- 更新日 : 2025年1月17日
取引基本契約書に印紙は必要?どちらが負担する?金額や不要な場合を解説
取引基本契約書とは、継続的な取引を実施する際に結ぶ契約書のことです。取引先から「作成したい」と提案された経験がある担当者もいるでしょう。
本記事では、取引基本契約書を作成する際に印紙が必要なのか、どちらが負担するのかについて解説します。あわせて、印紙が不要な場合も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
取引基本契約書に印紙は必要?不要?
取引基本契約書とは、各種の継続的取引の基準となる内容をまとめた契約文書です。取引基本契約書は、一部の例外を除いて印紙税法における7号文書にあたり課税文書とみなされるため、印紙税の納付が必要です。
取引基本契約書を締結する場合、取引内容によって記載条項がそれぞれ異なり、主に3つの契約書に分けられます。ここでは3パターンそれぞれの特徴を解説します。
印紙が必要な契約書の種類と金額については、次の記事を参考にしてください。
売買基本契約書
売買基本契約書とは、買主・売主が複数回にわたって商品の売買を行う際に交わす契約書です。取引についての基本的な共通事項を取り決めておくために作成します。
たとえば、次のような項目などです。
- 発注、受注の方法
- チェック方法
- 検査・検収関連事項
- 責任所在 など
継続的取引基本契約書
継続的取引基本契約書とは、発注者の要望を受けて、受注者が継続して製品を作って供給する際に締結する契約書です。定める項目には、次のようなものがあります。
- 製品の仕様
- 製品の品質
- 製品の数量
- 製品の納期
- 製品のチェック方法
- 契約不適合責任 など
業務委託基本契約書
業務委託基本契約書とは、業務の委託者と受託者が取り交わす契約書です。定める項目には、次のようなものがあります。
- 業務内容/範囲
- 製品の納品の仕方
- 検収・検品の方法 など
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取引基本契約書に貼る印紙税の金額はいくら?
前述したように取引基本契約書は印紙税法における7号文書「継続的取引の基本となる契約書」に該当するため、一律4,000円の印紙が必要です。
第7号文書に該当する契約書としては、次のようなものがあります。
- 売買取引基本契約書
- 代理店契約書
- 特約店契約書
- 業務委託契約書
- 銀行取引約定書
ただし、契約期間が3ヶ月以内かつ、更新の定めがないものは例外として課税文書に該当しないため注意が必要です。ただし、そのほかの課税文書に該当する可能性もあることは理解しておきましょう。
たとえば、3ヶ月以内でも不動産の売買契約であれば1号文書、3ヶ月以内の業務委託契約や製造委託契約であれば2号文書となります。それぞれで、記載された金額や契約金額によって税額が異なるため注意しましょう。
それぞれに該当する契約書や必要な収入印紙の金額は以下のとおりです。
1号文書:不動産売買契約書、著作権譲渡契約書、意匠権譲渡契約書、土地賃貸借契約書など
<1号文書>
| 記載された契約金額 | 必要な収入印紙の金額 |
|---|---|
| 金額の記載なし | 200円 |
| 10,000円未満 | 非課税 |
| 1,000,000円以下 | 200円 |
| 1,000,001円~2,000,000円 | 400円 |
| 2,000,001円~3,000,000円 | 1,000円 |
| 3,000,001円~5,000,000円 | 2,000円 |
2号文書:請負契約書のみ
<2号文書>
| 記載された契約金額 | 必要な収入印紙の金額 |
|---|---|
| 金額の記載なし | 200円 |
| 10,000円未満 | 非課税 |
| 1,000,000円以下 | 200円 |
| 1,000,001円~2,000,000円 | 400円 |
| 2,000,001円~3,000,000円 | 1,000円 |
| 3,000,001円~5,000,000円 | 2,000円 |
参考:国税庁 No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
参考:国税庁 No.7104 継続的取引の基本となる契約書
取引基本契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?
