- 作成日 : 2024年9月27日
根抵当権一部譲渡承諾書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
根抵当権一部譲渡承諾書とは根抵当権者(債権者)が第三者に根抵当権の一部を譲渡することを根抵当権の設定者(債務者)が承諾する意思を示す書類のことです。
この記事では根抵当権一部譲渡承諾書の書き方や盛り込むべき内容について、ひな形も交えてご説明します。
目次
根抵当権一部譲渡承諾書とは
根抵当権一部譲渡承諾書は根抵当権者が根抵当権の一部を第三者に譲渡する際に作成します。根抵当権とは不動産につけられる担保権の一種です。通常、銀行などでお金を借り入れる際に債務者は不動産に抵当権をつけて担保として提供します。抵当権は借り入れを行う際に都度設定しなければなりません。
根抵当権はあらかじめ設定した貸付限度額の範囲であれば何度でも借り入れることができます。たとえば根抵当権を設定して3,000万円を限度額とした場合、まず1,000万円を借りてその後にさらに1,000万円を借りることもできれば、限度額いっぱいの2,000万円を借り入れることも可能です。
たとえば事業者が事業資金の融資を受ける場合、追加で借り入れをすることもできるため、担保となる不動産に抵当権ではなく根抵当権を設定することがあります。
根抵当権一部譲渡承諾書を作成するケース
根抵当権一部譲渡承諾書を作成するケースとして挙げられるのは根抵当権者である債権者が融資を受ける際です。たとえば債務者Aに根抵当権を持つB社がC社から新たに融資を受ける場合にその融資の担保として債務者Aに対する根抵当権の一部を担保とする場合などです。
根抵当権を譲渡する場合は、根抵当権設定者である債務者自身が借り入れをしていない業者の債務の担保とされるリスクがあります。そのため、根抵当権一部譲渡には債務者の承諾が必要となるため、根抵当権一部譲渡承諾書を作成しなければならないのです。
根抵当権一部譲渡承諾書のひな形
根抵当権一部譲渡承諾書を一から作成するのは手間がかかります。また、根抵当権設定者が譲渡に承諾した証拠とするためには抜けや漏れがあってはいけません。そこで、当サイトではすぐに使えるひな形をご用意しました。以下のリンクからダウンロード可能です。
根抵当権一部譲渡承諾書に記載すべき内容
ここからは根抵当権一部譲渡承諾書に最低限盛り込むべき内容についてご紹介します。テンプレートも参照しながら読み進めてみましょう。
前文
まずは誰が誰に根抵当権を譲渡し、それを誰が承諾するのかを明らかにする必要があります。根抵当権設定者(債務者)と根抵当権者(債権者)、譲渡を受ける者の事業者名もしくは氏名を記載し、「根抵当権を一部譲渡することをここに承諾いたします。」というように根抵当権を譲渡することを承諾する旨を記載します。
根抵当権の表示
根抵当権は法務局で手続きを行って設定します。手続時の受付番号、債権者(根抵当権者)の名称、極度額、債権の範囲(売掛金か手形債権か)について記載しましょう。
根抵当権設定不動産の表示
根抵当権が設定されている不動産に関する情報を記載します。当該不動産の所在、地番、地目、地積を明記します。
承諾した日付と宛先
根抵当権一部譲渡に承諾した日付と宛先(根抵当権者と譲渡を受ける者)の名称を記載します。
署名押印欄
最後に根抵当権設定者の住所と氏名が記載できる欄と押印欄を設けます。ここに署名押印した時点で根抵当権一部譲渡に承諾したことになります。
根抵当権一部譲渡承諾書を作成する際の注意点
以上で根抵当権一部譲渡承諾書の書き方についてご説明しました。ここからは承諾書を作成する際の注意点について見ていきましょう。
対象となる根抵当権を特定する情報を含める
譲渡の対象となる根抵当権が特定できないと、譲渡人であるもと債権者と譲受人である新債権者、あるいは根抵当権設定者である債務者との間でトラブルになるおそれもあります。
根抵当権を設定する際には債務者と債権者は根抵当権設定契約を締結し、法務局で手続きを行うはずです。法務局の受付番号や根抵当権設定不動産に関する情報を明示して、どの根抵当権が譲渡の対象となるのかを明確にしておきましょう。
根抵当権の一部譲渡と分割譲渡の違い
