- 更新日 : 2024年8月20日
電子印鑑に法的効力はある?印鑑や電子サインとの違い、注意点を解説
電子印鑑は契約書や請求書などで使われる他、社印としても使われます。ペーパーレス化とともに普及が進んでいますが、法的効力や印鑑証明としての有効性に問題点はないのでしょうか。この記事では電子印鑑の仕組みや電子サインとの違い、使用する際の注意点などについて解説します。
目次
電子印鑑に法的効力は認められる?
電子印鑑は、デジタルのハンコです。朱肉やインクを使って捺印するわけではありませんが、法的効力はあるのでしょうか。電子印鑑に法的効力があるかどうかは、電子証明書の有無で変わります。
印影のみの場合
電子印鑑には、実物の印鑑で押したものをスキャンして画像化したものや、アプリや無料サービスを利用して作成したものがありますが、作成できるのは印影のみです。
簡単に作れる一方で複製しやすいため、印鑑が本来持つ「本人性の証明」としての効力があるとは言い難いでしょう。
印影に電子証明書が付されている場合
一方、電子証明書が付いた有効な電子署名がある電子印鑑であれば、公文書や重要な契約書、社印などにも使用でき、訴訟の際も有力な証拠になり得ます。電子署名は検証プログラムによって、押印日時や本人確認ができる仕組みになっています。
2001年施行の電子署名法第三条では「当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」と定められています。
普通の印鑑との法的効力の違い
普通の印鑑は、民訴法第228条第4項「私文書は、本人[中略]の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」という規定に基づき、押印されている書類は本人が作成したと推定する要素になり得ます。
電子印鑑に関しても、「電子署名及び認証業務に関する法律」において、電子証明書(電子署名)付きであれば、普通の印鑑と同じく「真正に成立したものと推定する。」とされているため、法的効力や有効性を持ち、普通の印鑑と同じように使用できます。
公文書や社印としての使用できるだけでなく、電子印鑑が押された書類を印刷しても、普通の印鑑と同じように扱える仕組みになっています。
電子サインとの法的効力の違い
電子印鑑の他に、電子サインという言葉を耳にしたことがあるかもしれません。電子サインも「デジタル署名」「デジタルサイン」と並んで、電子証明書(電子署名)付きで用いられています。電子サインも「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)」によって、法的効力や有効性が認められています。
また、現在紙媒体で手続きを行っている公文書も、「e-Gov」などで電子申請の手続きを行えば、自宅や会社のパソコンから電子サインによって行政手続きが可能になるものがあります。
ただし、電子サインはメールやSNSで認証を行い、電子契約を結ぶ仕組みです。一方で電子署名は、国が定めた第三者機関である電子認証局が発行する電子証明書に基づいて本人性が確認されるため、電子署名のほうがより高いセキュリティレベルと法的拘束力を持ちます。
電子印鑑を使用する際の注意点
ペーパーレス化が進む中で電子印鑑の必要性が高まっていますが、使用する際の注意点や問題点もあります。ポイントは、電子印鑑の有効性を確保できているかどうかです。
取引先が電子印鑑を認めてくれるか
電子印鑑を使用する際の注意点としてまず挙げられるのは、契約を締結する取引先が電子印鑑を認めてくれるかどうかです。電子印鑑は便利ですが「大切な契約書は紙で」という企業も多いため、電子文書での契約が可能かどうか確認しておきましょう。また、電子印鑑を使用する際に、どの程度のセキュリティレベルが必要になるかも併せて確認しておきましょう。
電子印鑑の管理
電子印鑑はデジタルであるため、印影だけの電子印鑑は複製が容易であり、セキュリティが高いとはいえません。電子証明書付きの電子印鑑であれば本人であることを確認でき、公文書でも使用できることがあるほど法的効力が高まります。電子証明書のパスワードを忘れたり盗まれたりしないよう、しっかり管理しましょう。
電子印鑑を使い分ける
電子印鑑には印影を画像化しただけのものや、エクセルやパワーポイントを使用して作ったもの、デジタルハンコサービス等を利用して作ったものもあり、電子証明書(電子署名)の有無もさまざまです。印影のみの簡易な電子印鑑でも問題ないケースもあるため、重要な契約で使う電子印鑑と、簡易的に使うものを使い分けるという方法もあります。
取引や契約に合った電子印鑑を
電子印鑑はデジタル上のハンコであり、印影のみのものと電子証明書(電子署名)付きのものがあります。前者は手軽ですが、複製が容易でセキュリティが低いため、重要な契約や公文書に使用する場合は、電子証明書(電子署名)付きの電子印鑑が必要になります。
ビジネス取引の場合は取引先が電子文書や電子印鑑に対応しているかどうかを確認し、必要なセキュリティレベルもチェックしましょう。取引や契約に合った電子印鑑を使い分けて、業務効率化を進めましょう。
よくある質問
電子印鑑に法的効力は認められていますか?
電子署名付きの電子印鑑であれば、押印日や本人確認が可能になるため、実際の印鑑と同じ法的効力を持ちます。詳しくはこちらをご覧ください。
電子印鑑と普通の印鑑で法的効力に違いはありますか?
電子署名法における電子署名があれば、電子印鑑も普通の印鑑と同じ法的効力を持ちます。普通の印鑑は「民訴法第228条第4項」、電子印鑑は「電子署名及び認証業務に関する法律」に基づいて、本人が作成した書類と認められる要素となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
電子印鑑の関連記事
新着記事
利用規約のリーガルチェックとは?確認すべきポイントや進め方を解説
インターネットサービスやアプリを運営する企業にとって、利用規約の整備は避けて通れない課題です。利用規約は形式的な書面ではなく、ユーザーとの契約関係を明示し、トラブルを防ぐための重要な役割を担います。しかし、その内容が不適切であれば、法的責任…
詳しくみる下請法における役務提供委託とは?適用基準や法改正のポイントを解説
2026年1月に施行される改正下請法(正式名称:製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称:中小受託取引適正化法、通称:取適法))は、役務提供取引を含む多様な委託関係に対して規制強化を行い、企業間の取引…
詳しくみる【2026年下請法改正対応】資本金3億円以上の委託事業者が知っておくべき義務や禁止行為を解説
下請法は、委託事業者と中小受託事業者の取引における公正性を確保するために制定された法律です。違反があれば是正勧告や企業名の公表が行われ、信用失墜のリスクを伴います。本記事では、資本金3億円・5,000万円の基準や禁止行為、改正への対応などを…
詳しくみる下請法は資本金1億円の企業に適用される?2026年改正内容と対応策を解説
2026年1月に施行される改正下請法(略称:中小受託取引適正化法)は、資本金や従業員数に応じて適用範囲が大きく拡大され、中堅企業にも影響が及びます。中でも資本金1億円の企業は、発注者・受注者いずれの立場でも新たに下請法の規制対象や保護対象と…
詳しくみる建設業に下請法は適用される?2026年改正の変更点・対応策を解説
建設業においても、下請法(2026年1月施行の改正後は「中小受託取引適正化法」)の適用が求められる場面が拡大しています。従来、建設工事の再委託は建設業法の規律下にありましたが、資材の製造や設計図面の作成といった工事以外の業務委託には下請法が…
詳しくみる2026年下請法改正の要点は?企業への影響やとるべき対策を解説
2026年1月施行の改正下請法(通称:取適法)は、企業の取引実務に大きな影響を与える法改正です。本記事では、その背景や目的から、主要な変更点(価格協議義務の明文化、手形禁止、適用範囲の拡大など)をわかりやすく整理し、企業が取るべき対応につい…
詳しくみる