- 更新日 : 2025年9月9日
工事請負契約書に印紙は必要?金額や割印、節税ポイントを解説
工事請負契約書には、場合によって印紙税が必要です。契約書の金額や内容によって印紙の必要性が異なり、正しい理解が重要です。
本記事では、工事請負契約書に印紙が必要か不要かを判断する基準や、割印のやり方、印紙税を節税する方法などを詳しく解説します。
目次
工事請負契約書に印紙は必要?不要?
工事請負契約書には、原則として印紙が必要です。印紙税法において工事請負契約書が課税文書として定められているため、印紙の貼付義務があります。
印紙税は、契約書や領収書などの文書の作成に対して課される税金です。工事請負契約書は、印紙税法別表第一の「第2号文書」に該当し、契約金額に応じて印紙税が課されます。
印紙が不要となるケース
ただし、以下に当てはまる場合に限り、工事請負契約書に印紙の貼付は必要ありません。
【印紙が不要になるケース】
- 契約金額が1万円以下の場合
- 電子契約で締結する場合
- 国や地方公共団体が作成する文書
特に、電子契約の場合は印紙税が課されないため、近年注目を集めています。この点については、後ほど詳しく解説します。
工事請負契約書に印紙が必要な契約書の詳細は、こちらの記事をご覧ください。
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工事請負契約書に貼る印紙の金額
印紙税法では、契約書に記載された金額に基づいて印紙税が定められています。そのため、工事請負契約書に貼る収入印紙の金額は、契約金額に応じて変動します。以下は、工事請負契約書における印紙税の対照表です。
【工事請負契約書の契約金額ごとの印紙税額】
| 契約書に記載された契約金額 | 印紙税額(契約書1通または1冊につき) |
|---|---|
| 契約書に金額の記載がないもの | 200円 |
| 1万円未満 | 非課税 |
| 1万円以上~100万円以下 | 200円 |
| 100万円超~200万円以下 | 400円 |
| 200万円超~300万円以下 | 1,000円 |
| 300万円超~500万円以下 | 2,000円 |
| 500万円超~1,000万円以下 | 1万円 |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 6万円 |
| 1億円超~5億円以下 | 10万円 |
| 5億円超~10億円以下 | 20万円 |
| 10億円超~50億円以下 | 40万円 |
| 50億円超~ | 60万円 |
軽減措置について
建設工事の請負に関する契約書については、印紙税の軽減措置が適用されています。この軽減措置は「租税特別措置法」に基づいており、当初は令和4年4月1日~令和6年3月31日までが期間とされていましたが、令和6年2024年4月の改正において令和9年3月31日まで延長されました。
対象となるのは工事請負契約書の契約金額が100万円を超えるもので、この期間内に作成される文書であれば、「変更契約書」や「補充契約書」にも適用されます。
建設工事の請負に関する契約書の軽減措置適用後の印紙税額は、以下のとおりです。
【工事請負契約書の軽減後の税額】
| 契約書に記載された契約金額 | 本則税率 | 軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 100万円超~200万円以下 | 400円 | 200円(50%軽減) |
| 200万円超~300万円以下 | 1,000円 | 500円(50%軽減) |
| 300万円超~500万円以下 | 2,000円 | 1,000円(50%軽減) |
| 500万円超~1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円(50%軽減) |
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 2万円 | 1万円(50%軽減) |
| 5,000万円超~1億円以下 | 6万円 | 3万円(50%軽減) |
| 1億円超~5億円以下 | 10万円 | 6万円(40%軽減) |
| 5億円超~10億円以下 | 20万円 | 16万円(20%軽減) |
| 10億円超~50億円以下 | 40万円 | 32万円(20%軽減) |
| 50億円超~ | 60万円 | 48万円(20%軽減) |
なお、契約金額が100万円以下の工事請負契約書は軽減措置の対象外となり、通常の印紙税額(200円)が適用されます。
参考:e-Gov 法令検索 印紙税法
参考:e-Gov 法令検索 租税特別措置法
参考:国税庁 印紙税額の一覧表(第1号文書から第20号文書まで)
参考:国税庁 「不動産譲渡契約書」及び「建設工事請負契約書」の印紙税の軽減措置の延長について
工事請負契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
工事請負契約書に貼る印紙税の負担については、印紙税法第3条に基づき、課税文書の作成者が納税義務を負います。一方で、印紙税法第3条第2項によればひとつの課税文書を複数の者が共同して作成した場合、連帯して印紙税を納める義務がある、という定めもあります。
実務上は契約書を2通作成し、当事者がそれぞれ1通ずつ保管するのが一般的であるため、慣習的にはお互いがそれぞれの保管分の印紙税を負担することがほとんどといえるでしょう。
なお、印紙代をどのように振り分けるかにおいては、法による定めはありません。そのため印紙税の負担については、双方が納得できる形で決定することが大切です。
参考:e-Gov 法令検索 印紙税法
参考:国税庁 質疑応答 課税文書の作成時期及び作成者
工事請負契約書の印紙の貼り方
印紙を貼り付ける場所について法的な定めはありませんが、一般的には1枚目の左上に貼付します。署名欄に貼付するケースもあります。

