- 更新日 : 2024年8月29日
製作物供給契約とは?契約時に定めるべき事項をひな形とともに解説
製作物供給契約とは、製品の製作及び譲渡(納品)を委託する契約です。民法でいう請負契約に類似する性質を有しますが、民法や商法の規定との違いもありますから、具体的かつ明確な事項を記載した契約書が不可欠です。今回は、製作物供給契約を締結する際に定めるべき事項や注意点をご紹介します。
目次
製作物供給契約とは?
製作物供給契約とは、受託者が自社の材料の全部または主要部分を供給(有償無償を問わない)・製作し、完成させた製品を委託者に納品する契約です。たとえば、自動車を新車で購入する契約は、この製作物供給契約の典型例です。ほかにも、オーダーメイドの服や家具を購入する契約も、製作物供給契約に当たります。
製作物供給契約を締結することで、委託者には、受託者に対し製品の製作・供給をしてもらう権利と、製作・供給の対価として報酬を支払う義務が生じます。
これら以外にも、契約書には発注の方法、検収の方法や製品に欠陥があった場合(契約不適合)の対処法など、取引の内容や生じうるリスクを想定し、細部まで明確に定めておく必要があります。製作物供給契約書に限りませんが、契約書の記載があいまいだったり、当事者双方に認識のズレがあったりすると、トラブルに発展しかねません。
製作物供給契約は、民法上の請負契約、売買契約や贈与契約など、複数の契約の性質を含みます。契約から生じる具体的な権利・義務は、契約の名称ではなく、当事者の合意内容(契約)により決まります。したがって、契約書の記載は自社が望むとおりの取引内容となっているか、自社が不当に不利になっていないか、十分に注意する必要があります。
前述のとおり、製作物供給契約は複数の契約の性質を持ち、民法のどの規定を適用するのかあいまいになりがちです。そのため、トラブルを未然に防止し、仮にトラブルが発生し紛争になったとしても、きちんと客観的な証拠として利用できるよう、契約書は必要不可欠なものとなります。
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製作物供給契約書で定めておくべき事項
製作物供給契約で定めておくべき事項をご紹介します。なお、ここでご紹介するのは最低限の記載事項ですので、実際の契約書では代金の支払時期なども記載する必要があります。
業務内容
製作を委託する製品の仕様(数、種類や品質など)を定めます。
製作物供給契約の土台となる事項ですので、契約締結の目的が実現できるよう、明確に製品の仕様を記載しておかなければなりません。契約書のほかに仕様書を作成するなどし、具体的な内容になるよう心がけましょう。
所有権・危険負担の移転時期
製作した製品の所有権と危険負担(当事者双方のいずれの責めにも帰すことのできない事由によって製品が滅失・毀損した場合の危険を、どちらの当事者が負担するかという問題)が、いつ委託者へ移転するのか規定します。
一般的に、委託者には、納品時(委託者の支配下に製品が置かれたとき)に危険が移転し、検収合格時に所有権が移転する取り決めが多いです。
なお、民法の改正により、危険負担が問題になる場合は債務の履行拒絶ができるに留まり、契約解除が当然にできるわけではなくなりました(民法536条)。契約を解除したい場合、その旨を契約書に定めておく必要があります。
検収
完成した製品の納品方法や委託者が行う検収の方法を定めます。検収の期限や検収により欠陥・不備(民法および商法では「契約不適合」と定義)が発見された場合の返品、追完、代金減額、損害賠償、契約解除などの対処法も合わせて規定しておきましょう。
委託者側の視点でみると、検収期間をなるべく長めに設定しておくと業務に余裕ができます。反対に、受託者側の視点でみると、検収期間は短く、検収終了通知がない場合には合格したものとみなす、検収に合格した製品にその後契約不適合が見つかっても責任を負わない、といった規定があると有利です。
なお、製作物供給契約が会社などの商人間で行われた場合、製品の検収(検査)は義務となります(商法526条1項)。
契約不適合責任
契約不適合とは、納品された製品が契約で定められた種類または品質に合致しないことをいいます。
委託者の視点でみると、契約不適合を発見した時点で追完、代金減額、損害賠償、契約解除のどの方法もとれるようにしておく(民法では、まず追完を請求し、追完されない場合にはじめて代金減額請求ができる仕組みとなっています(民法562条、563条))と、有利な契約になります。
商人間においては、検収で契約不適合を発見した場合は「直ちに」受託者に対しその旨を通知しなければ、契約不適合責任を追及できなくなってしまいます(商法526条2項)。また、検収で発見できなかった契約不適合についても6カ月以内に通知しなければ、同様に責任追及できなくなってしまいます。
契約不適合責任は、契約書で民法や商法と異なるルールを取り決めることも可能ですが、特約を定めていても製造物責任法などに基づく規制を受ける可能性はありますから、各種法令を意識して契約書の中身を吟味する必要があります。
請負契約との違いは?
請負契約は、仕事の完成を目的とする契約です(民法632条)。請負契約の典型例は住宅などの建物建築契約やホームページ製作契約です。出版物の製作も請負契約に該当するケースが多いです。請負契約の詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
製作物供給契約と請負契約の違いは、前者には仕事の完成以外にも製品の譲渡や売買に関する契約も含まれているという点です。その意味で、製作物供給契約は、複数の契約の性質を持つ複合契約といえます。複合契約である以上、製作物供給契約の内容は、請負契約と比べて複雑になる傾向があります。その契約が請負契約なのか、製作物供給契約なのかは、契約当事者の合意内容により決まります。
なお、印紙税法の観点からみると、製作物供給契約書が「請負に関する契約書」なのか「物品又は不動産の譲渡に関する契約書」なのかが問題になります。どちらに当たるかは、契約当事者が仕事の完成に重きを置いているのか、物品・不動産の譲渡に重きを置いているのかで判断されます。
ここで注意したいのは、契約の名称や属性で当事者間の権利・義務が確定するわけではないということです。権利・義務は当事者間の合意(契約)の内容・目的によって確定します。だからこそ、合意の内容や目的を客観的に明らかにするためにも契約書が重要になってくるのです。
製作物供給契約書は明確かつ具体的に記載すべき
製作物供給契約は、複数の要素を併せ持つため、権利・義務の内容が複雑になりがちです。取引の実情を反映し、トラブルを未然に防ぐためにも、具体的かつ明確な事項を記載した契約書が必要になります。各種法令を意識し、適切な契約書を作成しましょう。
よくある質問
製作物供給契約とは何ですか?
製品の製作および譲渡(納品)を委託する契約です。民法上の請負契約、売買契約、贈与契約など複数の契約の性質を併せ持っています。詳しくはこちらをご覧ください。
製作物供給契約と請負契約の違いは何ですか?
前者は仕事の完成のみならず売買や贈与の性質を持っている一方で、後者は仕事の完成のみを目的としています。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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