- 更新日 : 2025年12月2日
労働派遣(個別)契約の電子化は可能?電子契約のメリットや導入方法を解説
労働派遣契約の契約書は、2021年から電子化が可能になりました。契約書の電子化を行うことで、作業の効率化やコストの削減が実現します。今回は、労働派遣契約の電子化の背景、メリットや注意点を解説します。電子契約システムの導入方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
労働派遣(個別)契約は電子化できる
労働派遣契約は、電子化が認められるようになりました。ここでは、労働派遣契約の概要と、労働者派遣法の改正による変更点を解説します。
労働者派遣(個別)契約とは
労働者派遣契約とは、「派遣元」である派遣会社が、「派遣先」の取引先に労働者を派遣するための契約のことです。
労働者派遣の個別契約に関しては、契約期間が短いケースが多いことから契約締結が繰り返され、一般的な契約書よりも数が多くなる傾向にありました。書面で記載する必要があったため、契約時、および契約更新のたびに紙での事務作業が発生し、時間や費用など効率性の観点から、以前より電子化を求める声が数多くあがっていました。
労働者派遣法の改正による変更点
労働者派遣の個別契約における契約書は、従来は派遣契約の内容を書面で残す必要はありましたが、労働者派遣法の改正によって、2021年1月より電子契約化が解禁されています。それに伴い、電磁的記録により作成すること、つまり契約の電子化が認められるようになりました。
参考:厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令|e-Gov法令検索
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労働派遣(個別)契約書の電子化の背景
労働派遣契約書が電子化された背景には、以下のような状況が挙げられます。
- 労働者派遣契約書の取り扱いに関するやや混乱した状況を統制するため
- 企業のデジタル化が急速に進んだため
労働者派遣契約の当事者は、契約締結の際に「法第26条第1項の規定により定めた事項」を書面に残しておかなければならないとされていました。しかし、契約書の作成自体については明確に言及されておらず、その結果、印刷できる状態にしておけば契約形式は電子化しても問題ないと解釈する自治体もありました。
このような、契約書の形式についての判断が統一化されておらず、やや混乱した状況を統制するため、電子化に至ったという背景があります。
また、テレワークの普及により、経営活動や企業のデジタル化が急速に進んだことも、労働派遣契約書の電子化に影響したと考えられます。
労働者派遣(個別)契約書を電子化するメリット
人材派遣の契約を電子化する主なメリットは、以下のとおりです。
- 契約書作成の工数やコストの削減
- リモートワークでも対応可能
- 契約書の管理・保管がスムーズ
- 高いセキュリティ環境で契約締結が可能
各メリットを解説します。
契約書作成の工数やコストの削減
人材派遣の契約を電子化することで、契約書作成の工数やコストの削減につながります。契約書の電子化によって、電子契約システム上で契約書を作成し、メールなどで労働者に交付できるようになります。
そのほか、インク代や送料、収入印紙などのコストの削減も見込めるでしょう。
押印が不要でリモートワークでも対応可能
リモートワークでも対応できる点も、人材派遣の契約を電子化するメリットの1つです。従来のように紙媒体の労働派遣契約書を締結する場合は、作成や押印するためだけに出社を余儀なくされることがありました。
しかし、人材派遣の契約を電子化することで、作成した契約書をアップロードして作業ができるため、テレワークでも対応可能になりました。
契約書の管理・保管がスムーズ
契約書の管理や保管をスムーズにできるようになったことも、人材派遣契約の電子化によるメリットです。作成した電子契約書は、サービス事業者のサーバー上で保管されるため、オフィス内に保管スペースを確保する必要がありません。契約書を探す際も、キャビネットなどを1つずつ探す必要がなく、書類検索で事足ります。
高いセキュリティ環境で契約締結が可能
電子契約システムでは、高いセキュリティ環境で契約を締結できます。データの暗号化、二段階認証などによってセキュリティ面が強化されているため、安全性が高く安心です。
労働者派遣(個別)契約書を電子化するには電子帳簿保存法対応が必要
労働者派遣契約書の電子化に伴い、2024年1月以降電子契約を締結した際は電子帳簿保存法に則った保存が必須です。また電子帳簿保存法では、電子化された文書を適切に保存し、法的な要件を満たすための基準も定められています。
要件は以下のとおりです。
- 真正性の確保:電子署名やタイムスタンプを利用して契約書の改ざんを防止
- 可視性の確保: 画面上で確認可能で、適切な印刷ができる形式で保存
- 検索機能の実装:日付や金額、契約者名などで迅速に検索できる機能を装備
- 運用記録の管理::システムの変更履歴やアクセス記録を保持
厚生労働省による労働者派遣(個別)契約書の雛形
