- 作成日 : 2023年11月24日
廃棄物処理法とは?概要・違反事例・罰則などを解説
廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物の処理・保管・運搬・処分などについて定めた法律です。廃棄物を排出する事業者などは、廃掃法のルールを遵守する必要があります。本記事では廃掃法について、概要・違反事例・罰則などを解説します。
目次
廃棄物処理法とは?わかりやすく解説
廃棄物処理法(廃掃法)とは、廃棄物の処理・保管・運搬・処分などについて定めた法律です。
【凡例】
規則:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則
廃棄物処理法はなぜ制定されたのか
廃掃法は、廃棄物の排出を抑制し、適正な分別等の処理を行い、生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています(法1条)。
無秩序に廃棄物の排出等が行われては、生活環境や公衆衛生が悪化してしまいます。そこで、整った秩序の下で廃棄物が排出・処理されるように必要な規制を行うため、廃掃法が制定されました。
「廃棄物」は一般廃棄物と産業廃棄物に分けられる
「廃棄物」とは、汚物または不要物であって、固形状または液状のもの(放射性物質およびこれによって汚染された物を除く)です(法2条1項)。
廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに分類されます。事業者が排出する廃棄物(ゴミなど)の多くは産業廃棄物に当たります。
①一般廃棄物
産業廃棄物を除く廃棄物です。
②産業廃棄物
以下のいずれかに該当する廃棄物です。
(a)事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他令2条で定める廃棄物
(b)輸入された廃棄物((a)の廃棄物、航行廃棄物、携帯廃棄物を除く)
廃棄物処理法の対象者と遵守すべきルールは?
廃掃法に基づくルールの中心を占めるのは、産業廃棄物の排出、運搬・処分および輸出・輸入に関するものです。産業廃棄物についてこれらの行為をする事業者は、廃掃法のルールを遵守しなければなりません。
産業廃棄物を排出する事業者
事業者は、排出した産業廃棄物を自ら処理しなければなりません(法11条1項)。一般廃棄物(家庭ごみなど)とは異なり、公共のごみ収集場に産業廃棄物を出すことは禁止されています。
産業廃棄物を運搬・処分する事業者
産業廃棄物の運搬・処分に当たっては、「産業廃棄物処理基準」に従う必要があります(法12条1項、令6条)。また、産業廃棄物が運搬されるまでの間は、「産業廃棄物保管基準」に従い、生活環境の保全上支障がないように保管しなければなりません(法12条2項、規則8条)。
なお、一部の危険性が高い産業廃棄物(=特別管理産業廃棄物)については、さらに厳格な処理・保管基準が定められています(法12条の2第1項、第2項、令6条の5、規則8条の13)。
また、事業場外で産業廃棄物を自ら保管する事業者は、原則としてその旨を都道府県知事に届け出る必要があります(法12条3項、規則8条の2の3)。
産業廃棄物の運搬・処分を委託する事業者
産業廃棄物の運搬・処分を委託する際には、都道府県知事の許可を受けた産業廃棄物処分業者などに委託しなければなりません(法12条5項、規則8条の3)。特別管理産業廃棄物については、さらに委託先が限定されています(法12条の2第5項、規則8条の14、8条の15)。
さらに産業廃棄物の運搬・処分の委託に当たっては、廃掃法によって定められた基準に従う必要があります(法12条6項、令6条の2)。
そのほか、産業廃棄物の運搬・処分を委託する事業者には、処理状況等を確認する努力義務(法12条7項、12条の2第7項)や、産業廃棄物管理票(マニフェスト) の交付義務(法12条の3)などが課されています。
産業廃棄物を輸出・輸入する処理事業者
航行廃棄物と携帯廃棄物を除き、廃棄物を輸入しようとする者は、環境大臣の許可を受けなければなりません(法15条の4の5第1項)。
また、産業廃棄物を輸出しようとする者は、輸出の必要性や処理基準への適合性などに関して、環境大臣の確認を受ける必要があります(法15条の4の7、10条)。
産業廃棄物の処理・保管等の基準
産業廃棄物の処理(=運搬・処分)、保管および処理の委託については、廃掃法および関連法令によって基準が設けられています。
産業廃棄物処理基準
産業廃棄物処理基準は、事業者が自ら産業廃棄物を運搬・処分する際に従うべき基準です。
産業廃棄物処理基準の概要 |
---|
①収集・運搬 ②処分・再生 ③埋立処分 ④海洋投入処分 ⑤埋立処分を行うのに特に支障がない場合は、海洋投入処分を行わないようにすること |
産業廃棄物保管基準
産業廃棄物保管基準は、産業廃棄物が運搬されるまでの間、産業廃棄物を保管する事業者が従うべき基準です。
産業廃棄物保管基準の概要 |
---|
①保管場所 ②飛散・流出・地下への浸透・悪臭の発散を防止するための措置 ③保管場所には、ねずみが生息し、および蚊・はえその他の害虫が発生しないようにすること ④石綿含有産業廃棄物について、その他の物との混合および飛散を防止するために必要な措置を講ずること ⑤水銀使用製品産業廃棄物が、その他の物と混合するおそれのないように必要な措置を講ずること |
産業廃棄物の運搬・処分等の委託に関する基準
産業廃棄物の運搬・処分等の委託に関する基準は、産業廃棄物の運搬・処分等を他の事業者に委託する際に従うべき基準です。
産業廃棄物の運搬・処分等の委託に関する基準の概要 |
---|
①産業廃棄物の運搬は、他人の産業廃棄物の運搬を業として行うことができる者であって、委託しようとする産業廃棄物の運搬がその事業の範囲に含まれるものに委託すること ②産業廃棄物の処分・再生は、他人の産業廃棄物の処分・再生を業として行うことができる者であって、委託しようとする産業廃棄物の処分・再生がその事業の範囲に含まれるものに委託すること ③輸入された廃棄物の処分・再生は、原則として委託しないこと ④委託契約の書面による作成、記載事項、添付すべき書面 ⑤委託契約書・添付書面等の保存 |
廃棄物処理法違反の罰則は?
