- 更新日 : 2024年11月14日
解約通知書・退去届とは?提出期限や賃貸の解約方法と流れをご紹介
アパートなどの賃貸物件から引っ越す際に提出する解約通知書(退去届)。提出するタイミングや提出期限についてお悩みの方もいるのではないでしょうか。ここでは解約通知書とは何か、テンプレートを示してその書き方を説明するとともに、解約に関する各種手続きや流れも解説していきます。
目次
解約通知書(退去届)とは
まずは「解約通知書(退去届)」とは何か、不動産賃貸借の解約において必須なのか、期限や提出方法をみていきましょう。
解約通知書がなくても退去できる?
解約通知書は、法的に提出が義務づけられている書類ではありません。多くの場合、解約通知書がなくても退去できますが、大家や不動産会社の意向で提出を求められる場合があります
解約通知書が必要な場合には、契約時に解約の手続きとして説明があります。また書類一式の中に解約通知書のひな形が入っている場合がありますので、解約前には契約書類を確認しておくとよいでしょう。
解約通知書の提出期限はいつまで?
解約通知書の提出が必要である場合、前もって提出する期限を確認し、把握しておきましょう。
契約書には解約の意思表示について期限が記載されていますので、その日までに解約通知書を提出する必要があります。大家や管理会社に確認しておくのもよいでしょう。
多くの場合、退去の1カ月前には通知が必要です。
解約通知書の提出方法は?
解約通知書の提出は求められても、提出方法が指定されていることはあまりありません。大家や不動産管理会社など、指定された送り先に届きさえすれば問題ありません。
契約時に受け取った資料に解約通知書が含まれているのであれば、解約時にはそれを使えばよいでしょう。もし書式の指定がないようなら、インターネット等で手に入れた解約通知書の書式で問題ありません。
なお、書面の送付には、配送状況を追跡できるサービスが含まれている手段を使うのが無難です。
解約通知書のテンプレート・記入例
解約通知書がどのようなものか、こちらのテンプレートでイメージを掴んでおきましょう。契約の締結と異なり、解約の意思表示を伝えるだけですので複雑な書式ではありません。解約の意思表示としての要件を満たせる内容なら問題ないでしょう。
なお、管理会社によってはさらに多くの情報を記載する指定のフォーマットでの提出を求める場合があります。
貸主 ○○様
退去時期 ○○
契約者 ○○
解約通知書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
賃貸物件の解約パターン
賃貸物件につき解約をする方法として、いくつかのパターンが考えられます。以下で各パターンを説明していきます。
契約期間満了
特に契約に問題がなく、契約期間を設けていた場合には、その期間を満了することで解約できます。大きなトラブルがなければ多くがこの解約パターンとなるでしょう。
この場合は初めからいつ契約が終わるのかわかっているため、前もって早めに大家側から期間の満了に関する通知がなされることが多いです。満了になる半年前、あるいは数ヶ月ほど前に通知がやってきます。
ただし大家側からの更新拒絶には正当事由が必要です。逆に借主側は更新により引き続き住み続けることも、更新をせずに解約することも可能です。
途中解約(借主側の都合)
契約期間が満了する前の退去は途中解約になります。借主は大家や管理会社に解約の意思表示をしなければなりません。
解約までの期間は契約書に明記されています。そのため急遽引っ越しをしなければならない理由があったとしても、その後数ヶ月は住まない家の家賃を支払わなければならない可能性もあります。ただし多くの場合は解約の意思を伝えるのが遅れても遅れた日数分の家賃を日割り計算してくれるケースもあります。
大家側の都合
原則として、大家側からの解約は正当事由がない限り行えません。またその正当事由も、最終的には裁判によって認められなければ、大家側からの解約理由にはなりません。
どうしても退去して欲しい場合には、新しい住居への引っ越し代負担や立ち退き料の支払いなど、金銭的な解決を図る必要があるかもしれません。
