- 作成日 : 2025年8月5日
リーガルチェックシステムの機能やメリットは?選び方・おすすめのシステムを解説
契約書の確認は企業法務において欠かせない業務ですが、時間や手間がかかり、専門知識も求められます。近年では、こうした課題を解決する手段として「リーガルチェックシステム」の導入が注目されています。
本記事では、リーガルチェックシステムの主な機能や導入によるメリット、選び方のポイント、代表的なサービスについて解説します。
目次
リーガルチェックシステムの基本
契約書のリーガルチェックは企業法務において欠かせない業務です。近年では、その作業を効率化・支援する「リーガルチェックシステム」が注目されています。このセクションでは、リーガルチェックの基本的な意義と、システムの構造について解説します。
リーガルチェックとは
リーガルチェックとは、契約書や各種取引文書に含まれる条項を法的観点から精査し、リスクや不備を事前に洗い出す業務です。契約が一度締結されると法的拘束力が発生し、企業にとって重大な責任や義務が生じる可能性があるため、チェックの精度がトラブル予防の鍵となります。通常は法務部門や顧問弁護士がこの役割を担いますが、近年はAI技術を活用したツールによる支援が広がってきています。
リーガルチェックシステムの仕組み
リーガルチェックシステムは、AIを用いて契約書のレビューを自動化・効率化するためのシステムです。契約書ファイルをアップロードすると、AIが条文を解析し、潜在的なリスクや不足している条項を指摘する仕組みです。中には、リスクレベルを可視化したり、推奨文言の修正案を表示するシステムもあります。
また、契約書管理機能や弁護士の監修ひな形との連携を備えるサービスも登場しており、企業の法務体制に応じて多様な活用が可能です。システム選定にあたっては、自社の課題やリソースに合わせて最適な機能を見極めることが求められます。
リーガルチェックシステム導入のメリット
リーガルチェックシステムを導入することで、契約書レビュー業務の効率化だけでなく、多面的なメリットが得られます。以下では、導入によって期待される代表的な利点を紹介します。
レビュー作業の時間短縮
AIによる自動解析機能により、契約書のレビュー作業にかかる時間を大幅に短縮できる可能性があります。導入事例では、レビュー時間を最大90%削減したケースも報告されています。関連する条文例や法令情報、過去の契約書を即時に提示してくれるため、従来のような煩雑な調査作業が不要になります。Wordアドインとして利用可能なサービスであれば、契約書と参考資料を並べて表示しながら効率的に確認できます。
これにより、1通あたりのレビュー所要時間が大幅に削減され、業務全体のスピードアップに直結します。
契約リスクの軽減
AIが契約書に潜むリスクを自動検出するため、ヒューマンエラーによる見落としを未然に防げます。不利な条項や不足条項が明確に表示され、修正文例や追加提案も提示されるため、専門知識が浅くても安心してレビュー可能です。AIの指摘に人間の確認を加えることで、抜け漏れを防ぐ体制が構築でき、担当者の心理的負担も軽減されます。
人的コストの削減
レビュー作業の自動化により、外部弁護士への依頼コストや社内法務担当者の工数を削減できます。また、新人教育においても、高度な文書検索スキルの習得が不要となり、OJTの期間や教育コストを抑えられます。これにより、法務部門の全体的な生産性が向上します。
契約締結のスピードアップ
レビュー工程の迅速化は、契約交渉から締結までの全体リードタイムの短縮にもつながります。外部法律事務所への依頼頻度を減らせれば、応答待ちの時間も減り、契約締結までのスピードが飛躍的に向上します。営業部門が一次チェックを行い、法務が最終確認する運用によって、さらに手続きの迅速化が期待できます。
法務ナレッジの蓄積・共有
リーガルチェックシステムは契約ナレッジの集約と再利用を可能にします。条文例やレビューコメント、外部弁護士の修正提案などをデータベース化し、次回以降の契約審査に活用できます。これにより、属人化の回避と組織的な知見の継承が可能となり、契約実務の質が継続的に向上します。
