• 更新日 : 2022年10月13日

工事下請基本契約書とは?記載項目をテンプレートで確認!

下請業者に作業を依頼する場合は、工事下請基本契約書が必要です。工事下請基本契約書に記載すべき項目は建設業法で定められていますが、その他の項目は自由に追加することができます。今回はテンプレートを用いながら、請負契約の契約方式や有効期限、印紙税額などについて解説します。

工事下請基本契約とは

工事下請基本契約とは、元請人が下請人に工事を依頼する場合の合意のことです。下請人よりも元請人のほうが立場が上のことが多く、値段を一方的に下げられたり、契約書面をもらえなかったりしてトラブルになることがあります。そのため、建設業法ではさまざまな規制を行っています。

建設業法との関わり

下請契約自体は口頭で行っても有効ですが、建設業法ではトラブル防止の観点から書面を作成することを義務付けています(建設業法19条)。

また、注文者からの請求があったときは、見積書を交付する義務があります(建設業法20条2項)。見積書には建設業法19条1項で定める内容のうち、請負代金の額以外のすべてについて記載しなければなりません。

その他、以下のような規制があります。

  1. 元請人は、通知を受けたら20日以内に検査を完了すること(建設業法24条の4第1項)
  2. 元請人は、直ちに引渡しを受けること(建設業法24条の4第2項)
  3. 元請人は、下請人に不利な取り扱いをしてはならないこと(建設業法24条の5)
  4. 下請代金は、すみやかに支払うこと(建設業法24条の6第1項、同2項)
  5. 支払いに割引困難な手形を交付してはならないこと(建設業法24条の6第3項)

ちなみに建設業法は2020年10月に改正されているため、古い書式を使っている事業者は改正に対応しているかどうか確認してください。

参考:建設業法|e-Gov法令検索

請負契約の方式は?

請負契約の方式には、以下の3種類があります。

    1. 「建設工事請負基本契約(又は建設工事請負基本約款)+注文書+請書」のセットで締結する方式

建設工事基本契約に基本的事項のみを記載し、個別の条件については注文書と請書で行う方式です。反復継続して取引するケースに適しています。

    1. 「建設工事請負契約」のみで締結する方式

建設工事基本契約にすべての必要事項を記載して締結する方式です。継続的な取引をしないケースに向いています。

  1. 「注文書+請書」のみで締結する方式

建設業法では必要事項を記載した書面を作成することが義務付けられていますが、タイトルは必ずしも「契約書」でなければならないわけではないので、注文書に必要事項が記載されていれば、それを申込として、請書が提出されれば一応有効です。しかし国土交通省は「①又は②が必要」としていますので、この方法はおすすめしません。

工事下請基本契約書とは?

工事下請基本契約書とは、元請人が下請人に工事を依頼する場合の合意を書面化したものです。工事下請基本契約書は必ず作成しなければならないものではありませんが、権利関係を明確にするために作成しておくことをおすすめします。特に継続的に取引を行う場合は、建設業法上定めなければならない事項を含む工事下請基本契約書を締結しておいて、その後は工事の状況に応じて個別に契約を締結するという方法が便利です。

工事下請基本契約書はどんな時に使用する?

工事下請基本契約書は、契約締結時に作成したら後は保管しておくだけで、基本的に使うことはありません。ただし担当者が代わり、工事の内容や元請人との関係について確認する際は、工事下請基本契約書が必要になります。

工事下請基本契約書を使うのは、元請人と取り決めについて見解の相違があった場合に、どちらの見解が正しいかを契約書を見て確認するといった場面などです。

また、何らかのトラブルが生じて裁判などになった場合は、工事下請基本契約書を証拠として裁判所に提出し、契約書の内容をもとに裁判所が法律的な判断を行うこともあります。

工事下請基本契約書に有効期限はある?

法的義務はありませんが、一般的には工事下請基本契約書の有効期限を定めます。有効期限は当事者が自由に決めることができ、「○年○月○日から○年○月○日の1年間とする。ただし、期間満了の1ヵ月前までに解約の申し入れがない限り、同じ条件で1年間更新されるものとし、その後も同様とする。」などと記載します。

工事下請基本契約書の印紙税はいくら?

工事下請基本契約書を作成した場合は、契約書に印紙を貼る必要があります。印紙税の額は、以下の表のとおりです。

記載された契約金額
税額
1万円未満のもの非課税    
1万円以上 100万円以下のもの200円
100万円を超え 200万円以下のもの400円
200万円を超え 300万円以下のもの1,000円
300万円を超え 500万円以下のもの2,000円
500万円を超え 1,000万円以下のもの1万円
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの2万円
5,000万円を超え 1億円以下のもの6万円
1億円を超え 5億円以下のもの10万円
5億円を超え 10億円以下のもの20万円
10億円を超え 50億円以下のもの40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

引用:No.7102 請負に関する契約書|国税庁

ただし、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に作成する契約書については軽減措置があるため、以下のようになります。

記載された契約金額
税額
100万円を超え 200万円以下のもの200円    
200万円を超え 300万円以下のもの500円
300万円を超え 500万円以下のもの1千円
500万円を超え 1,000万円以下のもの5千円
1,000万円を超え 5,000万円以下のもの1万円
5,000万円を超え 1億円以下のもの3万円
1億円を超え 5億円以下のもの6万円
5億円を超え 10億円以下のもの16万円
10億円を超え 50億円以下のもの32万円
50億円を超えるもの48万円

引用:No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置|国税庁

工事下請基本契約書への記載項目(14項目)

建設業法では、工事下請基本契約書の記載事項として最低限書くべき内容が定められています。以前は14項目でしたが、2020年10月の改正で以下の15項目になりました。

