- 更新日 : 2024年8月30日
原状回復費用の請求書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
原状回復費用の請求書とは、賃貸借契約の終了時に、賃貸人が賃借物件を原状回復させるために工事などして要した費用を賃借人に請求するための書類です。企業がオフィスを借りる場合や工事による損傷などにより、請求されます。
本記事では、原状回復費用の請求書の内容や作成するケース、記載するべき内容、文言の具体例を解説します。
目次
原状回復費用の請求書とは
そもそも原状回復とは、借主の故意や過失によって賃借物件に生じたキズや汚れ、損傷等を元に戻すことを指します。民法621条により定められています。
原状回復費用の請求書とは、賃貸借契約が終了した際に、賃貸人が賃借物件を原状回復するために要した費用を、賃借人に請求するための書類です。賃貸物件を明け渡す際、賃借人には原状回復義務があり、かかる費用を賃貸人に支払わなければなりません。
原状回復費用の請求書は、通常の経理業務で作成する請求書とは異なり、以下のような特徴があります。
- 費用の内訳を詳細に記載する場合が多い
- 原状回復の必要性や妥当性を示す根拠資料を添付する場合がある
- 賃貸借契約の内容や賃貸物件の状況に応じて、請求内容が異なる
原状回復費用の請求書を作成する際は、これらの点に留意し、賃借人に対して適切かつ説得力のある請求を行うことが重要です。ただし、通常損耗や経年劣化によるものは原状回復の対象とならないため、請求書を作成しても請求が認められない場合があります。
参考:e-Gov法令検索 民法
原状回復費用の請求書を作成するケース
原状回復費用の請求書は、主に賃貸物件の契約終了時に作成されます。物件を退去する際、借主は物件を借りた当初の状態に戻す義務があります。貸主はそのための修繕費用を借主に請求するために作成します。賃借人の原状回復義務は特約によって排除できますが、一般的にはこのような特約は設けないことが多いです。特に、賃貸オフィスや店舗は、ほぼ100%特約を設けずに、むしろ民法が定める通りに原状回復の義務を負うことを確認するケースが多い傾向です。
原状回復費用の請求書を作成するケースは、以下のとおりです。
- オフィスの移転時
- 経年劣化や通常損耗
- 工事による損傷
オフィスを移転する際、借主は賃貸借契約に基づき、原状回復の義務を負います。壁紙や床の張替え、天井の塗装、電球の交換、鉄部の塗装、各種クリーニング作業などが含まれます。原状回復費用は広さや状態により変動しますが、例えば広さ30坪のオフィスで66万~77万円程度が目安です。
また、通常の使用による損耗や経年劣化についても、賃貸借契約に明記されている場合には原状回復費用に含めて請求されることがあります。ただし、一般的には経年劣化や通常損耗については賃貸人の負担となるケースが多いです。
さらに、賃借人がオフィス内で改装や設備の工事を行った場合、その工事によって生じた損傷や変更については原状回復の義務が生じます。例えば、店舗の外装工事や内装の改装工事などが該当し、これらを原状に戻す工事にかかる費用が請求されることがあります。
原状回復費用の請求書のひな形
原状回復費用の請求書を作成する際、ひな形があると記載内容に迷うことなく作成できるため便利です。適切な内容を漏れなく記載することで、借主とのトラブルを未然に防ぎ、円滑に費用を回収できるでしょう。
下記のサイトでは、原状回復費用の請求書のひな形をダウンロードできるため、利用してみてください。
原状回復費用の請求書に記載すべき内容
原状回復費用の請求書に記載すべき内容は、以下のとおりです。
- 期間満了の事実
- 原状回復費用の内容
- 原状回復費用の項目
- 原状回復費用金額
- 振込口座
- 支払期限
原状回復費用の請求書に必要な情報を漏れなく記載することで、借主との間でトラブルが発生するリスクを低減できます。また、明確な根拠に基づいた請求であることを示すことで、借主の理解を得やすくなり、円滑な支払いにつながるでしょう。
期間満了の事実
賃貸借契約の終了に伴う建物の明け渡しを受けた事実を下記のように明記します。
日付に誤記がないように記載しましょう。
原状回復費用の内容
原状回復費用が発生した理由を具体的に説明します。例えば、以下のような文言を使用します。
契約条項に触れながら、原状回復費用の請求根拠を明示します。
原状回復費用の項目
原状回復に要した費用の内訳を項目ごとに記載します。例えば、以下のような項目が考えられます。
項目 | 数量 | 単価 | 金額 |
---|---|---|---|
クロス貼替費用 | 5 | ¥2,000 | ¥10,000 |
クッションフロア貼替費用 | 6 | ¥2,500 | ¥15,000 |
ハウスクリーニング費用 | 1 | ¥20,000 | ¥20,000 |
具体的な金額を明記することで、請求内容の説得度を高められます。
原状回復費用金額
項目ごとの費用の合計額を記載します。
振込口座
原状回復費用の振込先口座を明記します。
支払期限
原状回復費用の支払期限を設定します。
支払期限を明確にすることで「原状回復の費用が振込まれない」といったトラブルを避けられるでしょう。
原状回復費用の請求書を作成する際の注意点
原状回復費用の請求書を作成する際は、原状回復の内容を明示しておくことが必要です。また、負担割合を答えられるようにすることで、原状回復費用を円滑に回収することにもつながります。
適切な原状回復費用の請求書を作成することで、借主との間でのトラブルを未然に防ぎ、円滑な費用回収につなげられるでしょう。
本項では、原状回復費用の請求書を作成する際の注意点について解説します。
原状回復の内容をしっかりと明示する
賃貸物件の明け渡し後、貸主側は原状回復工事の内容と費用について、借主に対して明確に説明することが求められます。請求書には、以下の情報を詳細に記載しましょう。
- 実施した工事の種類(クロス貼替、フローリング修繕など)
- 各工事の数量(○○㎡、○○枚など)
- 工事単価(1㎡あたり○○円、1枚あたり○○円など)
- 工事の合計金額
これらの情報を具体的に提示することで、借主に原状回復費用の妥当性を理解してもらいやすくなります。また、後日のトラブルを防ぐためにも、明瞭な請求書の作成が重要です。
負担割合を答えられるようにしておく
昨今は、これまでのように「100%借主負担で原状回復費用を支払う」ことは難しくなっています。また、原状回復費用の負担割合について、借主との認識にズレが生じることがあります。トラブルを未然に防ぐためにも、請求書には以下の情報を記載しましょう。
- 借主負担割合(○○%)
- 貸主負担割合(○○%)
- 負担割合の根拠(国土交通省のガイドラインなど)
請求書に負担割合を明記するだけでなく、借主から問い合わせがあった際に費用を支払ってもらえるように、納得のいく根拠資料を準備しておくことも大切です。例えば、以下のような資料が挙げられます。
これらの資料を整理し、必要に応じて借主に提示できるようにしておきましょう。借主の理解を得ることで、円滑な費用回収が期待できます。
原状回復費用の請求書の内容を理解して手続きをスムーズにしよう
原状回復費用の請求書とは、賃貸借契約の終了時に、賃貸人が賃借物件を原状回復させるために要した費用を賃借人に請求するための書類です。期間満了の事実や原状回復費用の項目、支払期限などを記載する必要があります。
トラブルを防ぐためにも根拠になる資料を提示したり、負担割合を答えられたりするようにしておきましょう。
本記事を参考にして、原状回復費用の請求書をスムーズに作成してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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