リーガルチェックシステムの主な機能
リーガルチェックシステムは、契約書の確認ツールにとどまらず、契約実務全体を支える多機能なプラットフォームです。以下では、主な機能を解説します。
AIによる契約書自動レビュー
リーガルチェックシステムの中核をなすのが、AIによる契約書の自動レビュー機能です。WordやPDF形式の契約書をアップロードすることで、AIが内容を分析し、リスク条項や抜け漏れを自動検出します。リスクは「高・中・低」のレベルで表示され、事例と共に視覚的に分かりやすく示されるため、専門知識がない利用者でも直感的に理解できます。画像認識によって紙の契約書をチェックできるシステムも存在します。
また、自社ひな型とレビュー対象の契約書を照合し、条文単位で差異を検出する差分比較機能も搭載されています。新旧対照表の自動生成機能により、煩雑な作業を大幅に削減できます。さらに、英文契約書に対応したレビュー機能を持つサービスも増加しており、英語圏弁護士による修正文例の提示や、多言語対応によってグローバル契約にも対応可能です。
契約条文の修正支援
自動レビューで指摘されたリスクに対して、具体的な修正文例をAIが提示してくれる機能もあります。自社に有利な修正案、双方に公平な案など、希望に応じた選択が可能で、実務に即した修正作業を支援します。条文にコメントを付けて共有する機能により、複数人でのレビューもスムーズに行えます。
さらに、条文検索機能により、キーワードから自社の過去条文やひな型を迅速に呼び出すことができます。日本語から英文条項を検索する機能や、AIによる不足条項のサジェストなども活用でき、網羅的かつ正確な修正が可能となります。
契約書作成のサポート
契約書の新規作成を支援するテンプレート機能も充実しています。法律事務所監修の信頼性の高いひな型を基に、必要事項を入力するだけで契約書を作成可能です。また、契約書のバージョン履歴管理機能により、契約交渉の途中で「最新版が分からない」といった混乱を防げます。
クラウド上での同時編集やコメント共有も可能で、編集プロセスの効率化に貢献します。さらに、体裁補正機能ではインデントや表記揺れなどを自動補正し、契約書の品質を向上させることができます。
契約審査業務の管理機能
法務部門が大量の契約書を扱う中で、レビュー業務の進捗管理も重要です。リーガルチェックシステムでは、対応状況を可視化できるレポート機能を備えており、タスクの割り振りや負荷の偏りを防げます。外部弁護士との連携にも役立ちます。
また、契約書データベースとしての機能も兼ね備え、自社の条文例や交渉履歴をナレッジとして蓄積・活用できます。契約相手や契約類型ごとのタグ付け、契約更新期限のアラート通知など、契約書管理そのものを効率化するツールとしても優れています。
リーガルチェックシステムを選ぶポイント
多様なリーガルチェックシステムが登場する中で、自社に最適なものを選ぶには、機能や対応範囲、使いやすさ、コストなど複数の視点からの比較が欠かせません。本項では、選定時に押さえるべきポイントを解説します。
自社の契約類型・言語に対応しているか
まず最も基本的な確認項目は、システムが自社が扱う契約書の種類に対応しているかどうかです。特に英文契約や業界特有の契約書を扱う企業では、対応実績の有無や、多言語レビュー機能の有無が重要です。近年では、中国語やフランス語などの多言語対応を進めるサービスも登場しており、グローバル企業にとっては選定の決め手となります。また、WordやPDFだけでなく、紙のスキャン画像など、多様なファイル形式に対応しているかも確認しておきましょう。
自社の契約ポリシーに合わせたチェックが可能か
AIによる汎用的なレビューだけでなく、自社の契約ポリシーや過去の契約実績を反映したチェックができるかどうかも重要です。例えば、自社の契約書ひな型や交渉ノウハウをAIに学習させ、独自のレビュー基準を設定できるサービスであれば、実務に即したチェックが可能です。GVA社のように、マニュアル・過去契約を基にカスタマイズ可能な機能を提供する例もあります。
