- 作成日 : 2022年2月4日
電子認証局とは?電子証明書発行にかかる費用についても解説!
電子契約を導入する際は、「電子認証局」というものを理解しておくと良いでしょう。何かの機関のように見えますが、いったい何者なのでしょうか?
今回は、電子契約とは切っても切れない関係にある電子認証局について解説します。その種類や利用するための費用もまとめました。電子認証局に関連する電子証明書についても詳しく解説します。
目次
電子認証局とは
電子認証局は、電子署名における本人確認や電子証明書の発行などを行う機関です。電子署名は、電子契約書などの電子データを「いつ」「誰が」作成したのかを証明するためのものです。電子証明書は、電子署名が本人のものであることを証明します。書類の場合は署名や捺印をしますが、それらの電子版だと考えるとわかりやすいでしょう。
電子証明書とは
電子データに電子署名を付すためには「電子証明書」が必要です。電子署名は印鑑、電子証明書は印鑑登録証明書と考えるとわかりやすいでしょう。印鑑は市区町村役場で本人確認・登録を経て、印鑑登録証明書が発行されることでその印鑑が本物であることが証明され、「実印」としての効力が発生します。
電子データにおいても同様で、電子認証局が電子証明書を発行することにより、電子署名が効力を持ちます。電子証明書があれば、なりすましや改ざん等のトラブルを防ぐことができ、安全に電子データのやり取りを行うことができます。また、後にトラブルになった際の法的証拠にもなります。
電子証明書についてもっと詳しく知りたい方はこちらのページをご覧ください。
電子認証局の役割
前述のとおり、電子認証局の役割は電子証明書を発行することです。企業であれば、登記事項証明書や印鑑登録証明書を用いて実在を確認します。つまり、電子認証局が電子証明書の本人性と正確性を担保するわけです。
電子証明書を失効させることも、電子認証局の重要な役割です。電子証明書には「公開鍵記号基盤」と呼ばれる暗号技術が使われています。電子データを作成する人は、「秘密鍵」というものを用いて電子署名を行います。秘密鍵が漏洩すると、なりすましや改ざんが可能になります。その場合は電子認証局が電子証明書を無効にすることでトラブルを未然に防ぎ、被害を最小限に抑えます。
電子認証局は2種類ある
電子認証局には「パブリック認証局」と「プライベート認証局」があります。「電子証明書を発行する」「電子証明書を無効にする」という役割は共通していますが、形態が異なります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
パブリック認証局
パブリック認証局は、その名のとおり公に認められている認証局で、第三者の立場で電子証明書を発行する機関です。日本国内には、法務省が運営する認証局と民間企業が運営する認証局があります。
利用には料金はかかりますが、第三者的な立場で電子証明書を発行してくれるので、よりセキュリティ性・非改ざん性が高いというメリットがあります。社外の相手と電子データをやり取りする場合は、パブリック認証局が発行した電子証明を利用することをおすすめします。
Webブラウザ(Microsoft EdgeやGoogle chromeなど)で電子証明書が付加されているデータを閲覧する場合も、ほとんどのブラウザはパブリック認証局が発行する電子証明書に対応しているため、スムーズに閲覧できます。
プライベート認証局
プライベート認証局とは、その名のとおり個人や企業が独自に開設した認証局のことです。パブリック認証局とは異なり利用料金はかからず、設定の自由度が高いのがメリットです。社内でネットワークを構築する場合や社内だけでデータをやり取りしている場合は、通信の相手が明らかなので、自社でプライベート認証局を開設して電子証明書を発行することもあります。
認証局の構成
そもそも認証局とはどのような機関なのでしょうか。ここからは、認証局について詳しく見ていきます。
認証局は「登録局」「発行局」「検証局」に分けられます。それぞれの役割や特徴について見ていきましょう。
登録局
登録局(RA:Registration Authority)は電子証明書の発行申請を受け付ける機関で、市町村役場の印鑑登録受付窓口のようなところです。場合によっては、後述する発行局と一緒に扱われることもあります。
発行局
発行局(IA:Issuing Authority)は登録局で受け付けた情報をもとに本人確認を行い、電子証明書を発行する機関で、印鑑証明書を発行する市町村役場や出先機関の窓口のような役割を担っています。
検証局
電子承認局の役割は、電子証明書の正確性を担保することです。検証局(VA:Validation Authority)という機関がその役割を果たしており、登録局と発行局とは独立した存在です。電子証明書の失効リスト(CRL)を管理して、発行される電子証明書の有効性を確認・保証します。
ユーザーはCRLを閲覧することで、自分の電子証明書が有効であるかどうかを確認することができます。
上位認証局と下位認証局
電子認証局にはパブリック認証局とプライベート認証局があり、認証局は登録局と発行局、検証局で構成されていることを説明しました。
認証局は、さらに「上位認証局(ルート認証局)」と「下位認証局(中間認証局)」に分かれます。上位認証局は、下位認証局が発行した電子証明書の正確性を担保します。それぞれの役割について見ていきましょう。
ルート認証局
