- 更新日 : 2025年12月2日
産業廃棄物委託契約書は電子化できる?電子契約の注意点や電子マニフェストも解説
産業廃棄物委託契約書は、産業廃棄物の排出事業者が産業廃棄物の運搬や処分などを委託する際に作成する書類です。契約の締結では契約書の作成が義務付けられていますが、電子契約にすることもできます。
本記事では、産業廃棄物委託契約書の電子化に関連する法律や、電子契約を利用するメリット、電子化の際の注意点などを解説します。
目次
産業廃棄物委託契約書は電子化できる
産業廃棄物委託契約書とは、産業廃棄物の運搬や処分などを委託する際に締結する契約で作成する書類です。
産業廃棄物の処理については廃棄物処理法という法律が適用され、原則として事業者は発生した産業廃棄物を自ら処理しなければなりません。
しかし、実際には、産業廃棄物の処理について産廃処理の許可を受けた業者に委託するケースがほとんどです。
産業廃棄物処理を委託する際は、産業廃棄物委託契約書を作成し、業者と契約を締結する必要があります。契約は紙の契約書だけでなく、電子契約で締結することも可能です。電子契約とは、電子データにより、オンライン上で締結する契約のことです。電子契約を利用することで、コスト削減や業務効率化などのメリットがあります。
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産業廃棄物委託契約書の電子化に関連する法律
産業廃棄物委託契約書の電子契約については、次の3つの法令が関係しています。
それぞれの内容や、電子化の根拠についてみていきましょう。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」とは、廃棄物処理法の正式名称です。産業廃棄物の処理事業者に処理を委託する場合には、各事業者と産業廃棄物処理委託契約を締結し、契約書を作成して、運搬や処理方法、廃棄物の内容・量などを明記することが必要とされています。
一般的に、契約には必ずしも契約書の作成は必要なく、口頭の約束でも契約は成立します。廃棄物処理法においても、家庭廃棄物や可燃ごみなどの一般廃棄物については契約書の作成は義務付けられていません。しかし、産業廃棄物については、処理委託契約書の作成が義務であり、必ず作成が必要です。
参考:e-GOV法令検索 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令
e-文書法
e-文書法とは、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の総称です。
各種法令で書面による保存が義務付けられている文書について、電子データによる保存を認める法律のことです。
この法律により、廃棄物処理法に定められている産業廃棄物委託契約書についても、紙による契約に代えて、電子契約が可能となっています。
参考:e-GOV法令検索 民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
電子帳簿保存法
電子帳簿保存法とは、正式名称が「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」であり、各税法で保存が義務付けられている帳簿・書類を電子データで保存するためのルール等を定めた法律です。
主な保存区分は、「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3つに分けられています。このうち、電子契約によるデータの保存である「電子取引データ保存」は完全義務化されており、紙での保存ができません。
産業廃棄物委託契約書を電子契約で行った場合、電子帳簿保存法の適用を受け、必ず電子データでの保存が必要です。保存の際は、次の4つの要件を満たさなければなりません。
- システム概要に関するマニュアル等の備え付け
- データが確認できるディスプレイ・アプリ等の備え付け
- 検索機能の確保
- データの真実性を担保する措置
「検索機能の確保」とは、取引年月日や取引金額などで検索できる状態にしておくことです。「データの真実性を担保する措置」とは、タイムスタンプの付与により、保存した電子データの真実性を確保できるようにすることを指します。
参考:e-GOV法令検索 電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律
産業廃棄物委託契約書に電子契約を利用するメリット
産業廃棄物委託契約書に電子契約を導入することで、紙の契約よりも迅速な契約締結ができ、コスト削減にもつながります。
電子契約を利用するメリットをみていきましょう。
紙の契約書よりもはやく契約締結できる
電子契約は、紙の契約よりもスピーディに契約締結ができます。
紙の契約書で契約を締結する場合、印刷・製本、押印、封入・発送という一連の作業が必要です。さらに、書類を受け取った委託先は内容を確認し、押印して返送するという作業があり、契約締結が完了するまでに時間がかかります。
電子契約であれば、これらの手続きがすべてオンライン上で完結し、即日の締結も可能です。