① 工事内容
工事内容は建物名や場所を示す方法と、以下のように「別紙の設計書仕様のとおり」と記載して詳細な工事内容を添付する方法があります。

1. 工事の目的物は、別紙の設計仕様のとおり。

② 請負代金の額
請負代金の額は、以下のように請負代金の額を記載すれば足ります。

5. 請負代金額 金○○円

③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
工事着手の時期及び工事完成の時期は、以下のように具体的な日付を書きます。

3. 工期 令和  年  月  日から
令和  年  月  日まで

④ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払いの定めをする際の、その支払いの時期及び方法
前金を支払う場合や出来形に対して支払う場合、支払いの時期や方法を記載します。前金や出来形払いがない場合は、記載する必要はありません。本記事で紹介するテンプレートには、この記載はありません。

⑤ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

元請人から工事の中止や変更が求められると下請人は困るため、その場合の措置について定めておきます。具体的には以下のように記載します。

第3条(工事の中止、変更の場合の措置)
甲は、やむを得ない場合には工事内容を変更又は中止することができる。この場合、請負代金又は工期を変更する必要があるときは、甲と乙が協議してこれを定める。工事の中止、変更によって乙が損害を受けたときは、甲は、その損害金を賠償しなければならない。

⑥ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
天災や不可抗力によって工期に変更が生じた場合、一般的に下請人はその損失を負担しないので以下のように規定します。

第7条(履行遅滞の責任を負わない場合)
乙は、本契約上の義務の履行が、自然災害やテロなど不可抗力による事由により遅滞したときには、甲に対し履行遅滞の責を負わない。なお、乙は、当該事由が生じた場合、甲に対し、ただちに発生を報告する。

⑦ 価格等(物価統制令(昭和 21 年勅令第 118 号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
物価が極端に上昇した場合や、工事に変更が生じた場合は下請代金を変更することがあるため、以下のように規定します。

第8条(下請代金の変更)
甲は、予測できない急激な物価変動があった場合、工事の追加や変更があった場合には、下請代金の変更を乙に求めることができる。

⑧ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
工事の責任は原則として下請業者にありますが、元請人の指示によって第三者に損害を及ぼした場合は元請人が負担すべきなので、以下のように記載します。

第9条(第三者への損害賠償)
工事の施工のために、第三者に損害を及ぼしたときは、乙がその損害を賠償する。ただし、甲の指示に基づき施行した結果、第三者に損害を及ぼした場合には、甲の負担とする。

⑨ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与する際の、その内容及び方法に関する定め
資材や機械の提供がなければ記載する必要はありませんが、提供がある場合は以下のように記載します。

第4条(原材料、機械の調達)
本工事にかかる原材料は甲が調達し、乙に交付する。ただし、乙が甲の事前の承諾を得て調達をした場合、その費用は甲が負担するものとする。乙は甲に対し工事に必要な建設機械を貸与するよう求めることができる。

⑩ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
工事完成後の検査の時期と引渡しの時期を規定します。

6 引き渡しの時期 完成の日から○○日以内
7 検査の時期 引渡後7日以内

⑪ 工事完成後における請負代金の支払いの時期及び方法
工事完成後における請負代金の支払いの時期や方法は、以下のように規定します。テンプレートの例は、振込による分割払い(3回)です。

第2条(下請代金の支払方法)
甲は乙に対し、下請代金を次のとおり分割して振込にて支払う。振込手数慮は甲の負担とする。 令和  年  月  日  金○○万円
令和  年  月  日  金○○万円
令和  年  月  日  金○○万円

⑫ 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをする際のその内容
これは以前の瑕疵担保責任の規定で、現在は契約不適合責任と呼ばれています。この項目は、定める場合のみ規定します。テンプレートにはありませんが、規定する場合は「契約の内容と適合しない部分がある時は、乙の責任において修理するものとし、その費用は乙が負担するものとする。」などと記載します。

⑬ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
期日までに工事が完了しないこともあるので、期日に遅れた場合は違約金を支払うよう規定します。

第6条(違約金)
乙が期日までに仕事を完成せず、目的物を引き渡すことができないときは、違約金として本工事完成まで1日につき金○○円を甲に支払う。

⑭ 契約に関する紛争の解決方法
紛争が生じた場合、どの裁判所で裁判するかを定めます。

第11条(合意管轄)
本件に関し、紛争が生じた場合については、○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

⑮ 工事を施工しない日・時間帯
建設業法の改正で項目が1つ追加され、工事を施工しない日と時間帯を記載する必要があります。下線のところに「土曜日、日曜日」などと記載します。

4 工事を施工しない日・時間帯:_____________

工事下請基本契約書に最低限記載する必要がある15項目について解説しました。以下の工事下請基本契約書のテンプレートを参考にしてください。

工事下請基本契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。

建設業における工事下請基本契約について理解しておこう!

今回は工事下請基本契約の概要や工事下請基本契約で最低限書くべき内容、必要な印紙税額などについて解説しました。

下請人は元請人よりも立場が弱いことが多く、不利な契約を押し付けられることがありますが、契約において当事者は対等です。少なくとも法律で規定されていることは相手に伝えやすいはずなので、工事は口約束だけで請け負わず、建設業法で規定されている必要項目を記載した契約書を交わすようにしてください。

今回紹介したテンプレートは、一例にすぎません。必要事項が記載されていれば、契約書はどのように作成しても構いません。インターネット上には多くのテンプレートがあるので、自分が使いやすいものを選んでカスタマイズするとよいでしょう。

よくある質問

工事下請基本契約とはなんですか?

工事下請基本契約とは、元請人が下請人に工事を依頼する場合の合意のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

工事下請基本契約書に記載する項目には何がありますか?

建設業法19条に、最低限書くべき内容としては15項目が定められています。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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