• 作成日 : 2025年5月7日

電子署名と電子証明書(デジタル証明書)の違いは?e-Taxでの取得方法も解説

電子署名と電子証明書は、本人確認と改ざん検知を担う仕組みであり、法的にも効力が認められています。

本記事では電子署名と電子証明書それぞれの役割や仕組みの違いを整理し、e‑Taxでの署名用電子証明書の取得手順をわかりやすく解説します。

電子署名とは

電子署名とは、電子文書に付された作者自身の意思表示を保証し、第三者によるなりすましや改ざんを防止する仕組みです。電子署名法(平成12年法律第102号)では、「一定の要件を満たす電子的手段による署名をした電子文書は、真正に成立したものと推定する」と規定し、手書き署名や押印と同等の法的効力を付与しています。

電子署名は文書のハッシュ値を発行者の秘密鍵で暗号化し、電子的な署名として文書に付与します。受信者は公開鍵で復号し、改ざんの有無をハッシュ値比較で検証可能です。この仕組みにより、契約書や各種申請書の電子化が法的にも安心して行えるようになっています。

電子署名について詳しくは、以下の記事をご覧ください。

電子証明書(デジタル証明書)とは

電子証明書は、公開鍵暗号方式を用いる際に「公開鍵が本当にその持ち主に帰属する」ことを第三者機関が保証するデータです。公的個人認証サービス(JPKI)や商業登記認証局など、政府認証基盤(GPKI)の相互認証を行う認証局(CA)が発行します。

証明書には所有者情報、公開鍵、発行者情報、有効期間などが含まれ、電子署名に添付して送信することで、「この公開鍵で署名を検証してよい相手か」を受信者に示します。この流れにより公開鍵が流出・改ざんされていないことを保証し、署名の信頼性を担保します。

電子署名と電子証明書の違い

電子署名と電子証明書は、いずれも電子的な取引において信頼性を確保するための重要な技術ですが、その役割や仕組み、発行主体には明確な違いがあります。両者を混同したまま運用してしまうと、正確なリスク判断や法的要件の理解に支障をきたす可能性があります。

ここでは、実務上混乱しやすいポイントを整理しながら、電子署名と電子証明書それぞれの特徴と相違点について詳しく解説します。

役割の違い

電子署名と電子証明書は、いずれも電子的な手段で本人性や文書の真正性を担保するものですが、それぞれの果たす役割には明確な違いがあります。電子署名は主に「誰がその文書を作成したのか」という本人性の保証と、「その文書が途中で改ざんされていないか」という完全性の保証を目的とした技術です。

一方電子証明書は、電子署名で用いる公開鍵が確かに特定の個人や法人に帰属していることを保証する役割を担います。つまり、電子署名は「この文書は私が作成したものです」と主張する手段であり、電子証明書は「この主張をしている“私”が本当にその本人であることを保証する」証明書です。このように、電子署名が直接的な証明機能を担うのに対し、電子証明書はその署名の信頼性を技術的に裏付ける仕組みであるといえます。

必ずしも同じというわけではありませんが、電子署名を「実印」、電子証明書を「印鑑証明書」と捉えると、役割の違いが認識しやすいです。

仕組みの違い

電子署名は、秘密鍵と公開鍵の組み合わせによる公開鍵暗号方式を基盤としています。署名者はまず文書のハッシュ値(要約値)を作成し、それを秘密鍵で暗号化することで「電子署名」を生成します。

この署名データを受け取った第三者は署名者の公開鍵で復号を行い、同じ手順で生成したハッシュ値と照合して文書が改ざんされていないこと、および署名者が誰かを確認します。

一方の電子証明書は、認証局(CA)が発行し、利用者の公開鍵に対しその所有者の身元情報(氏名や組織名など)を結び付け、全体に認証局の電子署名を施したものです。電子証明書によって第三者は公開鍵の信頼性と、その公開鍵が特定の個人・団体に帰属していることの確認が可能になります。

したがって、電子署名と電子証明書は連携して機能し、署名の正当性と安全性を確保する基盤を形成しています。

誰が発行するかの違い

電子署名は、原則として文書の作成者自身によって発行されます。すなわち、署名者が自ら保有する秘密鍵を用いて電子署名を生成するものであり、第三者による発行を要しません。

一方、電子証明書は認証局(CA:Certification Authority)と呼ばれる第三者機関が発行するもので、利用者が提出する身分証明書などをもとに本人確認を行ったうえで、公開鍵に対して証明を行います。日本国内では、デジタル庁が提供する「公的個人認証サービス」や、経済産業省の認定を受けた特定認証業務を行う民間事業者などが、法令に準拠した信頼できる認証局として機能しています。

このように、電子署名はユーザー個人が自由に実施できる行為であるのに対し、電子証明書は信頼性を担保するために、国の認定を受けた組織による厳格な発行手続きが必要です。この違いが、署名の信頼性と法的効力の裏付けを分ける重要な要素といえます。

