- 更新日 : 2024年8月30日
販売店契約とは?代理店契約との違いまで解説
サプライヤーと販売店契約を締結すれば、販売店はサプライヤーが供給する商品・サービスを消費者に販売することができます。
今回は販売店契約の意味や代理店契約・特約店契約との違い、販売店契約のメリット・デメリット、契約書に盛り込むべき項目について説明します。
特に営業や小売、卸売に携わっている方や、ご自身で店舗を構えて商売をされている方はしっかり押さえておきましょう。
目次
販売店契約とは
販売店契約は、サプライヤー(メーカーや商品・サービスの提供者)と販売者(小売店)が締結する契約です。販売店契約を締結することで、サプライヤーは販売者に商品・サービスを販売し、販売者は顧客にそれを再販売して利益を得ることができるようになります。例えば、スーパーやコンビニなどの小売店がお菓子を販売する場合は、一般的にお菓子メーカーあるいは卸売業者と販売店契約を結びます。
商品を購入する際は「売買基本契約」を結びますが、サプライヤーと販売者が仕入れのたびに契約書を交わすのは現実的ではありません。販売店契約を締結することで、継続的にスムーズな取引ができるようになります。
また、売買に関することだけでなく、商標権・販売権の利用などについての取り決めも契約書に盛り込むのが一般的です。これについては後述します。
代理店契約や特約店契約との違い
販売店契約と似た用語に「代理店契約」や「特約店契約」があります。商品の売り方はさまざまで、お店で商品を陳列して売る方法もあれば、企業や個人のもとに赴いて売る方法もあります。商売のスタイルや商材によって、締結すべき契約は変わります。
代理店契約との違い
販売店とは商品を仕入れて、それを消費者に再販売する会社もしくは個人のことで、スーパーやコンビニなどの小売店がその代表です。これらの店舗はサプライヤーや卸売業者から商品を仕入れて、消費者に販売します。
代理店は、商品・サービスの営業代行や売買の仲介を行います。代表的なのは保険です。個人が生命保険や自動車保険に加入する際は代理店が窓口となりますが、契約する相手は保険会社で、契約が成立すると保険会社は代理店に手数料を支払います。
販売店契約の場合は損益の帰属先は仕入れを行った販売店となり、商品・サービスが売れると販売店は利益を得ますが、売れ残った場合は損失を被ります。商品の引き渡しや代金の支払いは、販売店とその顧客の間で行われます。
代理店契約では損益の帰属先はサプライヤーとなり、サプライヤーから支払われる手数料が代理店の利益になります。商品が売れなかったとしても、代理店が損失を被ることはありません。商品の引き渡しや代金の支払いは、サプライヤーと顧客の間で行われます。
特約店契約との違い
特約店とは、特別な条件でサプライヤーと取引を行っている卸売・小売業者のことです。例えば、特約店はそのサプライヤーの商品・サービスのみを取り扱う代わりに仕入れ代金を安くしてもらったり、ブランドを名乗る権利や経営ノウハウを利用する権利を与えてもらったりします。
そのため、特約店との契約書には取引の内容や金額に加えて、特約についても記載されます。
一般的に、特約店契約を結ぶとサプライヤー側の支配力が強くなりますが、販売者側にとっても好条件で取引ができる、サプライヤー側のブランド力やノウハウを使えるといったメリットがあります。
販売契約を結ぶ際にチェックすべき項目
販売店契約を締結する際は、一般的に販売店契約書を作成してサプライヤーと販売者が署名・押印を行います。契約書には、以下のような内容を盛り込みます。
- 商品や地域などの範囲:何をどこで売るのか
- 販売価格:サプライヤーが販売店に販売する際の価格
- 最低購入量:販売する商品の最低数量(100個以上100個単位など)
- 支払方法:販売店がサプライヤーに代金を支払う方法や期限など
- 販促活動の取り決め:販売店が商品の広報・宣伝を行う際のルール
- 独占性・排他性:販売店の独占的販売権の有無
- 売れ残りが生じた場合の対応:値下げや買取の可否など
- 競合商品の取り扱い:販売店における競合商品の取り扱いの可否
- 契約の解除:サプライヤーと販売店が販売店契約を解除できる条件
- 秘密保持:取引で知った機密情報や個人情報の取り扱い
- 契約期間:販売店契約の有効期限や更新の方法 など
販売店契約を締結する際は、少なくともこれらの項目を契約書に盛り込み、締結する前に双方が内容を確認することが大切です。
販売契約を選択するメリット
サプライヤーと販売者が販売店契約を締結することのメリットは何でしょうか。販売者視点とサプライヤー視点のそれぞれで、販売店契約を締結するメリットを考えてみましょう。
販売者側のメリットは、価格をある程度自由に設定できることです。代理店契約を締結した場合、代理店はサプライヤーと顧客の仲介役になるため、基本的に価格を自由に設定することはできません。
