- 作成日 : 2023年12月22日
特許の出願公開制度とは?公開タイミングや特許出願時の注意点などを解説
特許の出願公開制度とは、出願から1年半が経ったタイミングで公開特許公報上に出願内容が公開される制度です。特許を出願する際は公開内容を確認して、同じ内容がすでに出願されていないかをチェックしましょう。今回は、制度の目的や公開のタイミング、公開内容や、特許を出願する際の注意ポイントなどについて解説します。
目次
特許の出願公開制度とは
特許の出願公開制度とは、特許の出願から1年半が経ったタイミングで、特許の内容が公開される制度のことです。1970年の特許法改正により導入されました。
特許庁が発行する「公開特許公報」上に特許の内容が公開され、第三者が確認・参照できるようになります。
一部の例外を除いて、公開は原則拒否できません。そのため、出願公開を避けたい場合は、特許出願をすることなく、発明を秘密のままにする必要があります。
特許の出願公開制度の目的
特許の出願公開制度の目的は、以下のとおりです。
- 発明・出願の重複を防ぐため
- 新たな発明を促すため
出願内容を公開することで、発明や出願が重複することを阻止できます。特許の内容が公開されていれば、後続する方が出願しようとしている内容と公開内容が重複していないかをチェックできるためです。
すでに同じ内容が出願されている場合、後で出願した側が特許権を得ることは認められていません。つまり、重複して出願すると発明や出願手続きに費やした時間やコストが無駄になってしまいます。事前に内容を公開し、第三者が確認できるようにすることで、このような損失を防ぐことができます。
また、発明の内容をベースに、新たな発明の登場を促す目的もあります。すでに出願されている内容と同じ発明は特許を取得できませんが、既存の発明をベースに新たな発明をすることは可能です。多くの発明が登場すれば、産業が発達して経済が活性化します。
公開タイミングは特許出願から原則1年半後
特許の出願公開制度では、特許出願から原則1年半を経過したタイミングで内容が公開されます。出願が特許になるかどうかにかかわらず、公開されるのが特徴です。そのため、公開されたからといって特許になるとは限りません。
また、出願人は出願内容を公開するよう請求できます。これを「早期出願公開制度」といいます。
早期に公開するメリットは、補償金請求権を早期に発生させられる点です。出願人は一定の条件を満たすことで、公開された発明と同じ発明を実施する者に対して補償金(ロイヤリティ)を請求できます。この権利を早期に発生させたい場合は、早期出願公開制度を活用するとよいでしょう。
そのほか、特許権が発生した際も、特許掲載公報に氏名や出願番号、願書に添付した明細書や図面の内容といった情報が掲載されます。特許権の発生とは、特許査定となり、特許料を納付して設定登録されることです。
特許の出願公開制度で公開される内容
特許の出願公開制度で公開される内容は、以下のとおりです。
- 特許出願人の氏名や住所
- 特許出願の年月日
- 特許出願の番号
- 出願公開の年月日
- 出願公開の番号
- 発明者の氏名や住所
- 願書に添付した明細書
- 特許請求の範囲
- 図面の内容
- 要約書に記載した事項
- そのほか必要な事項 など
上記の内容が、公開特許公報に掲載されます。
なお先述の通り、公開されたからといって、必ずしも審査に通っているとは限りません。出願内容の中には、一部不適切な情報が含まれている場合もあるでしょう。その際は、該当箇所を伏せる、もしくは差し替えた状態で公開されます。
特許出願する際に気をつけるポイント
特許出願する際は、すでに出願公開されている内容をチェックしましょう。
日本は先願主義であり、同じ発明が出願された場合は、先に出願した発明のみが特許を取得できます。後に出願した発明は、特許とは認められません。つまり、自身が出願しようとしている内容と同じものがすでに出願されている場合は、後から出願しても特許として認められません。
ただし、内容は似ているものの、新規性や進歩性を主張できるような違いがある場合は、後から申請しても特許が認められる可能性があります。
また、出願公開されたものの中で最終的に権利化しなかった発明について、後から特許出願することは不可能です。特許出願されたものの権利化しなかった発明は、自由技術として公知化されます。つまり、その技術と同じ内容を、他社が後から特許出願することは認められていません。
特許出願時は特許の出願公開制度について理解しよう
特許の出願公開制度とは、特許の出願から1年半が経過したタイミングで、出願内容が公開される制度です。特許として認められるか否かにかかわらず公開され、第三者が内容を閲覧できるようになります。特許の出願準備を進めている方は、すでに出願されている内容と重複していないかをチェックしましょう。
また、早期に公開するよう請求することも可能です。補償金請求権を早期に発生させたい場合は、早期公開制度の利用を検討しましょう。
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