- 作成日 : 2022年2月9日
IT書面一括法とは?改正内容や条文についてわかりやすく解説
コロナ禍でテレワークが普及したことで、官民ともにデジタル化の遅れが浮き彫りになりました。政府はデジタル庁を創設するなどして、デジタル化に向けて動き始めています。それを受けて、書面についてもデジタル化が加速しています。
今回は電子契約に関する法律のひとつである「IT書面一括法」について、条文の内容や改正の対象になった法律などについて解説します。
IT書面一括法とは
IT書面一括法は、書面の交付や提出が必要とされている書類について、一定の条件を満たした場合に電子メールなどの電子的手段を使うことを認める法律です。
IT書面一括法の正式名称は「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」です。この法律は金融庁、総務省、財務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が所管する各法令を一括して修正するものです。
この法律が施行されたことによって、これまで書面での提出が必要だった各種手続きが電子メールやFAXで提出できるようになりました。最近は、行政手続きもオンラインで電子ファイルをアップロードする方法が認められるようになりました。なお、今までどおり書面での提出も認められています。
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IT書面一括法の条文
IT書面一括法は50条で構成される法律です。第1条から第9条までが「金融庁関係」、第10条と11条が「総務省関係」、第12条が「財務省関係」、第13条から第20条までが「厚生労働省関係」、第21条から第33条までが「農林水産省関係」、第34条から第43条までが「経済産業省関係」、第44条から50条までが「国土交通省関係」の法律を改正する内容になっています。
IT書面一括法は「○○法を次のように改正する」と規定して各条文を示し、「電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって○○令で定めるものにより提供することができる。」という条項を加える形になっています。
個々の法律を改正するとなると法律ごとに審議する必要があり時間がかかるため、個々の法律で書面の提出が義務とされている部分について、一括して電子的な手続きを利用できるよう改正されました。
IT書面一括法の例外もある
IT書面一括法によって多くの法律が改正され、書面の作成が不要になりました。しかし、一部の手続きでは依然として書面の交付が必要なものがあるため、注意が必要です。具体的には、以下の書面は電子的な手続きができません。
- 不動産の売買又は交換の媒介契約書(宅地建物取引業法34条の2)
- 不動産の売買、交換、賃貸借の契約を締結する場合の重要事項説明書(宅地建物取引業法35条第5項)
- 不動産の売買又は交換の契約事項の書面(宅地建物取引業法37条)
その他、定期借地契約書(借地借家法22条)、定期借家契約書(借地借家法38条1項)、任意後見契約書(任意後見契約に関する法律3条)、訪問販売等で交付する書面(特定商取引に関する法律4条)なども書面を作成することが義務付けられています。
IT書面一括法は電子契約に関する法律のひとつ
今回はIT書面一括法について解説しました。この法律の施行によって多くの法律が改正され、多くの手続きが電子化できるようになりました。しかし、依然として書面でなければならないものもあり、デジタル社会に向けて速やかな電子化が望まれます。
ちなみに電子契約に関する法律はIT書面一括法だけではなく、電子帳簿保存法や電子署名法、e-文書法などがあります。
電子帳簿保存法は、国税に関する書類を電子的に保存することを認める法律です。電子署名法は、記名押印に代わる方法として電子的に署名することに関するルールを定めたものです。e-文書法は電子帳簿保存法の範囲を広げ、国税に関する書類だけでなく議事録などの会社関係書類、医療情報、建築図書なども電子的に保存できるとしたものです。
このように、政府はデジタル化に向けて着実に法律改正を行っています。今後その対象は増えることはあっても、減ることはないでしょう。企業としては、デジタル化に対応すべく早めに準備を始めることをお勧めします。
よくある質問
IT書面一括法とは何ですか?
IT書面一括法は書面の交付や提出が必要とされている法律について、一定の条件を満たした場合に電子メールなど電子的手段を使うことを認める法律です。詳しくはこちらをご覧ください。
IT書面一括法に例外はありますか?
例外はあります。例えば不動産に関する契約では、現時点では媒介契約書や重要事項説明書などは書面で交付する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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