- 作成日 : 2025年1月31日
口座振込同意書とは?ひな形や例文、書き方の注意点を解説
口座振込同意書は、給与などを銀行口座に振り込むことを、従業員が同意したことを示す文書です。この記事では、口座振込同意書の基本的な説明、書き方の注意点や具体例、保管方法、電子化の可能性まで、実務に役立つポイントを解説していますのでぜひ参考にしてください。
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目次
口座振込同意書とは?
口座振込同意書とは、従業員が自分自身の給与や諸手当を、指定の銀行口座で受け取ることに同意を示すための文書です。
使用者である企業側が、従業員の給与などを現金以外の方法で支払ううえで必要となるため、法的にも重要な意味を持っています。
この同意書の具体的な役割は下記の2つです。
- 従業員の給与振込先となる口座情報を正確に記録すること
- 従業員が、口座振込による給与などの受け取りに同意していることを証明する法的な記録を作ること
給与振込同意書との違い
「口座振込同意書」と「給与振込同意書」は、異なる名称で呼んでいるだけで、実質的には同じ目的と効力を持つ書類です。
両者とも、銀行口座で給与を受け取ることへの従業員の同意を示す文書という点で共通しており、求められる記載内容や法的な位置づけに違いはありません。
同様に「給与振込申請書」「給与振込依頼書」「口座振込依頼書」などの呼び方もありますが、これらも口座振込同意書や給与振込同意書と同じ役割を果たします。
実務上、書類の名称は企業の慣習や人事システムの都合によって決まることが多く、名称の違いによって法的な効力や重要性が変わることはありません。
口座振込同意書が必要な理由やタイミング
口座振込同意書が必要とされる主な理由は以下の2つです。
第一の理由には、法令遵守の側面があります。
労働基準法では給与支払いは原則として現金で行うと定められていますが、従業員の同意があれば銀行振込による支払いも認められます。
口座振込同意書は、この「従業員の同意」を証明する重要な文書として機能するのです。企業はこの文書を適切に取得・保管することで、法的要件を満たした給与支払いを実施できます。
第二の理由は、給与支払いに関するトラブルを未然に防ぐためです。
振込先口座の情報を正確に記録し、従業員の同意を明確に文書化することで、振込ミスや支払方法に関する誤解を防ぐことができます。
口座情報の誤りは給与の未払いなど重大な問題につながりますが、正確な情報を確認し記録しておくことで、このようなリスクを最小限に抑えることが可能です。
口座振替同意書が必要となるタイミング
口座振込同意書の作成・取得が必要となるタイミングとしてもっとも一般的なのは「入社時」で、入社手続きの一環として提出を求めます。
そのほか「振込先口座を変更するとき」や「会社の合併・分割などの事情で給与支払いの主体が変わるとき」などにも、新たな同意書の取得が必要です。
口座振込同意書のひな形
口座振込同意書は、契約書のように記載項目を細かくカスタマイズする必要がなく、ひな形の大部分をそのまま活用できます。こちらのページからダウンロードできますのでご活用ください。
口座振込同意書の書き方や例文
口座振込同意書は、基本的に以下の項目で構成されています。
- 表題
- 宛先(使用者)
- 同意文(前文)
- 振込先情報
- 作成年月日
- 従業員情報
書き方は法律で定められているわけではありませんが、最低でも「振込先や従業員を特定できる情報」と「同意の意思表示」については明記しておく必要があるでしょう。
口座振込同意書への記載事項 | 書き方や例文 |
---|---|
表題 | 「口座振込同意書」や「給与振込同意書」など、何の文書であるのかが一目でわかるよう簡潔に記載する。 |
宛先(使用者) | 従業員に記載・提出してもらう文書のため、「〇〇株式会社 〇〇部 御中」などと宛名を自社にしておく。 |
同意文(前文) | 「私は、貴社からの賃金の支払いに関し、下記の金融機関の口座へ振り込むことにより支払うことに同意し、下記のとおり届け出ます。」などと、口座振込によって給与を受け取ることを従業員が同意したと証明できるように記載しておく。 |
