• 作成日 : 2025年11月11日

ChatGPTで契約書レビューは可能?注意すべきリスクやプロンプト例20選を紹介

ChatGPTを活用した契約書レビューに関心が高まっています。AIによる契約書チェックは、使い方次第で業務を大幅に効率化できる一方、情報漏洩や専門性の欠如といったリスクも伴います。

本記事では、ChatGPTで契約書レビューがどこまで可能なのか、その際に注意すべきリスク、そして具体的な活用手順について詳しく解説します。コピペで使える実践的なプロンプト例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

ChatGPTで契約書のレビューは可能?

ChatGPTによる契約書のレビューは、あくまで補助的なツールとして活用するという前提で、限定的に可能です。

高度な言語能力を活かし、誤字脱脱字のチェックや一般的な条項の抽出、要約といった形式的な作業は得意です。しかし、AIは法的な専門家ではなく、矛盾や欠落の検知精度などには限界も指摘されています。弁護士が業務で利用する際に倫理上の監督・検証義務が課されることからも分かるように、AIの出力を鵜呑みにせず、人の手による検証、そして最終的な専門家の確認を組み合わせることが極めて重要です。

ChatGPTが補助的に活用できること

ChatGPTが補助的に活用できることは以下の通りです。また、これらのタスクにおいても、AIは誤りを犯す可能性(ハルシネーション)があるため、人による検証が前提となります。

  • 誤字脱字や衍字(えんじ)、脱字の検出
  • 難解な条文の平易な表現への言い換え
  • 定義されていない用語のリストアップ
  • 一般的な契約に含まれる条項との比較による、抜け漏れの参考リストアップ
  • 契約書全体の構成チェックや、論理的な矛盾の可能性の指摘

ChatGPTが苦手なこと(リスクを伴うこと)

形式的なチェックを得意とする一方で、AIの判断を鵜呑みにすると重大なリスクを見過ごす可能性があります。特に、以下のようなビジネス上の判断や専門的な法的評価を伴うタスクは苦手としています。

  • 最新の法改正や判例の反映
  • 個別の取引背景や特殊な事情を汲み取った判断
  • 事業戦略に基づいたリスクの評価
  • 法的な有効性や強制力に関する最終的な判断
  • 弁護士法に抵触する可能性のある「法律事務」としての助言

結論として、ChatGPTは契約書レビューの「第一読者」や「アシスタント」として有効に機能しうるツールですが、法務担当者や弁護士といった専門家の代替にはなり得ません。両者の強みを理解し、適切に使い分けることが重要です。

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ChatGPTを契約書レビューに使うリスクとは?注意点と対策

ChatGPTを契約書レビューに利用する際は、主に4つのリスクを理解し、対策を講じる必要があります。これらのリスクを軽視すると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

1. 情報漏洩・セキュリティのリスク

ChatGPTに契約書情報を入力する際、最も注意すべきはデータ保護です。入力した情報がどのように扱われるかは、利用するプランや設定によって大きく異なります。

プラン・設定別のデータ利用ポリシー

OpenAIの公式情報に基づくと、データの扱いは主に以下のように分類されます。安易な一般化はせず、ご自身の利用環境を必ず確認してください。

プラン種別学習への利用とユーザー設定データ保持期間(不正監視等)
Consumer (Free, Plus, Pro)デフォルトで学習に利用されますが、設定でOFFにできます。履歴OFFでも最大30日間保持
Team / Enterprise / Eduデフォルトで学習に利用されません。DPA(データ処理に関する補足条項)に基づく
API Platformデフォルトで学習に利用されませんが、オプトインで共有可能です。最大30日間(デフォル

Consumer(無料・Plus等)プランでは、設定をOFFにしない限り、入力データがAIの学習に利用される点に特に注意が必要です。また、履歴保存をOFFにしても、不正利用の監視等を目的としてデータが最大30日間保持される可能性があることも認識しておく必要があります。

対策
  • Consumerプランを利用する場合:
    • 必ず設定画面からデータ学習をOFFにする。
    • 契約当事者名、取引金額、個人情報などの機密情報は入力前に必ず匿名化・ダミー化する。
  • ビジネスで継続利用する場合:
    • TeamやEnterpriseプランの導入を検討する。これらのプランは、デフォルトで学習に利用されず、セキュリティ機能も強化されています。