労働者派遣(個別)契約書に記載すべき内容は、法律で細かく定められています。厚生労働省では、労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例を公開しているので、ぜひ参考にしてください。
参考:労働者派遣事業に係る契約書・通知書・台帳関係様式例|厚生労働省東京労働局
電子契約システムの導入方法
電子契約システムの導入の流れは、以下のとおりです。
- 契約業務の把握
- 電子契約システムの比較検討
- 稟議書の作成や導入の検討
- 契約に関する業務フローの見直し
- 社内外へ電子契約導入の周知
順番に解説します。
契約業務の把握
まず、契約業務の把握を行いましょう。現状の契約書作成のフローや管理方法、抱えている課題などを確認します。社内で使用している契約書のうち、どこまでを電子化の対象にするのかについても、この段階で決めるとよいでしょう。
電子契約システムの比較検討
次に、導入候補の電子契約システムの比較を行います。自社の現状の契約業務や課題を明確にした上で、自社の抱える課題を解決できる、電子契約システムの検討を行ってください。
稟議書の作成や導入の検討
選定した電子契約システムを正式に導入するために稟議書を作成し、上層部が本格的な導入の検討を行います。
契約に関する業務フローの見直し
電子契約システムの導入にあたり、契約に関する業務フローの見直しも欠かせません。電子契約システムの導入に起因するトラブルを防止し、社内からの問い合わせを軽減させるために、電子システムの仕様や業務フローの変更を誰もがわかる形で備えておくことが大切です。
社内外へ電子契約導入の周知
電子契約システムの本格的な運用をスタートするまでに、社内外に電子契約導入の周知を進めておきましょう。社内には、電子契約システムの導入後に改善されることなどを明確に伝えておくことが重要です。取引先に対しても、必要に応じて周知を行います。対応フローが変わる場合は早めにその旨を伝え、取引先の同意を得ておきましょう。
労働派遣契約を電子化する場合の注意点
労働派遣契約を電子化する場合の主な注意点は、以下のとおりです。
- 電子契約を導入する場合には取引先から同意を得る必要がある
- 契約書の種類や取引先によっては、電子契約、電子署名に対応していない
- 秘密鍵は厳重に保管しなければならない
電子契約を導入する場合は、取引先からあらかじめ同意を得ておく必要があります。
また、契約書の種類や取引先によっては、電子契約や電子署名に対応しておらず、紙媒体での契約書などの締結のみに対応している場合もあることに注意が必要です。自社が電子契約を導入したからといって、対象のすべての契約書を電子化できるわけではなく、紙媒体の活用が残ることもあります。
さらに、秘密鍵は厳重に保管しなければなりません。電子契約における電子署名の効力は、秘密鍵を書面の作成者本人のみが保有していることを前提に成り立っています。秘密鍵とは、対になる公開鍵で暗号化された通信を元に戻す際に使う鍵のことです。秘密鍵が第三者の手に渡ってしまうと、電子署名の安全性が担保できなくなってしまいます。
電子契約システム導入による契約業務の工数・コスト削減の効果と関連データ
マネーフォワード クラウドが2025年5月に実施した調査(電子契約業務経験者1,563名対象)によると、電子契約システム導入により便益を感じる機能として「工数削減」が34.4%を占めました。さらに工数削減に便益を感じる537名に対し、最も重要な項目を尋ねたところ、「印刷・製本作業の省略」が21.6%、「契約リードタイムの短縮」が19.9%、「データの再入力作業の撲滅」が18.4%となり、本記事で解説した労働派遣契約書作成の工数削減が実務上も重視されています。
労働派遣契約の電子化で印刷・郵送作業と契約期間を大幅短縮
企業規模別に見ると、51-100名の企業では「印刷・製本作業の省略」が25.9%と特に高く、次いで「承認プロセスの効率化」が20.7%、「データの再入力作業の撲滅」が19.0%となっており、中堅企業ほど繰り返し発生する定型業務の効率化を重視しています。労働派遣契約の電子化は、本記事で解説した契約書作成・押印・郵送といった工数とコストの削減だけでなく、契約締結のスピードアップとリモートワーク対応にも貢献します。
労働派遣契約の電子化を進めて業務の効率化を図ろう
労働派遣契約は、2021年より電子化が認められました。労働派遣契約の電子化によって、契約書作成の工数やコストの削減、契約書の管理・保管の効率化、高いセキュリティ環境での契約締結が実現します。
ただし、電子契約を導入する場合には取引先から同意を得る必要がある点に注意が必要です。また、契約書の種類や取引先によっては、電子契約、電子署名に対応していないこともある点を押さえておきましょう。ぜひ本記事を参考に、労働派遣契約の電子化を進め、業務の効率化を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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