- 更新日 : 2024年7月4日
押印と捺印の違いとは?正しい押印方法や契約書の法的効力を解説
押印とは、契約書や請求書などの書類に印鑑を押すことを意味します。捺印とは細かな意味が異なるので、業務を正確に行うためにも、意味をきちんと理解しておきましょう。
本記事では、押印の意味から正確な押印方法、さらには契約書における押印の法的効力までを詳しく解説します。
目次
押印とは
押印とは、文書や書類に対して実際に印鑑を押すことを指します。ビジネスにおいては契約書や請求書など、正式な書類に対する本人確認や意思の確認、承認などを示すために用いられます。
印鑑を押す行為は、手書きの署名と同様に、その文書に対する拘束力や効力を持たせることに寄与します。日本では、特に契約書や不動産関連の重要な書類において、この押印が法的な効力を持つことが一般的です。
しかし、デジタル技術の進化に伴い、電子契約などにおける押印の代替手段も広がりを見せています。それでも、伝統的な押印の慣習は多くのビジネスシーンで根強く残っており、正式な契約締結の場面では今でも印鑑による押印が求められるケースが少なくありません。
押印と捺印の違い
「押印」と「捺印」は、どちらも契約書や公的な書類に自分の意思を示すために使われる手段ですが、その使用方法と意味合いには厳密に言うと大きな違いがあります。
押印と捺印の主な違いは以下の通りです。
押印 | 捺印 | |
---|---|---|
正式名称 | 記名押印 | 署名捺印 |
氏名の記載方法 | 本人の自署以外の方法 | 本人による自署 |
法的効力 | 弱い | 強い |
使用される場面 | 比較的非公式な場面 | 契約書や公的な書類など、正式な場面 |
押印
押印は、正式には「記名押印」といい、それが省略されて押印になったとされています。
記名とは、自筆での署名以外で指名を記載することで、活字印刷されたり、ゴム印で押されたりした名前など、すでに記名のある箇所に印鑑を押すことを意味します。
捺印
捺印は、正式には「署名捺印」といい、それが省略されて捺印と呼ばれるようになったとされています。
署名とは、本人が手書きで記した自筆サインのことです。捺印は、自筆の署名に加えて、印鑑を押すことを指します。
活字印刷やゴム印などあらかじめ用意された記名と違い、自筆署名の筆跡も本人確認の証拠能力があるため、押印よりも捺印のほうが法的効力は強いとされています。
ただし、捺印を単に印鑑を押す行為を意味して使用されるケースもあり、記名押印でも契約書や公的文書としての効力があります。押印と捺印を厳密に区別して使われるケースは少ないかもしれませんが、基礎知識として覚えておくといいでしょう。
押印が必要なケース
押印は、日本における契約や公的書類の正式性を示すために広く用いられています。「押印」は、特に以下のようなケースで必要とされます。
契約書の作成: 契約書は、双方の合意を明確にするための重要な文書です。そのため、契約書には押印が必要とされます。例えば、雇用契約などでは、押印が必須となります。
- 公的な書類: 公的な書類、例えば運転免許証の更新申請やパスポートの申請などでは、本人確認の一環として押印が求められます。
- 法人の決裁: 法人では、重要な決定をする際に、その決定が法人を代表する者によって行われたことを証明するために押印が用いられます。
- 証明書の発行: 住民票や戸籍謄本などの公的な証明書を発行する際には、申請者の押印が求められます。これは、申請者本人が申請していることを確認するためです。
- 領収書の発行: 商品やサービスの購入時に、購入者が領収書を要求した場合、販売者は領収書に押印することが一般的です。これは、販売者が領収書を発行したことを証明するためです。
- 会社設立: 会社を設立する際には、設立届けに代表者の押印が必要となります。これは、代表者が会社設立を申請していることを証明するためです。
- 遺言書の作成: 遺言書を作成する際には、遺言者本人の押印が必要となります。これは、遺言者本人が遺言書を作成したことを証明するためです。
- 訴訟の提起: 訴訟を提起する際には、訴状に原告の押印が必要となります。これは、原告本人が訴訟を提起したことを証明するためです。
ただし、これらの文書においても、最近では電子化が進み、電子契約やデジタル署名が認められるケースも増えています。たとえば、「電子署名法」に基づき、電子契約が法的にも認められていることがその一例です。
正しい押印の方法
契約書や重要な文書の押印では、正確かつはっきりとした印影が求められます。適切な押印方法に従うことで、文書の信憑性を保つことができ、後々のトラブルを避けることが可能になります。
印鑑の選択
