- 作成日 : 2022年1月26日
ライセンスフィーとは?相場や支払い方法についても解説!
「ライセンスフィー」や「ロイヤリティ」という言葉を耳にすることがありますが、「違いがよくわからない」という人は多いでしょう。そこで今回は「ライセンスフィー」「ロイヤリティ」の定義や、ライセンスフィーの相場、支払い方法(定額支払い、一括支払、売上の一定割合)などについて解説します。
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ライセンスフィーとは?
ライセンスフィーとは、知的財産権に対する使用料のことです。「ライセンス」は「免許」「許可」などを意味しますが、「ライセンスフィー」の「ライセンス」は一般的に特許や商標などの知的財産権の使用許可を指します。「フィー」は「料金」や「手数料」という意味なので、「ライセンスフィー」は「知的財産権の使用許可に対する対価」ということになります。
ライセンスフィーの発生は、ライセンス契約の締結が前提となります。有名ブランドの名前やデザインを使うことについてライセンス契約を交わした場合、その使用許可に対して支払うのがライセンスフィーです。
英国の有名ブランドである「バーバリー」は、かつて日本の三陽商会とライセンス契約を結んでいました。三陽商会はバーバリーにライセンスフィーを支払って、バーバリーの商品を販売していたのです。
ライセンスフィーとロイヤリティとの違い
「ライセンスフィー」と意味が似た言葉に「ロイヤリティ」がありますが、「ライセンスフィー」と「ロイヤリティ」の違いは何でしょうか。結論から言えば「ライセンスフィー」と「ロイヤリティ」に大きな違いはありません。
どちらも特許権、商標権、著作権、ノウハウなど、無形の知的財産を利用することの対価として支払うものです。ロイヤリティは英語の「Royalty」であり、王室などを意味する「Royal」の派生語です。王族は権力を持っていたことから、王族の権利を使わせてもらう際の利用料として「Royalty」という言葉が使われるようになりました。
「ライセンスフィー」と「ロイヤリティ」の意味はほぼ同じですが、日本では特許については「特許料」ということが多く、ブランドなどの商標の利用料は「ライセンスフィー」と呼ぶケースが多いです。ロイヤリティという言葉は、フランチャイズビジネスなどでよく使われます。
ライセンスフィーは必須?
「知的財産権を利用する場合は、ライセンスフィーを支払わなければならない」と思っている方が多いのですが、ライセンスフィーは必ず支払わなければならないものではありません。
特許を取得するためには莫大な研究開発費がかかり、ブランドを形成するためには長年の信用の積み重ねが必要です。そのため知的財産権を利用する場合は、一般的にライセンスフィーを支払います。
ただし、ライセンスフィーをもらうかどうかは知的財産権の所有者の自由であり、知的財産権の所有者が無償での利用を認めた場合、利用者は無償で知的財産を利用できます。
ライセンスフィーの決め方、相場
ライセンスフィーは利用対象となる権利の種類や収益の見込み、類似のライセンスフィーの価格などを参考に、当事者の交渉によって決められます。著名ブランドのライセンスフィーは当然高くなります。製造に不可欠な特許技術のライセンスフィーも高くなるでしょう。
特許には、専用実施権と通常実施権があります。専用実施権は特許の使用を許諾された人だけが独占的に使える権利で、通常実施権は複数の人が特許を利用できる権利です。一般的に、専用実施権のほうがライセンスフィーは高くなります。
ライセンスフィーの主な支払い方法
ライセンスフィーの支払い方法に特に決まりはなく、当事者間で自由に決めることができます。ライセンスフィーを支払う側が気になるのは、支払い方法でしょう。
支払い方法には、「定額支払」「一括支払」「売上の一定割合による支払」などがあります。それぞれについて解説します。
定額支払
定額支払は当事者で決めた一定額のライセンスフィーを支払う方法で、例えば「四半期毎にライセンスフィーとして30万円を支払う」というものです。ライセンスフィーを受け取る側は、安定的な収入を得られるというメリットがあります。ライセンスフィーを支払う側は支払い額が一定なので予算を立てやすく、売上が伸びた場合でも費用が変わらないというメリットがあります。
ライセンスフィーを受け取る側のデメリットは、売上が伸びたとしても受け取るライセンスフィーが変わらないことです。ライセンスフィーの支払う側のデメリットは、売上がゼロでも一定額を支払うことになるため、コスト高になるおそれがあることです。
つまり、この支払方法で利益を享受できるかどうかは、知的財産権の利用によって売上が大きくなるかどうかにかかっているということです。
一括支払
一括支払は、ライセンス契約を締結する際にライセンスフィーを一括して支払う方法です。例えば「契約時にライセンス期間である2年分のライセンスフィーとして200万円を支払う」というものです。
ライセンスフィーを支払う側は契約時に支払いが完了するので、その後はライセンスフィーを気にすることなく事業に専念できるというメリットがあります。ライセンスフィーを受け取る側のメリットは、契約締結時にまとまったお金を受け取れるので、研究開発費を早く回収することができます。受け取ったライセンスフィーを次の研究の資金にすることもできるでしょう。
ライセンスフィーを支払う側のデメリットは、最初に大きなお金が出ていくため、見込みどおりの売上が立たない場合は資金繰りが苦しくなることです。ライセンスフィーを受け取る側のデメリットは、定額支払と同様に売上に連動していないため、売上が伸びたとしてもライセンスフィーが変わらないことです。
売上の一定割合
売上の一定割合での支払は、売上の一定割合をライセンスフィーとして支払う方法です。「ランニング・ロイヤリティ方式」とも呼ばれます。例えば、「月の売上の5%をライセンスフィーとする」と定めた場合、月の売上が300万円だとライセンスフィーは15万円(=300万円×5%)になります。
ライセンスフィーを支払う側にとっては、売上が増加すればライセンスフィーが増えても問題はなく、ライセンスフィーを受け取る側にとっても、売上が増加すればライセンスフィーが増えるので魅力があります。売上の一定割合での支払は、双方にとって魅力的な支払い方法といえます。
ライセンスフィーの設定は慎重に行おう
今回は「ライセンスフィー」「ロイヤリティ」の定義や、ライセンスフィーの相場、支払い方法(定額支払い、一括支払、売上の一定割合)などについて解説しました。
ライセンス契約を交わしたことがない企業は、ライセンスフィーをどのようにして決めたらよいのか迷うでしょう。ライセンスの利用によって得られる売上や利益を試算し、それに見合う経費としてどのくらいのライセンスフィーを設定するのが適切かを判断する必要があります。
適切なライセンスフィーを算定したら支払い方法を決定し、ライセンス契約に反映しましょう。
よくある質問
ライセンスフィーとは何ですか
ライセンスフィーとは、知的財産権に対する使用料です。主な対象は、特許、商標、著作権などです。詳しくはこちらをご覧ください。
ライセンスフィーとロイヤリティの違いについて解説してください
「ライセンスフィー」と「ロイヤリティ」に大きな違いはありません。同じ意味と考えて問題ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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