- 作成日 : 2025年3月24日
不動産コンサルティング業務委託契約書とは?ひな形や書き方を解説
不動産コンサルティング業務委託契約書とは、不動産に関するコンサルティングを第三者に依頼する際に締結する契約書です。不動産コンサルタントには不動産に関する調査や分析、助言などの業務を委託することができます。
本記事では不動産コンサルティング業務委託契約書の書き方や記載すべき内容、契約書作成時の注意点についてご紹介します。
目次
不動産コンサルティング業務委託契約書とは?
不動産コンサルティング業務委託契約書は、不動産の調査や物件の活用に関する企画立案、事業計画策定などを専門業者に委託する際に締結する契約書です。特に、不動産は宅地建物取引業法(宅建業法)などの法律が絡んできます。関連する法律の範囲内で業務を行うための権利義務を定め、法的効力を持たせることが重要です。
また、依頼者とコンサルタントとの間でしっかりとルールを取り決めておかないと、費用負担や守秘義務に関するトラブルが発生しやすくなるため、事前に書面を用いて契約を取り交わしておくことが望ましいです。
不動産コンサルティングとは?
不動産コンサルティングとは、不動産に関する専門知識を持った業者(コンサルタント会社)や専門家(コンサルタント)が、依頼主(企業や不動産の管理者、オーナーなど)に対して調査・分析・助言を提供するサービスです。例えば、市場動向の調査、資金計画の策定、建築プランの検討、法規制の確認などが挙げられます。
不動産仲介会社や紹介業者と異なり、総合的な視点から最適な活用方法を提案するのが特徴です。依頼主はコンサルタントのレポートやアドバイスを参考に、売買や賃貸借、開発事業などを実施します。
不動産コンサルティング業務委託契約書を交わすケース
例えば、土地の転用を検討している企業が専門家に事業計画の作成を依頼するケースや、不動産投資を検討している個人が市場調査や収益シミュレーションの助言を受ける場合などが挙げられます。宅建業を営む不動産会社が提携先のコンサルタントに対して自社の業務の一部を委託することもあります。
いずれの場合においても、不動産コンサルティング業務委託契約書を取り交わし、業務範囲や報酬の決定方法、守秘義務・再委託制限などを明確にしておくことが重要です。
不動産コンサルティング業務委託契約書のひな形・テンプレート
不動産コンサルティング業務委託契約書をスムーズに作成するためには、ひな形(テンプレート)を利用するのが効果的です。契約書を1から作る必要がなくなり、契約手続きをスムーズに進められるでしょう。
ひな形は、そのまま使うのではなく、内容を確認して案件ごとにカスタマイズしましょう。内容を簡単に変更できる、ワード形式のひな形を選ぶのがおすすめです。
マネーフォワード クラウドでは、不動産コンサルティング業務委託契約書のひな形・テンプレートを無料でダウンロードいただけます。適宜加筆修正して活用してください。
不動産コンサルティング業務委託契約書の主な内容
ここからはひな形をもとに、不動産コンサルティング業務委託契約書に定めるべき条項や内容と、その書き方のポイントについてご紹介します。
契約の目的と業務委託の対象
「甲は乙に対し、別紙記載の不動産に関するコンサルティング業務を委託する」というように、契約の目的を明確にします。対象不動産や業務内容を具体的にすることで後々のトラブルを防止できます。
委託業務の内容と実施方法
市場調査、開発計画の立案、法的規制の確認など、業務内容を具体的に列挙します。口頭報告と書面報告の両方が含まれるかどうかを明記しておくと、レビューや成果物の確認がスムーズです。
報告書の提出期限
「令和〇年〇月〇日までに報告書を提出する」というように成果物の提出期限を定め、延長が必要となった場合の取り決めを記載します。コミュニケーションの取り方を条項に含めることも有効です。
報酬・支払い条件
「本件委託業務の報酬として金〇円を支払う」というように、業務委託料や支払い方法、振込期限、振込手数料の負担先を明確化します。実費精算の有無や手数料が無料となる条件なども盛り込みましょう。
再委託の禁止
不動産コンサルタントが業務を下請けに外注できるかどうかを定めます。特に不動産コンサルティング業務は高い専門性が求められるので、再委託の可否は慎重に判断しましょう。
機密情報の保護義務
両当事者が相手方の機密情報を第三者に共有したり、漏えいしたりしないことを定めます。契約期間終了後も情報を保護する旨を含めることで、守秘義務の効果が継続します。
契約の解除
契約を解除できる事由や手続きを定めます。合意解除や不履行時の解除、違法行為が認められた場合などを条件として定めることが一般的です。一方的な解除を避けるため、解約金や協議要件を設定する場合もあります。
損害賠償
「甲または乙が責に帰すべき事由で相手方に損害を与えた場合、その賠償責任を負う」というように規定します。
契約に定めのない事項の協議
