- 更新日 : 2024年8月29日
匿名組合契約書とは?ひな形をもとに役割や書き方を解説
匿名組合契約書とは、営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約束する契約を交わす書面です。資金を提供する出資者と事業を行う事業者が結びます。二者間契約であり、外部からは誰が出資しているかがわかりません。
本記事では匿名組合契約書の概要やテンプレートの紹介、契約書の書き方について解説します。
匿名組合契約書とは?
匿名組合とは、匿名組合員が営業者に出資をし、その営業から生ずる利益を分配する契約形態です。商法上に規定されている契約形態であり、組合とはいっても集団ではありません。
匿名組合契約は営業者と匿名組合員の二者間での契約であり、営業者に出資する匿名組合員が多数いる場合でも、契約書に記載されるのは1人の匿名組合員と営業者の名前だけです。
匿名組合契約書は、匿名組合員と営業者の二者間で交わされた契約内容を明確にする役割があります。契約書に記載された内容をよく確認して契約することが大切です。
匿名組合の契約が使われるケースとして、次の例があげられます。
- ソーシャルレンディング
- ベンチャーファンド
- 映画の製作委員会
ソーシャルレンディングは融資型クラウドファンディングとも呼ばれ、企業が不特定多数の出資者から資金を調達するシステムです。事業資金を増やしたい企業と、利息で資金を増やしたい投資家をマッチングします。
ベンチャーファンドは、ベンチャー企業が株式市場に上場したときなどに利益が分配される仕組みです。
映画の製作に匿名組合として出資をする場合もあります。映画がヒットして収益を上げれば、分配も大きな金額になるでしょう。
なお、匿名組合は、民法上の組合とは異なります。民法に規定される組合は、複数の人が出資し合い、共同事業を営むことを約束する契約です。匿名組合員は財産出資のみを行い、民法上の組合のような業務執行等はできません。
匿名組合契約書のひな形・テンプレート(ワード)
匿名組合契約書を作成する場合、ひな形を利用するとより効率的です。以下のサイトから弁護士が監修したワード形式の匿名組合契約書を無料でダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
匿名組合契約書に記載すべき事項
匿名組合契約書の記載事項は、商法の規定に則って、一般的に次のような項目を記載します。
- 出資金
- 契約期間
- 計算および分配
- 権利および義務
- 会計報告
それぞれの内容をみていきましょう。
出資金
出資する金額と取扱手数料を記載します。出資金とは、匿名組合契約に基づき、匿名組合員より匿名組合事業のために出資される金額のことです。一定の金額を単位とした「口」単位で表示してもかまいません。
一例として、以下のように記載します。
- 出資金額:〇〇円
- 取扱手数料:出資金額の〇%相当額
契約期間
契約の有効期間を記載します。記載例は、以下のとおりです。
計算および分配
計算期間と損益分配の方法を記載します。計算期間は、匿名組合員が損益を計算するための期間です。損益分配について記載がない場合は出資割合に応じて配分されることになります。
計算期間と損益分配の方法を契約書に記載することで内容が明確になり、トラブルを防止できるため、必ず記載するようにしましょう。
権利および義務
契約当事者の権利義務関係を記載します。権利には、匿名組合員による営業の財産状況の検査などがあります。義務として記載するのは、営業者の善管注意義務や会計報告の義務などです。
また、営業者の約束として、以下のような内容を記載します。
- 本件財産に属する全ての金銭を、本件管理口座に入金して管理する
- 本件関連契約を遵守し、それに基づく権利を適切に行使する
- 匿名組合員の承諾なく、本件関連契約について本匿名組合員の権利に重大な悪影響を与える変更、解除または終了を行わない
会計報告
会計報告の時期を記載します。損益を計算するにあたって、匿名組合員は営業者からの匿名組合の会計報告が自社の決算に合っているか確認するために受ける報告です。上場企業の場合は3ヶ月ごとに決算をするため、会計報告も3ヶ月ごとにもらうのが一般的です。
一例として、次のような文言を記載します。
匿名組合契約書は内容をよく確認しよう
匿名組合とは、匿名組合員が営業者に出資をし、その営業から生じる利益を分配する契約により成立する組合です。二者間契約であり、匿名組合契約書を作成して契約を締結します。
契約書には、出資金や契約期間、計算期間と損益分配の方法などを記載します。匿名組合は契約形態に個別性があり、契約書の内容も契約ごとに異なるものです。契約の際は、契約書の内容をしっかりと確認するようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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