そもそも、ある認証局が信用できるとは限りません。電子証明書の正確性を検証するためには、それを発行した認証局自身の電子証明書を取得しなければならず、さらにその認証局の電子証明書を発行した認証局の証明書を取得する、という作業が必要です。
ルート認証局は認証局のトップに位置する認証局で、外部機関による審査や認証業運用規定の公開、運用実績、知名度など厳しい条件を満たすことで、自身の正当性を担保しています。後述の中間認証局の電子証明書を発行するのが上位認証局です。
中間認証局
ルート認証局以外の認証局は中間認証局と呼ばれ、ルート認証局の下位に位置します。絶対的に正しいルート認証局が中間認証局に対して電子証明書を発行することで、中間認証局が発行した電子証明書の正当性も担保されるわけです。
ルート認証局は地方自治体の上位に存在する政府、中間認証局は実際に印鑑証明書を発行する市区町村役場と考えるとわかりやすいでしょう。
認証局で電子証明書を発行する際にかかる費用
前述のとおり、プライベート認証局で電子証明書を発行する場合は費用がかかりませんが、パブリック認証局を利用する場合は有償です。費用は、電子証明書の発行形式によって異なります。「ファイルタイプ」の場合と「ICカードタイプ」の場合の費用相場を見てみましょう。
ファイルタイプの電子証明書の場合
ファイルタイプは電子証明書をファイルとしてダウンロードする、あるいはCD-ROMやフロッピーディスクに格納したものを受け取る形式です。法務省が発行しているものは年間4,300円。民間の場合は1~4万円が相場です。
ファイル形式の場合は費用を抑えられますが、複製が可能なため、なりすましや改ざん等のリスクは高いといえます。
ICカードタイプの電子証明書の場合
ICカードに入っている電子証明をリーダーで読み取る方式です。費用はファイルタイプとそれほど変わりませんが、ICカードタイプの電子証明書を利用する場合はICカードリーダーを購入する必要があり、別途1万円ほどのコストがかかります。
ICカードがないと利用できず、またICカード自体にコピーを防止する機能があるため、ファイル形式と比べるとトラブルが発生するリスクは低いといえます。
代表的な認証局で電子証明書を発行する際にかかる費用
2021年12月現在の日本国内の代表的な認証局における電子証明書の発行にかかる費用をまとめました。
電子認証登記所 (法務省) | 3ヵ月:1,300円 |
6ヵ月:2,300円 | |
9ヵ月:3,300円 | |
12ヵ月:4,300円 | |
15ヵ月:5,300円 | |
18ヵ月:6,300円 | |
21ヵ月:7,300円 | |
24ヵ月:8,300円 | |
27ヵ月:9,300円 | |
株式会社NTTネオメイト | 1年(+1ヵ月): 9,000円 |
2年(+1ヵ月):18,800円 | |
3年(+1ヵ月):29,000円 | |
4年(+1ヵ月):38,000円 | |
5年:46,000円 | |
株式会社帝国データバンク | 2年1ヵ月(760日):28,000円 |
3年1ヵ月(1,125日):33,000円 | |
4年1ヵ月(1,490日):42,000円 | |
4年10ヵ月(1,765日):48,000円 | |
日本電子認証(AOSignサービス) | 1年+30日:15,000円 |
2年+30日:28,000円 | |
3年+30日:39,000円 | |
4年+30日:50,000円 | |
5年: 60,000円 | |
ジャパンネット(DIACERT-PLUSサービス) | 1年:11.000円 |
2年:20,000円 | |
3年:30,000円 | |
4年10ヵ月:40,000円 | |
セコムトラストシステムズ (セコムパスポート for G-ID) | 2年:14,000円 |
3年:21,000円 | |
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社 | 1年:11,000円 |
2年:20,000円 | |
3年:30,000円 | |
4年10ヵ月:40,000円 | |
東北インフォメーション・システムズ株式会社 | 2年1ヵ月:23,000円 |
4年6ヵ月:44,000円 |
有効期間はおおむね3ヵ月~で、有効期間が長くなるほど費用は高くなります。安いものだと年間4,000円程度で発行してもらえますが、前述のとおり1~4万円ほどのコストを見ておいたほうが良いでしょう。
電子契約サービスなら認証局は不要
電子契約を締結する際は電子署名を付加する必要があり、そのためには電子証明書の発行を受けなければなりません。前述のとおり、電子認証局を利用して電子証明書を発行してもらうためには費用がかかります。慣れていないと、電子証明書の仕組みが複雑に感じられるかもしれません。
そこでおすすめしたいのは、電子契約サービスを活用することです。システム自体が電子証明書を受けており、高い信頼性があるため、ユーザーが電子証明書を取得する必要はありません。使い勝手が良く、簡単に電子契約を締結でき、契約書の管理もしやすくなっています。また、電子認証局を利用する際にかかるコストも抑えられます。
電子契約サービスによる電子署名でも、要件を満たせば電子署名法による法的効力が認められます。
電子契約の導入を検討している場合は、電子契約サービスを利用することをおすすめします。
電子認証局について理解できましたか?