契約書には書かれていないような、想定外の問題が生じた場合にもスムーズに解決できるようにするための条項です。「本契約に定めのない事項や疑義については、甲乙間で誠実に協議する」と明示しておきます。
契約に関する紛争の解決
「○○地方裁判所を専属管轄裁判所とする」など、紛争発生時の解決方法と管轄裁判所を記載します。トラブル対応策を明文化することで、後々の混乱を最小限に抑える効果があります。
契約日、当事者の署名、押印
「令和〇年〇月〇日、本書を2通作成し、甲乙記名押印のうえ、各自保管する」と締めくくり、契約の成立を明確にし、最後に両当事者が署名押印する欄を設けます。ここに署名押印した時点で契約に同意したと見なされます。
不動産コンサルティング業務委託契約書を作成する際の注意点
不動産コンサルティング業務委託契約書を作成する際あるいは契約を締結する際には、以下のような点に注意しましょう。
宅建業法や違法リスクへの配慮
不動産売買の仲介・代理業務に該当する場合は、宅建業免許が必要となります。調査や助言などのコンサルティングの範囲を超えて、紹介業務や営業行為そのもの、あるいはそれに近い業務を含むなら、宅建業法など関連法規の遵守を十分に確認してください。
報酬の決め方・目安
特にビジネスで、トラブルになりやすいのはお金のことです。不動産コンサルティング業務の委託料は成果が発生した際に支払う成果報酬型、毎月定額でサービスを提供する定額型など、どの形態にするかで契約書の書き方が大きく異なります。明確な報酬形態や支払い基準、支払いスケジュールを設定し、遅延や未払いを防止しましょう。
機密情報の取り扱い
不動産情報や事業計画は、企業や事業主の経営戦略上重要な情報あるいは個人情報が多分に含まれます。機密保持違反が発生すると被る損害が大きいため、秘密保持条項を厳格に設定し、違反時のペナルティも規定することがポイントです。
不動産コンサルティング業務委託契約書に合意する流れ
主に以下のようなプロセスを経て、不動産コンサルティング業務委託契約を締結してサービスが開始されます。
条件の事前確認
委託業務の範囲やスケジュール、業務委託料などを口頭やメールで擦り合わせます。ここで誤解をなくすため、できるだけ具体例を挙げながら話し合うとよいでしょう。
契約書案の作成・レビュー
テンプレートやひな形を元に契約書案を作成し、双方で内容をレビュー・修正します。違法行為に該当しないか、報酬や再委託の規定が明確か、著しく相手方が不利になるような条項がないかなどをチェックしてください。
契約締結と保管
最終案に合意したら署名・押印または電子署名を行い、双方が原本または電磁的記録を各1部ずつ保管します。このとき、振込先の口座情報や報告書の提出期限を再確認しておくのがおすすめです。
不動産コンサルティング業務委託契約書の保管年数や保管方法
商取引の契約書は、税務上7年、または会社法上10年保管が必要とされる場合があります。また、これとは別に企業の内部規定で期限が定められており、法定保管期間以上の長期保存を行うケースもあり得ます。
参考:会社法|e-Gov法令検索
参考:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁
紙の契約書の場合は、後から検索しやすいようファイリングしたうえで、鍵付きキャビネットや耐火金庫に保管し、改ざんや紛失を防ぎましょう。電子契約書を採用している場合は、タイムスタンプなどによる改ざん防止を施したうえで、ハードディスクやUSBメモリに保存し、さらにバックアップシステムを用意し、データ消失を防ぐことが重要です。
不動産コンサルティング業務委託契約書の電子化、電子契約は可能?
電子契約サービスの普及により、不動産コンサルティング業務委託契約書も電子化が可能です。電子署名法に則り適切な電子署名・タイムスタンプを施せば、紙の契約書と同等の法的効力が認められます。電子契約を導入することで、契約がスピーディーに締結できる、書面の作成や郵送、管理のコストや手間を省けるなどのメリットがあります。
参考:電子署名及び認証業務に関する法律|e-Gov法令検索
参考:電子署名とは?仕組みや具体的なやり方までわかりやすく解説|Money Forwardクラウド契約
ただし、コンサルティングサービスに仲介行為などが含まれる場合は、宅建業法上の書面交付義務があるため、全てのプロセスを電子化できないケースもあります。
細部まで詰めたうえで、不動産コンサルティング業務委託契約を締結しましょう
今回は不動産コンサルティング業務委託契約書の作成方法や注意点、保管方法、電子化の可否などを解説しました。書き方や条項の設定を誤ると違法行為に問われたり、後日の紛争に発展したりといった事態になりかねません。
特に不動産の活用や売買は依頼者側にとっては、今後の事業や生活に関わる大きな事項です。依頼者とコンサルタントがしっかりと擦り合わせたうえで締結することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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