- 更新日 : 2024年8月29日
代物弁済予約とは?契約書の雛形をもとに解説
代物弁済予約とは、債務者がお金の代わりにモノで弁済する方法を、あらかじめ予約しておくことです。代物弁済予約には、仮登記担保法が適用されます。この記事では、代物弁済予約のメリットやデメリット、抵当権との違いなどについて解説します。代物弁済予約契約書の雛形も用意しているので、契約書を作成する際の参考にしてください。
目次
代物弁済予約とは?
「代物弁済」は、お金の代わりにモノで弁済する方法です。これに「予約」を足した「代物弁済予約」とは、その弁済方法をあらかじめ予約しておくことで、モノを担保に入れているのと同じ状態にすることといえます。
代物弁済予約の契約を交わしていれば、金銭債務を返済できない場合に、動産や不動産などの譲渡(売却)によって、不良債権化を回避することができるかもしれません。
また不動産を弁済物にした代物弁済予約では、仮登記担保法が適用されます。仮登記のため、債務不履行になった後、債権者が必要な手続きを行うまで、担保は法的効力を持ちません。
予約完結権が時効を迎えると本登記請求権も時効消滅する可能性があるため、時効については契約ごとにしっかり確認しておきましょう。
抵当権との違いは?
抵当権は、債務不履行が発生したときに、債務の担保とした資産から、優先的に債務の弁済を受けるための権利です。
抵当権の担保対象は不動産や特定の動産に限定されますが、代物弁済予約では、不動産に限らず、債権やあらゆる動産も担保対象にすることができます。また、抵当権者は債務者に残高分の債権を請求できますが、代物弁済では請求できません。
代物弁済予約契約書の雛形
代物弁済予約の契約書は、比較的シンプルです。代物弁済予約契約書の雛形を紹介します。
代物弁済予約契約書に記載する事項
代物弁済予約契約書には、以下の内容を記述します。
- 債務内容について
いつどのような債務が発生したか。加えて、それをどのような方法で弁済することにしたのかを具体的に記します。 - 代物弁済予約について
債務不履行時、何を代物弁済の目的とするのかを記します。目的が複数ある場合は、別紙にリストアップし、その旨を条文に書いてください。 - 仮登記について
代物弁済予約の担保は仮登記になるため、代物弁済を実行する際には債務者が所有権移転登記手続の申請をする旨を明記します。
代物弁済予約契約を締結するメリット
お金の代わりに動産や不動産で弁済する代物弁済予約には、債権者とのやり取りや仮登記を行うことによる、さまざまなメリットがあります。ここでは、通常の代物弁済や抵当権にはない、代物弁済予約ならではのメリットをご紹介します。
ただし、いずれについても時効は上述の通りなので、必要書類を確認してください。
資産の譲渡・売却を防げる
債務者が複数の相手からお金を借りている場合、どの債権者にも代物弁済をすることができます。しかし、代物弁済予約の契約で仮登記された資産は、契約を交わした債権者に所有権の移転が予約されている状態のため、その資産は他の債権者への弁済物にすることができません。代物弁済予約の契約を交わしておけば、債務者が債権者に資産が渡ることを防ぐことができます。
競売手続きを経ずに所有権を移転できる
抵当権を行使する際は競売手続きが必要になり、実際の資産評価額よりも安価で売却されるのが一般的です。代物弁済予約の契約を交わしておけば、仮登記された資産の所有権がそのまま債権者に移転されるため、時価相当の弁済ができます。債権者にとっても、資産の価値を減らさずスムーズに弁済手続きができるというメリットがあります。
代物弁済予約契約を締結するデメリット
スムーズな代物弁済ができることは代物弁済予約のメリットですが、実際に代物弁済が行われるまでの時間や、債務額に見合う弁済なのかどうかの見極めなどは、計画的に行う必要があります。ここでは、代物弁済予約のデメリットについて解説します。
仮登記に登録免許税がかかる
所有権移転請求権の仮登記は、債権者と債務者が同席して申請をしなければなりません。また、このときに登録免許税を納める必要があります。不動産の仮登記を行う際は本登記にかかる登録免許税(固定資産税評価額の2%)の半額を納め、本登記の際に差額を納めます。申請書などの必要書類を揃えて、仮登記の申請手続きを行いましょう。
- 不動産の登録免許税(仮登記):固定資産税評価額の10/1,000
- 不動産の登録免許税(本登記):固定資産税評価額の10/1,000(仮登記の差額)
所有権の移転に時間がかかる
代物弁済予約では、鑑定士が正確な評価額を算定し、債権額と資産の価格に整合性を確認するための時間が必要です。債務不履行が発生してから、弁済物の所有権が債権者に移転されるまで、数週間かそれ以上必要になるかもしれません。ただし、停止条件付代物弁済を利用すれば、債務不履行が発生した段階で、すぐに資産の所有権が債権者に渡ります。
資産価値が債権額と異なる場合
代物弁済予約で、資産の評価額が債権額を大きく上回る場合、債務者から不当利得返還請求をされ、所有権移転の効力が発揮されないことがあります。逆に、資産の評価額が債権額を大きく下回る場合は、債権額の満額回収ができません。
しっかり準備した上で契約を
代物弁済予約は、動産や不動産、債権などを仮登記しておき、債務不履行が発生したときに、それらの所有権が債務者から債権者に譲渡される契約です。
仮登記担保法に基づいているため、弁済物が他の債権者に譲渡されることはありません。競売手続きを経ずに資産譲渡が行われる点は、代物弁済予約のメリットといえるでしょう。その反面、譲渡までに時間がかかる、資産価値と債権額に開きがあると満額回収ができなくなる、といったデメリットもあります。
代物弁済の対象となる財産の評価額をしっかり調べ、契約書で「清算に関する特約」を設けておくなど、しっかり準備をした上で契約を進めましょう。
よくある質問
代物弁済予約とは何ですか?
金銭債務が返済できない場合に、動産や不動産。債権など、弁済物の譲渡(売却)によって返済を行う旨をあらかじめ決めておく契約です。仮登記された不動産を含め、弁済物の譲渡(売却)手続きは、債務者が行います。詳しくはこちらをご覧ください。
代物弁済契約を結ぶメリットは何ですか?
不動産の代物弁済予約では仮登記が行われるため、目的物を第三者(他の債権者)に譲渡されることを防げます。また、競売手続きを経ずに資産譲渡ができるため、時価相当の弁済が可能になるというメリットもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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