• 作成日 : 2022年11月25日

一般条項とは?契約書に含まれる内容についても解説

一般条項とは?契約書に含まれる内容についても解説

契約書に盛り込む条項は各取引の実態に合わせて最適化することが大切で、同じ契約類型だからといって他の契約書と全く同じ内容になるわけではありません。しかし、契約のたびにすべての条項を一から検討するのは大変ですし、「一般条項」をある程度流用しつつ、詳細を見直していくほうが効率的です。

ここでは一般条項についてわかりやすく解説しますので、契約書の作成時にご活用ください。

一般条項とは

一般条項とは多くの契約に規定される標準的条項のことで、契約の種類を問わず定める条項や、同じ種類の契約に共通して定められる一般的なルールなどがあります。

たとえば、36協定における一般条項では、法定労働時間のほか1週間あたり15時間、1ヶ月あたり45時間、1年間あたり360時間までの時間外労働が認められています。

また、法律で定められている一般条項もあります。
例えば民法にはさまざまなルールが設けられており、条文は全部で1,000を超えます。後述する民法の一般条項は、それぞれの条文を跨ぐ共通ルールとしての役割を担っています。

契約書における一般条項

まず、契約書における一般条項について紹介します。
一般条項といっても、そのすべてがあらゆる契約書に記載されるわけではありません。契約の種類に関わらず設けられる条項や、同種の契約内容であれば広く設けられる条項などがあり、一般条項にもさまざまな利用方法があります。

定義条項

契約書内で専門用語を使う場合、あるいは当事者間で異なる解釈が生まれるおそれのある用語が使われる場合は、「定義条項」を設けることがあります。

定義条項は用語の定義を明示し、言葉の解釈を整理する役割を担います。
契約書で使われる言葉を整理するため、定義条項は第1条など冒頭部分に置くのが一般的です。
決まった記載方法はありませんので、「○○(説明したい用語):△△(用語の定義)」といった形でリストアップしても良いですし、「「○○」とは、△△をいう。」などと記載しても良いです。

契約期間

契約関係が継続する場合は、「契約期間」に関する条項を置きます。
こちらも、契約書類型に関わらず重要な条項です。

例えば期間を定めない「無期契約」とするのか、一定の契約期間を定める「有期契約」とするのかをここで規律します。
また有期契約の場合、一定期間を満了することで自動的に契約が終了する、あるいは当事者から事前の契約終了の通知がなければ自動で契約が更新される、といったルールも定めます。

自動更新とする場合は、以下のように定めることもあります。

第○条(契約期間)
本契約の有効期間は、契約成立の日から〇年間とする。ただし、期間満了の〇ヶ月前までに本契約当事者のいずれからも本契約を終了させる旨の通知をしない限り、従前と同じ条件にて〇年間自動的に更新されるものとする。

 

自動更新を認める場合は、上の例のように満了期日の一定期間前までに通知することが解除条件となるケースが多いです。

契約の解除

「契約の解除」についての条項も、さまざまな契約で設けられます。
契約当事者にとって重要な条項ですので、どのように定めるべきか、当事者間でよく話し合って慎重に検討することが大事です。。

よくあるのは、“相手方の債務不履行の発生”を条件に解除ができるとする規定です。
さらに、解除事由の内容に応じて即時解除ができるとするのか、それとも一旦催告することを要するのかといった、解除までの過程についても規定します。

まずは当事者が催告し、それでも相手方が対応しない場合に解除ができるとするのが一般的です。
なお、重大な契約違反が生じた場合など信頼関係を修復することが困難なケースや、もはやそれ以上契約を継続することが不可能なケースなどでは催告を必要せず、解除ができると定めることが多いです。

秘密保持義務

取引に際して、契約当事者の一方または双方の機密情報が共有されることもあります。外部に情報が漏れることで甚大な損害が生じるおそれもありますので、相手方に秘密を保持するよう義務付ける必要があります。相手方から受け取った情報をむやみに公開すべきでないのは当たり前のことですが、秘密保持義務を明示することで義務違反の場合の損害賠償請求を容易とし、情報の取扱いについての意識を高める効果が見込めます。

また、①秘密情報の範囲、②利用目的、③契約終了後の秘密保持義務、についても明確化する役割を担います。

損害賠償条項

「損害賠償条項」とは、当事者が契約内容に違反した場合の損害賠償請求についてのルールを定めた条項のことです。損害賠償請求を認める場合の“違約金の定めの有無”、または“請求額の制限の有無”がポイントになります。

損害賠償請求を行う者は、損害が生じたことや損害の額を主張立証し、その損害が契約の相手方の違反行為により生じたことを示さなければなりません。
しかし、違約金の定めを置いてあらかじめ損害の額を規定し、契約違反があった場合はその額の損害が生じたと推定する旨を定めておくことで、請求を行う者の負担を軽減することができます。

