- 作成日 : 2022年11月18日
スマートコントラクトの活用で電子契約はどう変わる?ブロックチェーンとの関係も解説
今、電子取引に関連する新しい技術として「スマートコントラクト」が注目を集めています。スマートコントラクトを活用することで、契約や取引そのもののかたちも大きく変わるかもしれません。
今回はスマートコントラクトの仕組みやメリット、これまでの電子契約との違いについてわかりやすくご説明します。電子契約は将来どうなるのか。ぜひ想像してみましょう。
目次
スマートコントラクトの活用で電子契約はどう変わる?
まずスマートコントラクトの技術を電子契約に応用することで、よりセキュリティ性能が向上することがメリットとして挙げられます。詳しい仕組みについては後述しますが、スマートコントラクトを使った取引は非常に高い透明性が担保されており、改ざんが極めて難しいです。もちろん、現行の電子契約システムにおいても高いセキュリティ性が備わっていますが、スマートコントラクトによって、より重要な契約、より金額が大きい契約に関しても、電子契約での対応が可能になると考えられます。
また、契約をした後の履行まで管理できるようになる可能性もあります。その名のとおり、電子契約システムはインターネットを介して契約を締結するためのツールです。スマートコントラクトの活用は、契約締結はもちろん、契約の履行、決済まで、取引のすべてを電子化・自動化できる可能性を秘めています。大幅な生産性の向上やコストダウンができるかもしれません。
そもそもスマートコントラクトとは?
スマートコントラクトを応用することで、電子契約あるいは取引全般がより便利になる可能性があります。しかし、そもそもスマートコントラクトとはどのような技術なのでしょうか。電子契約と比べてどのような違いがあるのでしょうか。ここからはスマートコントラクトという技術について、わかりやすくご説明します。
スマートコントラクトの仕組みは?
スマートコントラクトとは、「ブロックチェーン」を活用することで、取引に対して特定の条件が満たされた場合に、決められた処理を行うという技術です。Smart Contract≒スマートな契約という言葉のとおり、契約をはじめとした取引の自動化を実現することができるとされています。
スマートコントラクトに使われるブロックチェーンとは「分散型台帳技術」のことです。多数のネットワークの参加者から成り立っており、参加者それぞれのコンピュータの中に台帳が存在し、取引情報が共有・記録されます。そして、新しい取引があるとすべての参加者のコンピュータが検証・承認・記録を行います。取引履歴や台帳情報の正確性を参加者相互が監視し合う仕組みになっているため、改ざんやなりすましといった不正が極めて難しくなるのです。ビットコインやイーサリアムといった暗号資産もこの技術が活用されています。
スマートコントラクトに関してもブロックチェーンを経由して取引を行い、特定の条件を満たした場合はネットワークの参加者が検証・承認をした後にあらかじめ指定した処理が実行される仕組みになっています。
電子契約やブロックチェーンとの関係は?
電子契約は、契約書を一方の当事者が相手方に送付するか、クラウドにアップロードし、相手方が承認作業を行うことで契約が成立します。商品を納品した、仕事を完遂させたなどの契約の履行と、それに対する報酬の支払いは当事者同士が管理します。
スマートコントラクトでは前述のとおり契約から決済までをブロックチェーン上で行います。たとえば金額や欲しい商品・サービスなどの条件を入力したらそれに合致した企業を選定して契約を締結してくれる、商品が納品されたら決済を行う、というように取引によってはすべて自動化することも可能のようです。お金を入れて欲しい商品のボタンを押したらそれが出てくる自動販売機をイメージするとわかりやすいかもしれません。
スマートコントラクトを電子契約に活用するメリットは?
取引の自動化を進めてくれるスマートコントラクトの技術を電子契約に応用することで、以下のようなメリットを享受できる可能性があります。
取引がスピーディーになる
商取引を行う際には企業や店舗の選定、契約書の確認、締結、契約履行の管理、決済など、さまざまなプロセスが発生するものです。前述のとおり、スマートコントラクトでは取引のすべてを自動化することができるので、スピーディーな取引が実現できる可能性があります。
不正を防ぐことができる
書面の契約書は後から書き換えたり、契約者になりすまして押印したりといった不正が行われる場合があります。電子契約であれば契約を締結した日時を記録したタイムスタンプが付与されるため、改ざんやなりすましが困難になりますが、多数のネットワーク参加者で取引履歴の記録・監視を行うスマートコントラクトを応用することで、さらに不正がしづらい、透明性の高い取引を実現可能です。
ミスを防ぐことができる
契約書を交わして取引を行う場合、契約書に誤った内容や異なる金額を記載してしまう、契約の締結自体を忘れてしまう、契約内容を勘違いしていて正しく履行されないなど、さまざまなミスが発生する可能性があります。商取引のすべてのプロセスが自動化されるスマートコントラクトであればこのようなミスも防ぐことができ、業務効率の改善につながります。
電子契約以外のスマートコントラクトの活用事例は?
