- 作成日 : 2025年1月30日
使用承諾書とは?効力や書き方・例文をひな形つきで解説
使用承諾書は、物や設備、建物などの使用を認める・認めてもらう際に作成する文書です。当記事では、その使用承諾書がビジネスにおいてどういった役割を担うのか、そして基本的な書き方についてもひな形とともに紹介しています。作り方、保管方法についてわからないことがある方はぜひ参考にしてください。
目次
使用承諾書とは?
使用承諾書(しようしょうだくしょ)は、ある物件や設備の所有者が、他者にその使用を許可することを証明する文書のことです。
事業で第三者の所有するものや場所を使用する場面、あるいは行政上の手続きの一環で作成することがあります。
使用承諾書はなぜ必要か
使用承諾書が必要とされる理由は次のようにいくつか挙げることができます。
- 法的証拠を確保するため
使用者が物件や設備を合法的に使用しているということを証明する。これにより将来的な紛争や誤解を防ぐことができる。また、第三者に対して使用権限を主張する場面でも役立つ。 - 行政手続きのため
特定の行政手続きにおいて使用承諾書の提出が求められることがある。例えば古物商許可申請、車庫証明申請、酒類販売業免許の申請など。 - 使用条件を明確にするため
所有者と使用者の間で決めたルールが明確になりトラブルを起こりにくくできる。
使用承諾書を作成しておくことで両者の関係を適切に管理でき、潜在的な問題を回避することにもつながります。
同意書と承諾書の違い
「同意書」と「承諾書」はとても似た言葉ですが、微妙なニュアンスの違いがあります。
同意書 | 承諾書 |
---|---|
・「賛成」や「了承」の意思を示す。 ・相手から提示された意見や提案に対し「問題ない」という態度を示す意味合いが強い。 | ・「受け入れる」や「引き受ける」の意思を示す。 ・相手の依頼、要望を受諾するときに使われる。 |
「○○同意書」「○○承諾書」など、使い分けられることもありますが両者の違いは大きくはなく、多くの場合言葉を入れ替えても文書の効果が損なわれることはありません。重要なのは書類の内容が当事者間の意思を正確に反映していることにあります。
使用承諾書を作成するケース
ある施設・設備を使わせてもらう場合に使用承諾書を作成することが多いようです。
例えば、会議室や研修施設の時間外利用、社用車の私的利用、会社所有の機器や工具の持ち出しなどを行う際に必要となります。特に高額な設備や、安全管理が必要な機器の使用時には、使用目的や期間、注意事項への同意を明確にするため、できるだけ作成しておくことが推奨されます。
また、不動産関連だと賃貸物件のリフォームや改装時に、建物所有者から使用承諾書を取得することがあります。テナントが内装工事を行う際や、店舗の看板を設置する場合なども同様です。ほかにも、知的財産の利用、個人情報の利用に際して作成することがあります。
これを作成しないと法的に利用が認められない、というわけではなくても余計な揉めごとを回避して安全に事業を遂行するうえでは承諾があったという事実を形に残しておくことが重要なのです。
使用承諾書のひな形
使用承諾書に決まった作り方はありませんので各社好きに作成してかまいません。
ただし、トラブルの予防など本来の作成目的を果たすために盛り込んでおきたい事項がいくつかありますので、こちらのひな形も参考にしていただければと思います。
使用承諾書に記載すべき内容、例文
使用承諾書に記載すべき内容を、ひな形の例文と併せて紹介していきます。項目としては次のように整理することができます。
- 使用目的物
- 使用者
- 使用目的
- 使用承諾期間
- 特記事項
- 承諾する年月日
- 承諾者の住所・氏名
使用目的物
「使用目的物」の欄は承諾の対象となる物件・設備などを特定するために記載するもので、使用承諾書のもっとも基本的かつ重要な要素です。この部分が曖昧だと、後々トラブルになる可能性も高くなってしまうため、できる限り詳細に記載しましょう。
土地や建物なら所在地を明記し、より厳格に記載する必要があるなら地目や地積、建物の名称、構造なども詳細に記しましょう。
使用者
使用が承諾された物件・設備は、実際に誰が使用するのか、この「誰」の部分を明確にしましょう。使用者の氏名または名称、そして住所と連絡先まで記載しておくとより安全です。
なお、使用者と契約者が異なる場合は、その関係性も明記しておきましょう。
使用目的
なぜその物件・設備を利用する必要があるのか、「使用目的」の欄に事情を記載します。
使用目的を明記することで所有者の意図しない使用を防ぎ、また使用者の権利を保護することができます。特に営業許可申請など行政手続きに使用承諾書を提出する場合は、使用目的の記載が審査の重要な判断材料となるため要注意です。
