• 更新日 : 2025年5月7日

飲食提供の業務委託契約書とは?見方や例文・テンプレートを紹介

飲食提供の業務委託契約書は、レストランや給食会社などが、ホテル・介護施設のような食事サービスを請け負う際に交わす契約書のことです。未払い・火災・衛生トラブルを未然に防ぐためにはしっかりと取り決めをし、契約書で契約を締結することが重要です。この記事では飲食提供業務委託契約書の書き方や注意点についてご紹介します。

飲食提供の業務委託契約とは?

飲食提供業務委託契約は、事業者が施設内で行う食事サービスを外部の飲食事業者に委託する際に締結します。業務委託契約書にて業務範囲や料金、衛生責任などのルールを明文化することで、効率的な運営と安全・安心な食事の提供につながります。

食事提供の業務を委託するケース

ホテルの朝食ビュッフェ、病院や介護施設の給食、テーマパークのフードコートなど、厨房運営を丸ごと外部の飲食事業者に委託する事例が増えています。自社で調理人を雇う必要がないため、人件費と設備投資を抑えつつ、おいしいメニューを提供できる点が魅力です。

一方で、外部の事業者に運営を委託すると衛生事故やクレーム時の責任の所在が曖昧になります。契約書で厳格に定義することで、ブランド毀損や損害賠償リスクを抑えることが可能です。

業務委託契約の種類

業務委託契約には、請負契約、委任契約、準委任契約という形態があります。例えば継続的な厨房運営を委託するのであれば準委任契約、弁当や仕出し料理などを納品する場合は請負契約など、事業内容や業務の性質に応じた適切な形態を選択する必要があります。

業務委託契約書はどちらが作成する?

実務上、契約書のドラフトは依頼側(発注者)が中心となって作成するケースが一般的ですが、双方で内容調整を行うことが基本です。委託先と発注者どちらが主導して作成するかは、交渉の中で決定されるため、対等な立場で議論を進めることが望ましいといえます。

飲食提供の業務委託契約の特徴

飲食提供の業務委託契約は、提供する食事サービスの範囲や時間、成果報酬の設定、月単位もしくは時間単位での契約方法など、さまざまな形態が存在します。また、衛生管理や火災防止のための特別条項が盛り込まれることもあり、実務上細かい点まで確認することが求められるでしょう。

飲食提供の業務委託契約をするメリット・デメリット

依頼側にとっては食事サービスの維持管理にかかるコストやリスクを低減し、専門業者の知見や技術を活用して利用者に満足してもらえる食事を提供できるようになる点が大きなメリットといえます。

一方で、業務の委託に伴う連携不足や報酬の未払い、偽装請負など、法的効力面や実務上の煩雑さがデメリットとして挙げられます。委託先の運営体制が整っていない場合、契約内容のレビュー不足が原因でトラブルに発展するリスクも考えられます。委託契約書に記載する各条項やチェックポイントを事前に十分に検討したうえで契約書を作成することが重要です。

飲食提供の業務委託契約書を締結する流れ

飲食提供業務委託契約を締結して実際に飲食提供サービスが開始されるまでには以下のようなステップを踏む必要があります。

  • 打ち合せ
    発注者と委託先との間で業務内容、条件、報酬、契約期間など基本事項の確認を行います。
  • 契約書のドラフト作成
    法務担当者や専門家の意見を踏まえて契約書の草案を作成し、双方で内容を調整します。
  • レビューと修正
    具体例や他の事例を参考にしながら、条項の表現や詳細を詰め、契約書に記載すべきポイントを洗い出します。
  • 最終確認と署名
    最終的な内容確認後、双方が署名・押印または電子署名を行い、正式に契約が成立します。

飲食提供の業務委託契約書のひな形・テンプレート

飲食提供の業務委託契約書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードできます。適宜加筆修正して活用してください。

飲食提供の業務委託契約書に記載すべき内容

ここからはひな形をもとに、飲食提供業務委託契約書に記載すべき内容についてご紹介します。

概要

契約当事者(施設・業者)の法人名や屋号名、氏名を正確に記載し、両者が飲食提供業務委託契約を締結する旨を記載します。当事者名を「甲」「乙」と置き換えることで、契約書が読みやすくなります。

業務内容の範囲

委託する業務の内容を記載し、施設内のどのエリアで、どのような形態の食事提供を行うのか、時間帯や業務の開始終了時刻、そして業務遂行上の留意事項などを明らかにします。曖昧な表現を避け、具体的に記載することで、双方の理解を一致させることが重要です。なお、業務内容の詳細は「業務分担表」「仕様書」などに記載して契約書に添付する形でも問題ありません。