搭載されている機能と他システムの連携可否
レビュー機能だけでなく、契約書の作成・承認・管理まで一貫して行いたい場合は、CLM(契約ライフサイクル管理)や電子契約、ワークフローとの連携が可能なサービスが望ましいです。コメント機能、共同編集、API連携、Salesforceなどとの連携可否も、業務効率を左右します。特に既存システムとの親和性や拡張性は、中長期的な視点での選定において重要です。
導入サポート・セキュリティ
導入時のサポート体制やUIの直感性は、定着率を大きく左右します。トレーニング・ヘルプデスクの充実度、トライアル提供の有無なども確認しましょう。また、契約書は機密性が高いため、データ暗号化やアクセス制御、ISO認証など、セキュリティ体制の堅牢さも導入判断の鍵となります。
費用が予算に見合っているか
サービスの価格は利用規模や機能内容により大きく異なります。月額1万円程度から始められるプランもあれば、AI機能が充実した大手サービスでは初期費用+月額で高額になることもあります。自社の契約件数、利用人数を踏まえ、予算内で費用対効果が見合うかどうか、複数社から見積もりを取り比較することが大切です。将来的なスケーラビリティも含めて検討しましょう。
リーガルチェックシステムのおすすめ3選
ここでは、代表的なリーガルチェックシステム3つのサービスについて、特徴や費用感を紹介します。
LegalOn Cloud(旧称LegalForce)
LegalOn Cloudは、LegalOn Technologies社が提供する統合法務プラットフォームで、AI契約レビューから契約管理、法務相談、法改正対応まで広範な法務業務をカバーしています。弁護士監修による高精度なレビュー機能と、豊富な契約書ひな型、英文契約レビューや電子帳簿保存法対応機能など、多機能性が特徴です。ナレッジが蓄積されていく仕組みも備えており、業務全体の質を高める構造になっています。
費用は「初期費用+月額課金制(要問い合わせ)」で、大企業を中心に導入が進んでいます。機能モジュールごとのカスタマイズも可能です。
GVA assist(OLGA)
GVA assistは、GVA TECH社が開発した法務プラットフォーム「OLGA」の一部で、AIによる契約書レビューと柔軟なカスタマイズ性が特徴です。300以上の審査基準に基づく一般的なチェックだけでなく、自社の契約マニュアルや過去契約を学習させて独自ポリシーに即したレビューが可能です。差分比較、表記ゆれ修正などの細かな機能も充実しており、契約業務の効率化に大きく貢献します。
費用は「月額課金+初期費用(要問い合わせ)」で、利用人数や機能内容に応じたプラン見積もりが必要です。大企業からスタートアップまで幅広く導入実績があります。
参考:GVA assist
LawFlow(ローフロー)
LawFlowは、無料で利用可能なAI契約書チェックサービスです。秘密保持契約(NDA)など43種類の契約書に対応し、Webブラウザから手軽に契約書をアップロードしてリスクチェックが行えます。元裁判官監修のアルゴリズムによる解析で、リスク条項を検出・解説します。エンタープライズプラン(無料)を利用すれば、保存容量無制限で社内共有も可能です。
費用は完全無料で、追加費用なしに法人利用も可能という点で、コストを抑えたい企業に適しています。
参考:LawFlow
リーガルチェックシステムで契約業務を効率化しよう
契約書レビューの精度とスピードを両立するには、リーガルチェックシステムの活用が有効です。AIが契約書の条文を自動解析し、リスクのある箇所を指摘・修正提案することで、確認作業の時間を大幅に削減できます。さらに、人的ミスを防ぎ、法務の知見をデータベース化して全社で共有することも可能になります。リーガルチェックシステムを導入して、契約業務をスマートに進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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