法人向けプランのセキュリティ

法人向けプランで謳われる「セキュリティ強化」には、以下のような具体的な項目が含まれます。

  • データ利用:入力データをモデルの学習に利用しない。
  • 暗号化:通信時(TLS 1.2+)および保管時(AES-256)の暗号化。
  • コンプライアンス:SOC 2 Type2などの第三者認証への準拠。
  • アクセス管理:SSO(シングルサインオン)やドメイン検証による管理機能。

2. 法的助言ではないため、専門性に欠けるリスク

ChatGPTの回答は法的な助言ではなく、その正確性は一切保証されません。AIは弁護士資格を持たず、学習データからもっともらしい文章を確率的に生成しているだけであり、その回答を鵜呑みにするのは非常に危険です。

また、AIツールの利用方法によっては、利用者が弁護士法で禁じられた「非弁行為」に該当する可能性も指摘されており、そのリスクを十分に理解しておく必要があります。

対策
  • ChatGPTからの回答は「参考意見」として捉え、必ず自社の法務担当者や顧問弁護士による確認プロセスを設ける。
  • AIの回答の根拠となる法令や判例を別途調査し、裏付けを取る。

3. 最新の法改正や判例に対応できないリスク

ChatGPTの基本的な知識は特定の時点のデータに基づきますが、現在の有料プランなどではWeb検索機能が搭載されており、最新情報へのアクセスも可能です。しかし、以下のリスクは依然として存在します。

  • 最新情報へのアクセスの限界:検索機能が常に有効とは限らず、参照する情報源が正確である保証もありません。
  • 法改正の反映ラグ:法律は改正されますが、その頻度や規模は様々です。例えば、個人情報保護法は原則「3年ごと見直し」が制度化されていますが、民法の大規模な改正(2020年債権法、2022年成年年齢)はより長いスパンで起こります。AIがこれらの複雑な変遷を正確に理解し、回答に反映できるとは限りません。
対策
  • レビュー対象の契約書に関連する法律について、官公庁のウェブサイト(e-Gov法令検索など)で最新の情報を確認する。
  • 重要な契約については、必ず最新の法令に精通した専門家にレビューを依頼する。

4. ハルシネーション(誤情報)を生成するリスク

ChatGPTは、事実に基づかないもっともらしい嘘(ハルシネーション)を生成することがあります。

これは生成AIの特性であり、存在しない法律や判例を引用したり、条文の解釈を誤って説明したりする可能性があります。「〜法第〇条に基づき、この条項は無効です」といった断定的な回答が生成された場合でも、その根拠が本当に正しいのかを疑ってかかる姿勢が重要です。

対策
  • 回答に含まれる具体的な法令名、条文番号、判例などを必ず一次情報で確認する。
  • 複数の異なる聞き方(プロンプト)で質問し、回答の一貫性を確認する。

ChatGPTで契約書レビューを効率化する具体的な流れ

ChatGPTを安全かつ効果的に活用するためには、適切な手順を踏むことが重要です。以下の4つのステップに沿って進めることで、AIの強みを最大限に引き出し、リスクを最小限に抑えることができます。

ステップ1. 目的の明確化と契約書の準備

まず、ChatGPTに何をレビューしてほしいのか、目的を具体的に定めます。

目的が曖昧なままでは、得られる回答も漠然としたものになります。「不利な条項がないか確認したい」「定義が曖昧な用語をリストアップしたい」「秘密保持義務の範囲が妥当か知りたい」など、チェックしたいポイントを具体的に絞り込みましょう。 次に、契約書を準備します。前述の通り、情報漏洩リスクを避けるため、社名、個人名、住所、製品名、金額などの固有名詞は「甲」「乙」「A製品」「X円」のように、必ず匿名化・一般化してください。