違約金の定めではなく、請求額の上限を設けて対応することもできます。
例えば「〇〇円を上限とする」と定めることで、契約から生じるリスクの大きさを限定できるようになります。

反社会的勢力排除条項

反社会的勢力排除条項は、契約の相手方が暴力団をはじめとする反社会的勢力と関係を持っていないことを保証するために設ける条項です。企業倫理・コンプライアンスの徹底の他、暴力団などの反社会的勢力に資金が流れないようにする役割も担います。

条文には反社会的勢力と一切の関わりがないことを表明する旨を記載し、違反があった場合は催告を要することなく直ちに解除ができるとのルールを設けることが重要なポイントです。

合意管轄条項

取引相手とトラブルが発生した場合、訴訟提起する裁判所の場所によって当事者の負担が変わるため、契約書の一般条項として「合意管轄条項」も定めます。

自社の近くに位置する裁判所を専属的合意管轄裁判所として指定することができれば、万が一訴訟問題が生じたとしても対応しやすくなります。
そこで、以下のように規定を置くことがあります。

第○条(専属的合意管轄裁判所)
本契約に関して紛争が生じたときには、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とすることに合意する。

 

専属的合意管轄裁判所を定める場合は「専属的」という文言を明記するのがポイントです。なぜなら、単に合意管轄の定めを置くだけでは、指定した裁判所のみならず法律上認められている管轄裁判所にも訴訟提起ができるからです。
1つの裁判所のみを指定するのであれば、専属的合意管轄裁判所として特定の裁判所を挙げる必要があります。

民法における一般条項

契約書に設ける条項とは別に、法律上の一般条項もあります。
一般条項とは、法律概念広くにわたって適用される、基本的理念のことをいいます。法律に定められる各条項をそのまま適用したのでは不都合な結果が生じる場合があり、そのような不都合を是正する役割があります。
例として、広く民間の法律関係に適用される一般法である民法における一般条項の一部について、簡単に紹介します。

信義誠実の原則

民法第1条第2項の規定は「信義誠実の原則(信義則)」と呼ばれます。

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

引用:民法第1条第2項|e-Gov法令検索

権利の行使、義務の履行にあたっては相手方から一般的に期待されている信頼を裏切ってはならず、誠実に行動しなければならないということを意味しています。一般条項ですので、民法に規定されている債権法や物権法、家族法など、分野を問わず守らなければならない基本となる規則として機能します。

例えば債権法などで規定されている個別の条文により権利の行使ができる場面でも、信義則に反するとして行使ができなくなることがあるのです。

権利濫用の禁止

「権利濫用の禁止」については、民法第1条第3項に規定が置かれています。

権利の濫用は、これを許さない。

引用:民法第1条第3項|e-Gov法令検索

この条項は、“形式上は法律上認められた権利の行使であるものの、具体的事情を考慮すると当該権利本来の目的から逸脱する不当性を有している場合は、権利の行使を認めない”ということを意味しています。

権利濫用にあたるかどうかは権利者の目的である主観的要件、そして権利者が得る利益と相手方に生じる損害を比較考量する客観的要件で判断されます。

公序良俗違反

公序良俗に関しては、民法第90条に規定が置かれています。

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

引用:民法第90条|e-Gov法令検索

ここでいう「公の秩序」は国家・社会の一般的秩序を、「善良の風俗」は社会の一般的道徳観念を意味します。公序良俗は社会的妥当性を意味しているのであり、例えば基本的に私的自治が認められる契約締結の場面であっても、暴利行為(異常に高額な違約金の定めなど)にあたる特約を設けることは公序良俗に反するとして無効になります。

36協定における一般条項

36協定とは、労働基準法第36条の規定により、時間外労働・休日労働をするために労使間で締結する協定のことです。
労働時間は、1日8時間以内、週40時間以内と決まっていますが、36協定を結んだときは、その時間を超えることができます。ただし、超えていい時間の上限は、1か月あたり45時間、1年あたり360時間(1年単位の変形労働時間制のときは、1か月42時間、1年320時間)までです。これを上限時間といい、時間外労働や休日出勤が上限時間以内のときの36協定を一般条項と呼びます。
この一般条項の上限時間を超えるときは、特別条項ありの36協定を提出しておかなくてはなりません。

一般条項の内容を理解して契約書を作成しよう

一般条項は多様な契約書に盛り込まれる条項であり、雛形から流用する際は修正を加える必要がないこともありますが、重要度は低くありません。むしろ、契約期間や秘密保持義務など取引に関する基本的ルールであり、重要度の高い条項が該当します。そのため契約書を作成する際は、一般条項の内容を理解することが大切です。その知識は、さまざまな契約締結の場面で役立つでしょう。

よくある質問

一般条項とは何ですか?

一般条項とは、多くの契約で規定される標準的条項のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

契約における一般条項とは、どのような項目ですか?

契約の期間や解除に関する条項、その他秘密保持義務や損害賠償、反社会的勢力排除、合意管轄に関する条項も一般条項です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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