- 更新日 : 2024年11月26日
契約書を1通のみ作成する場合の文言は? 具体例や電子契約の対応についても解説
契約書を1通だけ作成する場合の文言や、後文の書き方について知りたい方も多いのではないでしょうか。
本記事では、契約書1通のみ作成した時の後文の書き方や原本の扱い、電子契約への対応など、具体的な文言例を交えて解説します。
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目次
基本的に契約書は2通(3者間なら3通)作成する
契約書は、契約当事者ごとに1通ずつ作成するのが基本です。例えば、2社間の契約であれば2通(3者間なら3通)作成し、各当事者が原本を保管します。
双方が契約書の原本を保持していることで、トラブル発生時には訴訟において裁判所に提出できる原本が存在するため安心です。
ただし、リスクが低く印紙税の負担が気になる場合には、原本を1通のみ作成し、他の当事者は写しを保管する方法がとられることもあります。この場合、リスクが高い側のほうで原本を管理するのが一般的です。
契約書を1通のみ作成するケース
契約書を1通だけ作成する理由は、主に印紙税の節約と契約上のリスクが低い場合です。以下で、見ていきましょう。
印紙代節約のため
一部の契約書には印紙税法により印紙税が課されるため、原本を各当事者が保持した場合、その分の印紙税負担が増えてしまいます。そのため、契約書を1通のみ作成し、片方の当事者が原本を保持し、もう一方が写しを保管する方法が採用されることもあります。
ただし、写しに「原本と相違ない」などの文言を記載した場合、その写しにも印紙税が課されるため、注意が必要です。したがって、印紙税を節約したい場合は、写しにそのような記載を避けるようにしましょう。
契約上のリスクが低い場合
信頼関係がしっかり構築されており、大きな争いの心配がない場合、契約書を1通だけ作成する方法が選ばれることもあります。原本1通のみであれば、契約書原本の管理による手間が省けるためです。
ただし、裁判等で契約内容を証明する必要が出た場合、写しは原本に比べて証拠価値が低くなります。こうした点を理解し、将来的にトラブルが起こるリスクも留意しておくようにしましょう。
契約書を1通のみ作成する場合の文言
契約書の後文は、契約書の有効性を担保し、当事者間の合意について確認する役割を果たします。
契約書を1通のみ作成する場合は、原本の保管者と写しの保管者を明確に区別する必要があり、後文の記載には細心の注意が必要です。
以下では、1通のみ作成する場合の後文について、役割と記載方法を解説します。
後文とは
後文とは、契約書の末尾に記載される数行程度の文言のことです。契約書の成立を証明する役割や、契約内容に関する重要な情報を明記する役割があります。
後文には、一般的に以下の項目が含まれます。
項目 | 内容 |
---|---|
契約の成立を示す文言 | 例:「本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各自1通を保有する。」 |
作成枚数 | 契約書が何通作成され、誰が保管するかを明確に示す |
作成者および保有者 | 契約書の当事者が誰であるかを明確化 |
契約締結の方法 | 「記名押印の上」のように、契約がどのように締結されたかを明記 |
契約締結日 | 契約がいつ成立したかを明確に示すために日付を記載 |
後文は、契約書の内容に間違いがないことを証明し、後々のトラブルを避けるために重要な役割を果たします。そのため、一度作成したフォーマットをそのまま使い回すのではなく、記載内容に誤りがないか契約内容と異なる箇所がないかについて、契約書を作成の都度しっかりと確認することが重要です。
紙の契約書の場合の後文
通常、紙の契約書は契約関係者の通数分を作成し、それぞれ印紙を貼り付けて保管します。ただし、契約書を1通のみ作成する場合には、後文に特別な配慮が必要です。
1通の契約書の場合、原本としての役割を明確にするため、どちらが原本を保持し、どちらが写しを保管するかを記載する必要があります。
例文として、以下のように記載します。
このようにすることで、1通のみの契約書に関する誤解を防げます。原本には印紙を貼って消印を行い、相手方にはそのコピーを保持してもらいます。
なお、コピーに「原本と相違ない」旨の証明文が付される場合、そのコピーも印紙税の課税対象となるため注意が必要です。また、法律上、契約書の複数通作成が義務付けられている契約については、必要通数を作成する必要があります。