電子認証局の話は少しややこしかったかもしれませんが、おさらいすると、電子契約を利用するためには電子認証局という機関が発行する電子証明書を用いて本人性や正確性、非改ざん性などを証明する必要があり、それには費用がかかります。一方、電子契約サービスを利用することで電子証明書の発行が不要となり、コストも抑えられ、要件を満たせば法的効力も認められます。
デジタル化の流れに伴い、今後電子契約がさらに普及することは間違いありません。専門的なことまで把握する必要はありませんが、今回ご紹介した内容については頭の片隅に入れておいておくことをおすすめします。
よくある質問
電子認証局って何?
本人確認を行い、電子証明書を発行する機関です。電子証明書はデータが「いつ」「誰が」作成したのかを証明する電子署名を付与する際に必要となります。 詳しくはこちらをご覧ください。
電子認証局の利用料金は?
おおむね、年間1~4万円程度です。ICカードタイプの場合は別途ICカードリーダーを購入する必要があります。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
賃貸借契約書を電子化する方法は?電子契約の流れや保管方法を解説
賃貸借契約書の電子化が進む中、企業の総務担当者にとって、契約手続きの効率化やコスト削減が大きな課題となっています。従来の紙ベースの契約は、契約書の郵送や保管、署名手続きなど、多くの手間がかかるため、電子契約への移行が求められています。 本記…
詳しくみる金融機関の電子契約サービスとは?対象の融資取引や手数料、利用までの流れを解説
金融機関の中には、電子契約サービスを提供している企業もあります。主な金融機関としては、三井住友銀行やみずほ銀行、横浜銀行などです。 本記事では、金融機関が提供する電子契約サービスについて解説します。あわせて、金融機関の電子契約サービスで対象…
詳しくみる独占交渉権に関する合意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
独占交渉権に関する合意書は買い手が売り手と独占的な交渉を行う際に締結する合意書です。この記事では独占交渉権に関する合意書とはどのような書類なのか、どのような内容を盛り込むべきなのかをご紹介します。テンプレートもご用意していますので、ぜひ参考…
詳しくみる電子契約の契約日はいつ?タイムスタンプによるバックデートも解説
電子契約の契約締結日は、原則として当事者全員の合意が得られてタイムスタンプが押された日付となります。しかし、契約書内に効力発生日が記載されていたり、合意形成した日付が明記されていたりする場合など、例外も存在します。 正当な理由があれば後から…
詳しくみる申込書は電子化できる?電子契約のメリットや保存手順・期間を解説
申込書を電子化するには、受領した紙の申込書をスキャンする方法と、最初から電子データで申込書を作成してもらう方法があります。いずれの場合でも、申込書データの保存にあたっては、電子帳簿保存法を遵守することが大切です。本記事では、申込書を電子化す…
詳しくみる電子消費者契約法の操作ミスの救済とは?取引事例をもとにわかりやすく解説
電子消費者契約法とは、パソコンなどの電子機器を使用した取引における、消費者側の操作ミスに対する救済を定めた法律です。 操作ミスによる誤発注などで、同法のルールが適用されて契約が取り消されることがありますので、ECサイトなどを運用している事業…
詳しくみる