- 更新日 : 2025年1月17日
土地売買契約書の電子契約の流れは?電子化する方法やデメリットも解説
2022年5月の宅建業法改正により、土地売買契約書の電子契約が全面的に解禁されました。相手方の承諾を得れば、重要事項説明書から契約書まで、ほぼすべての書類を電子化して契約を締結できます。
本記事では、土地売買契約書の電子化に関する法的根拠から具体的な手続きの流れ、メリット・デメリットまでを詳しく解説します。
目次
土地売買契約書の電子契約はいつから利用できる?
土地売買契約書の電子契約は、2022年5月18日から利用が可能です。デジタル社会形成整備法による宅地建物取引業法の改正により、これまで書面での契約が必須だった不動産取引において、電子契約の利用ができるようになりました。
法改正により、これまで紙の書面が必須であった重要事項説明書(35条書面)や売買契約書(37条書面)など、重要書類の電子化が認められたことによって、不動産取引における完全なペーパーレス化への道が開かれました。
土地売買契約書の電子契約を締結するまでの流れ
実際に土地売買契約書の電子契約を行う場合、どのように進めればよいのでしょうか。ここからは、土地売買契約書の、一般的な電子契約締結の流れを紹介します。
土地売買契約書を作成する
土地売買契約書は、電子契約システムで取り扱えるPDF形式、もしくは電子契約システムを使用して作成します。電子化にあたっては、事前に取引相手から電子契約についての承諾が欠かせません。契約手続きに入る前に、承諾を得ておきましょう。
契約書作成時には、記載内容の正確性はもちろん、アップロード時に文字化けや改変がないかなど、電子データ特有の確認も必要です。また、契約当事者の本人確認資料や物件に関する資料なども、電子データとして準備する必要があります。
重要事項説明を実施する
電子契約を行う際には、オンラインで重要事項説明(IT重説)を実施しなくてはなりません。例えば、IT重説の際には宅地建物取引士証を提示する、重要事項説明書の内容に相違がないことを相互に確認するなどの要件を満たすことが求められます。
電子契約を締結・契約書交付
IT重説完了後、契約内容について合意が得られれば、電子契約の締結に移ります。不動産会社があらかじめ電子署名した契約書を買主に送付し、確認のうえで電子署名を行います。
双方が電子署名をすると、契約成立です。買主には電子ファイルで契約書類が送付されます。
電子帳簿保存法の要件をもとに契約書を保管する
契約成立後は、双方が契約書を電子的に保管します。このとき、電子帳簿保存法を満たすよう、以下の点を守って保管しなければなりません。
- 契約書データの真正性を確保する
- タイムスタンプを付与して保管する
- 改ざん防止措置を講じる
- 必要に応じて書面出力できる状態を維持する
- 一定条件を満たす検索機能を確保する
土地売買契約書を電子化するメリット
土地売買契約書の電子化は、不動産取引の効率化とコスト削減に大きく貢献します。電子化によって得られるメリットを見ていきましょう。
すばやい契約締結が可能になる
電子契約では、契約書の作成から締結までの時間を大幅に短縮できます。従来は売主・買主・媒介業者・取引主任者など複数人の記名押印が必要であり、書類のやり取りにかなりの時間を要していました。
これに対して、電子契約ではオンラインでやり取りできるため、数時間で契約締結が可能です。また、遠方の買主や多忙な投資家でも、インターネット環境さえあれば場所を問わず契約手続きを行えるメリットもあります。
印紙税や郵送費用を削減できる
不動産売買は契約金額が大きいケースも多く、印紙税も高額になりがちです。その点、電子契約は紙の書面ではないため、印紙税が不要です。そのため、かなり大きなコスト削減につながります。
また、契約書の印刷費用、製本費用、郵送費用なども削減できます。
契約書を保管・検索しやすくなる
不動産売買契約書は永久保存が推奨されているため、紙の書面であれば契約数が多くなると書類の保管スペースも拡大する必要に迫られ、コストがかかります。また、管理の手間もかかるでしょう。
しかし、電子契約書はデータとしてサーバーやクラウドに保存されるため、物理的な保管スペースが不要です。また、電子化により膨大な契約書の中から必要な書類を瞬時に検索できる点も、メリットだといえるでしょう。取引対象の不動産や取引相手、取引日時などで検索が可能となり、業務効率が大幅に向上します。
土地売買契約書を電子化するデメリット
土地売買契約書を電子化することにはメリットが多くありますが、以下のようなデメリットもあります。
- 相手方の承諾と環境整備
- システム導入コスト
- セキュリティ上の課題
詳しく見ていきましょう。
相手方の承諾と環境整備
土地売買契約書の電子化実施には、取引相手からの事前承諾が必須です。高齢者やテクノロジーに不慣れな方との取引では、承諾が得られず電子契約への移行が難しい場合があります。
また、自社だけでなく相手方にインターネット環境などが整っていない場合は、回線や必要な機器の準備をしなければならない点も、デメリットとなり得るでしょう。
システム導入コスト
電子契約システムの導入には、初期費用に加えて運用・保守のためのランニングコストが発生します。また、従量課金があるシステムを採用している場合には、契約数の増加によってコストが膨らむ可能性があります。
セキュリティ上の課題
電子契約はオンライン上で行われるため、システム障害やデータの消失、サイバー攻撃による情報漏洩のリスクを完全には回避できません。契約書には取引の詳細や個人情報、機密情報が含まれているため、情報流出は企業の信用失墜につながる可能性があります。
そのため、高度なセキュリティシステムの導入や、厳格な権限管理などが欠かせません。
土地売買契約書以外で電子化できる不動産関連の契約書
不動産取引における電子化は、土地売買契約書以外にも多くの重要書類で可能です。以下で、具体的な事例を紹介します。
重要事項説明書
重要事項説明書(35条書面)は、契約や物件に関する重要な事項を説明した書面です。2022年5月の宅地建物取引業法の改正により電子化が可能になりました。
電子データで交付する際は、相手方への提供通知、事前承諾が必要です。また、ZoomなどのWeb会議システムを使用したIT重説を実施でき、説明内容の確認や電子署名まで一連の流れをオンラインで完結できます。
媒介契約書
媒介契約書(34条の2書面)は、不動産会社に仲介を依頼する際に締結する文書で、これも電子化できます。一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約のいずれも電子契約が可能です。また、レインズ(指定流通機構)への登録証明書も電子化の対象となっています。
賃貸借契約書
賃貸借契約に関する書類も、電子化が可能です。2022年5月の宅建業法改正により、賃貸借契約の申し込みから契約締結、重要事項説明まで、すべての手続きをオンラインで完結できるようになりました。
ただし、事業用定期借地契約や農地の賃貸借契約書など、一部の契約書については法令により書面での作成が必要とされています。
土地売買契約書の電子契約は不動産取引の新たなスタンダードに
2022年5月から土地売買契約書の電子契約が全面解禁され、不動産取引のデジタル化が急速に進んでいます。取引相手の承諾を得て、適切な電子署名を行えば、重要事項説明から契約締結まで、すべてをオンラインで完結できるようになりました。
電子契約の導入により、契約締結までの時間短縮や印紙税の削減といったメリットが得られる一方で、セキュリティ対策や環境整備などの課題もあります。これらを十分に検討したうえで、自社の状況に合わせて電子契約の導入を進めることで、業務効率の向上と取引の円滑化を実現できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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