- 更新日 : 2024年8月29日
機械設備保守契約書とは?ひな形をもとに記載項目やレビューポイントを解説
機械設備保守契約書とは、機械のメンテナンス等についての契約を交わす際に作成される契約書です。利用者自身による点検や補修が難しい機械・装置があるとき、機械設備保守契約を専門業者と交わすことがありますが、そのルールを取りまとめた文書になります。
具体的にどのような記載事項があるのか、ひな形を用いて説明していきます。
目次
機械設備保守契約書とは
機械設備保守契約は、メンテナンスや修理といったサポートを提供する・提供してもらうための契約です。
ある企業が事業のために機械や装置を導入するのはよくあることです。例えばどこでもよく使われているコピー機もそうですし、ネットワーク機器やサーバー、ビルのエレベーター、産業用のロボットなどを導入している企業もあるでしょう。
自社で管理している以上、取り扱い方法など最低限のことは把握しているかもしれませんが、メンテナンスへの対応には高度な専門知識・技術が必要になります。そこで保守を専門の業者に依頼する必要性が出てきます。
また、1件1件メンテナンスのタイミングで依頼を出していては、手間がかかるうえにコストも大きくなってしまいます。そこで手間やコストを抑え、効率的に機械設備の保守をするため、機械設備保守契約を交わすのです。
ただし、保守にあたってのルールはきちんと決めておいて、それを文書としてまとめておかないとトラブルが発生する危険があります。こうしたトラブルを防ぐには「機械設備保守契約書」としてルールを明文化しておくことが大事です。
機械設備保守契約書のひな形
機械設備保守契約書を用意する際は、ひな形を利用すると効率的に契約書を作成できます。下記のページからワード形式のひな形をダウンロードできるので、ご活用ください。
機械設備保守契約書に記載する主な項目
機械設備保守契約を交わすとき、契約書には具体的なサービス内容にあたる「保守内容」と「保守料金およびその支払い方法」については必ず記載する、もしくは記載されていることを確認しましょう。
そのうえで契約期間や費用負担のこと、その他契約書一般に記載される条項についても精査していきます。
以下で各内容を説明していきます。
保守内容
どんなサービスを約束するのか、具体的な内容を定めておきましょう。
例えば「定期点検」を行うとしても、どの程度の頻度で実施するのか、何を対象に実施するのか、保守対応の時間や日数なども明確化しておいた方が安心です。保守対象にも次のように色々な種類があります。対象の機械や設備の種類に応じて契約相手も変わってくるでしょう。
《保守対象の機械・設備の例》
- ソフトウェア
- ネットワーク機器
- 業務システム
- コピー機
- 監視カメラ
- エレベーター
- 医療機器
- 産業用ロボット
- 発電機 など
必ずしも契約書内にすべて記載する必要はなく、作業内容をまとめた文書を別途設けて「本件業務の年間実施回数及び実施内容については、別紙作業実施要領の通りとする」などと契約書に記載する方法もあります。
保守除外業務
「保守の内容」を挙げるだけでなく、揉めやすい点・認識のずれが起こりやすい点については「保守に含まれない内容」も挙げておきます。この内容は保守を実行する業者側にとって特に重要です。
例えば「次の各号に該当する作業は、本契約の保守内容に含まれない。」などと柱書を置き、各号にて「機械の組み立てや分解」「甲の過失に基づく損傷等の修復」「自然災害など不可抗力に基づく損傷等の修復」などの保守除外業務を列挙していく書き方があります。
保守料金の額と支払い方法
保守業務に対して支払う代金については必ず記載します。例えば「本件業務の代金は、一作業実施毎に金〇円とする。」などと具体的に定めます。ただし作業内容が1つに特定されていないときは、作業内容別に列挙していく、あるいは金額の計算方法を明示しておくなどの対応を取ります。
また、その保守料金の支払い方法についても明確化しておきます。「いつまでに」「どこに」「どうやって」支払うのか、支払いに際して例えば振込手数料などの費用が発生するときは、どちらの負担とするのかについても定めておきましょう。
その他
上記以外の事項についても契約書に盛り込むことを検討していきましょう。例えば次のような事項です。
- 契約期間について
いつからいつまで契約が有効なのか明確化。変更や解約の意思表示がない場合における更新についても定めるとよい。 - 作業中の損害について
保守作業中に機械に損害が発生したときの保守事業者の原状回復責任、その例外規定など。 - 作業の費用負担について
保守作業に際して発生する電気代や水道代、技術者の交通費などについてどちらの負担とするのか。 - 再委託について
保守事業者がさらに外部へ委託することを認めるのかどうか。通常は依頼主が承諾した場合にのみ認める。 - 契約の解除について
特定の事由が生じたときに一方から契約解除を申し入れることができる旨を定める。事前の通知を要するケースと通知なく解除できるケースを設けることがある。
機械設備保守契約書をレビューする際のポイント
どの契約においてもいえることですが、契約書を作成するとき・レビューするときは、重要事項について解釈が分かれることのないよう、明確化されているかどうかを確認することが大事です。
複数の読み取り方ができてしまうと後々当事者間で揉め事が起こってしまいますし、その間適切なメンテナンスが実施できないおそれもあります。
特に特定すべき事柄としては、「保守対象の機械や設備」「保守の具体的な作業内容や頻度」「保守料金の額」が挙げられます。依頼をする企業側は、保守料金に見合う、満足のいく保守サービスが受けられるのかどうかをチェックしましょう。保守事業者としては、保守対象や作業内容が具体的に限定されているかどうかをチェックします。限定がされているほどリスクを小さくできます。
保守対象・保守内容に留意して機械設備保守契約書を作成しよう
機械設備保守契約書は、企業の導入した精密機器など、自社で修理やメンテナンスをするのが難しい機械・設備について保守を依頼するときに取り交わす契約書です。契約書を適切に作成しておくことは当事者双方にとって大事なことであり、訴訟トラブルを防ぐためにも有意義です。
ひな形を参考にして、調整の必要な箇所に修正を加えながら、形式的に取り交わす契約書にするのではなく意義のある契約書を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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