根抵当権を2者以上が保有しようとする場合、一部譲渡と分割譲渡という2つの方法のいずれかを選択します。一部譲渡を行えば一つの根抵当権を複数者が共同で保有する状態になります。
たとえばA銀行とB銀行が共同で根抵当権を保有しており3,000万円の極度額を設定している場合、債務者はA銀行とB銀行のどちらか、あるいは両者から合計で3,000万円まで借り入れることが可能です。
分割譲渡では根抵当権を分割してそれぞれの債権者が保有することになります。たとえば極度額3,000万円に設定されている根抵当権をA銀行がB銀行に分割譲渡して、それぞれが極度額1,500万円の根抵当権を保有することになった場合、債務者はA銀行とB銀行それぞれから1,500万円までの融資を受けることが可能です。
根抵当権の一部譲渡における登録免許税
根抵当権を一部譲渡する場合、法務局で登記手続を行わなければならないことは先ほどもご説明しましたが、その際に登録免許税という税金を支払う必要があります。税額は譲渡前の共有者の数で根抵当権の極度額を除した額を課税価格として、その1,000 分の 2 となります。
「(極度額÷一部譲渡後の共有者の数)×2/1000」という計算式で求めることができます。たとえば極度額3,000万円の根抵当権をA銀行がB銀行に一部譲渡する場合、B銀行が支払う登録免許税は「(3,000万円÷2)×2/1000=3万円」となるわけです。
根抵当権一部譲渡の際には根抵当権一部譲渡承諾書が必須
根抵当権を譲渡するためには根抵当権設定者の承諾が必要であると民法398条に定められています。また、変更登記手続き時には根抵当権一部譲渡承諾書が添付書類として求められるので、必ず作成しなければなりません。
根抵当権を設定して融資を受けていて借り換えや他の債権者からも借り入れをする場合は、根抵当権一部譲渡承諾書を作成し、債権者と根抵当権の一部譲渡を受ける人に提出しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
サイン証明書とは?商工会議所の例など見本とともに解説
日本人が海外の人と取引する場合や海外の人が日本で行政手続を行う場合などに、サイン証明書の提出が求められることがあります。しかし、「サイン証明書など見たことがない」という人がほとんどでしょう。そこで今回は、サイン証明書の概要やサイン証明書を使…
詳しくみる寄託契約書とは?雛形をもとに記載事項など解説
自社の商品を物流会社に預かってもらう、仕事で使う資材を社外などの倉庫で預かってもらう、知人に自分の荷物を預かってもらうなど、何らかの物を第三者に預かってもらうことを「寄託」といいます。 今回は寄託する、あるいは寄託を請ける際に締結する「寄託…
詳しくみる請負契約書とは?書き方やテンプレート、注意点をご紹介
請負契約とは、住宅建設やWEB制作等、成果物の完成を目的とした契約を指し、その際に作成されるのが請負契約書です。ここでは、請負契約書を作成する際の注意点や書き方について、政府などの雛形(テンプレート)を示しながら解説します。 請負契約書とは…
詳しくみるホームページ制作に関わる契約 とは?委託や請負、保守契約書をひな形つきで解説
Web制作会社がホームページ(Webサイト)の作成依頼を受ける際は、契約書を交わすのが一般的です。ホームページの保守・管理業務を請け負う契約でも、同様に契約書を作成するでしょう。 今回はホームページ制作に関わる契約書の種類や内容、注意すべき…
詳しくみる物上保証契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
物上保証契約書とは、自分以外の他者のために自分の財産に抵当権や質権を設定する契約書のことです。設定した人は物上保証人と呼ばれ、他者が債務を返済できなくなったときに、設定した財産の範囲内で責任を負います。物上保証契約書の具体例や書き方のポイン…
詳しくみる滞納賃料請求通知とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
滞納賃料請求通知書とは、賃料の支払いが遅延している賃借人に対して、支払いを督促するための書面です。賃料の滞納は法的措置をとる方法もありますが、その前段階として滞納賃料請求通知書が用いられます。 本記事では、滞納賃料請求通知書のメリットやポイ…
詳しくみる