- 更新日 : 2026年1月29日
公正証書とは?契約にまつわる基本用語を解説!
公正証書とは、公証人が作成する公文書で、高い証明力と強制執行力を持つ法的文書です。
- 契約や遺言を法的に証明
- 裁判なしで強制執行可能
- 財産回収や相続に活用される
公正証書を作れば紛争予防や迅速な強制執行が可能で、特に金銭債務や遺言において法的効力が強く評価されます。
会社間の取引や遺言など重要な意思表示をする際に「公正証書」を用いることがあります。しかし、詳しい内容を知らない方は多いでしょう。
この記事では、公正証書に関する制度(公証制度)にまつわる公証役場や公証人などの基本用語や利用方法、費用などについて詳しく解説します。
目次
公正証書とは?
公正証書は、法務局に所属する公証人が作成する公文書であり、民間で作られる契約書などの「私文書」と比べて、証明力・強制執行力に優れた法的効力を持ちます。遺言、契約、借用書など、トラブル防止や証拠保全の手段として幅広く活用されています。
公正証書とは法的効力を備えた「公文書」
公正証書は、民間人が交わす契約内容や遺言などを、公証人が中立な立場で聞き取り、法的な形式に従って作成される公文書です。これにより、契約の内容や作成日などが公に証明されるため、後に「言った・言わない」の争いになりにくく、訴訟を未然に防ぐ効果が期待されます。
さらに、金銭の支払いに関する合意などを記載した場合には、裁判を経ずに強制執行できる「執行証書」となることもあり、強い法的効力を持ちます。
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公正証書を支える公証制度とは?
公正証書は、高い証明力と信頼性を備えた法的文書であり、その背景には「公証制度」という仕組みが存在します。公証制度は、民間人同士の契約や意思表示を、公証人という法律の専門家が中立な立場で文書化することにより、法的なトラブルの予防と円滑な社会取引の実現を目的とした制度です。この制度により、公正証書は公的な効力を持つ文書として活用されています。
公証制度は民間の法律関係を公的に証明するための制度
公証制度の本質は、契約書や遺言書といった私的な文書を、公証人が関与することで法的に有効で明確な文書として成立させる点にあります。これにより、後に「そんな約束はしていない」といった争いが起きたとしても、公正証書がその内容を明確に証明する役割を果たします。結果として、訴訟やトラブルの発生を防ぐ手段となります。
公証制度は公証人と公証役場によって支えられている
公証人は、法務大臣によって任命される法律の専門職であり、主に裁判官、検察官、弁護士などの法曹経験者から選ばれます。国家公務員ではないものの、法務局または地方法務局に所属し、国の公的な業務を担う立場です。守秘義務や兼職禁止など厳格なルールのもとで職務を行っています。
また、公証人が勤務する公証役場は全国に約300カ所設置されており、都市部では複数の公証人が常駐することもありますが、地方では1名で運営していることもあるため、事前に予約を取るのが一般的です。
公証人は公正証書の作成のほか確定日付の付与や認証も行う
公証人の中心的な業務は、公正証書の作成ですが、それ以外にも重要な職務として「確定日付の付与」や「認証」があります。確定日付の付与は、私文書に対して「この日に確かに存在していた」と公に証明するもので、法律上の効力を第三者に対抗するために必要な場面があります。たとえば、民法467条2項では、債権の譲渡について、確定日付のある通知または承諾がなければ第三者に対抗できないと定められており、この制度の重要性が法的にも明記されています。
認証とは、文書の内容や作成過程が適法であることを確認し、公証人がこれを証明する行為です。株式会社の設立時に行う「定款認証」が代表例で、公証人の認証がなければ株式会社の会社設立ができないため、実務上きわめて重要な役割を担っています(持分会社は定款の作成が不要)。
公正証書の種類は?
公証人が自己の権限のもと、個人又は法人からの依頼に基づき作成する公正証書は、法的効力の面で「契約」に関するもの、「単独行為」に関するもの、「事実実験」に関するものの3種類に分類されます。
公正証書において「契約」に関するもの
家を買う際の売買契約、お金の貸し借りに係る金銭消費貸借契約、会社間の取引における請負契約や業務委託契約など、私たちの社会生活において契約書を交わす機会は意外に多くあります。これらの契約書は当事者同士で署名捺印して各々が保管するケースが多いですが、当事者同士が希望すれば公正証書で作成することも可能です。どのような内容であっても「契約」と呼べるものであれば、公序良俗違反、法令違反などの問題がない限り公正証書にすることができます。離婚後の養育費や財産分与に関する「離婚協議書(離婚給付契約)」も含まれます。
なお、契約の中には法律上、任意後見契約のように公正証書に依ることが義務付けられていたり、定期建物賃貸借契約のように公正証書で作成されることが予定されていたりするものもあります。
公正証書において「単独行為」に関するもの
単独行為とは、一当事者の意思表示のみで有効となる法律行為のことです。最もポピュラーな単独行為は「遺言」であり、公正証書遺言は公正証書の代表といっても過言ではないでしょう。
自筆証書遺言では、不備があると無効になる可能性があります。一方で、公正証書遺言は専門家が確認しているため、無効になる可能性がほとんどありません。相続人同士で争いが起きる可能性がある、法定相続人がいないなど作成理由はさまざまですが、「自分自身の意思でこの内容の遺言書を作った」ということを公的に証明してくれる公正証書遺言は、当事者の最後の思いを確実かつ迅速に叶えるための手段として、今後もさらに活用されることが期待されています。
公正証書において「事実実験」に関するもの
「事実実験」とは、個人の権利義務等に関する「事実」につき、公証人が自ら見聞(=「実験」)することを意味します。その結果を記載したものが「事実実験公正証書」です。
公証人は依頼内容に基づき、土地の境界を確認するために現地を確認したり、株主総会に赴き議事進行状況を見聞したり、貸金庫の内容物を確かめたりして、それらを記載した公正証書を作成します。事実実験公正証書は、トラブルの際における証拠として非常に高い能力を有しています。
公正証書を作成するメリットは?
