- 作成日 : 2024年1月19日
商品形態模倣とは?不競法での定義や具体例、禁止行為を解説
不競法(不正競争防止法)における商品形態の模倣とは、他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡する行為です。不正競争として禁じられ、差し止めや損害賠償請求の対象になります。
本記事では不競法で禁止される商品形態の模倣について詳しく説明するとともに、実際の裁判例やデジタルデータに関する模倣についても解説します。
目次
不競法における商品形態模倣の扱い
不競法(不正競争防止法)における商品形態の模倣とは、他人の商品の形態と実質的に同一の商品を作り出すことです。不競法では、これら模倣した商品の譲渡等に関して、不正競争として禁止する旨の規定をおいています。
不正競争防止法について、詳しくは下記記事で解説しています。
ここでは、不競法における商品形態模倣の定義や禁止されている模倣行為、保護される期間にフォーカスして解説します。
商品形態模倣の定義
不競法では、他人の商品の形態を模倣した商品を、譲渡したり貸し渡したりする行為を不正競争と規定しています。
商品形態の模倣とは、他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すことです。その商品を譲渡・貸出する行為は不正競争行為の1つとして販売差し止めや損害賠償請求の対象となり、刑事罰の対象になる場合もあります。
禁止されている商品形態模倣行為
不競法の模倣行為といえるためには、定義にもあるように「依拠性」と「実質的同一性」が必要です。あらゆる模倣を禁じるとかえって自由競争の妨げになるため、禁止されているのは先行者の利益を特に害するデッドコピー(そっくりそのまま模倣すること)に限られます。
例えば、独自に商品を開発したところ、たまたま既存の商品に似ていた場合には、「依拠性」に該当せず、模倣行為になりません。
また、実質的同一性があるかどうかは、商品の形態を比較し、総合的に判断するというのが裁判所の見解です。
保護される期間
不競法2条1項3号が設けられた趣旨は、オリジナル商品を販売した者が投資した資金や労力を保護し、投下資本を回収できるようにするためです。このような趣旨から、不競法2条1項3号による保護が与えられる期間は、投下資本の回収に必要な期間に限定されます。
不競法19条では、不競法2条1項3号で保護される期間について「日本国内において最初に販売された日から起算して3年」としています。
違反した場合の罰則は?
不正の利益を得る目的で不競法2条1項3号の不正競争を行った場合、刑事罰として5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその両方が科せられます(不競法21条2項3号)。
また、関税法上、輸出入してはいけない物品とされており、商品の形態を模倣された側から民事上の請求をされることもあります。
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商品形態の模倣にあたる具体例
不競法における商品形態の模倣にあたるかについては、裁判上で争われた事例があります。
ここでは、2つの事例を紹介します。
タオルセットの事例
タオルや小熊の人形がセットになった商品を販売していた会社が、似たような構成のタオルセットを販売していた会社に対し、タオルセットの販売行為が不正競争行為に該当するとして、損害賠償を求めた事案です。
判決では、総合的にみて実質的に同一の形態であると認められ、被告商品は原告商品の形態を模倣したものと認められました。
書体の事例
他人の書体と同一の書体を販売する行為が、不正競争行為にあたるかが争われた事案です。
被告が原告の書体などをもとに書体を作成し、 これを搭載したレーザープリンターを販売していたところ、原告側は「被告の書体が原告の書体と酷似している」として、仮処分申請を行いました。
判決では、書体が不競法による保護の対象となり得るとして、自己の書体と同じ書体を販 売する者に対し、書体を入力したフロッピーディスク等の製造・販売の差止請求を認めています。
自社の商品形態が模倣されたときの対応
自社の商品形態が模倣された疑いがある場合、対応として民事上の請求と関税法上の手続きが可能です。
それぞれの内容をみていきましょう。
民事上の請求
商品形態を模倣されたと疑われる場合、民事上の請求として以下の請求が可能です。
- 差止請求権
- 損害賠償請求権
- 信用回復措置請求権
商品形態を模倣された者は、侵害の停止・予防の請求ができます。差止請求に際しては、侵害行為を構成した物・侵害行為により生じた物の廃棄など侵害の予防に必要な行為も請求できます。
また、不正競争によって損害を被った場合には、損害賠償請求が可能です。さらに、不正競争で他人の営業上の信用を害した場合は、営業上の信用を回復するために必要な措置を請求することもできます。
関税法上の手続き
不競法2条により不正競争に該当する商品は、関税法上、輸出入してはいけない物品とされています。
そのため、不正競争によって営業上の利益を侵害された者は、関税法上の手続きにより、税関での水際措置(輸出入の差し止め)ができます。
自社が商品形態模倣をしないための対策
自社が商品形態を模倣されないよう注意することは大切ですが、自社が加害者になるケースもあります。そのような事態にならないためにも、対策が必要です。どのような行為が商品形態模倣にあたるのか、しっかり把握しておかなければなりません。
商品を開発する際は、すでに同一のものや類似する商品がないか調査することが大切です。また、同業他社から転職してきた社員が、転職前に身につけたノウハウなどを使うことで商品形態の模倣に該当してしまう可能性もあります。そのような行為を禁止する社内規程を設けるなどの対策も必要です。
デジタルデータにも商品形態模倣の禁止が適用される?
2023年6月に不競法が改正され、商品形態模倣の禁止は物品だけでなく、デジタルデータにも適用されることになりました。近年は、インターネット上に仮想空間を構築して経済活動を生み出すメタバースが普及しており、アバター用衣類など3次元オブジェクトの模倣を規制することが主な目的です。
不競法の改正法は2023年6月14日に公布され、公布から1年以内に施行される流れとなっています。法改正では、不競法2条1項3号で禁止される行為に「電気通信回線を通じて提供」という文言が追加されました。これにより、メタバースをはじめとするデジタル空間上において、他人の商品と酷似した模倣品の流通防止が期待できます。
商品形態の模倣にならないためのチェックが大切
会社経営では自社の商品形態を模倣されないよう注意するだけでなく、自社の製品が他社の模倣とならないようにする対策も必要です。被害者、加害者のどちらにもならないために、商品形態模倣にはどのような行為が該当するのか、しっかり把握しておきましょう。
不競法は改正される頻度も多いため、e-GOV法令検索などで常に最新情報をチェックしておくことも大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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