まず、使用する印鑑を選びます。実印であれば、登録している印鑑を使用し、認印の場合でも、はっきりとした印影を残せるものを選ぶべきです。印鑑はなるべく新しく、傷が少ないものが好ましいです。
印鑑の清掃
押印前には、印鑑の表面を清掃しておきます。紙や布で優しくふき取ることにより、印面の汚れやホコリを取り除きます。これにより、クリアな印影を残すことができます。
紙の準備
文書の押印部分が平らな硬い表面に置かれていることを確認します。不安定な場所で押印すると、不鮮明な印影ができる原因となります。
印鑑の押印
印鑑をしっかりと持ち、印を押す箇所に垂直に押し付けます。力の加減は均等にし、左右にずれないように注意します。押印後は、印鑑をゆっくりと持ち上げて、ぼやけないようにします。
印鑑の後処理
押印後は、印鑑の残りの墨を紙や布で優しく拭き取ります。これにより、次回使用時にも清潔な状態で押印ができるようにします。
押印の確認
印影がはっきりとしているか、文書にしっかりと印がついているかを確認します。不鮮明な場合は、再度同じ手順で押印を行います。
以上のステップを踏むことで、文書に対して正しい押印の方法を実施することができます。適切な押印は、文書の法的効力を確実なものとし、信頼性の高い文書管理に貢献します。
押印に法的効力はある?
日本の法律では、文書に署名する行為自体がその文書の内容に同意する意思表示と見なされます。しかし、押印または捺印についても同様に重要な認識が必要です。契約書や公的文書においては、署名と合わせて捺印が求められる場合が多く、この捺印はその文書の正当性や真正性を証明する効力を持ちます。印鑑を押す行為自体が署名と同様、意思表示の証とされるため、署名のない押印だけでも法的効力はあるとされています。
具体的に、押印が必要とされる主な理由としては、文書が本人によるものであることを証明するため、すなわち「認証」の機能を果たすことにあります。また、日本国内では実印を使用して登録された印鑑証明書を添付することで、さらにその法的効力を強化することができます。
電子文書に関しても、電子署名法に基づく電子署名や認証サービスを利用することで、紙の文書と同等の法的効力を持たせることが可能です。この点、紙の文書と電子文書との間で法的効力に違いはなく、適切な手続きを踏めばどちらも重要な法的文書として扱われることになります。
さらに、契約書に押印が必要かどうかは、その契約の性質や当事者間の合意によって異なります。重要な契約では、両当事者の意思確認のために押印を要求することが一般的ですが、それに法的な義務があるわけではありません。ただし、不動産の売買契約書のように法律により印鑑の使用が定められているケースもありますので、契約書に押印する際は、その契約の内容や適用法規をよく理解することが重要です。
電子契約の場合は押印しなくても良い?
結論から言うと、電子契約においては原則として押印は不要です。これは、電子契約が法的に認められた形式であり、電子文書の形で契約が締結されるため、従来の紙の契約書に押印が必要だった理由が当てはまらないからです。
電子契約とは
電子契約とは、インターネットを利用して電子的に契約書を作成・交換し、契約を締結する方法を指します。このプロセス全体がデジタル化されており、物理的な書類や印鑑は一切使用しないケースがほとんどです。
電子契約の法的根拠
電子契約の法的有効性は、日本においては「電子署名法」と「民法」に基づいています。電子署名法は、電子文書による契約の有効性を保証し、電子署名が紙と印鑑を使用した契約と同等の法的効力を有することを明示しています。
よって、電子署名がされた電子契約は、法的に認められた形となります。
押印が不要とされる理由
電子契約では、契約当事者の確認は電子署名によって行われます。これは従来の印鑑による押印と同様に、契約当事者の意思表示の証明として機能します。電子署名によって、文書の改ざんがなされたかどうかも追跡できるため、セキュリティ面でも高い信頼性があります。
例外的なケース
しかし、一部の契約においては、法律で印紙を貼ることや押印を必要とする場合があります。例えば、不動産の売買契約など、特定の種類の契約に対しては、引き続き物理的な契約書に押印が求められるケースが存在します。
これらの例外を除き、一般的な商取引などでは電子契約が広く利用されています。
実際の運用上の注意点
電子契約を利用する際は、使用しているプラットフォームやソフトウェアが日本の法律に対応しているか、十分に確認する必要があります。また、契約の内容や重要度に応じて、電子署名のセキュリティレベルを選択するなど、慎重な運用が求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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