• 作成日 : 2025年3月24日

有限責任事業組合契約書とは?ひな形や例文、書き方を解説

有限責任事業組合契約書は、組合を結成する際に締結する契約書です。複数人が共同で事業を行う際に、組合員の責任や出資方法を明確にします。本記事では、有限責任事業組合契約書の書き方のポイントや盛り込むべき条項・内容を、テンプレートを交えてご紹介します。

有限責任事業組合契約とは?

有限責任事業組合契約とは、有限責任事業組合契約に関する法律(通称「有限責任事業組合法」)に基づき、複数人の組合員が共同事業を行う際に締結する契約のことです。この契約を締結することで、各組合員の責任は自らの出資額までに限定され、リスクを抑えつつ柔軟に事業を展開できるようになります。

契約書に組合員の権利・義務や財産の帰属方法、契約の終了・変更手続きなどを明記することで、後々のトラブル防止につながります。また、有限責任事業組合の結成には登記が必要となり、存続期間が定められている点などのルールが存在するため、契約書の作成時には注意が必要です。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律|e‐Gov法令検索

有限責任事業組合とは?

有限責任事業組合(LLP)は、企業や個人事業主が共同で事業を営む際に、各組合員の責任を出資額に限定する仕組みを持つ組合形態です。一般的な株式会社や合同会社とは異なり、法人格を持たない一方で、パススルー課税の対象となるなど税制上のメリットが得られる場合もあります。

また、組合員全員が対等な立場で事業運営に参加できるため、スタートアップや共同研究開発など、複数人が共同で新規事業を行うシーンで結成されるケースが多いようです。

参考:有限責任事業組合(LLP)制度について|経済産業省

有限責任事業組合契約を交わすケース

有限責任事業組合契約は、IT企業とクリエイターが共同プロジェクトを行う場合や、複数の個人事業主が新サービスの開発・販売に協力する場合などに交わされます。組合員同士がリスクを限定しながら、資金やノウハウを出し合える点が大きなメリットです。また、研究機関が共同研究のために有限責任事業組合を設立するケースもあります。

一方、短期的な共同作業のみの場合、組織の結成が不要な場合は、業務委託契約など別の契約形態が選択されることもあります。

有限責任事業組合契約書のひな形・テンプレート

有限責任事業組合契約書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形はそのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、有限責任事業組合契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。適宜加筆修正して活用してください。

有限責任事業組合契約書に記載すべき内容

一方、短期的な共同作業のみの場合、組織の結成が不要な場合は、業務委託契約など別の契約形態が選択されることもあります。

有限責任事業組合契約書に記載すべき内容

ここからはひな形をもとに、有限責任事業組合契約書の書き方や盛り込むべき条項・項目を具体例とともに解説します。

組合の名称・目的・事務所の所在地

どのような事業を行うのか、組合員同士の認識を一致させる必要があります。例えば、「本組合の名称は有限責任事業組合〇〇とし、共同で××事業を営むことを目的とする」と明記しましょう。

組合員の情報・出資内容

各組合員の氏名、住所、出資の目的および金額を明確に記載します。例えば、「組合員Aは金銭100万円を出資し、組合員Bは所有する不動産(評価額200万円)を出資とする」と具体例を示すのが好ましいです。また、「別紙1『組合員の氏名又は名称及び住所並びに出資の目的及びその価額』記載のとおり」として、別途資料を添付する方法も有効です。

組合の効力発生時期・存続期間

「本契約の効力発生年月日は令和〇年〇月〇日とする」と明示し、存続期間中に契約が消滅する場合や、期間延長の条件なども追記しましょう。

有限責任の範囲

「組合員は、出資の価額を限度として、本組合の債務に対する責任を負う」と定め、組合員の責任範囲が出資額までに限定されることを明確にします。

業務執行と議決方法

業務執行権限や重要事項の決定方法(全会一致、3分の2以上など)を定めます。組合員全員が業務執行に携わる場合や、特定の組合員に権限を委任する場合のルールを具体的に記載しましょう。