印紙を貼付した際には、消印が必要です。消印は印章か署名で行い、いずれも場合も書類と印紙の彩紋(模様)の上にかかるようにします。

印紙を貼り付けていたとしても、消印がないものは無効であり印紙税を納付したことにならないため注意しましょう。
工事請負契約書に印紙がないとどうなる?
工事請負契約書に印紙がない場合、ペナルティが発生する可能性があるため注意が必要です。ここでは、工事請負契約書に印紙がないとどうなるのかを解説します。
契約内容は無効にならない
工事請負契約書に印紙がない場合でも、契約自体の効力には影響しません。つまり、印紙の有無にかかわらず、契約内容は有効です。
これは、印紙税の納税が契約の成立要件ではないためです。印紙を貼付する義務がある契約書に印紙を貼っていない、すなわち納税の義務を怠っていることについては違法行為に該当しますが、その効力は契約自体には及びません。
消印をし忘れた場合も同様です。
過怠税が徴収される
印紙が必要な契約書に印紙を貼らなかった場合、契約が無効になることはないものの印紙税法違反になるため、過怠税が徴収されます。過怠税は、本来納付すべき印紙税額にその税額の2倍の金額、つまり元の税額の3倍相当です。消印忘れの場合は、印紙税額に相当する過怠税が徴収されます。
ただし、納税忘れを自ら税務署に申告した場合は、本来の税額プラス税額の10%に過怠税が軽減されます。
契約書に印紙が貼られていない場合について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
工事請負契約書の割印のやり方
工事請負契約書に割印を押す目的は、契約書が複数の文書になった際にその文書が同一の内容であることを担保することです。割印に使用する印章についての定めは特になく、その契約書に捺印した印章をそのまま使用するケースが多い傾向があります。
縦長の割印専用の印章も販売されていますが、必ずそれを使用しなければならない、というわけではありません。ただ、3枚以上の文書に割印をする場合は縦長の割印が使いやすいでしょう。
割印専用の印章の一般的なサイズは、以下の3種類です。書体は篆書体、古印体、印相体が多く用いられています。
【割印専用印章の一般的なサイズ】
- 12.0mm×30.0mm
- 13.5mm×33.0mm
- 15.0mm×36.0mm
割印として認められる方法
割印は、押し方についての法的な定めはありません。文書全体に押されていれば効力が認められます。

工事請負契約書に割印を押す際には、文書を上下に少しずらし、すべての文書に印影がかかるように押印しましょう。割印は契約の当事者双方が行うのが一般的ではありますが、片方の割印のみでも割印としての効力は有効です。
割印として認められない方法
割印は実印である必要はなく認印で問題ありませんが、一般的に契約書にはインク内蔵型の印章の使用は不可とされていることが多く、その場合は認められません。また、すべて文書に印影が確認できない場合はその契約書の同一性が担保されないため、割印としては無効です。
なお、割印が正しい方法で押されておらず有効性が認められない場合であっても、契約書の法的効力に影響はありません。割印がなくても、契約そのものは成立します。
工事請負契約書の印紙税を節税するポイント
契約金額が大きくなると、印紙税の負担も増します。少しでも節税できるよう、ここでは工事請負契約書の印紙税を節税するためのポイントを紹介します。
契約金額を税抜きで表示する
工事請負契約書の契約金額を税抜きで表示することで、印紙税を節約できる場合があります。たとえば、契約金額が1,100万円(税込)の場合、1,000万超えの印紙税が適用され1万円の印紙税(軽減措置)が必要です。
しかし、消費税額を明記し、契約金額を税抜きの1,000万円と表示すれば、印紙税は1,000万円以下の5,000円で済み、印紙税を抑えられます。
設計請負契約を工事請負契約書に盛り込む
設計契約と工事契約を個別に締結した場合、それぞれに印紙税が発生するだけでなく、設計請負契約は印紙税の軽減措置が適用されません。しかし、設計契約を工事契約書に含めることで、1つの契約書に統合でき、契約全体が軽減措置の対象となります。
例えば、設計費が3,000万円、工事費が3億円の契約を別々に締結すると、設計契約に2万円、工事契約に6万円の印紙税がかかり、合計で8万円になります。
一方で、設計契約を工事契約に組み込み、3億3,000万円の1つの契約とすれば、印紙税は6万円に抑えられます。
このように契約金額によっては印紙税の節約が可能なため、複数の課税文書がある場合、まとめられる契約がないか確認することが大切です。
工事請負契約書の無料ひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウド契約では、無料でご利用いただける工事請負契約書のテンプレートをご用意しています。ダウンロードして必要事項を記載するだけですぐにお使いいただけますので、ぜひご利用ください。
工事請負契約書の詳しい書き方やポイント、工事請負契約締結時の注意点などについては、こちらの記事で紹介しています。
電子契約なら工事請負契約書の印紙は不要に
電子契約で工事請負契約を締結する場合、契約金額にかかわらず印紙税は不要です。これは、印紙税法が課税対象を「文書」としているからであり、文書に電子データは含まれないためです。
さらに、印紙税法における課税文書の要件のひとつである「作成」は、紙の書面に記載され、交付されることを指します。しかし、電子契約では紙による交付がないため「作成」に該当しないのです。
電子契約について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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