• 作成日 : 2025年3月24日

転貸承諾書とは?ひな形や例文、書き方、承諾料の相場を解説

「転貸承諾書」は、賃借人が第三者に物件を転貸する際に賃貸人から得た承諾を文書化したものです。転貸の有効性を示すとともに、転貸の条件や各当事者の権利義務関係を明確にするために使われます。

本記事ではこの転貸承諾書について知っておきたい基礎知識から、作成方法など実務に関することまで解説しますので、ぜひ参考にしてください。

転貸承諾書とは?

転貸承諾書とは、「賃借人が賃貸物件を第三者(転借人)に転貸することについて、賃貸人が承諾したことを証明する文書」のことです。賃借人と賃貸人の間で交わされ、転貸自体の有効性のほか、転貸に関する条件や制限事項を明確化する役割を担います。

なお転貸とはつまり又貸しのことであり、AからBへ貸し出されたものがBからCへとさらに貸し出されることを意味します。

※このときのAが「賃貸人」、Bが「転貸人」、Cが「転借人」となる。また、Bは同時にAとの契約における「賃借人」でもある。

民法上はこの転貸に関して次のルールを定めており、賃借人による勝手な転貸は認めていません。

第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

引用:e-Gov法令検索 民法第612条

そこで賃借人が適法に転貸を行うためには賃貸人の承諾が必須となり、その承諾を文書化したものが転貸承諾書となります。

転貸承諾書を作成するケース

転貸承諾書は、賃借人が物件を第三者に転貸する場面で作成されます。例えば、次のようなケースで転貸承諾書を作成します。

ケース特徴
法人が借りた社宅を従業員が利用する法人が賃貸人から物件を借り上げ、その物件を従業員に社宅として提供する。法人と従業員の間で契約を交わして社宅として運用し、賃貸人に対する支払い責任は法人が負う。
店舗や事務所のスペースをほかの事業者に転貸する商業施設内のテナントをフランチャイザーが借り、フランチャイジーに転貸する。あるいは賃借人が関連会社に転貸して事業を行うなど。
賃借人が家族・親族に物件を転貸する賃借人が長期不在となりその家族などに住んでもらう場合。親族関係にあっても法的には第三者であり同居でもないため転貸のための承諾が必要。
賃貸物件を使って住宅宿泊事業(民泊)を営む住宅宿泊事業用の物件を所有せず、賃貸物件を使うときは、民泊として使うため転貸の承諾が必要。
不動産会社によるサブリース不動産会社が、物件の所有者であるオーナーから借り上げて、入居者に転貸する。

ただし、元の賃貸借契約において、すでに転貸が明示的に許可されている場合であれば、あらためて承諾を得る必要はありません。また、居住用で借りている物件に名義人の家族が一緒に住む行為は転貸にあたらないため、このときも承諾書は必要ありません。

転貸承諾書のひな形・テンプレート

転貸承諾書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。

ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。

マネーフォワード クラウドでは、転貸承諾書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。適宜加筆修正して活用してください。

転貸承諾書に記載すべき内容

転貸承諾書には、具体的な承諾内容や転貸の条件、そして物件や転借人などを特定する情報などは明記しましょう。

承諾内容

転貸に対して承諾する旨を「貴殿が以下の転借人に対し、本件土地を以下の条件で転貸することについて同意します」といった形でわかりやすく示しましょう。この意思表示が転貸承諾書におけるもっとも重要な部分となります。

加えて「転貸の目的」「転貸期間」「転貸の範囲」についても明示することで、当該承諾がどこまでを指しているのかがはっきりさせられます。

転貸の条件

転貸にあたって条件があるとき、「転貸承諾料の支払い(借地権の転貸において定められることがある)」「転借人の行為に対する賃借人の責任(転借人による損傷に対し賃借人が賠償義務を負うなど)」「原状回復義務に関する取り決め」「転貸の取り消し」「賃貸人への報告義務」などのルールを設けるときは、その点についても明確に定めておくべきです。

当事者間でよく話し合い、納得のいく条件が決まったときは、その内容を記します。

転借人を含む契約当事者や物件の特定

転貸承諾書には、承諾をする賃貸人の氏名はもちろん、承諾を受ける賃借人、そして実際に物件を利用することになる転借人がすでに定まっているのならその方の氏名も明記し、当事者を特定しておきましょう。