組合の財産・利益配分

組合の財産がどのように管理され、利益や損失がどのように配分されるかを、出資比率などに基づいて明示します。例えば、「本組合の財産は総組合員の共有とし、各組合員は出資比率に応じた持分を有する」と定めます。

事業年度と決算

決算報告の方法や組合員への報告義務、監査の有無など、事業年度に関する事項も記載しましょう。

脱退・除名・組合契約の変更

脱退や除名の要件、組合契約の変更手続きについて、組合員の死亡、破産手続きの場合など具体的な条件を明示し、変更は全員の同意または一部の合意で可能かを定めます。

紛争解決・合意管轄

紛争が発生した際の解決方法として、「○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」など、管轄裁判所を定めましょう。

署名押印・原本保管方法

各組合員が署名押印し、原本は組合事務所に保管、各組合員は写しを保有する旨を記載します。

有限責任事業組合契約書を作成する際の注意点

有限責任事業組合契約書を作成する際には、主に以下の3点についてしっかりと話し合ったうえで内容を決めましょう。

出資金と利益配分の明確化

各組合員の出資額と利益配分の方法を明確に記載することが重要です。出資額に応じた利益分配のほか、特定の業務に対する報酬の設定、損失分担についても取り決めることで、組合員間の不公平感の軽減につながり、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

業務執行権限の設定

誰が日常の業務執行を担当するのか、またその権限や責任を具体的に定める必要があります。複数の組合員が業務執行権限を持つ場合、各自の役割や最終判断者を明確にしておくと、意思決定の混乱を防げます。

組合員の責任範囲の明確化

有限責任事業組合では、組合員は出資額を限度として責任を負います。具体的には、組合員が事業の債務に対してどの程度まで責任を負うかという点や、出資額を超える責任を負わないこと、さらに破産や解散時の負担や義務についても明確に記載しましょう。

有限責任事業組合契約書を締結する流れ

まず、共同事業の目的や出資割合、責任の範囲などを口頭で合意し、契約書案を作成します。次に、組合員全員で条項・項目をチェック・修正し、最終版をレビューしましょう。

その後、契約書に署名押印を行い、本契約書が正式に成立します。締結後は、法務局への登記手続きを行い、組合の事務所に原本を保管、各組合員は写しを保有し、組合の運営を開始します。

有限責任事業組合契約書の保管年数や保管方法

有限責任事業組合法では、有限責任事業組合契約書は組合の事務所に保管しなければならないと定められています。また、「清算中の組合の主たる事務所の所在地における清算結了の登記の時から十年間、帳簿資料を保存しなければならない」とも定められています。そのため、組合の存続中はもちろん、解散後10年間は保管しましょう。

参考:有限責任事業組合契約に関する法律|e‐Gov法令検索

原本は組合の事務所内の鍵付きキャビネットや耐火金庫など安全な場所に保管し、紛失や改ざんのリスクを防ぎましょう。

有限責任事業組合契約書の電子化、電子契約は可能?

近年、電子契約システムを利用して契約を締結するケースが増えています。有限責任事業組合契約書についても、電子署名法および有限責任事業組合法の要件を満たしていれば、電子契約で締結することが可能です。タイムスタンプを付与し、電子署名を行えば、紙の契約書と同等の法的効力が認められます。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
参考:電子署名とは?仕組みや具体的なやり方までわかりやすく解説|Money Forwardクラウド契約

ただし、手続きの際に紙での提出を求められる場合もあるため、事前に法務局や専門家に確認し、相手方の電子契約対応状況も把握しましょう。

組合員同士でしっかりとレビューして有限責任事業組合契約書を作成しよう

有限責任事業組合契約書は、有限責任事業組合を結成し、複数人が出資や役割分担をして共同で事業を始める際に不可欠な書類です。条項の内容や書き方を誤ると、将来のトラブルや責任問題につながる可能性があります。

今回ご紹介したひな形をもとに、各組合員で内容を十分に検討し、カスタマイズしながら契約書案を作成しましょう。ビジネスモデルや組合員の構成に応じて柔軟に調整することが大切です。


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