- 更新日 : 2024年7月30日
海外の事業者との契約で印鑑は不要?ハンコの代わりや契約時の注意点を解説
一部地域を除いて、海外でのビジネスにおいて印鑑は使用されることはほとんどありません。契約の際は、印鑑の代わりに署名を用いることが多いです。
それでは国内の事業者は、海外の事業者とどのようにして契約を成立させればよいのでしょうか。
また、外国人が日本国内で印鑑を作ることについても解説します。
目次
海外では印鑑は使われない?
海外での契約において、印鑑はほとんど使われていないと言われています。特に欧米では、契約を締結する際には自筆のサイン(署名)が一般的です。日本では印鑑が「自分の意思を表す担保」として使用されるのに対し、海外の多くの国では同様の目的でサインが使用されるからです。
海外で印鑑が使われない理由の一つとして、日本のように印鑑登録制度があるのは珍しいことが挙げられます。印鑑を使う文化は主にアジア地域に限定されており、特に日本、中国、台湾、韓国などが代表的です。これらの国でも印鑑の廃止に向けた動きが見受けられます。
グローバル視点では、印鑑を契約に用いることは制度的にも文化的にも珍しく、海外との取引において印鑑を使用する機会はほとんどないと言えます。
海外で印鑑の代わりに使用されるもの
自筆のサインとサイン証明
海外では、特に欧米を中心に、自筆のサイン(手書きの署名)を使用して契約を締結するのが一般的です。例えば山田太郎さんなら「Taro Yamada」というように、姓名をローマ字で記します。ブロック体よりも筆記体で書いたほうが偽造しにくいため、筆記体でサインをすることが推奨されます。
サインは、その人の意思を示すものとして法的な効力があります。日本の印鑑証明書に相当するものとして、多くの国では「サイン証明(notarized signature)」が存在します。サイン証明を取得するためには、公証人の前で署名を行い、その確認を受けます。
例えば、アメリカやカナダでは、公証人が署名を認証した文書は、法的効力が非常に強く認められます。
電子署名(デジタルシグネチャー)
近年、世界的に電子契約が広がる中で電子署名が普及しています。電子署名では、インターネットを介してパソコンやスマートフォン上で電子データとしての文書に署名できるので、海外との取引にも便利です。
ただし、電子署名に法的効力を付与するための条件は各国の法律によって異なります。したがって、海外との取引で電子署名を利用する際には、相手の国の法律を則った方式で行う必要があるでしょう。
電子印鑑
電子印鑑とは、電子文書に押印できるようにデータ化された印鑑のことです。日本国内では、電子署名法に基づく電子証明書やタイムスタンプを付与することにより、電子印鑑にも法的効力を持たせることができます。
しかし、多くの国ではそもそも印鑑を使用する慣習がないことから、海外との取引で電子印鑑を使用するケースは少ないです。それでも、相手が日本の法律に従って契約に応じてくれる場合には、電子印鑑を使用してもらうことで電子契約のメリットを受けることが可能となります。
日本の事業者が印鑑を使わずに海外の事業者と契約する方法
日本の事業者が海外の事業者と契約を締結する際は、主に下記の3つの方法が用いられます。
- 電子署名
- 電子サイン
- 自筆のサイン
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
電子署名を利用する
電子署名は、多くの国で法的効力が認められているため、海外の事業者と契約する際には電子署名の利用が便利です。電子証明書とタイムスタンプを付与することで本人性や非改ざん性が保証されるので、特に重要な契約を締結する際には電子署名の利用をおすすめします。
電子署名の主なサービスとしては、以下のものがあります。
- マネーフォワード クラウド契約:契約業務をトータルでサポートするサービス。英語での署名依頼も可能。
- DocuSign:世界中で利用されており、信頼性が高い。
- Adobe Sign:多機能なソフトウェアと組み合わせて使える。
これらのサービスでは、電子メールを通じて署名のリクエストを送り、署名者がオンラインで署名を完了することができます。
電子サインを使用する
電子サインとは、デジタル形式で行われる署名のうち、電子署名法で定められた要件を満たした「電子署名」を除いたものの総称です。手書きで紙に署名して、それをスキャンして電子ファイルに変換し、電磁的な契約書(PDFなど)に添付する方法も電子サインに含まれます。
電子署名が実印と同じ法的効力を持つのに対して、それ以外の電子サインは認印と同等の法的効力しか持たないことに注意が必要です。
電子サインは、電子署名が利用できない場合や、署名者がデジタル技術に慣れていない場合などに使用することが考えられます。
ただし、電子署名に比べると不正使用や偽造が行われやすいため、セキュリティ面でのリスクがある方法でもあります。
自筆のサインを利用した契約