対象となっている物件の特定も行い、所在・地番・地目・地積などを正確に記載します。

転貸承諾書を作成する際の注意点

転貸承諾書の作成については、それぞれの立場によって注意すべきポイントが異なります。賃貸人と賃借人(転貸人)それぞれの視点から留意すべき点を確認しましょう。

賃貸人(所有者)視点での注意点

賃貸人は物件の所有者として、転貸によって所有者の権利が不当に制限されないよう、以下の点に注意することが望ましいでしょう。

  • 転借人の属性や使用目的の確認
    →転借人がどのような人物・法人であるか、また物件をどのような目的で使用するかを明確にすべき。事業用途での使用を想定していない物件を事業用に転貸すると、建物の構造上の問題や近隣トラブルの原因となることがある。
    →転借人の信用情報についても確認しておくと安心。
  • 特約追加の検討
    →賃貸人と賃借人の間で交わされた原契約の条件をそのまま適用するか、転貸に適用される新たな条件を特約として定めるかどうかをよく考える。
  • 取消事由の明確化
    →どのような場合に転貸の承諾を取り消すことができるかを明記しておけば問題発生時の対応がスムーズになる。
    →「賃料を○ヶ月滞納した場合」「目的外の使用をした場合」など。
  • 原状回復義務の所在
    →転借人による使用後の原状回復について、最終的な責任は賃借人にあることを明記する。

賃借人(転貸人)視点での注意点

転貸人としての立場も持つ賃借人は、賃貸人に対する責任も継続するため以下の点に注意が必要です。

  • 賃料支払いの継続
    →転借人からの賃料が未払いでも賃貸人に対する支払い義務は継続する。このリスクを軽減するために家賃保証の仕組みを活用するなど工夫することが重要。
  • 転借人の行為に対する責任
    →転借人の行為によって生じた損害やトラブルについても、賃貸人に対しては賃借人が責任を負う。そのため、物件使用に関する禁止事項など具体的な取り扱い方を転借人との契約に定めておくべき。
  • 承諾料が適正か
    →転貸の承諾に際して費用の支払いを求められた場合、その金額が適正といえるか一度チェックする。不当に高額な承諾料を要求された場合は、専門家に相談して交渉を行うべき。

転貸する際に承諾料はかかる?相場は?

建物の転貸において承諾料の支払いは、必須ではありません。賃貸人との話し合いのみで解決することも可能ですが、転貸の目的やその他さまざまな事情を考慮して承諾料のやり取りが発生する可能性はあります。

一方、借地権の転貸や譲渡に関しては承諾料を支払う慣行があります。借地権価格の10%が相場とされていることから、仮に更地価格が5,000万円で借地権割合が60%だとすれば、単純計算で[5,000万円×60%×10%=300万円]という結果になります。

ただし、具体的な金額は土地の立地条件や規模などの事情も影響してくるでしょう。

転貸承諾書を締結する流れ

転貸承諾書の取得は、まず賃借人が賃貸人に対して転貸の承諾を依頼するところから始まります。この際、以下の点に注意しましょう。

  • 転貸の目的や期間、転借人のことを具体的に説明する
  • 使用目的が居住用か事業用かを明確にする
  • 転貸条件や制限事項を確認する

必要事項の記入と賃貸人による記入欄も設けた転貸承諾書を作成し、これを賃貸人に提出します。賃貸人が転貸承諾書へサインを行い、無事承諾が得られれば、次に転借人との間で転貸借契約を締結しましょう。

当然、このときの契約は賃貸人から得た承諾の範囲内で行う必要があります。

転貸承諾書の保管年数や保管方法

転貸承諾書の保管年数に関する直接的なルールはありませんが、賃貸借契約書と同等に取り扱うとよいでしょう。少なくとも契約が続いている限りは破棄しないようにし、10年程度保管し続けておくと税法および会社法上の要件も満たすことができます。

保管方法も決まりはありません。契約書類と同水準のセキュリティ下で、紛失や改ざんのリスクがないように安全に保管しておきましょう。

転貸承諾書の電子化、電子契約は可能?

転貸承諾書を書面(紙)で取得しないといけないと定めた法律はなく、電子的に承諾を交わしても効力に問題はありません。ただし、本人性や非改ざん性を示すためにも、機能性の整った電子契約サービスを利用するなどして安全に文書への署名をもらえるようにしましょう。

紙で作られた転貸承諾書を、保管のためにスキャンして電子化することも可能です。これにより長期的な保管もしやすくなり、必要になったときでもすぐにアクセスができるようになります。

賃貸物件を貸し借りするなら転貸承諾書を作成しよう

転貸承諾書は、賃貸借関係における転貸の適法性を担保する重要な書類です。ある賃貸借契約における借主が借りている物件を第三者に貸す場合、あるいは又貸しを受けるときには、所有者である貸主に転貸承諾書を作成してもらいましょう。

作成にあたっては、民法の規定を踏まえつつ当事者間の権利義務関係を明確にすることが大事です。特に利用条件、責任関係については具体的かつ明確に記載することが後のトラブル防止につながります。


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