- 更新日 : 2025年4月8日
SaaS型の契約管理システムとは?機能や導入のメリット、選び方を解説
「SaaS型」の契約管理システムとは、契約書の作成・承認・保管・更新といった管理機能を、クラウド上のサービスを利用する形で活用するタイプを指しています。
紙を使った管理やローカルのフォルダ共有による管理と比べ契約書の検索や状況確認が容易になり、業務効率の大幅な向上が期待できます。このSaaS型契約管理システムについて言及していきます。
目次
SaaS型の契約管理システムの特徴
SaaS型※の契約管理システムは、インターネットを通じて契約書の管理機能を提供するクラウドサービスのことです。
※「Software as a Service」の略称。
このシステムの主な特徴は、契約書のライフサイクル全体をデジタル化して一元管理できる点にあります。以下のような基本機能を備えていることが一般的です。
- 契約書の電子保管
→ 契約書をPDFなどの電子データで保管し、検索可能な状態で管理する。 - テンプレート機能
→ 頻繁に使用する契約書のひな形を登録し、必要に応じて呼び出して利用できる。 - アクセス権限管理
→ 部署や役職などに応じ、閲覧や編集できる契約書の範囲を設定する。 - 契約状況の可視化
→ 契約の進捗状況や期限、更新時期などを一覧で確認できるように表示する。
ものによって詳細な機能は異なりますが、契約管理に必要な機能をオールインワンで提供しているものもあり、そのシステムであれば契約管理業務における実務上の課題を解決し、より効率的な契約管理を実現することが可能になるでしょう。
SaaS型の契約管理システムがもたらすメリット
SaaS型の契約管理システムを導入することで、企業は契約管理業務の効率化や業務品質の向上など多岐にわたるメリットを受けられます。いくつか主要なメリットについて紹介していきます。
インターネット環境があれば利用できるため業務を効率化できる
SaaS型であることの最大の特徴は「インターネット環境があればどこからでもアクセスできる」という点にあります。
この特性によって、次のような効果が得られます。
- 在宅勤務時でも契約書の確認や承認が可能
- 外出先での商談後すぐに契約書の作成や確認作業に着手できる
- 複数の拠点や事業所間での契約書の受け渡しが不要になる
- 契約書の検索時間が短縮される など
導入コストが低く管理費の削減につながる
従来、業務システムを導入するといえばオンプレミス型(インターネットへの接続を前提としない、社内のサーバーに直接システムを導入するタイプ)が主流でした。
このオンプレミス型に比べてSaaS型は「初期投資を比較的低くできる」というメリットを持ちます。これには以下の理由が挙げられます。
- サーバーなどの機器を自社で備える必要がない
- 自社でするシステムの保守・メンテナンスが不要
- 利用量に応じた従量課金制で必要な分だけを利用できる
- システムのアップデートが自動で行われ、追加費用が発生しない など
さらに、SaaS型導入に附随して以下のような管理コストの削減効果も期待できます。
- 紙の契約書の保管スペースを削減できる
- 印刷コストや郵送費が削減できる
- 契約管理に関わる人件費が削減できる など
部署間の情報共有がしやすくなる
契約書の一元管理がしやすく、社内のコミュニケーションや情報共有も円滑になります。
具体的には、契約内容や進捗状況をリアルタイムで共有すること、部署に捉われず契約書の探索ができ確認依頼の回数を減らすことができる、契約履歴や変更履歴が自動で記録され、トレーサビリティが向上する、といったさまざまな利点が挙げられます。
このようにSaaS型の契約管理システムの導入は、業務効率の向上だけでなく、コスト削減や情報共有の促進など多面的なメリットをもたらします。
特に昨今増えつつあるテレワークの環境下では、場所を問わない契約管理がさらに重要となっており、その導入効果はより一層高まっているといえるでしょう。
SaaS型の契約管理システムのデメリット
SaaS型の契約管理システムには多くのメリットがある一方で、導入を検討する際に留意しておきたいデメリットも存在します。
セキュリティ対策を強化する必要がある
