- 更新日 : 2025年2月14日
契約書には誰の住所を書けばよい?会社それとも個人?
ほとんどの契約書には住所の記入欄が設けられていますが、どの住所を書けばよいかわからない方もいるのではないでしょうか。この記事では、契約締結者の書き方を企業の場合と個人の場合に分けて解説し、「そもそも住所の記載を省略することはできないのか?」といったことにも触れていきます。
目次
契約が企業間取引の場合は会社の住所を記載
会社が当事者となって契約書を作成する場合は、一般的に「住所の記入」「記名」「押印」を行います。
その目的は、契約の当事者である会社を特定することです。当事者を特定できなければ、トラブルが生じた場合に「この契約を交わしていない」といった主張が通る可能性があるからです。
当事者を特定するために、契約書に「記名」「押印」および「住所の記入」を行います。
住所の欄には、契約の当事者である会社の住所を記入します。会社代表者の個人の住所を記入しないように気を付けましょう。
会社の住所としてどの住所を記載すればよい?
「会社の住所」といっても本社と支社がある場合や、登記されている本店所在地と活動拠点が異なる場合は複数の住所があります。特段の事情がなければ、このような場合は登記されている本店所在地の住所を記入するとよいでしょう。
会社の住所を記入することの目的が契約当事者の特定にあることを考えると、公的な登記情報を用いるのが目的に適うからです。また、登記された商号と住所を記入すれば、同名の会社と区別することもできます。
住所が違えば同じ商号で登記を行うことができるため、会社名だけで特定できるとは限りません。しかし、同じ住所で同じ商号の登記を行うことはできないため、商号と住所を記入すれば、より確実に当事者を特定することができます。
ただし、登記された住所と事業の実態がある住所が異なっている場合、契約書では実際の会社の場所がわかりません。
このような混乱を避けるために、登記上の住所と当該契約における活動を行っている住所を記入しておくとよいでしょう。
契約の締結者が個人の場合は個人の住所を記載
フリーランスや個人事業主が増えているため、個人を相手に契約を締結することもあるでしょう。
契約の相手方が個人でも、住所を記載することの目的が契約当事者の特定にあることに変わりありません。同姓同名の人がいるケースもあるため、住所の記載がないと当事者を特定できないおそれがあります。
しかし、個人は法人のように登記を行う義務がありません。よって、個人の住所を記入することになります。
個人事業主は、個人の住所と事業所が別であることも多いです。確実に特定できるのであればどちらでも構いませんが、バーチャルオフィスなどを使っていて特定が難しいとみられる場合は、別途対応を検討する必要があります。
リスクが大きい契約であれば、住民票や免許証など、身分証明書の写しの提出を求めるとよいでしょう。ただし、その場合は取得した情報を法令にしたがって厳重に管理しなければなりません。
契約書における住所の記入は省略できる?
前述のとおり、契約書に記入する住所は契約者の同一性を示すための情報です。
そのため、契約の効力という観点では省略が可能です。住所の記入を省略したからといって契約自体が無効になるわけではありませんし、問題が発生しないケースも少なくありません。
契約内容の履行に問題が生じたり、取引中に損害が発生したり、契約に基づく責任を追及したりする場合は相手方を特定する必要がありますが、契約書以外の情報から住所を知り得る場合は問題にはならないでしょう。とはいえ、住所情報がないとリスクにつながるため、住所を記入することをおすすめします。
電子契約においても、個人が特定できないことによって同じリスクが生じます。そのため、相手方に住所や氏名といった情報を契約書に記入してもらうようにしましょう。
なお、近年は、電子契約が締結されるケースが増えています。
民事訴訟法および電子署名法においても、「本人の署名又は押印」「本人による電子署名」があれば、文書の成立の真正に関して推定効を得ることができると規定(下記)されており、住所は文書の成立の真正が推定されるための要件として求められていません。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
契約書の住所欄には当事者の住所を記入しよう
契約の相手方が企業でも個人でも、相手方を特定するためには住所の情報が必要です。企業の場合は代表者個人の住所ではなく、契約の主体である企業の住所を記載します。同じ名前の会社が存在することによるリスクをなくすためには、登記されている本店所在地を記入するとよいでしょう。
契約の相手方が個人の場合は、個人の住所を記入してもらいましょう。登記情報からは確認できないため、必要に応じて身分証明書の写しを提出してもらい、住所等の情報に間違いがないかチェックすることをおすすめします。
マネーフォワード クラウド契約では弁護士監修の契約書テンプレートを用意しています。無料で利用可能ですので、以下のページからダウンロードしてご利用ください。
よくある質問
契約書には誰の住所を記入すればよいですか?
個人の場合は個人の住所、企業の場合は代表者個人の住所ではなく、企業の住所を記入してください。詳しくはこちらをご覧ください。
契約において住所の省略は可能ですか?
省略しても契約の効力に影響はありませんが、取引先を特定できなくなるリスクを避けるために、省略せず記入することをおすすめします。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
競業避止義務とは?法的に有効な内容や就業規則への記載方法などを解説
競業避止義務とは、自社の従業員が競業にあたる事業を行えないようにすることを指します。競業避止義務は、契約締結などによって課されるケースが多いです。 従業員は業務内容によって重大な情報を共有したり、特別なノウハウを身につけたりすることがありま…
詳しくみる労働組合通知書とは?加入通知や結成通知の作り方をひな形付きで紹介
労働組合通知書とは、労働組合が会社に通知を行うための文書です。この文書を受け取ったタイミングで交渉を持ちかけられることもありますので、会社側は適切な対処方法を知っておく必要があります。また、労働者目線では文書の作成方法への理解が必要です。当…
詳しくみる施術同意書とは?効力や書き方・例文をひな形つきで解説
「施術同意書」は、施術に関して知ってもらいたい事項を顧客に確認してもらい、同意があったことを形に残すために作成する文書です。当記事では、この施術同意書の書き方やポイントを具体例とともに説明しています。美容サロンや整体院などの運営を検討してい…
詳しくみる出向契約書とは?ひな形をもとに書き方や事業者向けの注意点を解説
出向契約書とは、従業員を出向させるときに作成する書類の一つです。出向契約書には出向後の働き方に関わる事柄を明記し、事業者・従業員ともに認識の齟齬がないように備えなくてはいけません。出向契約書に含める事項や作成のポイント、ひな形を紹介するので…
詳しくみる類似商号に対する警告書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
類似商号に対する警告書とは、自社の商号と類似した商号を無断で使用している者に対して、その使用の停止などを求める警告書です。侵害行為の内容や侵害に当たる理由を明示したうえで、速やかな使用停止を求める旨を記載しましょう。本記事では、類似商号に対…
詳しくみるモニター同意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
モニター同意書とは、企業が製品やサービスの評価を目的としたモニタリングに参加する方から同意を得るための法的書類です。レビュー収集や個人情報の取り扱い、写真利用など、具体的な条件を明確にすることで、事業者とモニター双方の権利を保護します。 本…
詳しくみる