ステップ2. プロンプトの作成と入力

明確な指示(プロンプト)を作成し、準備した契約書テキストと共に入力します。

良い回答を得るためには、良いプロンプトが不可欠です。以下の要素をプロンプトに含めると、回答の精度が向上します。

  • 役割の指定:「あなたは優秀な法務担当者です」「あなたは経験豊富な弁護士です」
  • 背景・文脈の説明:「これはITシステムの開発委託に関する業務委託契約書です。当社は委託者(甲)の立場です」
  • 具体的な指示: 「以下の契約書案について、甲の立場で特にリスクとなる条項を指摘し、その理由と修正案を提案してください」
  • 出力形式の指定:「指摘事項は箇条書きで、表形式でまとめてください」

準備した契約書の全文をコピーし、作成したプロンプトの下に貼り付けてChatGPTに入力します。

ステップ3. ChatGPTの回答の検証と比較

ChatGPTから得られた回答を鵜呑みにせず、必ず内容を精査・検証します。

AIの回答はあくまで「たたき台」です。指摘されたリスクが本当に自社のビジネスにとって重要なものか、提案された修正案が取引の実態に合っているかを、人間の目で判断する必要があります。 特に、以下の点を確認しましょう。

  • 指摘の根拠は明確か?(法令や一般的な法解釈に基づいているか)
  • ハルシネーション(誤情報)は含まれていないか?
  • 自社のビジネスモデルや取引相手との関係性を考慮した内容になっているか?

疑わしい点や不明な点があれば、追加のプロンプトで深掘りして質問することも有効です。

ステップ4. 専門家による最終確認

最終的には、必ず弁護士や法務の専門家によるレビューを受けます。

ChatGPTによるセルフチェックは、あくまで内部での一次レビューです。特に取引金額が大きい契約や、内容が複雑な契約、長期にわたる契約については、専門家の最終確認が不可欠です。ステップ3までで整理した論点や疑問点を専門家に共有することで、レビューの質と効率をさらに高めることができます。

ChatGPTを契約書レビューに使う際のプロンプト例20選

ここでは、契約書レビューの様々な場面で活用できるプロンプトの例を、目的別に20個紹介します。コピーして、ご自身の契約書に合わせてカスタマイズしてご活用ください。

基本的なチェックに関するプロンプト

契約書全体を俯瞰し、形式的な不備や基本的な抜け漏れを確認するためのプロンプトです。

1. 誤字脱字・表現のチェック

以下の契約書について、誤字脱字、文法的な誤り、不自然な表現がないかチェックしてください。

2. 用語の定義チェック

以下の契約書で定義されている用語と、定義されずに使用されている法律・技術用語をリストアップしてください。

3. 構成・抜け漏れのチェック

以下の契約書全体の構成を分析し、論理的な矛盾や欠落していると思われる標準的な条項があれば指摘してください。

4. 契約期間・自動更新のチェック

以下の契約書の契約期間に関する条項をレビューし、契約期間の開始日と終了日、自動更新の有無、更新手続き、更新時の条件変更について明確に記載されているか確認してください。特に意図しない自動更新のリスクがないか指摘してください。

リスク・不利益な条項のチェックに関するプロンプト

自社の立場から、潜在的なリスクや一方的に不利な条件が設定されていないかを発見するためのプロンプトです。

5. 網羅的なリスクの洗い出し

あなたは発注者(甲)側の優秀な法務担当者です。以下の業務委託契約書案について、甲にとって不利な条項、リスクの高い条項を優先度順に3つ挙げ、その理由と修正案を具体的に提案してください。

6. 秘密保持契約(NDA)の範囲チェック

以下の秘密保持契約書(NDA)について、秘密情報の定義が広すぎないか、また返還・破棄義務が適切に定められているかを確認してください。

7. 損害賠償条項のチェック

以下の契約書に含まれる「損害賠償」に関する条項をすべて抽出し、賠償責任の範囲(直接損害、通常損害など)や上限額が当事者の一方に偏っていないか評価してください。

8. 準拠法・合意管轄のチェック

以下の契約書に記載されている準拠法および合意管轄裁判所が、当事者双方にとって公平か、また当社(本社:東京)にとって地理的に不利でないかを確認してください。

9. 解除条項の妥当性チェック

以下の契約書における解除条項(特に無催告解除事由)が、一方的に不利な内容になっていないか、また、自社が履行遅滞に陥った場合の是正勧告や猶予期間が適切に設けられているかを確認してください。