裁判で立ち退きを要求することもできますが、借地借家法は借主に有利な考えで作られているため、大家側の主張が通ることはあまりないでしょう。
契約違反
どちらか一方がルールを守らなかった場合、契約違反を理由に解約をすることもあります。契約違反による解約は、多くの場合、借主側の問題により発生します。例として、家賃の滞納や転貸、禁止されているペットとの同居、夜間の騒音などがあると、大家から退去を要求できるでしょう。
ただし、こうした理由で退去を求めるには、ちょっとした違反やクレームがあった程度では難しいでしょう。大家側からの改善要求を素直に受けるなら、多くの場合はその後も契約関係を続行することになります。
解約通知書の提出~退去をするときの流れ
上述のように、解約が起こる背景には様々な理由があります。いずれの理由での解約においても、手続きやその後の流れには共通するものがあります。以下では一般的な手続きや流れを説明していきます。
①解約の意思表示
解約の手続きは、借主側からの解約の意思表示により始まります。新たな住まいが見つかっていない状態で解約の意思を示してしまうと、思い通りに物件が見つからずに住む場所が無くなるリスクがありますので、意思表示の前に次に住む物件の契約は済ませておきましょう。
②解約通知書の作成、提出
大家や管理会社から解約通知書の提出を求められる場合には、書面で解約の意思を伝えましょう。解約通知書は口頭での意思表示で齟齬を生まないために、提出を求められる場合が多くあります。
またあらかじめ賃貸借契約書において「解約は書面で通知すること」と定められていることも多いです。
③引っ越し予定日の決定、連絡
解約に関して対立がなければ、引っ越しの手続きを進めましょう。
退去日が決まったら、退去までのスケジュールを大家や管理会社に伝達します。引っ越し業者に依頼する場合には、引っ越し業者側とスケジュールを確定させる必要があります。繁忙期である2~3月は好きな日程を選びにくいので、スケジュールには余裕を持っておきましょう。
④引っ越し作業、退去
引っ越し作業を業者に依頼しているなら、多くの場合当日の立ち会いが必要です。事前に梱包した荷物が間違いなく運び込まれているか、漏れがないようにチェックしましょう。
荷物の運び出しが終わったなら、最後に部屋を清掃して退去の準備が完了です。
⑤退去の立ち合いと鍵の返却
荷物の運び出しが完了したなら、大家や管理会社によるチェックに立ち会いましょう。立ち合い当日には部屋を借りる際に預かった設備や備品の取扱説明書、セキュリティシステムに利用するICスティックなどを返却する必要があります。当日捜し物をしないよう、前もって箱などにまとめておきましょう。
退去時のチェックでは部屋の傷や汚れなどが確認されます。傷や汚れは原状回復費用などにも影響しますので、自分が付けた傷や汚れではないものもある場合、その旨伝えるようにしましょう。
全てのチェックが終わったら、鍵を返却して退去完了です。
⑥退去当日までに必要なもの、やるべきこと
引っ越し当日で退去できるよう、退去日当日までに様々な手続きを済ませておきましょう。上述の部屋探しや引っ越し業者の手配だけでなく、役所等での転出届の提出や、電気・水道・ガス・インターネットといったライフラインの契約移転も進めておきましょう。手続きの中には引っ越し後でないと着手できないものもありますので、連絡先の調査や手続きの準備はできるだけ済ましておくとよいでしょう。
⑦敷金・家賃の精算
最終月の家賃の清算とともに、敷金の精算が行われます。
家賃は退去日に応じて日割り計算されるのが一般的です。30日の月に15日まで契約していたなら、最終月の家賃は半月分で済みます。ただし契約次第で1カ月分をまるまる払う必要がある場合もありますので、契約内容はチェックしておきましょう。
退去後に部屋の修繕が必要な場合、敷金から必要な修繕費を差し引いた残額が後日返還されます。部屋の状態によっては敷金で足りずに追加資金を要求される場合もありますので、住んでいる間はできるだけ状態よく使うよう心がけておくとよいでしょう。
賃貸契約を解約する際の注意点
賃貸物件の解約に関して基本的な流れを説明してきました。最後に退去の注意事項について説明しましょう。契約の最後に大きなトラブルが生じないよう、知識を入れておきましょう。