スマートコントラクトは契約だけでなく、さまざまなシーンにおいて活用が進んでいます。ここからはスマートコントラクトの活用事例について見ていきましょう。
選挙
国や地方の未来を政治家に付託する選挙は民主主義の根幹であり、不正は許されません。しかし、これまでたびたび不正選挙あるいはその疑惑が取り沙汰されてきました。今後、投票から集計、結果の公表までスマートコントラクトの技術を活用することで、透明性が高い選挙が実現できるかもしれません。
選挙とは異なりますが、アステリア株式会社(東京都渋谷区)では、2022年6月の株主総会で、決議にスマートコントラクトの技術を活用して行ったという事例もあります。
ゲーム
ブロックチェーンを活用したでゲームも登場しています。これまではゲームで稼いだ報酬(お金やアイテムなど)は基本的にそのゲーム内でしか使うことができませんでしたが、スマートコントラクトを活用すれば、ゲームで集めた資産をマネタイズすることもしやすくなります。
スマートコントラクトで世の中がもっと便利になる
ブロックチェーンを活用することで取引を自動化できるスマートコントラクト。この技術を電子契約に応用することで、よりスピーディーで、セキュリティが高い取引が実現可能となると考えられます。日常的な契約業務から、重要な契約や高額な契約まで、さまざまな契約シーンで電子契約が使われるようになるかもしれません。
さまざまなシーンでスマートコントラクトの活用の可能性があふれています。スマートコントラクトが普及すれば、私たちの生活がより便利になるかもしれません。
よくある質問
スマートコントラクトの活用で電子契約はどう変わる?
高いセキュリティが担保され、スピーディーかつ正確な契約締結が可能となるため、日常の契約業務から重要な契約、高額な契約まで、幅広く電子契約が採用されるようになると考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。
スマートコントラクトとブロックチェーンの違いは?
スマートコントラクトはブロックチェーンを活用した取引のことを指します。ネットワーク参加者が取引履歴の記録・監視を行うブロックチェーンの技術を応用し、取引を自動化したものがスマートコントラクトです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
注文書や注文請書は電子契約にできる?電子化のメリットや保存要件も解説
注文書や注文請負書はさまざまな方法で電子化が可能です。電子帳簿保存法の改正やコロナ禍をきっかけにデジタルへの移行を試みているものの、よく分からないとお悩みの方も多いでしょう。 この記事では注文書や注文請負書、それぞれの電子契約の方法を詳しく…
詳しくみる電子契約書の作り方は?契約締結のやり方や電子契約サービスを選ぶポイントも解説
電子契約書はどのように作成すればよいのでしょうか。作り方は紙の契約書と異なるのでしょうか。この記事では、電子契約書のメリット・デメリットや作成方法、電子契約サービスを選ぶポイントまで詳しく解説します。 電子契約書とは 電子契約書とは、紙の契…
詳しくみる電子契約サービス導入前の懸念TOP3を解説!
働き方改革や法律の改正、電子取引の普及によって、多くの企業が電子契約サービスの導入を検討し始めています。しかしいざ導入するとなると、オペレーションの整備、契約管理体制の見直し、社内外への浸透など、担当者にとって高い壁が待ち受けているのも事実…
詳しくみる電子契約の導入が自治体で加速!?地方自治法施行規則の改正とは
令和3年1月、地方自治体(地方公共団体)の電子契約締結に際して要求される措置を定める地方自治法施行規則が改正され、電子証明書が不要になりました。電子証明書が障害となり、印紙を付した契約書を取り交わしていた民間企業は、クラウド型電子署名等だけ…
詳しくみる電子契約は英語で締結できる?メリットや注意点・サービス導入時のポイントを解説
海外の企業との契約を結ぶ場合には、電子契約書を使用するケースが増えています。電子契約は、国内外問わず、英語で締結できます。しかし、英語での契約経験のある方はそう多くないでしょう。近年、さまざまな英語対応契約書サービスも登場しています。本記事…
詳しくみる電子契約をPDFで行う方法は?作成・送信・返信のやり取り、保管を解説
企業の総務担当者にとって、契約書の管理は重要な業務の一つです。ここ数年、電子契約が普及し、PDF形式での契約書のやり取りが一般的になっています。電子契約は、業務効率の向上やコスト削減に寄与するだけでなく、法的にも有効です。 本記事では、PD…
詳しくみる