クラウドサービスを利用する契約管理システムでは、契約書データがクラウド上に保管されるため、サイバー攻撃や不正アクセスの被害を受ける可能性があります。
また、社外からのアクセスが可能なため、従業員のパスワード管理や操作ミスによる情報漏洩も懸念されます。
ただ、多くのSaaS事業者は強固なセキュリティ対策を実施しており、多要素認証の導入やアクセスログの管理機能を利用すれば書面での契約書管理以上に安全性を高めることも可能です。
自社の運用に合わせたカスタマイズがしづらい
SaaS型のシステムは標準化されたサービスを提供するため、細かい機能のカスタマイズや独自の承認フローへの対応が制限される場合があります。
ただし、近年のSaaS型システムは、ある決まった枠組みのサービスに柔軟なカスタマイズ機能を備えているケースも多いようです。APIを通じた外部システムとの連携など、より拡張していけるケースもありますので、導入前によく確認しておくようにしましょう。
メンテナンス時期やサービスの終了が提供元に依存する
サービス提供者への依存度が高いため、定期メンテナンスによるシステム停止や突発的な障害への対応が自社では困難です。また、提供元の経営状況によってはサービス終了の可能性もあり、予期せぬ仕様変更や料金改定のリスクも存在します。
これらの課題に対しては、信頼性の高い事業者を選定することが重要です。実績豊富な事業者であれば、計画的なメンテナンス実施や十分な事前告知、安定したサービス提供が期待できます。また、契約書データの定期的なバックアップ機能を活用することで、不測の事態にも備えることができます。
SaaS型の契約管理システム選びを成功させるポイント
契約管理システムの選定は、業務効率化の成否を左右する重要な作業です。SaaS型システムの導入に多くの利点があるとはいえ、自社に合ったものを導入しないと十分にその恩恵は受けられません。そこで、導入を成功させるために押さえておきたい大事なポイントを以下にまとめましたので、ご確認ください。
機能が自社のニーズに合っている
契約管理システムの機能は各サービスで大きく異なります。重要なのは豊富な機能を持つシステムを選ぶことではなく、実際の業務に必要な機能を見極めることです。
まず、現在の契約管理における課題を具体的に洗い出しましょう。例えば「更新漏れが発生している」「承認に時間がかかりすぎる」「保管場所が分散している」といった課題があれば、それぞれに対応する機能の有無を確認します。
具体的な確認ポイントとしては、契約書の種類や量に応じた保管容量、対応可能なファイル形式、承認ワークフローのカスタマイズ範囲、契約期限の管理方法、検索機能の使い勝手などが挙げられます。特に毎月の新規契約数や管理する契約書の総数を考慮し、システムのパフォーマンスに問題がないか確認することが重要です。
コスト面が予算と見合う
システムの月額費用は契約期間や利用ユーザー数によって変動します。初期費用が無料かどうかだけでなく、長期的な運用コストも見据えた判断が求められます。
特に注意すべきは見えにくいコストの存在。例えば「データ移行にかかる工数」「社内システムとの連携コスト」「追加機能のオプション料金」などが挙げられます。
また、契約更新時の値上げ条件やユーザー数の増加に伴う費用の変動についても事前に確認しておきましょう。
一方で、システム導入によって削減されるコストの大きさにも着目する必要があります。紙の書類の保管コスト、印刷費用、郵送費、契約管理に費やしている人件費などを算出し、システム導入によるコスト削減の効果と導入費用を比較検討しましょう。もしシステムの利用料が大きくても、それ以上に大きな効果が得られるのなら、導入する価値はあるといえます。
サポート体制が充実している
契約管理は業務の根幹に関わるため、システムの不具合や操作方法の疑問点が生じた時には速やかに解決される必要があります。そのため、サポート体制が充実していることも重要な選定基準となります。
具体的なチェックポイントとして、「サポート対応時間(平日のみか、休日も対応可能か)」「問い合わせ方法(電話、メール、チャットなど)」「マニュアルやFAQの内容」「トレーニング等の支援の有無」などがあります。
また、計画メンテナンスの頻度、障害発生時の対応の流れについても確認しておきましょう。