電子証明書を使用した電子署名の方法

電子署名は電子証明書を組み合わせることで、より高い信頼性と法的効力を持たせられます。ここでは、認証局からの証明書取得、署名の作成、検証までの基本的な流れをわかりやすく解説します。

認証局から証明書を発行してもらう

電子署名に用いる電子証明書は、自身で作成できません。一般的には、国の認定を受けた認証局に申請し、所定の手続きを経て発行してもらう必要があります。申請時には、個人や法人であれば運転免許証や登記事項証明書などの本人確認書類の提出が求められ、厳格な本人確認が行われます。

認証局は申請者が真正であると確認したうえで、その申請者に紐づいた公開鍵と身元情報をセットにした電子証明書を作成し、発行します。また、この際に対応する秘密鍵(署名に用いる鍵)も、ICカードなどのセキュリティデバイスを通じて提供されることが多く、不正利用防止の観点から安全な鍵管理が徹底されています。

署名を作成し、秘密鍵で暗号化する

電子署名の具体的な手順は、まず署名対象の電子文書に対しハッシュ関数と呼ばれる演算処理を行い、元文書の内容を一定長の文字列(=ハッシュ値)に変換するところから始まります。

このハッシュ値は、元の文書が少しでも改ざんされるとまったく異なる値になる性質を持っているため、改ざん検知の観点で極めて重要な役割を持ちます。次に、このハッシュ値を自分だけが保有する秘密鍵で暗号化します。

この手続きは、専用の電子署名ソフトやクラウドサービス上で自動的に行われることが一般的です。署名を行うユーザーは、対象ファイルを選択し、秘密鍵が格納されたICカードやトークンを用いて署名操作を実行します。こうして作成された暗号化済みハッシュ値が、電子署名データとして電子文書に付加されます。

署名データに電子証明書を追加する

暗号化された署名データを受信者側が正しく検証できるようにするためには、公開鍵と利用者情報がセットになった電子証明書を署名データに付加しなければなりません。

電子証明書の付加により受信者は署名者が用いた公開鍵の正当性を信頼でき、また誰が署名したのかを明確に把握することが可能になります。電子証明書には、署名者の氏名や所属組織名、証明書の有効期間、公開鍵、発行者である認証局の名称などが含まれており、改ざん防止のために認証局自身の電子署名が施されています。

なお、電子署名と電子証明書は一体化して文書ファイルに埋め込まれるか、あるいは署名ファイルとして別途送付する方式が用いられます。受信者は電子署名の検証だけでなく、電子証明書の発行元や有効性も併せて確認できるようになります。

署名を公開鍵で復号し、ハッシュ値を確認する

受信者は送付された電子署名付きの文書を受け取ると、文書に添付された電子証明書から署名者の公開鍵を抽出します。この公開鍵を使用して、暗号化された署名(すなわちハッシュ値)を復号し、文書の内容と対応しているかを確認します。

次に、受信者の端末上で文書自体に対して再度ハッシュ関数を用いて新たなハッシュ値を生成、署名に含まれていたハッシュ値と照合し、文書の改ざんが行われていないこと、および署名者が真正であることを確認します。

もし内容が改変されていれば、ハッシュ値は一致しません。

この工程を通じて、電子署名は文書の真正性と完全性を強く担保する手段として機能しています。また、電子証明書が有効期限内であることや失効していないことも、同時に確認されるのが一般的です。

電子署名や電子証明書を使用するメリット

電子署名と電子証明書の併用によって、単なる電子文書のやり取りを超え真正性や安全性を確保できます。

ビジネスや行政手続きにおいては法的信頼性や証拠力が求められる場面も多く、これらの技術はそうした要請に応えるものです。ここでは、電子署名や電子証明書における特に重要な2つのメリットについて解説します。

本人確認を強化できる

電子証明書は、公開鍵と発行者の身元情報を紐づける仕組みによって第三者によるなりすましを防ぎます。証明書の発行には厳格な本人確認が求められるため、「誰が署名したのか」を技術的かつ客観的に証明できる点が大きな特徴です。

その結果メールやクラウドサービスなどで文書の送受信を行う際も、相手が本当に本人かどうかを高い精度で確認でき、信頼性のある電子取引が可能になります。特に、契約書や公的書類など重要な電子文書のやり取りでは、紙の印鑑に代わる強力な本人確認手段として、電子証明書付きの電子署名が有効に機能します。

文書の改ざんを防止できる

電子署名では、文書の内容に対してハッシュ関数を用いてハッシュ値を生成し、それを秘密鍵で暗号化することで署名が作成されます。このプロセスにより、文書の一部でも改変が行われると元のハッシュ値と一致しなくなるため、改ざんの有無を確実に検出が可能です。

これは、紙の文書における「訂正印」のような物理的なチェック手段よりも高い精度と自動性を備えています。さらに、電子署名が有効である限りその文書がいつ・誰によって署名されたのかも明らかになるため、トレーサビリティの確保にもつながります。

