念に調査することも重要ですが、ポスティング後の効果測定も怠るべきではありません。想定通りの効果が得られたのか、費用をかけた分の結果は得られたのか、今後の継続を判断するためにも費用対効果を測定しましょう。

例えば、Webサイトへの誘導を目的としているなら、アクセス解析で効果を確認することも可能です。

ポスティングの業務委託契約書の保管方法や電子化について

業務委託契約書は、契約期間中はもちろん、契約期間が終了してからも一定期間は大切に保管しておいてください。税制上、会社法上の保存義務が事業者には課せられていますので、10年間は残しておきます。

契約業務が多く発生する企業だと書類の長期管理は大変ですが、電子化によりスペースや劣化などの問題を解決することができるでしょう。業務委託契約書の電子化は法的にも可能ですし、電子契約システム上で管理すれば検索も容易になります。

一度紙で作成した契約書でも、一定以上の解像度にするなど要件を満たせばスキャンして電子データとして保管することが可能です。

ポスティング業務を委託するときは契約書も忘れずに

ポスティングを外部の業者に委託することで効果的・効率的な業務が実現できることでしょう。業者選びなど慎重に対応すべきポイントもありますが、適切な形で業務委託ができれば広告効果の向上も期待できます。

ただし業務委託に際しては契約書を作成することも忘れないようにしてください。特に報酬に関しては揉めるリスクが大きいため明確にしておくことが大事です。

加えて、ポスティングの内容にも注意が必要です。景品表示法に準拠するなど法令遵守を徹底しなくてはなりません。法規制や最新の動向については日本広告審査機構(JARO:https://www.jaro.or.jp/)のWebサイトも参考にするとよいでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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