振込先情報 | 金融機関、支店名および店番号、預金の種類、口座番号、口座名義の項目を設けておく。 自由記入欄にするより、情報を整理しやすいように表形式やリスト形式にしておくとよい。 |
作成年月日 | 「 年 月 日」などと記入欄を設け、いつ文書を作成したのかを明確にできるようにしておく。 |
従業員情報 | 従業員を特定するため、住所および氏名の記入欄を設ける。より厳格にするには自署を求めるとよいが、記名押印でも問題ない。 |
口座振込同意書を作成する際の注意点
口座振込同意書の作成においては、後のトラブルを防ぐため、いくつかのポイントに留意する必要があります。
情報の正確性を確認する
特に注意したいのは「情報の正確性」です。口座情報の誤記がないよう、従業員によく確認してから提出してもらいましょう。口座名義が従業員本人のものであることも確認します。
結婚による姓の変更、家族名義の口座使用による名義人の不一致などが原因で、担当者が混乱することもあるからです。
プライバシー保護に配慮する
「プライバシー保護」の観点も忘れてはいけません。重要な個人情報を取り扱いますので、口座振込同意書の管理には十分な注意を払い、適切な保管・管理体制を整えておきましょう。
必要に応じて専門家に頼る
口座振込同意書の作成自体は、それほど難しいことではありません。しかし、この作業により後々トラブルが起こる可能性はゼロではないため、作成方法や文書の管理、情報の取り扱いなどに不安がある場合は、社労士(社会保険労務士)や労働問題に強い弁護士を頼りましょう。
口座振込同意書の保管期間・保管方法
口座振込同意書は、賃金台帳や労働者名簿などの法定帳簿と同様に大切に保管しましょう。
法令上、給与支払いに関する書類は最低3年間の保存が義務付けられていますが、口座振込同意書については、従業員の退職後も含めてより長期的な保管が推奨されます。これは、給与支払いに関するトラブルが発生した際の証拠書類として、重要な役割を果たすためです。
また、税務関連書類の保存期間に合わせて7年間保管することも珍しくありません。
税務調査に対応するためにも、7年間保管しておくとより安心です。
保管方法に関しては、個人情報保護の観点から適切なセキュリティ対策を講じておきましょう。具体的には、施錠可能なキャビネットでの保管、アクセス権限を持つ担当者の限定など、物理的・人的な管理体制を整えます。
なお、従業員の口座変更や組織変更などにより、情報の更新が必要となることもあると覚えておきましょう。
口座振込同意書の電子化は可能?
口座振込同意書は電子化することが可能です。そのため、必ずしも紙でやり取りする必要はなく、PDFなどの電子データに代替することも違法ではありません。
電子化する場合、紙の同意書をスキャンしてPDF化する方法がありますが、これは作成済みの口座振込同意書を保管するときのみに使える方法です。これから口座情報などを記載してもらうのであれば、口座振込同意書のテンプレートファイルを作成し、従業員に入力してもらうよう手配しなくてはなりません。
電子化のメリットとしては、保管スペースの削減、検索・参照の容易さ、情報セキュリティの向上などが挙げられます。特に複数の事業所を持つ企業では、データの一元管理が可能になることで、業務効率が大幅に向上することでしょう。
セキュリティ対策やバックアップ機能が標準で組み込まれている電子文書管理システムを活用すれば、運用負担を最小限に抑えながら安全に電子化できます。
従業員の入社時に口座振込同意書を作成しよう
口座振込同意書は、企業が適切に給与などを支払うため、欠かすことのできない重要な文書です。従業員の入社時に口座振込による支払いへの同意を得て、正確な口座情報を教えてもらうようにしてください。
口座振込同意書の作成や保管にはさまざまな注意点がありますが、この文書を適切に管理することで、給与支払いに関するトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
近年は文書の電子化が進んでおり、口座振込同意書についても、従来の紙から電子文書での管理へ移行する企業が増えています。従業員とのやり取りもスムーズになるため、電子化も検討してみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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