- 作成日 : 2025年2月6日
新リース会計基準が契約業務に与える影響は?必要な対応やポイントを解説
新リース会計基準の導入により、企業の契約業務には大きな変化が求められています。リース契約の認識基準の変更によってすべての契約の見直しが迫られ、会計処理にも影響があるため正しい理解が欠かせません。
本記事では、新リース会計基準が契約業務にどのような影響を与えるのか、注意点も含めて詳しく解説します。
目次
リース契約を含む可能性のある契約の洗い出しと見直しが必要に
新リース会計基準の適用にあたり、企業はリース契約を含む可能性のあるすべての契約を洗い出し、見直す必要に迫られました。これは、不動産賃貸借契約や業務委託契約など、名称にかかわらずリース契約に相当する契約の有無を網羅的に確認する作業であり、かなりのリソースが割かれます。
契約書の名称に関係なくリース契約が含まれるかどうかに着目する
新リース会計基準においては、契約書の名称にかかわらず、実際の契約内容に基づいてリース契約を判断することが重要です。「設備レンタル契約」や「サービス利用契約」など、リースとは異なる名称であっても、資産の使用権が移転する場合はリース契約に該当する可能性があります。
具体的な例としては、不動産賃貸契約や、ITシステムのライセンスを定期的に支払う契約などが挙げられます。
これらの契約は一見リースとは異なるように見えるものの、実質的には資産の使用権を取得する形態であるため、新リース会計基準の対象となります。したがって、契約書の名称に関係なく契約の内容そのものを詳細に検討することが必要です。
新リース会計基準における賃貸借契約の確認ポイント
新リース会計基準において賃貸借契約を見直す際には、以下のポイントを押さえておきましょう。
- 基本的な契約期間の設定
- 契約期間の延長オプションの設定
- 解約オプションの設定
それぞれ、詳しく説明します。
基本的な契約期間の設定
新リース会計基準では、借手のリース期間は「解約不能期間」を基礎として定義されています。このリース期間を正確に設定するためには、解約不能期間に加えて、後述する延長オプションや解約オプションの存在も考慮しなければなりません。
リースとは、特定の資産の使用権を取得する契約であり、その使用権が有効な期間がリース期間になります。この期間を決定する際には、契約書に明記された期間だけでなく、実際の使用予定期間も含めて総合的に判断することが重要です。したがって、リース期間の設定には契約内容と実態を把握し、適切に反映させることが求められます。
契約期間の延長オプションの設定
延長オプションについては、借手が行使することが「合理的に確実」である場合、その期間も初めからリース期間に含める必要があります。
延長オプションが高確率で行使される場合、最初の契約時に延長期間を加味したリース期間として認識する必要があります。一方、行使の可能性が低い場合は、基本契約期間のみを考慮してリース認識を行います。この判断は、企業の実態や契約条件を基に慎重に行うことが求められます。
解約オプションの設定
解約オプションについては、借手が行使しないことが「合理的に確実」である場合、解約オプションの対象となっている期間もリース期間に含める必要があります。解約オプションの行使可能性が低いと見込まれる場合、解約オプションの対象期間を含めた期間をリース期間として認識しますが、一方で行使の可能性が高い場合には、解約オプションの対象期間を含めない期間をリース期間として認識します。
「合理的に確実」か否かは、事業上の経済的な効果や影響を評価して客観的な視点から行われなければなりません。
新リース会計基準に当てはまらない契約はどうする?
新リース会計基準の対象外となる契約については、特別な対応は不要です。これらの契約は従来通りの会計処理を継続することが認められており、新基準の影響を受けません。対象外となる契約には、短期リースや、少額リースなどが含まれます。
ただし、対象外と判断される契約についても、定期的に見直しを行いましょう。契約条件の変更や事業環境の変化により、将来的にリース基準の対象となる可能性があるためです。
新リース会計基準への対応は契約情報の一元管理が重要
新リース会計基準への対応を円滑に進めるためには、契約情報を一元管理することが重要になります。
すべての契約情報が一元管理されているとそれぞれの内容を確認・分析しやすく、検索も容易に行えるでしょう。その結果、新リース会計基準において重要になるリース判定や会計処理の変更が迅速かつ正確にできるようになります。
スムーズに新リース会計基準に適応するためには、契約管理システムの導入や既存システムの統合を検討することが推奨されます。また、契約情報のデジタル化を進めることで、情報の共有や検索が容易になり、業務効率の向上も期待できるでしょう。適用開始後も継続的に基準に対応した運用が可能になります。
新リース会計基準に適応できる環境を整えよう
新リース会計基準への対応は、単なる契約書の見直しにとどまらず、企業全体の業務プロセスやシステムの見直しを含む包括的な取り組みが必要です。
契約情報の一元管理を実現し、リース判定や会計処理を効率化することで、企業は迅速かつ正確に新基準に適応できるでしょう。契約管理システムの導入や既存システムの統合・刷新なども検討し、早い段階から新リース会計基準に適応できる環境を整えておくことが求められます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
利用規約とは?テンプレートをもとに作り方や例文、同意ボタンの注意点などを解説
利用規約とはサービス提供者の権利義務や、利用者がサービスを利用するにあたって遵守しなければならない内容などを定めたものです。 特にWebやアプリなどでサービスを提供する場合は、サービスの利用を開始する前に利用規約を画面に表示し、利用者に同意…
詳しくみる新リース会計基準でサブリースはどうなる?会計処理や事業者への影響を解説
新リース会計基準の適用によって、サブリースの扱いはこれまでと大きく変わります。今後は資産や負債の計上が必要となるため、会計処理が大きく変わることに不安を感じることもあるかもしれません。 本記事では、新リース会計基準によるサブリース取引の処理…
詳しくみる仮名加工情報とは? 匿名加工情報との違いや具体例をわかりやすく解説
仮名加工情報は、一定の措置を講じて個人情報を加工し、他の情報と照合しない限り特定の個人を識別できないようにした情報です。原則、第三者提供が禁止されている点や、他の情報と照合すれば特定個人を識別できる点で匿名加工情報とは異なります。 本稿では…
詳しくみる契約法務とは?業務内容や重要なポイント、求められるスキルを解説
契約法務とは契約にまつわる法的リスクを管理し、企業を守る業務のことです。契約書の作成やチェックが主な役割であり、この業務を適切に遂行するには法的知識や経験が欠かせません。 本記事では、契約法務における重要なポイントや担当者に求められるスキル…
詳しくみる代表権のない取締役とは?役割や代表・社長との違い、契約のリスクを解説
代表権のない取締役とは、会社を代表して業務遂行するための代表権を持たない取締役を意味します。代表権のない取締役は契約書への署名や押印は原則として行えませんが、例外として認められるケースも複数存在します。 この記事では代表権のない取締役の役割…
詳しくみる損害賠償とは?種類や慰謝料との違い、金額の決め方などを簡単に解説
損害賠償は人に損害を与えた場合に、その発生した損害を金銭的に評価し、その損害価格を弁償する制度であり、大きく不法行為に基づくものと債務不履行に基づくものに分けられます。 債務不履行では通常生ずべき損害の賠償が必要であり、不法行為では因果関係…
詳しくみる