契約書の収入印紙代については、印紙税法で契約書を作成した側の負担となっています。
また、契約書を一緒に作成したケースでは、それぞれが納めることともなっています。2通の契約書をそれぞれが保管するケースでは、双方でそれぞれに貼り付ける印紙代を負担するケースが多いようです。
取引基本契約書の印紙の貼り方、消印の押し方
収入印紙の貼り方について解説します。収入印紙の貼り方自体には、法的な決まりはありません。そのため、取引基本契約書の空白部分であればどこに貼り付けても有効になります。
下の画像のように、表紙や表題部分の左右いずれかの空白に張り付ける方法がおすすめです。収入印紙を複数枚張り付ける場合は上下、もしくは左右に並べて貼りましょう。

また、収入印紙を貼り付けた際には「消印」も同時に実施します。消印とは、収入印紙の上に捺印する印、署名のことです。印紙を貼り付けた人間が誰なのかを示すほか、印紙が使用済みであることも示すものになります。
消印を施す際は、印影が収入印紙と書類にまたがるように押印しましょう。誤った消印の押し方をした場合、過怠税の支払いが生じる恐れがあるため、注意が必要です。
取引基本契約書に印紙がないとどうなる?
取引基本契約書に印紙がないとどうなるのでしょうか。ここでは、印紙を貼り忘れた際のペナルティやリスクについて解説します。
契約内容は無効にならない
取引基本契約書に印紙がないからといって、契約内容は無効になりません。契約書に収入印紙を貼っていないということ自体は、契約内容の問題ではなく課税文書にもかかわらず税金を納めていないという納税の問題となるためです。
ただし、貼り忘れた場合にはペナルティ(過怠税)が生じるため注意が必要です。
過怠税が発生するリスク
収入印紙を貼り忘れた場合、過怠税が生じるリスクがあります。過怠税として課される額は、本来の納付額の3倍の額です。一般的には税務調査で収入印紙の貼り忘れが露見した場合に過怠税を課されることが多いです。
なお、故意に貼り忘れた(不足した)わけではなく、そのことに気づいて自己申告した場合には、1.1倍に軽減されます。
消印のし忘れにも注意
また、収入印紙に消印をしなかった場合には、消印されていない印紙の額面に相当する金額の過怠税が徴収されることになります。
契約書に収入印紙が貼られていない場合について詳しく知りたい方は、以下を参考にしてください。
取引基本契約書の割印の押し方
取引基本契約書への割印の押し方について解説します。割印とは、同じ契約書が2部以上発行されていることを証明する押し方のことです。割印をすることで、片方の契約書が改ざんされたり不正利用されたりすることを防ぐ役割を持ちます。
割印として認められる方法
割印に使用する印鑑に決まりはありません。ただし、印影が丸い場合、3部以上の契約書に割印を押す際に長さが足りないケースも考えられます。縦長の印鑑を作成しておくと安心です。

割印は少しずつ各契約書をずらして、それぞれの契約書に印影がかかるように押印します。なお、契約書には複数の関係者がかかわるものですが、法律上は双方の割印がなく、片方の割印だけでも問題ありません。
割印として認められない方法
収入印紙に割印する場合は、印鑑ではなく署名でも問題ありません。ただし、収入印紙に割印をする目的は再使用の防止のため、誰が割印したのかがわかるようにするほか、消せない方法で割印である必要があります。
たとえば、収入印紙と契約書をまたいで署名するのみの場合や、消えるボールペンやシャープペンシルなど消せる方法で割印した場合は認められません。
取引基本契約書の無料ひな形・テンプレート
取引基本契約書には、さまざまな項目を盛り込みます。社内で統一されたテンプレートがあると、作業側も処理側もスムーズに作業を行えるようになるでしょう。
以下では、取引基本契約書のひな形・テンプレートを用意しておりますので、ご活用ください。
取引基本契約書の印紙税を節税するポイント
取引基本契約書の印紙税を節税するポイントを2点紹介します。
1つめが、7号文書に該当しないように契約を分割させ、記載金額を明示する方法です。7号文書から外れるため、節約になります。
2つめのポイントが、取引先と都度契約する方法です。取引先に納得してもらうためには、コストダウンになる点を相手にしっかりと説明して理解してもらう必要があります。
電子契約なら取引基本契約書の印紙は不要に
電子契約なら取引基本契約書の印紙は不要です。なぜなら、電磁的記録(電子データ)をやり取りする行為は課税文書の「作成」にはあたらず、印紙税がかからないと解釈されるためです。
電子契約にすれば、4000円の印紙が不要になるほか、契約業務が効率化され、スピーディーに締結できるようになります。
電子契約で収入印紙が不要な理由については、次の記事を参考にしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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