違約金について
契約満了前に解約をしたからといって常に違約金が生じるわけではありません。しかし、あまりに短期での解約をする場合や契約内容によっては違約金を求められることがあります。例としては契約から1年未満の短期での解約です。
今すぐ解約をしなければならない特段の理由がないのであれば、一度契約の内容を見返し、違約金が発生する条件を確認してから判断しましょう。
「正当な理由なく違約金を求めてくる」「なぜ違約金を求められているのかわからない」という場合には弁護士など専門家に相談してみましょう。
原状回復について
原状回復に関するトラブルは非常に多く発生しています。借主は退去にあたって部屋を借りた当初の状態に戻す義務がありますが、原状回復の規模や判断の基準が問題となります。部屋の傷みの中に含まれる経年劣化による傷みは原状回復の対象にはあたりませんが、どこまでを経年劣化とみるかは判断が分かれるところです。
互いの認識にズレがあると原状回復が争点となってトラブルになってしまうことがあります。あらかじめ基準などを確認しておき、スムーズに退去できるようにしておきましょう。
賃貸解約のキャンセルについて
一度解約を申し入れたものの、やっぱり解約したくないと思うこともあるかもしれません。この「解約のキャンセル」は、賃貸契約の開始以上にデリケートな手続きです。すでに大家が次の入居者の手配をしている場合などには受け付けてもらえず、次の部屋が決まっていないのに退去しなければならないという事態にもなり得ます。
解約のキャンセルは、解約の申し入れから日が近ければ近いほど受け入れてもらいやすいので、できるだけ早くキャンセルの申し入れをしましょう。
駐車場の解約手続き
部屋の賃貸に併せて駐車場を借りているなら、駐車場の解約手続きも忘れないようにしましょう。マンションの敷地内にある駐車場であれば部屋の解約と同時に駐車場の解約が進むケースもありますが、外部のサービスを利用している場合には別途手続きを進めなくてはなりません。
解約月の家賃について
解約月の家賃に関して上で少し触れましたが、いくつかパターンがあります。
最も注意が必要なのは「月割」のパターンです。解約日をいつに設定したとしても、その月分の家賃を支払わなければなりません。月の前半で引っ越しをする場合には、住まない部屋に払う家賃が多めになります。
他方、「日割」であれば月をまたいでも損をしないので、住まない家に払う家賃を考える必要がありません。
また「半月割」なら、月の前半での退去であれば半月分の家賃で清算してもらえます。この場合も家賃の無駄は発生しますが、月割ほどシビアに考える必要はないでしょう。
解約に必要な費用について
解約までの一連の流れの中で、様々な費用が生じることは認識しておかなければなりません。違約金や最終月の家賃、引っ越し費用、住所変更に伴う各種手続き、駐車場の解約に関わる違約金や最終月の賃料、場合によっては敷金ではカバーしきれず原状回復に費用を求められることもあります。
解約通知書を出して正式に解約の意思表示をする前に、概算でも必要費用を把握しておきましょう。
スムーズに退去するために、解約通知書の提出を忘れないように!
引っ越しは様々な手続きをしなければならず、退去には大きな手間や費用が生じます。
ただでさえ忙しい引っ越しの最中に大家とトラブルになってしまうと、さらに負担がかかってしまいます。少しでも負担を軽くするためにも、一つ一つトラブルの芽を摘むことが大切です。快適でスムーズな引っ越しへのファーストステップとして、解約通知書の提出を忘れずに行いましょう。
よくある質問
解約通知書とは?
解約についての意思表示を記載し、これを契約の相手方に通知するための書面です。詳しくはこちらをご覧ください。
賃貸物件の解約をするには解約通知書は必須?
解約通知書がなくても解約ができることもありますが、賃貸借契約により書面による申し入れが必要なケースもあります。書面として残しておくことでトラブルを防ぎやすくなります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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