手書きのサインも印鑑の代わりとして有効であり、海外では一般的に利用されています。契約書の最後のページに署名欄を設け、署名者の氏名と日付を記載するのが一般的です。
サインを利用する場合のポイント
- 署名の筆跡が確認できるようにする。
- 偽造防止のために、他の証拠書類や証人の署名を添える。
また、必要に応じて公証人による認証を受けることで、署名の有効性を強化することができます。
日本の事業者が海外の事業者と契約する際の注意点
日本の事業者が海外の事業者と契約を締結する際は、下記のような点に注意が必要です。
- 言語の違いに注意する。
- 法律の違いに注意する。
- 電子署名の合法性を確認する。
- 文化の違いを理解する。
それぞれのポイントについて、具体的に何に注意すべきか見ていきましょう。
言語の違いに注意する
海外の人と契約する場合、言葉の違いに気をつける必要があります。契約書には専門用語や法律用語が多用されますが、これらの用語は国や文化によって意味が微妙に異なることも少なくありません。そのため、直訳しただけでは相手の意図するところを理解できず、双方の認識がズレたまま契約を締結してしまうリスクがあることに注意が必要です。翻訳する際は、その業界の実情や両国の法律を熟知した専門の翻訳者に依頼し、意味の誤解がないように注意しましょう。
法律の違いに注意する
契約の内容が適用される国の法律について理解しておくことも重要です。法律の内容は国によって異なる点が多いため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
例えば、アメリカと日本では契約解除の条件や手続きが大きく異なります。日本では一定の通知期間が必要とされることが多いのに対し、アメリカでは比較的容易に契約を解除することができます。このような法律の違いを把握し、双方が納得できる条件で契約を結ぶことが重要です。
電子署名の合法性を確認する
電子署名を使用する場合、その電子署名が双方の国で合法的に認められているかを確認する必要があります。電子署名を使用した契約が有効となるためには、両国の法律に則った適切な手続きを踏む必要があります。これには、DocuSignやAdobe Signなどの認証サービスを利用する方法も含まれます。各国の法律を調査し、電子署名の有効性がどのように定められているかを確認しましょう。
文化の違いを理解する
ビジネスマナーやコミュニケーションスタイルの違いを理解することも大切です。文化の違いを理解し、尊重することがスムーズな契約締結につながります。例えば、日本では長時間にわたる議論や慎重な検討が重視されるのに対し、アメリカでは迅速な意思決定が期待されることに注意しましょう。
また、挨拶や贈答品、会議の進行など、様々なビジネスマナーの違いにも注意が必要です。これらの違いを理解し、適切に対応することで信頼関係を築くことができます。
海外の事業者は日本で印鑑を作成できる?
海外の事業者も日本で印鑑を作成できます。また、在留カードがあれば個人として印鑑登録することも可能です。海外の事業者が印鑑登録を行う手順は、国内の事業者が行う登録と特に変わりはありません。
印鑑自体の作り方と、印鑑登録の方法について、それぞれ詳しく見てみましょう。
海外の事業者が印鑑を作る際のポイント
名前の表記
印鑑に彫る名前は、在留カードに記載されている名前であれば、ファーストネーム(名)、ラストネーム(姓)、またはフルネームのいずれでも構いません。アルファベットのほか、カタカナや漢字(音訳)での表記も可能です。
印鑑のサイズ
ほとんどの自治体が、8mm以上25mm以内の正方形に収まる印影(印鑑を捺した時の印)を登録できるとしています。一般的に実印としては13.5mm~18mmのサイズの印鑑が用いられることが多いので、この範囲内のものを選ぶとよいでしょう。
印鑑の材質
印鑑の材質に決まりはありませんが、長期的に使用する予定であれば耐久性が高い材料を選んだ方がよいでしょう。この観点から、実印の材料としてはチタン、黒水牛、牛角白などがおすすめです。
海外の事業者が日本で実印を登録する手順
海外の事業者が日本で実印登録する流れと手続き、必要書類について以下をご参考ください。
- 印鑑の作成
自身の名前を彫った印鑑を専門店で作成することをおすすめします。上記の解説を参考にして、印鑑のサイズや材質を選びましょう。 - 印鑑登録
作成した実印を印鑑登録する必要があります。印鑑登録は自治体(市区町村)で行います。在留カードや旅券(パスポート)、実印などを持参し、申請書に記入して提出します。 - 印鑑証明書の取得
実印の登録が完了したら、印鑑証明書を取得します。印鑑証明書は実印の登録内容を証明する公的な書類で、重要な契約の締結などで必要になることがあります。 - 実印の使用
最後に、実印を使って契約書に押印します。実印を使う際は、印鑑証明書の添付を要する場合が多いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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