契約や遺言など、将来的に法的なトラブルにつながる可能性がある文書について、公正証書を活用することで、証明力・執行力・実務面で大きなメリットが得られます。ここでは、公正証書を作成する主な利点を解説します。
公正証書を作成すると証明力の高い公文書になる
公正証書の最大のメリットは、その「証明力の高さ」にあります。一般的な契約書(私文書)でも当事者間の合意を示す証拠にはなりますが、文書の真正性(誰がいつ作成したかなど)が争われるリスクは残ります。
一方で公正証書は、公証人という第三者が法律に則って作成する「公文書」であるため、少なくとも文書の成立の真正が推定されます。その結果、「言った・言わない」の水掛け論が起こりにくく、トラブルの予防につながります。
公正証書は裁判なしで強制執行が可能になる
公正証書のもう一つの大きな利点は、「執行力」を持たせることができる点です。たとえば金銭の支払いに関する契約において、「支払わなかった場合には強制執行を受けてもよい」と記載(強制執行認諾条項)しておけば、裁判を経ずに、ただちに強制執行が可能になります。
通常、私文書による契約では、債務不履行があった際に訴訟を起こし、勝訴判決を得た後にようやく執行できますが、公正証書ならこの手続きを省略できます。これにより、費用や時間、精神的な負担を大幅に軽減でき、履行の抑止力としても機能します。
債務者の財産開示請求がしやすくなる
さらに、令和2年の民事執行法改正により、執行力ある公正証書を基に、債務者の財産開示を求める手続きがしやすくなりました。養育費の不払いがある場合、公正証書をもって裁判所に申し立てれば、市町村や金融機関など第三者機関を通じて、債務者の勤務先や預金口座などの情報を取得できる制度が整備されています。これにより、強制執行の実効性が高まり、債権回収の現実性が向上しています。
公正証書遺言なら相続手続きもスムーズになる
相続においても、公正証書遺言は大きなメリットがあります。自筆証書遺言は家庭裁判所の「検認」が必要ですが、公正証書遺言はこの手続きが不要なため、相続発生後すぐに手続きを開始できます。
また、自筆証書遺言では遺言者の出生から死亡までの戸籍をすべて集めて相続人を確定させる必要があります。公正証書遺言では、自筆証書遺言と同様に出生から死亡までの戸籍をすべて集める必要があるものの、検認が不要です。遺言の実現を迅速・確実に進められ、相続人の事務的負担が軽いというメリットがあります。
公正証書の費用は?
公正証書作成費用は「公証人手数料令」という政令により定められており、内容が同じであれば全国のどの公証役場でも、どの公証人に依頼しても同額です。売買契約や離婚給付契約、遺言などでは、養育費総額や相続財産を金銭に換算した「目的価額」で決まる基本手数料に、証書枚数や法律行為の数などにより加算されていく形になっています。
| 番号 | 法律行為の目的の価額 | 金額 |
|---|---|---|
| 一 | 百万円以下のもの | 五千円 |
| 二 | 百万円を超え二百万円以下のもの | 七千円 |
| 三 | 二百万円を超え五百万円以下のもの | 一万千円 |
| 四 | 五百万円を超え千万円以下のもの | 一万七千円 |
| 五 | 千万円を超え三千万円以下のもの | 二万三千円 |
| 六 | 三千万円を超え五千万円以下のもの | 二万九千円 |
| 七 | 五千万円を超え一億円以下のもの | 四万三千円 |
| 八 | 一億円を超え三億円以下のもの | 四万三千円に超過額五千万円までごとに一万三千円を加算した額 |
| 九 | 三億円を超え十億円以下のもの | 九万五千円に超過額五千万円までごとに一万千円を加算した額 |
| 十 | 十億円を超えるもの | 二十四万九千円に超過額五千万円までごとに八千円を加算した額 |
| 法律行為の目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円を超え100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円を超え500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円を超え1000万円以下 | 20,000円 |
| 1000万円を超え3000万円以下 | 26,000円 |
| 3000万円を超え5000万円以下 | 33,000円 |
| 5000万円を超え1億円以下 | 49,000円 |
| 1億円を超え3億円以下 | 49,000円に超過額5,000万円までごとに15,000円を加算した額 |
| 3億円を超え10億円以下 | 109,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
| 10億円を超える場合 | 291,000円に超過額5000万円までごとに9,000円を加算した額 |
引用:別表(第九条、第十七条、第十九条関係)|e-Gov法令検索
証書案の作成や公証人との交渉などのサポートを弁護士や行政書士などの法律専門家に依頼した場合は、別途報酬が必要です。報酬は自由に決められるため、一概に相場を述べることは難しく、公正証書遺言でも5万~15万円と幅があるようです。
公正証書が効力を発揮する期間は?