電子契約の場合の後文
電子契約では、書面と異なる文言への変更が必要になります。書面契約で使用していた文言をそのまま使うとトラブルの原因となる恐れがあるため、以下のポイントに留意した対応が重要です。
【主な文言の違い】
項目 | 書面契約 | 電子契約 |
---|---|---|
媒体の表現 | 本書、書面 | 電磁的記録、電磁的措置 |
作成通数 | ○通作成 | 記載不要 |
契約締結方法 | 記名押印 | 電子署名を施す |
【後文例】
契約形態 | 後文例 |
---|---|
紙契約 | 本契約締結を証するため、本契約書を2通作成し、甲乙相互に各1通を保有する。 |
電子契約 | 本契約の成立を証するため、本契約の電磁的記録を作成し、甲乙各自が合意ののち電子署名を施し、それぞれがその電磁的記録を保管する。 |
「本書」「書面」といった紙媒体を指す表現は、「電磁的記録」などデジタルデータを示す文言へ変更する必要があります。例えば、「事前の書面による承諾」は「事前の電磁的記録による承諾」と記載しましょう。
また作成通数については、電子データは通数を数えられず複製が容易なため、記載は不要です。契約締結の方法も、従来の「記名押印」から「電子署名を施す(または電子署名を措置)」へ変更することで、契約の有効性が明確になります。契約締結日については、タイムスタンプとは別に日付欄を設けるのが一般的な方法です。
契約書を1通のみ作成する場合、どちらが原本を保持する?
契約書を1通のみ作成する場合、どちらが原本を保持するかは契約当事者間の合意に基づき決定します。
一般的に、リスクの高い当事者が原本を保持するケースが多く、これは契約内容の証明や法的効力を確保しやすいためです。
契約書には、原本の適切な保管を明確にするとともに、条文中に原本保有者を明示することで、契約内容の認識違いやトラブルを防げます。
契約書を1通のみ作成すると、印紙税を節約できる?
契約書を1通のみ作成し、原本保持者以外がコピーを保管することで印紙税を節約できるかについては、課税要件を十分に確認する必要があります。以下で見ていきましょう。
1通の契約書で印紙税を節約できる場合
契約書を1通だけ作成し、一方が原本を保持し、他方がコピーを保持する場合、コピー側には基本的に印紙税はかかりません。コピーは「契約の成立を証明する目的」で作成された文書とはみなされないためです。
契約の証明力を持たないコピーであれば、印紙税の課税対象外として扱われます。ただし、契約書のコピーが次の要件を満たす場合には、印紙税が課税されます。
コピーが印紙税の課税対象となる場合
- 署名または押印がある場合
コピーに契約当事者の署名や押印があると、契約の成立を証明するために作成されたものとみなされることが多いです。この場合、印紙税の課税対象になります。
- 原本と同一の証明がある場合
コピーに「正本と相違ない」などの記載があると、原本と同じ効力を持つと判断され、課税対象となります。
契約書の印紙税を節約するポイント
契約書を1通のみ作成し、署名や証明のない単なるコピーを相手方が保持するようにすれば、印紙税の追加負担を避けられます。ファックスやメールで送信された契約書も、原本が送付元に保管されている限り課税対象外とされます。
保持文書 | 印紙税の対象 | 課税理由 |
---|---|---|
原本 | 対象 | 契約の証明力を有するため |
署名・証明があるコピー | 対象 | 契約の成立を証明するために作成されたとみなされるため |
単なるコピー (署名・証明なし) | 非課税 | 契約の成立を証明する目的ではないため |
ファックス・メール 送信後の出力 | 非課税 |
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後文の文言は取引内容に合わせて慎重に選択しよう
契約書は通常、当事者それぞれの通数を作成しますが、印紙税の節約や契約リスクが低い場合には、1通のみ作成することもあります。その際、原本をどちらが保持するかを明確にし、後文でその役割を示すことが重要です。
電子契約の場合は、紙の契約書と異なる表現があるため注意しましょう。また、契約書のコピーが印紙税の課税対象とならないように、コピーへの署名や証明を避けることがポイントです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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