- 作成日 : 2025年3月24日
連帯保証人引受承諾書とは?テンプレートやNGな書き方を解説
「連帯保証人引受承諾書」とは、主に賃貸借契約において連帯保証人を立てるときに作成する文書です。第三者が保証人となることに「承諾した」と証明できるように当該文書は作られます。本記事では連帯保証人引受承諾書の意義や作成方法について詳しく解説しますので、参考にしてください。
目次
連帯保証人引受承諾書とは?
連帯保証人引受承諾書は、連帯保証人が債務者(借主)の債務を保証することを承諾する文書です。連帯保証人は金銭消費貸借契約でもよく立てられます。しかし、「連帯保証人引受承諾書」という名称でやり取りされるのは、主に賃貸借契約を締結する場面です。
この場合、連帯保証人が負う責任は、以下の問題が生じたときの支払い義務です。
- 借主が家賃を滞納している
- 賃貸物件の原状回復に追加の費用が発生しているが借主が支払わない
- 賃貸借契約の違反があり損害賠償請求を受けているが借主がこれに応じない など
このような支払いがなされないリスクを債権者が回避するため、保証契約は締結されます。さらに、保証契約がなかったことにならないように書面を作成します。
連帯保証人引受承諾書は連帯保証人を引き受ける方にその意思表示を形に残してもらい、貸主側のリスクを小さくする目的を持つ承諾書です。
そもそも連帯保証人とは?
連帯保証人とは、主たる債務者(賃貸借契約における借主)が債務を履行できない場合に、その債務を主債務者と並んで負担する立場の第三者を指します。
実務上、債権者(賃貸借契約における貸主)はまず主債務者に請求を行います。さらに、連帯保証人は主債務者と同等の責任を負うことから、債権者は債務が生じた段階で連帯保証人に債務の履行を求めることも法律上可能です。
連帯保証人になれる人、なれない人
法律上の義務あるいは契約上の義務に従い連帯保証人を立てるとき、保証人となる方は、法律上の行為能力を持つことと債務を履行するのに必要な資力を持つことが求められます。
第四百五十条 債務者が保証人を立てる義務を負う場合には、その保証人は、次に掲げる要件を具備する者でなければならない。
一 行為能力者であること。
二 弁済をする資力を有すること。
行為能力とは、単独で有効な法律行為をできる能力を指すため、未成年者や成年被後見人などはこの能力が制限されています。そのため、少なくとも成人していること、そして後見制度を利用していないことも確認する必要があるでしょう。
※後見制度を利用している場合でも、保証をすることについて同意権付与の審判を受けていない被補助人であれば保証人になれる。
資力に関しては画一的な線引きができず、債務の大きさとのバランスにもよるため、その都度債権者が判断する必要があります。
連帯保証人引受承諾書を作成するケース
賃貸借契約において連帯保証人は特筆すべき事情がなくても慣例的に立てることが一般的です。特に、以下の場合に求められる傾向にあります。
- 債務者の資力に不安があるとき
借主の収入や資産状況が不安定な場合、貸主が安全のため保証を求める。 - 借主が学生や職に就いていないとき
安定した収入がない、あるいは社会人経験が浅く信用実績が少ない借主に対して、貸主が親などの連帯保証人を要求するケースがある。 - 高額な賃料物件を契約するとき
賃料が高額な物件の場合だと貸主のリスク軽減のために保証が求められる。 - 借主の信用情報に懸念があるとき
過去に滞納歴があるなど不安要素があるときに保証が求められる。
さらに、保証人を立てるときは書面を作らないといけない(民法第446条第2項)ため、有効に保証契約を締結するために連帯保証人引受承諾書を作成します。
連帯保証人引受承諾書のひな形・テンプレート
連帯保証人引受承諾書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められます。
ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウドでは、連帯保証人引受承諾書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。適宜加筆修正して活用してください。
連帯保証人引受承諾書に記載すべき内容
連帯保証人引受承諾書を用意するときは、ひな形を出発点とし、以下の内容についてより細かく中身を調整しましょう。
承諾内容
まずは前文などの冒頭部分にて、当該文書の本質である「連帯保証人として主たる債務の負担を引き受ける旨」を明確に示します。
例文:
私は、下記賃借人の賃貸借契約に基づく一切の債務につき、連帯して保証することを承諾します。
また、契約の更新が想定されているときには次のような記載もしておくとよいでしょう。
例文:
同契約の更新がなされた場合でも、貴殿よりの通知の有無にかかわらず、引き続き連帯保証人を引き受けることをあらかじめ承諾します。
保証対象の内容
保証対象となる賃貸借契約の詳細を記載し、具体的に何を保証するのかを特定します。例えば、賃借人の氏名、賃貸借契約の目的物となっている物件の名称・所在地・部屋番号、契約金(家賃)、共益費等の内容などです。