公正証書には作成日が記載されますが、その日からただちに効力が発生するとは限りません。実際の効力発生日は、証書の内容や法的性質、または当事者の合意によって異なります。また、効力がいつまで続くか、いわゆる有効期限についても明確な法的ルールがあるわけではなく、ケースごとに異なる取り扱いがされます。
公正証書の効力は内容に応じて発生時期が異なる
公正証書は、公証人がその日にその内容で作成したことを証明する「作成日」が記載されますが、効力発生日とは別です。たとえば、遺言の公正証書は、遺言者の死亡により相続が発生した時点で効力が生じます(民法985条1項)。それまでの間は、あくまで将来に備えた効力のない状態にとどまります。
また、離婚に伴う養育費や財産分与などの取り決めについて記載した離婚給付契約に関しては、効力が生じるのは離婚届が受理された時点です。
これに対して、通常の契約内容を記した公正証書であれば、当事者が任意に効力発生日を定めることができます。「この契約は公正証書の作成日に効力を生じる」と明記しておけば、作成日がそのまま効力発生日となりますし、「〇年〇月〇日から有効とする」と記載することも可能です。
公正証書には一般的な有効期限は設けられていない
公正証書そのものには、法律上の「有効期限」は定められていません。一度作成された公正証書は、基本的に半永久的に効力を保ちます。ただし、契約内容などによって当事者間で効力の終了時期を定めることは可能です。その場合、公正証書の本文に「この契約は〇年〇月〇日をもって終了する」といった記載を加えておくことで、契約の終期を明確にすることができます。
なお、効力が続いていても、債権回収などの場面では「消滅時効」の影響を受けることがあります。たとえば、金銭債権であれば債権者が権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年です。時効期間内に、請求や強制執行を行う必要があります。
このように、公正証書の効力発生日はその内容によって異なり、有効期限は原則として存在しません。実務では、発生日と終了条件をあらかじめ明記しておくことで、後の解釈の相違やトラブルを未然に防ぐことができます。公正証書を作成する際は、効力の期間についても具体的に検討しましょう。
公正証書を作成する手続きと必要な書類は?
公正証書を作成するには、公証役場で公証人の手続きを受ける必要がありますが、初めての人にとっては少しわかりにくい部分もあります。ここでは、公正証書作成の流れと、事前に用意すべき書類について整理します。
公正証書を作成する手続きの流れ
- 公証役場に連絡し、事前相談を行う
電話またはメールなどで公証役場に連絡し、公正証書を作成したい旨を伝えます。証書の種類(契約書、離婚給付契約、遺言など)と内容の概要を相談し、必要な書類や準備事項を確認します。 - 契約内容や希望事項を文案またはメモにまとめる
相談に基づき、契約内容や条件、金額、支払方法などを簡単にまとめたメモや原案を作成します。これをもとに公証人が正式な文書に仕上げます。 - 必要書類を提出し、内容の確認・調整を行う
本人確認書類などを提出し、公証人と内容の確認・修正を行います。必要に応じて数回のやり取りが発生することもあります。 - 公証役場で署名・押印し、公正証書を完成させる
完成した文書を公証人とともに確認し、当事者が署名・押印します。この時点で正本・謄本などが交付され、公正証書が正式に成立します。
公正証書の作成に必要な書類は内容により異なる
公正証書を作成する際に必要となる代表的な書類は次のとおりです。
作成手数料は文書の種類や金額に応じて変動し、公証人手数料令に基づいて計算されます。内容によっては、証人の同席が求められる場合もあるため、日程の調整も含めて早めの準備が望まれます。
公正証書の知識を得て有効活用しよう
遺言や離婚協議書はもちろん、一般的な契約についても公正証書にしておくことでトラブルを防ぎやすくなり、いざという時に強制執行に至るまでの手間を省くことができます。公正証書にしておくほうがメリットが大きいと考えられる文書であれば、作成しておくことをおすすめします。
よくある質問
公正証書とは何ですか?
法務局に所属する公証人が個人や法人からの依頼に基づき作成する文書で、公文書として高い証明力を持ちます。詳しくはこちらをご覧ください。
公正証書を作成するメリットを教えてください。
高い証明力と執行力を有するためトラブルを抑止できること、万一の場合は迅速な債権回収行動が可能になることです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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