SaaS型の契約管理システムの費用の相場
SaaS型契約管理システムの費用は、選定したサービスやプラン内容によって当然異なります。また、企業規模や利用ユーザー数、必要な機能によっても変わってきます。
そのため一概に相場を提示することは困難ですが、小規模・中規模の企業向けに展開するサービスやプランだと広く見て「5千~5万円」程度に収まることが多いようです。
ただし、個人事業主などごく小規模での利用なら無料で利用できるケースもありますし、逆に規模の大きな事業者であれば月に5万円以上のコストが発生することもあります。
SaaS型の契約管理システムを紹介
SaaS型の契約管理システムも多く展開されています。以下にその一部を例示します。
- 「マネーフォワード クラウド契約」
- 「Hubble」
- 「LegalOn Cloud」
- 「ContractS CLM」
- 「Contract One」
なお、サービス内容は定期的にアップデートされることもあるため、詳細は各社のWebサイトで確認する必要があります。無料トライアルなども活用しながら、導入に向けての検討を進めていきましょう。
将来性を見据えてSaaS型の契約管理システムを導入しよう
契約管理システムの導入は、契約業務の効率化と品質向上を実現する重要な取り組みです。導入を成功させるには、自社の課題や他社の状況、今後の動向なども見据えてシステムを選定する必要があります。今後のことを考えると、より電子化の流れが進むと思われますし、SaaS型のシステムを選ぶことをおすすめします。
SaaS型にもいろんな種類の契約管理システムがありますが、少なくとも自社の課題解決に効果的な機能を備えたものでなくてはなりません。そのうえで、現状だけでなく将来起こり得る問題やコストなども総合的に考慮して、自社に最適な契約管理システムを見つけてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
工事請負契約書のリーガルチェックのポイントは?確認事項や注意点を解説
工事請負契約書は、建設工事に関する取引内容を明文化し、法的・実務的な根拠を与える契約書です。工期や報酬、瑕疵担保責任、解除条件など多くの条項が含まれ、内容に不備があると紛争や損害に発展するおそれがあります。 本記事では、リーガルチェックすべ…
詳しくみる電子契約で収入印紙がいらないのはなぜ?法的根拠をもとに理由を解説
契約書を作成する際は印紙税を納付し、収入印紙を貼付する必要がありますが、電子契約であればそれが不要になります。これは国が認めていることなので、脱税にはなりません。 今回は電子契約と印紙税の関係について解説します。印紙税がかからない理由(根拠…
詳しくみる電子署名の作成方法は?PDF・Word・Excelなどを使用した無料の作り方を解説
電子署名とは、電子化した書類に使用される、電子的な署名のことです。電子署名を利用することで、契約締結をスピーディーに行えたり、契約書を物理的に保管したりする必要がなくなります。 本記事では、電子署名の作成方法や電子署名を使用するメリットなど…
詳しくみる誓約書のリーガルチェックは弁護士に依頼すべき?費用相場から書き方まで徹底解説
誓約書は、当事者間の合意内容を明確にし、将来のトラブルを防ぐための重要な書類です。しかし、内容に不備があったり、法的に無効な項目が含まれていたりすると、いざという時に全く効力を発揮しないばかりか、かえって不利な状況を招くことさえあります。 …
詳しくみる電子契約と紙の契約の違いは?メリット・デメリットや電子帳簿保存法対応も解説
紙の書類で行う契約と電子契約とは、形式が異なります。紙の契約は書面で締結するのに対し、電子契約は電子データを使用し、オンライン上で完結させる仕組みです。さらに、法的効力や送付・保管方法など、さまざまな違いがあります。 本記事では、紙の契約と…
詳しくみる認定タイムスタンプとは?時刻認証業務認定事業者の一覧や取得方法などを解説
認定タイムスタンプは、電子データがいつ存在したかを公的に証明し、改ざん防止にも寄与する仕組みです。特にビジネスシーンでは、契約書や請求書といった重要データの証拠力を高めたいニーズが増えています。 本記事では時刻認証業務認定事業者の一覧や認定…
詳しくみる