また、「極度額の定め」も忘れてはいけません。
近年の法改正により、個人根保証契約(契約時点で債務の大きさがはっきりしていない包括的な保証契約)については極度額と呼ばれる上限額を定めないと契約が無効になってしまうルールになりました。そこで「極度額 金○○万円」などと具体的な記載をしましょう。
極度額の定め方について、国土交通省が参考資料を公表していますので、こちらを参考にして決めるとよいでしょう。
連帯保証人の署名欄など基本的な情報
最後に、連帯保証人に関する基本情報の記入欄や署名欄も忘れずに設けておいてください。個人の確実な特定も重要であるため、氏名・住所・連絡先なども記載してもらうようにして、必要に応じて審査のために必要な情報(年収等)の記入やその証明書類の添付なども求めるとよいでしょう。
連帯保証人引受承諾書を作成する際のNGな書き方
連帯保証人引受承諾書を作成するとき最も注意しないといけないのは「極度額」です。上述の通り、これは保証契約を有効に成立させるための要件であるため、「連帯保証人は借主の全ての債務について無制限に保証する」などの書き方は避けてください。
極度額を具体的に定めて、保証人がどれだけ保証すればいいのかわかるようにしましょう。
また、「借主の債務について、可能な範囲で支払いを行います」といった曖昧な表現も使うべきではありません。連帯保証人が負う責任、リスクについて明確にしましょう。
連帯保証人引受承諾書を交わす流れ
連帯保証人を立てる手続きは公的な制度に基づくものではありません。当事者間で納得できていればどのような手順を踏んでも構いませんが、一般的には次のような流れとなるでしょう。
- 賃貸借契約の交渉段階で、貸主側が連帯保証人の必要性を借主に伝えておく
- 借主は連帯保証人候補者を探して依頼する
- 貸主側で連帯保証人引受承諾書を用意する
- 当該承諾書を連帯保証人に交付する
- 連帯保証人が承諾書の内容をチェックし、署名を行う
なお、個人の連帯保証人に変えて、あるいは追加で保証会社を利用するケースもあります。
連帯保証人を立てない場合のリスク
賃貸借契約や金銭消費貸借契約などは、連帯保証人がいなくても成立させられます。しかし、債務の額が大きいほど、債権者にとっては次のリスクが大きくなるという問題が発生します。
- 家賃が滞納されたときの回収が難しくなる
- 賃借人に賠償責任が生じたでも十分に補償されない可能性がある
- 賃借人が死亡した場合の対応が複雑になる
一方で、連帯保証人がいないことに対しては債務者側にも一定のリスクがあります。例えば「債権者側で行われる審査に通りにくくなる」「契約締結時に追加の保証金や敷金を求められる可能性がある」「債務が大きくなったときに個人再生や破産に追い込まれる可能性がある」といった内容です。
連帯保証人引受承諾書の保管年数や保管方法
連帯保証人引受承諾書の保管について直接的に規律した法律はありませんが、取引に関わる書類について法人税法では7年間、事業に関する重要な資料について会社法では10年間、保管を求めています。これを目安に長期的に保管するとよいでしょう。なお、主たる債務に係る契約が継続している間はこの期間を過ぎても破棄すべきではありません。
保管の仕方も決まりはなく、紛失や改ざんが起こらないようにしておけば自由な方法で保管しても構いません。
連帯保証人引受承諾書の電子化、電子契約は可能?
保証契約は書面を作らないと有効にならない旨が民法で定められています。ここでいう書面とは紙の書類を指しているのですが、同時に、「電子的に作成された書類でも書面によって作られたものと見なす」とも定められています。
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。
つまり、連帯保証人引受承諾書は電子契約として交わしても効力に問題はないということです。書面として作成した承諾書をスキャンして電子化しても構いませんが、電子化に際してはタイムスタンプの付与など改ざん等を防ぐ処理を行いましょう。
電子契約サービスを使えばこの点はすぐにクリアできます。
連帯保証人引受承諾書のやり取りは慎重に
連帯保証人引受承諾書は、貸主と連帯保証人の間で交わす契約としての役割を持ちます。貸主としては、借主が適切に支払いをしてくれない場合への備えとなり安心して物件を貸し出すために重要な存在といえます。借主としても信用力を高めて審査を有利にするうえで重要な存在といえるでしょう。
他方、保証人となる方にとってはリスクでしかないため、よく考えて承諾書にサインする必要があります。貸主としても、当該保証人がその意味を理解しており、保証するだけの資力を持っているのか、契約内容の重大性に応じてチェックすることが望ましいでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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