一方で販売店契約の場合は、一般的に販売店の裁量で価格を設定することができます。売れ残りが発生しそうな場合や独自のセールを行う場合は、値下げが可能です。
売上金をすぐに得られるのも、販売店契約のメリットです。代理店契約の場合は顧客がサプライヤーから商品・サービスを購入し、顧客が代金を支払った後で手数料が支払われるため、その分売上金の入金が遅くなります。販売店契約であれば、顧客から販売店へ直接代金が支払われるので、すぐに利益を得ることができます。
サプライヤー側にも同じことがいえます。代理店契約の場合は、代理店が売買の仲介を行わない限り売上は発生しません。販売店契約であれば、販売者に商品を卸した時点で売上が発生します。
サプライヤー側のメリットは、販促活動の手間やコストがかからないことです。商品・サービスを消費者に販売するためには、店舗や通販サイトを設けて販売できる仕組みを整えなければなりませんし、そのための設備投資や人材採用・育成も必要です。販売店契約を結べば、販売者が自社の代わりに商品を販売してくれます。全国に店舗を構えて運営するのは容易ではありませんが、各地の販売者と販売店契約を締結すれば、販売者に商品を卸すだけで全国の消費者に自社の商品・サービスを販売することができます。
販売契約を選択するデメリット
サプライヤー側にも販売者側にもメリットがある販売店契約ですが、デメリットも少なからずあります。以下のようなデメリットがあることを理解した上で、販売店契約を締結するかどうか検討しましょう。
販売者側のデメリットとして挙げられるのは、在庫リスクです。一般的に販売店契約では販売者側が商品を仕入れ、それを消費者に再販売するため、損益の帰属先は販売店になります。商品が売れれば仕入れ価格と販売価格の差額が利益になりますが、商品が売れ残れば利益を得られないばかりか在庫を抱えることになります。
商売を行う上で、在庫リスクは非常に大きいといえます。「売れるだろう」と思ってお金をかけて大量に商品を仕入れたのに、予想が外れてほとんど売れず、大量の在庫を抱えた結果資金がショートして倒産する事例も少なくありません。また、仕入れから商品・サービスが売れて利益を得るまでにタイムラグがあるのもデメリットで、その間に資金繰りが悪化するケースもよくあります。代理店契約であれば仕入れは不要で、在庫リスクなくビジネスを行うことができます。
一方、サプライヤー側には販売店をコントロールするのが難しいというデメリットがあります。販売店契約は商品・サービスを販売者に売るための契約であり、それ以外のことはサプライヤー側があまりコントロールできません。例えば、サプライヤー側が「この商品は〇〇円で売ってください」「〇〇円で売らないと取引を停止します」と販売店に指示する行為は独占禁止法違反に該当するおそれがあります。サプライヤー側は「小売希望価格」を提示することしかできず、販売店側にはこれを守る義務はありません。また、販促活動や仕入れ数量についても販売店側が判断するため、「売れないから」という理由でその後の発注がなくなることもあり得ます。
販売価格や販売方法などを細かくコントロールしたい場合は、代理店契約もしくは特約店契約を結んだほうがよいでしょう。
商いをするなら販売店契約について理解を深めておきましょう
サプライヤーとして販売者に商品・サービスを提供する、あるいは販売者としてサプライヤーから商品・サービスを仕入れて消費者に販売するという“商い”を行う場合は、販売店契約について理解を深めておく必要があります。また、商売の形態には販売店の他に代理店や特約店もあるため、それぞれのメリット・デメリットを考慮した上で、適切な形態で契約を締結することが大切です。
商売をされている方、あるいはこれから商売をされる方は、販売店契約・代理店契約・特約店契約の違いも把握しておきましょう。
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よくある質問
販売店契約とは何ですか?
サプライヤー(商品・サービスの供給者)と販売者が締結する契約です。販売店契約を締結することで、販売者はサプライヤーの商品・サービスを仕入れて消費者に再販売することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
販売店契約と代理店契約との違いは何ですか?
代理店契約は、代理店がサプライヤーと消費者の間に入って商品・サービスの売買を仲介する契約形態です。販売店契約では利益の帰属先は販売者になりますが、代理店契約の場合はサプライヤーになります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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