- 作成日 : 2023年9月29日
法務研修とは?目的や実施項目、注意点を解説
法務研修は、企業の法令遵守やリスクマネジメントを強化するための重要な取り組みです。本記事では、ビジネスシーンでの法的知識をはじめ、ハラスメント対策やコンプライアンスの重要性など、幅広いテーマにわたる研修内容について解説します。新入社員から管理職の方まで、法務研修を通じて法的課題を乗り越える力を身につけましょう。
目次
法務研修とは?
法務研修とは、企業の従業員が業務の遂行中に法令違反を犯すリスクを最小限に抑えるための教育・訓練プログラムのことです。
法令違反は罰金や刑事責任だけでなく、企業の評価・信用の低下にもつながる行為であるため、企業の存続・成長を阻害する要因となり得ます。そのため、法務研修は企業経営にとって非常に重要といえます。
法務研修の対象
法務研修の対象とすべき者の範囲は広いです。全社的に行うのが理想ですが、特に重要な対象者について簡単に整理します。
| 対象者 | 研修対象となる理由 |
|---|---|
| 法務部 | 企業の法務業務を担当し、他部署からの法務相談窓口としても機能できるようにするため、法務研修により十分な知識・スキルを身に付けておく必要がある。 法務部に対する法務研修では、最新の法改正や判例の情報、契約書の作成や管理方法など、より深い内容に踏み込むことになる。 |
| 営業部 | 直接顧客との接点を持つため、契約締結やその交渉において法的な問題が生じないように法務研修を実施する。 |
| 新入社員 | 法令遵守の重要性を理解し、同じ組織に属する人員として最低限守るべきルールを把握するために実施する。 |
| 管理職 | 部下を指導・管理する立場として、法令遵守に対するリーダーシップを発揮できる人材を育成するために実施する。対外的な問題のみならず、部下との関係において法的トラブルが発生しないようにハラスメントについての知識も身に付ける必要がある。 |
| 役員 | 企業全体の方針を決定する立場であり、最も高い法的リスクを持つため、法務研修により適切な法的知識を身に付ける必要がある。そこで、企業統治に関する法律や役員の責任・義務などを学ぶ。 |
ここに挙げた対象者は一例に過ぎません。どの部署や役職に対して法務研修を実施してもかまいませんし、できるだけ多くの方が適切な法的な知識を身に付けておくとリスクも低減できるでしょう。
実施タイミング
法務研修を実施するタイミングについてルールはないため、各社が任意のタイミングで実施することができます。効果的なタイミングや、よくあるタイミングの例は以下のとおりです。
- 従業員の雇用直後
特に新卒採用時など新入社員がまとまって入社してくるタイミングでの実施。 - 昇進・役職変動時管理職や新しい役職に就いたときなど、従来とは異なる責任を負うことになったタイミングでの実施
- 法令の改正時自社の活動に関連する法令に改正があったタイミングでの実施。
- 法的トラブル発生後実際に法的トラブルが発生した後で、再発防止を目的とした実施。
法務研修を実施するタイミングは、企業の業務内容や組織の規模などによっても変わります。自社にとって最適なタイミングを見極めて、効果的な研修を行いましょう。
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法務研修を行う目的
法務研修を行う具体的な目的は企業によって異なりますが、一般的には「業務を遂行する中で起こり得る法令違反を予防するため」「外部から法的に問題のある対応を取られたときでも最適なアクションを起こせるようにするため」といえます。
自社が法令に違反しないことはもちろん、自社を守るためにも法的知識は重要です。相手方が違法行為をしている場面だけでなく、契約前の交渉においても法律知識は役に立ちます。
法務研修により適切な知識を身につけることで、以下のようなメリットが得られるでしょう。
- 法的トラブルの減少
法令についての理解があると法的トラブルを未然に防ぎやすくなる。 - 高い企業イメージの維持
法令遵守の徹底により対外的な信頼を得られる、または信頼を損なうリスクを避けやすくなる。 - 業務遂行の効率化
法務部や弁護士に確認を取る頻度を下げることができ、相談を要する場合にも最低限の知識があれば円滑なコミュニケーションが取れるようになる。 - 従業員のモラル向上
何が良くて何がだめなのかを判断できるようになり、モラルある行動が期待できる。
法務研修の主な種類
法務研修は、重点を置く内容によって「ビジネス法務研修」「ハラスメント研修」「コンプライアンス研修」「リスクマネジメント研修」などに分けられます。
それぞれの特徴を紹介します。
ビジネス法務研修
ビジネス法務研修は、営業活動を行う際に必要な法的知識に重点を置いた法務研修です。
契約の基本、取引上のリスク、交渉の方法などを法的な観点から学ぶことになります。民法や会社法といった基礎的なものから、個人情報保護法や消費者保護法など特定の場面で適用されるものまで、広い範囲を学びます。
ハラスメント研修
ハラスメント研修は取引相手など、社外ではなく社内での問題を防ぐために実施されます。
パワハラやセクハラは社会問題になっており、世間の関心も高まっています。行き過ぎたハラスメントにより犯罪が成立することもあるため、従業員を守るためにも、自社のイメージを悪くさせないためにも、昨今では特に重要な法務研修といえるでしょう。
コンプライアンス研修
法令遵守は、社会生活を送るすべての自然人・法人に最低限求められていることです。さらに一歩進んだ体制を整えるのであれば、企業倫理に従うこと、社会から期待される役割に沿った運営を行うことが重要です。法令遵守の徹底を土台に、こうした健全な環境を構築するために行われるのがコンプライアンス研修といえます。
企業に関わりのある規制内容を理解することはもちろん、反社会的勢力や違法業者などとの関りを防ぐ必要性、適切な情報管理の方法、内部告発に関する適切な体制の整備など、さまざまな研修テーマがコンプライアンス研修には含まれています。
リスクマネジメント研修
単に法律について学ぶだけでなく、「実際に発生し得るリスクとは何か」「そのリスクは自社にどのような影響を与えるのか」「リスクにどう向き合う必要があるのか」などを学ぶことも重要です。
こうしたリスクの特定から評価、対策までをカバーするのがリスクマネジメント研修です。
法務研修の実施方法
法務研修の実施方法に決まった手順はありません。ただし、コストや時間を費やすことになるため、闇雲に取り組むべきではありません。すべてを学ぶのではなく、必要な部署に必要な知識・対応方法を知ってもらうために研修を実施することが大切です。手順は以下の例を参考にしてください。
- 研修内容の特定
まずは業種や業界特有の法規制を特定し、どのような知識を身に付ける必要があるのかを把握する。 - 対象者の特定
すべての従業員に対して行うべきか、特定の部署や役職の人に限定して行うべきものなのかを決める。 - 実施時期や頻度の設定
どのタイミングで実施するのか、どの程度の頻度で繰り返す必要があるのかを考える。 - 法務研修の実施
学ぶべき内容に合わせて、専門の業者や専門家に研修を依頼、あるいは教材を準備する。 - 法務研修のフィードバックより意義のある法務研修にコストをかけるためにも、参加者からフィードバックを集め、今後の参考にする。
法務研修の実施を検討しよう
法務研修を実施しなくても、企業活動を続けることはできます。そのため、時間的・経済的余裕のない中小企業などの中には、十分な法的知識を備えることなく営業を続けているところもあります。
しかしこれは大きなリスクを抱えた状態であると認識すべきです。大きな問題が起こる前に、法務研修の実施を一度検討してみることをおすすめします。最新の法令に準拠した業務ツールを導入することも効果的ですので、ツール利用も考えてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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