契約内容の証拠性を担保したい場合や、文書の完全性を長期間保持したい場面において、大きな利点となるでしょう。

電子署名や電子証明書を使用するときの注意点

電子署名や電子証明書は非常に有用な手段ですが、導入・運用にあたっては事前に把握しておくべき注意点もあります。特に、取引先との連携体制や証明書の有効期限といった運用面のポイントを見落とすとトラブルや業務の停滞につながる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。

以下に、代表的な注意点を解説します。

取引先が電子契約に対応できるか確認する

電子署名や電子証明書を導入する際には、自社だけでなく取引先の受け入れ体制にも注意が必要です。電子契約で合意文書を交わしたとしても、相手方が電子署名の検証方法や法的効力について理解していなかった場合、トラブルや再交渉につながるおそれがあります。

また、取引先の社内規定で紙の契約書を原則としているケースや、電子契約を行える環境が整っていないケースも依然として存在します。そのため、電子契約を導入する際は、事前に相手方の合意を取り、使用する署名方法や証明書の種類、保存形式などをすり合わせることが重要です。

電子証明書の有効期限に注意する

電子証明書には有効期限が設定されており、期限を過ぎると証明書は失効し、電子署名の検証にも使用できなくなります。

たとえ署名自体が正しく行われていても有効期限が切れた証明書を使用していた場合、その署名の信頼性や法的効力が疑問視される可能性があります。特に税務申告や契約文書のように、後日内容の正当性を問われる可能性がある文書においては、有効な証明書で署名を行うことが必須です。

また、証明書の更新手続きには時間がかかることもあるため、有効期限の管理には最新の注意を払いましょう。証明書の期限が近づいた際にアラートを発するようなリマインダー機能や、管理台帳の整備を通じて、失効リスクに備えると安心です。

e-Taxで使用する署名用電子証明書の取得方法

e-Taxでは、電子申告の際に「署名用電子証明書」が必要です。個人の利用者においては、マイナンバーカードに格納された電子証明書を使用するのが一般的で、手続きも比較的簡単です。

以下では、署名用電子証明書をe-Taxで利用するために必要な基本的な取得・登録の流れを解説します。

マイナンバーカードを取得する

e-Taxにおける署名用電子証明書の利用には、まずマイナンバーカードの取得が前提になります。マイナンバーカードには標準で2種類の電子証明書が格納されていますが、e-Taxで用いるのは「署名用電子証明書」です。

この証明書は税務署などへの各種電子申請において、申請者が本人であることを確認する役割を果たします。マイナンバーカードの取得は、市区町村の窓口や郵送・オンライン申請によって手続きが可能で、取得後に本人確認と引き換えで受け取ります。発行されたカードには、署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書がそれぞれ搭載されており、e-Taxでは前者を使用します。

電子証明書の有効期限を確認する

マイナンバーカードに搭載されている署名用電子証明書には有効期限(5年間)が設けられています。期限を過ぎると自動的に失効扱いとなり、e-Taxをはじめとする電子申請に使用できないため、確認して有効期限を把握しておきましょう。

なお、電子証明書の有効期限はマイナンバーカード本体の有効期限とは異なります。特に注意したいのは、有効期限の満了がe-Taxの申告時期と重なるケースであり、このような場合には、更新手続きを事前に済ませておかなければなりません。

更新は市区町村窓口で行い、本人確認書類とマイナンバーカードを持参のうえ手続きします。電子証明書の更新は失効前であれば無料で対応されるため、期限管理を怠らないよう心がけましょう。

e-Taxに電子証明書を登録する

署名用電子証明書を取得したあとは、e-Taxソフト上でその証明書を利用者情報に登録する必要があります。e-Taxの利用開始には、初回ログイン時に「利用者識別番号」の取得と、「電子証明書の登録」が必要です。

署名用電子証明書を登録する際はカードリーダーを接続したうえで、e-Taxソフトの「利用者情報登録」メニューから案内に従って署名用電子証明書を読み取り、登録処理を行います。この手続きが完了すると以後の申告や申請において自動的に電子署名が付与され、本人確認が可能になります。

なお、登録後に証明書が更新された場合は、再度同じ手順で新しい証明書の再登録が必要であるため、都度確認を行うことが重要です。

電子署名と電子証明書を正しく理解しよう

電子署名と電子証明書は、デジタル社会における本人確認と文書の信頼性を確保するための重要な仕組みです。両者は密接に連携しながらも、それぞれ異なる役割を果たしており、特にe-Taxや電子契約などの実務においては、正しい理解と適切な運用が不可欠です。

マイナンバーカードによる署名用電子証明書の取得や、有効期限の管理、相手方との事前確認など、実務上のポイントを押さえることで、法的に有効な電子取引を安全に行えます。今後ますます拡大する電子申請やペーパーレス化の流れに対応するためにも、基本的な仕組みとメリット、注意点を把握しておくようにしましょう。


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