• 作成日 : 2025年3月3日

申立書とは?例文や書き方をひな形つきで解説

申立書とは、裁判所や行政機関に対し自己の権利や利益を主張する際に提出する書類の総称です。

たとえば支払督促の申し立てや家事調停、扶養に係る変更手続きなど、法的手続きを進める際に幅広く利用されます。

本記事では申立書が必要なケースや書き方のポイントを詳しく解説します。実務に使えるテンプレートも用意していますので参考にしてください。

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申立書とは?

まず、申立書の意義内容、必要性について理解を深めましょう。

申立書とは何か?

申立書(もうしたてしょ)とは、特定の権利や法的主張を正式に申し立てるための文書を指します。たとえば、裁判所に対し調停を求める意思表示をしたり、市役所などの行政機関に対して従来の申請内容に対する変更や補足内容、理由などを記載したりするなど、幅広い用途をもつ文書です。

申立書は法的な手続きを円滑に進め、自己の権利や利益を適切に保護する手段となることから、請求の根拠事実関係を明確に示す必要があります。請求目的や提出先によって記載すべき項目が異なるため、目的に応じて適切な書き方を理解することが重要です。

申立書の法的効力

申立書は法律文書に該当し、法的効力を有します。裁判所へ調停を求めたり、行政機関に対して審査請求したりする行為は、法律で定められた手続きであるためです。適切な申立書を提出することで、裁判所や行政機関の正式な審理や判断を促せます。

以下に申立書の提出による法的効果の事例は、以下のとおりです。

申立書を提出するとどのような効力がある?
  • 訴訟提起の効果

    民事訴訟において、訴状として申立書を提出することで、訴訟が提起されます。裁判所は、当事者の主張に基づいて審理を開始します。また、申立書の提出により時効の完成を猶予させるという効果もあります。

  • 権利・利益の主張

    申立書は、自己の権利や利益を主張するために提出されます。裁判所や行政機関は、申立書に記載された内容に基づいて、権利や利益の有無を判断します。

  • 手続きの開始

    申立書は、法的な手続きを開始するために必要です。たとえば、会社更生手続きや破産手続きなど、申立書を提出することで手続きが開始されます。

申し立てをするケース

法的権利を主張し、裁判所や行政機関に正式な判断を求める手段となる申立書は、おもに以下のようなケースで使用されます。

民事訴訟関連

契約違反や損害賠償請求など、民事上の紛争を解決するために申し立てを行うケースがあります。

民事上の紛争を解決するための申し立ての具体例
  • 契約違反

    契約相手が契約内容を守らない場合、契約の履行を求めたり、損害賠償を請求したりするために訴訟を提起します。

  • 損害賠償請求

    会社が不法行為により損害を被った場合、損害賠償を請求するために訴訟を提起します。

  • 債権回収

    取引先が売掛金を支払わない場合、売掛金を回収するために訴訟を提起します。取引先が支払いを滞納している場合、裁判所に支払督促の申立書を提出し、法的手続きを開始できます。

会社法関連

株主総会の瑕疵や取締役の任務懈怠など、会社法の規定に関する争議の場合に申し立てを行うケースです。

会社法の規定に関して申し立てを行う例
  • 株主総会決議取消

    株主総会の決議に法令違反や定款違反がある場合、決議の取り消しを求める申し立てを提起します。株主総会決議の無効確認や取締役の解任請求など、会社法に基づく手続きで申立書が必要です。