収入印紙や郵送にかかるコストを削減できる
電子契約は、コスト削減ができることもメリットです。
紙の契約書は、契約金額に応じて印紙税が課せられ、収入印紙の貼付が必要です。一方、電子契約の場合は印紙税法の「課税文書の作成」にあたらず、印紙税の納税義務が発生しません。そのため、収入印紙が不要になり、コストを削減できます。
また、契約手続きはインターネット上で進めていくため、印刷や郵送の費用もかかりません。
産業廃棄物委託契約書に電子契約を利用するときの注意点
産業廃棄物委託契約書を電子契約で締結する際は、記載事項や添付書類など、注意したい点があります。
ここでは、電子契約を利用する際の注意点を解説します。
産業廃棄物委託契約書の記載事項
産業廃棄物処理委託契約書には、「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」の2種類があり、これらの契約書には、委託する産業廃棄物の種類および数量、契約の有効期間など、いずれにも必ず記載しなければならない法定記載事項があります。
また、共通の記載事項に加え、「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」それぞれに必要な記載事項もあり、電子契約の場合でも記載が必要な点は変わりありません。
これらの記載項目は廃棄物処理法施行令に記載されているため、事前の確認が必要です。
産業廃棄物委託契約書の電子マニフェスト
産業廃棄物委託契約では、委託契約書のほか、廃棄物の処理が適正に実施されたかどうか確認するために産業廃棄物管理票(マニフェスト)の作成が必要です。
マニフェストは産業廃棄物の排出事業者が作成・交付し、廃棄物の種類や数量、運搬業者や処分業者などの情報が記載され、収集運搬、中間処理、最終処分の段階ごとに排出事業者の元へ返送されます。
電子契約では、紙のマニフェストに代わり、電子マニフェストを利用します。紙で作成していたマニフェスト情報を電子化し、情報処理センターを介したネットワーク上でやり取りするという仕組みです。
廃棄物処理法により、「公益財団法人日本廃棄物処理振興センター」が情報処理センターに指定されています。電子マニフェストを利用するには、自社と委託先の事業者が日本廃棄物処理振興センターの運営する電子マニフェストシステム(JWNET)に加入していなければなりません。
産業廃棄物委託契約書の添付書類
産業廃棄物委託契約書には、添付が必要な書類があります。収集運搬委託契約書・処分委託契約書のどちらにも添付が必要なのは、次の書類です。
- 再生利用に係わる環境大臣の認定証の写し
- 広域的処理に係わる環境大臣の認定証の写し
- 無害化処理に係わる環境大臣の認定証の写し
これに加え、「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」それぞれに、許可証の写しなどの添付が必要な書類があります。
産業廃棄物委託契約書の保管期間
処理を委託する産業廃棄物排出事業者は、委託契約が終了した日から5年間、契約書とマニフェストを保管する義務があります。
契約書やマニフェストを5年以内に破棄・紛失した場合、保管義務違反として罰則が科せられる可能性があるため、保管には十分に注意してください。
産業廃棄物委託契約書の電子契約に利用できるひな形
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産業廃棄物委託契約における電子化と関連データ
マネーフォワード クラウドが2025年5月に実施した調査(電子契約業務経験者1,563名対象)によると、電子契約システムで便益を感じられるポイントとして「費用削減」(35.6%)と「工数削減」(34.4%)が最も多く挙げられました。費用削減の内訳では「印紙税の不要化」が30.6%、「郵送関連費用の削減」が20.0%、「印刷・消耗品費の削減」が19.8%と続いています。
契約締結のスピード向上とコスト削減を実現
工数削減では「契約締結までのリードタイム短縮」が19.9%で重視されており、本記事で解説した産業廃棄物委託契約書の電子化により得られる効果と一致しています。電子契約では印刷・製本・郵送といった作業が不要になるため、即日締結も可能になります。また、紙の契約書では必要だった収入印紙や郵送費用も削減でき、複数の委託先と契約を結ぶ企業にとって大きなコスト削減効果が期待できます。
産業廃棄物委託契約書の作成は電子契約で効率化しよう
産業廃棄物委託契約書は契約書の作成が義務付けられていますが、電子契約で締結することも可能です。電子化により、収入印紙代などのコスト削減や、契約期間の短縮、業務の効率化などのメリットがあります。
電子契約を利用する際は、法定記載事項や電子マニフェスト、添付が必要な書類についても事前に確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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