契約期間

「令和〇年○月〇日から令和〇年○月〇日までの◯年間」というように、契約期間を具体的な日付で明記します。

報酬や支払い

報酬の算出方法としては、月額固定、歩合制、もしくは時間単位での支払いといった形式が考えられます。いずれのケースにしても、具体的な金額を記載しましょう。また、報酬支払いの締め日や振込先、手数料の負担についても、明確に文言を定めることで、金銭トラブルの防止につながります。

食材費や設備、器具の負担

厨房・食器・食洗機を発注者が無償提供するのかどうかを定めます。一方、受注者は貸与品を適切に管理・使用する善管注意義務を負うと規定しましょう。

火災防止・衛生管理について

受注者が火災防止および衛生管理を徹底する旨を記載します。

秘密保持

両当事者が業務によって知り得た相手方の秘密情報について、無断で第三者に開示・漏えいしない旨と、この条項が契約終了後も有効であることを定めます。

再委託・下請け

再委託の可否を記載します。原則禁止とし、受注者が契約を通じて得た権利や発注者からの貸与品を第三者に譲渡・転貸しないことも記載します。

損害賠償責任

業務遂行中に万一の事故や損害が生じた場合の賠償責任について、どの範囲で受注者が賠償するのか、あるいは発注者側にも一定の責任がある場合の取り扱いについて定めます。

契約解除

両当事者が契約を解除できる条件(契約違反行為や不正行為があった場合など)と、その手続きについて定めます。

協議

契約書に記載された取り決めで解決できない問題が発生した際に協議を行うことを定めます。

反社排除・裁判管轄

紛争が発生した際の合意管轄(本社所在地の地裁)を記載します

収入印紙・印紙税

最後に契約成立年月日と両当事者が署名押印する欄を設けます。

飲食提供の業務委託契約で確認したいこと

契約締結前には、業務内容、契約期間、報酬、機密保持、損害賠償責任、収入印紙の有無などを入念に確認することが大切です。以下で詳しく見ていきましょう。

業務内容の範囲

業務委託の具体的な範囲や業務遂行の指示事項、さらに食事提供の実施場所や利用時間といった細部を確認し、双方で認識に齟齬がないように記載することが重要です。

報酬や支払い

特に報酬については揉めやすい部分です。支払い条件や振込方法、報酬の具体的な金額、固定部分と変動部分の内訳(あれば)について明確にし、記載漏れがないか十分にチェックしましょう。

食材費や設備、器具の負担

食材費や設備レンタル料、器具のメンテナンス費用など、どちらが負担するのかを具体的に記述しましょう。後の費用請求や支払い遅延に対するリスクマネジメントも含めて確認します。

損害賠償責任

万一の事故やトラブル発生時の責任範囲や賠償額の上限、免責事由などを詳細に検討し、双方で納得できる内容であるかどうか、リスク分担のバランスを十分に考慮しましょう。

収入印紙・印紙税

飲食提供業務委託契約書を作成する際には印紙税がかかることがあります。例えば請負契約の場合は第2号文書に該当し、契約金額に応じた印紙税を支払わなければなりません。

契約金額貼付すべき収入印紙の額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

3ヶ月以上の継続的な取引に関する契約書は第7号文書に該当し、4,000円の印紙税が必要です。税額分の収入印紙を契約書に貼付することで、印紙税を支払ったことになります。

参考:印紙税額|国税庁

飲食提供の業務委託契約書の保管について

飲食提供業務委託契約書は取引があったことを示す証憑書類となります。会社法では10年間保管することが定められているため、契約書お同様に保存しましょう。紙原本は耐火金庫、PDFは改ざん防止クラウドに保存し、仕様書や衛生記録と一体管理することで、トレーサビリティーを高められます。

参考:会社法|e-GOV法令検索

飲食提供の業務委託契約書の電子化はできる?

紙の契約書を電子データに置き換える電子化は、近年のDX推進の中で広がっています。飲食提供業務委託契約書についても電子化が可能です。電子署名法や電子帳簿保存法の要件に基づき、視認性や検索性などの整備や内容の改ざん防止策を講じることで、法的効力を維持しつつ、保管や検索の効率化が実現できます。ただし、運用ルールや保存期間、セキュリティ対策を十分に整える必要があります。これを機会に電子契約システムの導入も検討してみましょう。

細部まで擦り合わせをして飲食提供業務委託契約書を作成しよう

本記事では、飲食提供の業務委託契約書作成に必要な基本的知識から、具体的なひな形の活用方法までを紹介しました。飲食提供業務委託契約を締結する際には双方で条件面や業務内容、設備や備品の貸与、衛生管理や火災予防など、さまざまな事柄を擦り合わせして、契約書に反映させる必要があります。

ぜひ今回ご紹介した内容や当サイトのひな形を参考に、契約書を作成してみましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事