  • 役員責任追及

    役員が会社に損害を与えた場合、役員の責任を追及する申し立てを提起します。

  • 破産・再生手続き

    企業が経営難に陥った場合、自己破産や民事再生の申立書を裁判所に提出し、債務整理を進めることが可能です。

知的財産関連

特許侵害や商標権の侵害など、知的財産権を侵害された場合に申し立てを行うケースです。

知的財産権を侵害された場合に申し立てを行う例
  • 特許侵害

    他社が自社の特許を侵害している場合、特許侵害の差止請求の申し立てを行います。

  • 商標侵害

    他社が自社の商標を侵害している場合、商標侵害の差止請求訴訟を提起します。

労働関連

不当な解雇や賃金の未払いなど、会社と従業員との間に争議が生じた際に申し立てを行うケースです。

会社と従業員との間に争議が生じた際に申し立てを行う例
  • 不当解雇

    従業員を不当に解雇した場合、解雇の無効を主張する訴訟を提起します。

  • 未払い賃金

    未払い残業代の請求や不当解雇の争いでは、訴訟の他に労働審判や民事調停の申立書を提出し、解決を図ることも可能です。

行政事件

行政機関の処分に不服がある場合に申し立てを行うケースがあります。

会社と従業員との間に争議が生じた際に申し立てを行う例
  • 営業許可取消

    行政機関から営業許可を取り消された場合、取消処分の取り消しを求める訴訟を提起します。

  • 税金賦課処分

    税務署から不当な税金を賦課された場合、賦課処分の取り消しを求める申し立てを提起します。

申し立てをする流れ

申立書を適切に提出するには、手順を正しく理解したうえで必要書類を不備なく揃えることが重要です。ここでは申し立てを進める際の一般的な流れを説明します。

1.申し立ての要件を確認

まず、申し立てを行う案件が法律上の要件を満たしているかを確認します。裁判所や行政機関など、申し立てを行う先によって申し立ての基準が異なるため、関連する法令や規則を事前に調査しましょう。

2.申立書の作成

申立書の書式を入手し、当事者の情報、請求の内容、請求の理由など必要事項を記載します。くわえて、必要な証拠書類を準備しましょう。

事案の経緯や主張を明確に記載し、必要事項を漏れなく記入します。提出先によって記載が必要な項目が異なるため、各機関の指示に従うことが必要です。

3.申立書の提出

作成した申立書と証拠書類を、管轄の裁判所または行政機関に提出します。申立書を提出する際は証拠資料を添付し一緒に提出しましょう。

申立書の提出方法は、直接窓口へ持参するほか、郵送や電子申請が認められる場合もあります。提出先の受付方法や受付時間を確認し、期限内に手続きを完了させましょう。

また、申し立てには手数料が必要となることが多く、印紙代や予納郵券の準備が求められる場合があります。事前に費用を確認し、適切に支払いを済ませます。

4.審査・審理

裁判所または行政機関は、提出された申立書と証拠書類に基づいて審査または審理を行います。

必要に応じて、当事者に対して事情を聴取したり、追加の証拠書類の提出を求めたりすることがあります。手続きの進行状況を確認し、必要に応じて速やかに対応しましょう。

5.決定・判決

裁判所または行政機関は、審査または審理の結果に基づいて、判決または決定を下します。決定または判決の内容は、当事者に通知されます。

申立書のひな形・テンプレート

申立書を作成する際には、あらかじめ用意されたひな形を参考にするのがおすすめです。裁判所や自治体が用意しているケースもあるため、事前に確認しましょう。

なお、こちらのページでは弁護士監修済みの汎用的な申立書のひな形をダウンロードできます。ぜひご活用ください。

申立書の書き方や例文

ここでは、申立書の書く際に必要な構成要素や具体例を紹介します。以下で詳しくみていきましょう。

申立書の構成要素

申し立ての内容によって違いはありますが、一般的に申立書は、以下のような構成で作成します。

<申立書の構成要素の例>

項目記載内容
タイトル申立書の件名を明示します。
宛先申立書を提出する相手先(裁判所や企業など)を記載します。
申立人情報申立人の住所、氏名、連絡先を記載します。
相手方情報申し立てを行う相手方の住所、氏名を記載します。
申立の趣旨具体的な問題や要求を明確に記述します。
申立理由申し立てを行う理由を記載します。
証拠の提示関連する証拠や資料を添付します。
署名申立人が署名し捺印します。

申立書の書き方の一例

実際に、契約違反に対する損害賠償請求の申立書の例をご紹介します。

◯◯申立事件

申立人:◯◯ ◯◯

相手方:◯◯ ◯◯

◯◯申立書

令和XX年X月X日

裁判所名

住所:

申立人:◯◯ ◯◯

住所:

相手方:◯◯ ◯◯

私は、以下の理由により損害賠償を求める申立を行います。

契約書第X条に基づき、相手方(株式会社XXXX)は、契約違反を行いました。これにより、私の業務に大きな支障が生じ、以下の損害を被りました。

損害内容:

1. 損害A:金額XXXX円

2. 損害B:金額XXXX円

添付資料として、契約書の写し及び損害の証拠資料を同封します。

以上

申立書を作成する際の注意点

申立書を提出する際には、いくつかの注意点があります。以下に、申立書を作成し提出する際の注意点をまとめます。

正確かつ簡潔な記述

申立書は、簡潔で明確に記述することが重要です。冗長な表現や曖昧な表現を避け、問題や要求を具体的かつ端的に説明しましょう。

大前提として、申立書には正確な情報を記載する必要があります。とくに、当事者の情報、請求の内容、請求の理由などは記入漏れや誤りのないよう十分に注意しましょう。

誤った情報を記載した場合、申し立てが却下されたり、不利な判決を受けたりする可能性があります。

適切な書式で提出

申立書の書式が適切であるかどうかを確認しましょう。提出先によっては、特定の書式やフォーマットを求められる場合がありますので、事前に確認しておくことが大切です。

裁判所や行政機関ごとに定められたフォーマットがある場合は、提出先の要件を確認し規定に沿った書式で作成することが求められます。

証拠の提示

申立書に添付する証拠資料は、できるだけ具体的で信頼性の高いものを用意しましょう。契約書、領収書、メールのやり取りなど、申し立ての内容に応じて必要な証拠書類は異なります。

証拠が不十分だと、申し立てが受け入れられない可能性が高くなります。

申立書の内容を裏付け証拠書類が不十分な場合、自己の主張を立証できないことがあるため注意しましょう。

申立書の郵送方法

申立書を郵送する方法は以下の通りです。重要な書類であることから、郵送で提出する場合には、確実に受理される方法がおすすめです。

普通郵便

申立書は普通郵便で送付することが可能です。ただし、万が一紛失等があった場合は保証されない点に注意が必要です。

簡易書留・レターパック

簡易書留やレターパックは、通常の書留郵便よりも手軽な方法で追跡番号を利用して配達状況を確認できます。

特定記録郵便

特定記録郵便は、郵便物が相手方に確実に届いたことを証明する方法です。受取人が受け取った証明書を発行してもらえます。とくに重要な申立書は特定記録郵便を用いることで、送付内容と送達日を証拠として残すことが可能です。

申立書の保管期間、保管方法

申立書の原本は、重要書類として一定期間適切に保管する必要があります。保管期間と保管方法について以下でみていきましょう。

保管が必要な期間

申立書は、関連法令に基づき定められた期間にわたり適切な保管が求められ、最低でも5年間は補完すべきといえます。ただし、訴訟に関連する重要文書は永久保存が求められるケースもあります。企業によっては自社の文書保管規程によって保管期間が定められているケースもありますので、企業の方針に従って保管期間を遵守しましょう。

適切な保管方法

申立書の原本は重要な証拠となるため厳重に保管する必要があります。紙の原本にくわえて電子化したデータの両方を保管しておくとより安心です。

申立書の適切な保管方法
  • 紙の原本:耐火金庫や施錠できるキャビネットで厳重に管理し、紛失や改ざんを防ぐ。もしもに備えて原本コピーした複製版を保管しておく。
  • 電子データ:紙の原本をスキャンしたデータを暗号化し、パスワードをかけてクラウドや社内サーバーに保存。バックアップも定期的に取得する。

なお、保管期間が経過し不要になった申立書は、単に破棄するのではなく、情報漏えいを防ぐためシュレッダー処理やデータ消去ソフトを使用して適切に廃棄しましょう。

申立書はもしもの時に自社の権利を守る重要文書

本記事では、申立書の意義や種類、提出ケース、書き方、注意点、提出方法、保管方法について幅広く解説しました。

申立書は、自己の権利や利益を主張するために非常に重要な役割を果たします。裁判所や行政機関に対し、適切な申立書を作成・提出することで、法的な紛争や手続きを有利に進められるためです。

一方で、申立書の作成や提出には専門的な知識が必要です。もし不備があれば申し立てが却下されたり、不利な状況に陥ったりするおそれもあります。万が一のトラブルを防ぐためにも、申立書に対する理解を深め、専門家のアドバイスを活用しながら法的対応を迅速に進めることが重要です。


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