使用承諾期間
所有者が使用者に対し、「いつまで」物件・設備の使用を認めるのか、その期間を具体化します。
その際は、年月日を明記して曖昧さを排除しましょう。期限の定めがない場合でも一切言及しないのではなく、「期限の定めなし」などと第三者にもわかるように書いておくとよいでしょう。
特記事項
「特記事項」の欄は、標準的な項目だけで網羅できない追加の条件や注意事項を記載するときに使います。物件や状況に応じて柔軟に利用しましょう。
例えば次のように記載することもあります。
- 善良な管理者の注意をもって使用し、近隣住民に迷惑をかけないよう努める。
- 本物件の増築・模様替えは、事前に所有者の書面による承諾を得ること。
- 使用者は、本物件を第三者に転貸してはならない。
- 使用者の責めに帰すべき事由により本物件に損害が生じた場合は、使用者の負担で原状回復すること。
あらかじめ予想される問題があるときは特記事項にルールを記載しておき、予防に努めましょう。
承諾する年月日
「いつ」承諾をしたのか、具体的な年月日を使用承諾書に記載しておきましょう。使用承諾期間を定めるときと同じく、「〇年〇月吉日」のような曖昧な表現は避け、年、月、日を全て記載することが重要です。
承諾者の住所・氏名
承諾者、目的物となっている物件・施設の所有者の住所および氏名を記載します。氏名だけだと確実に人物の特定ができないため、必ず住所も記す必要があります。
また、使用中の物件などについて何か問題が生じたときでもすぐに連絡が取れるよう、電話番号などの情報も書いておくとよいでしょう。
使用承諾書を作成する際の注意点
使用承諾書の作成では以下の点に注意を払う必要があります。
まずは「使用対象物の具体的な特定」です。特に部分的な使用をする場合、建物の使用承諾であれば「2階建ての建物のうち、1階部分(床面積○○㎡)」といったように範囲を明確に記載します。曖昧な表現は後のトラブルの原因となるため、できるだけ具体的な表現を用いることが重要です。
次に「使用目的の明確化」に注意しましょう。承諾された方法以外の用途で使用してしまいトラブルが起こる危険性があります。そこで、単に「事業用途」と記載するのではなく、「カフェ営業(営業時間:午前10時から午後8時まで)」のように、具体的な業態や条件を明記しておくとよいです。所有者側としては、制限をかけるなら「アルコール類の提供は不可」などと特記事項に明記しておく必要があります。
使用承諾書の保管期間・保管方法
使用承諾書は、少なくとも使用期間中は大切に保管しておかないとなりません。また、使用期間を終えて物件の明け渡し、設備などの返却をした後も一定期間は保管しておくことが推奨されます。
期間について考えるとき、いくつかのアプローチが可能です。
例えば、債務不履行に基づく損害賠償請求の消滅時効である5年を目安とする考え方があります。何か不都合が発生しているときは、請求権の行使に備えて5年間は保管しておくとよいでしょう。また、税務の観点からは7年間保存しておくことが望ましいですし、会社法上の事業に関する重要書類となるのなら10年間保管しておく必要があります。
使用承諾書の電子化は可能?
使用承諾書は電子化可能です。書面(紙)の作成が法律で義務付けられているわけではありません。
電子化の方法として、WordやExcelで作成したファイルのメールでの送信などが挙げられますが、電子契約システムなど専用のツールを使うとより効率的ですしその後文書の管理もしやすくなります。
電子化に伴いセキュリティ対策も求められますが、この点についても専用のシステムを導入していれば大きな問題とはならないでしょう。システム上に安全に管理する機能が搭載されていれば、バックアップによるデータの損失防止、アクセス管理、文書の変更履歴追跡なども可能となります。
また、電子化すれば保管スペースの節約、検索性の向上、コスト削減などのメリットも得られます。
承諾の意思表示は必ず文書に残そう
使用承諾書は、企業活動の一環で使用したい物品や施設の使用許可を正確に記録し管理するための文書です。
状況に応じた適切な文書作成・管理は円滑な業務運営につながりますし、ここで解説したように、使用目的や条件の具体的な明記、契約者と使用者の関係性の明確化など、作成時の基本的な注意点を押さえることで将来的なトラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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