10. 反社会的勢力排除条項のチェック

以下の契約書に、反社会的勢力の排除に関する条項(反社条項)が含まれているか確認してください。含まれていない場合、標準的な条文例を提案してください。

契約類型別のチェックに関するプロンプト

特定の契約タイプで特に重要となるポイントを、重点的にレビューするためのプロンプトです。

11. 【業務委託契約】権利帰属のチェック

以下の業務委託契約書について、「成果物の権利帰属」に関する条項が、委託者側に有利に設定されているか、不利な点はないかを確認してください。特に、著作権法第27条及び第28条に定める権利がすべて委託者側に譲渡されているか、著作者人格権の不行使についても言及があるか確認してください。

12. 【売買契約】契約不適合責任のチェック

以下の売買契約書について、「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」の期間や内容が、買主側として妥当かどうかを検証してください。

13. 【賃貸借契約】原状回復・中途解約のチェック

以下の賃貸借契約書について、賃借人(乙)の立場から見て、原状回復義務の範囲が過度に広く設定されていないか、また、中途解約に関するペナルティが重すぎないかを確認してください。

14. 【ソフトウェアライセンス契約】利用範囲のチェック

以下のソフトウェアライセンス契約について、ライセンスの許諾範囲(目的、地域、期間、利用者数)が当社の利用実態と合っているか、また、禁止事項が過度に厳しくないかを確認してください。

条文の修正・代替案の提案に関するプロンプト

問題点を発見するだけでなく、より具体的で実践的な改善案を引き出すためのプロンプトです。

15. 曖昧な条文の修正案作成

以下の契約書の第〇条は、表現が曖昧で解釈の余地があります。この条文の意図を明確にするための修正案を、A案・B案の2パターン提案してください。

16. 平易な表現へのリライト

以下の契約書は全体的に表現が硬く、理解しにくいです。契約全体の法的意味合いを変えずに、より平易で分かりやすい表現に書き換えてください。

17. 対案(カウンタープロポーザル)の作成

あなたは当社側の交渉担当者です。以下の契約書案を基に、相手方との交渉で修正を求めるべき条項を優先度順にリストアップし、それぞれの交渉方針(最低限譲れないライン、理想的な着地点)を提案してください。

18. 交渉ポイントの洗い出しと提案

相手方から提示された以下の修正依頼について、当社のリスクを最小限に抑えつつ、相手方の要望にも配慮した対案(カウンタープロポーザル)を作成してください。

【相手からの修正依頼】 (ここに相手からの修正依頼内容を記載)

要約・解説に関するプロンプト

契約書の内容を深く理解したり、関係者に分かりやすく説明したりするためのプロンプトです。

19. 契約書全体の要約

あなたは企業の法務担当者です。以下の契約書の内容を、法務知識のない営業担当者にも理解できるように、重要なポイントを5つに絞って箇条書きで要約してください。

20. 特定条項の解説

以下の契約書の第〇条(例:損害賠償)について、この条項が持つ法的な意味と、当社のビジネスに与える具体的な影響や注意点を分かりやすく解説してください。

ChatGPTを賢く活用し、契約書レビューの質を高めるために

本記事では、ChatGPTを契約書レビューに活用する方法、そのリスクと対策、そして具体的な手順とプロンプト例を解説しました。AIによる契約審査は、正しく使えば契約書業務の初期段階における時間と手間を大幅に削減できる強力なツールです。

重要なのは、ChatGPTを万能の専門家ではなく、あくまで「優秀なアシスタント」と位置づけることです。情報漏洩や誤情報といったリスクを常に念頭に置き、匿名化処理を徹底し、得られた回答は必ず人間の目で検証するプロセスを組み込む必要があります。そして、最終的な法的判断は、必ず弁護士などの専門家に委ねることを忘れないでください。

これらの点を守り、ChatGPTを賢く活用することで、契約書レビューの精度と効率を一段上のレベルへと引き上げることができるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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