廃掃法に違反した事業者には、刑事罰が科されるおそれがあります。
刑事罰の対象となる主な違反行為としては、以下の例が挙げられます。
①無許可営業
②措置命令違反等
③不法投棄・不法焼却
④無許可業者への委託
無許可営業
一般廃棄物の収集や運搬・処分を業として行うためには市町村長、産業廃棄物の収集や運搬・処分を業として行うためには都道府県知事の許可を受けなければなりません(法7条1項、14条1項)。
無許可で一般廃棄物・産業廃棄物の収集や運搬・処分を業として行った者は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」に処され、または併科されます(法25条1項1号)。
措置命令違反等
廃掃法に違反した事業者に対しては、市町村長または都道府県知事によって事業停止命令や措置命令が行われることがあります(法7条の3、14条の3、19条の4第1項、19条の4の2第1項、19条の5第1項、19条の6第1項)。
これらの命令に違反した者は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」に処され、または併科されます(法25条1項4号)。
不法投棄・不法焼却
廃棄物をみだりに捨てること(=不法投棄)や、廃掃法で定める方法によらずに廃棄物を焼却すること(=不法焼却)は禁止されています(法16条、16条の2)。
廃棄物の不法投棄や不法焼却を行った者は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」に処され、または併科されます(法25条1項14号、15号)。
無許可業者への委託
一般廃棄物・産業廃棄物の収集や運搬・処分は、その内容に応じた許可を受けた事業者に委託しなければなりません(法6条の2第6項、12条5項、12条の2第5項)。
無許可業者に対して一般廃棄物・産業廃棄物の収集や運搬・処分を委託した者は「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」に処され、または併科されます(法25条1項6号)。
廃棄物処理法違反の事例
廃掃法違反がよく問題になるのは、客観的に見れば廃棄物であるのに、当事者が廃棄物ではないと認識しているために不適切な処理をしてしまうケースです。
廃掃法が適用される「廃棄物」に当たるのは、汚物または不要物です。
「不要物」とは、占有者が自ら利用し、または他人に有償で売却することができないため不要になった物をいいます。不要物に当たるかどうかは、その物の性状・排出の状況・通常の取り扱い形態、取引価値の有無・事業者の意思などを総合的に勘案して決まります。
たとえば、以下のようなケースには廃掃法が適用されます。無許可業者に引き取りや買い取りを依頼した場合や、各基準に違反した取り扱いや委託をした場合は廃掃法違反となります。
- 不要になった物を無償で業者に引き取ってもらった。→無償の場合は廃棄物に当たる
- 不要になった物を自分で運搬し、業者に1円で買い取ってもらった。→運搬費用を考慮すると、排出事業者に収入がないため廃棄物に当たる
- 堆肥化によって再利用される木くずを、堆肥製造業者に無償で引き取ってもらった。→資源として再利用される場合でも、排出段階で不要物であれば廃棄物に当たる
- 不要になった製品を、お金を払って下取りしてもらった。→無償での下取りは商慣習上認められているが(環廃産発第13032910 平成25年3月29日)、お金を払って下取りしてもらう場合は廃棄物の収集運搬費用とみなされるため、廃掃法が適用される
- 少量の廃棄物を宅急便で処分業者に送った。→少量であっても廃掃法が適用されるため、処理基準に従わなければならない
廃棄物処理法を遵守して適正な廃棄物処理を
事業を行う中では、さまざまな廃棄物が発生します。
廃棄物の運搬・処分やその委託、および保管に当たっては、廃掃法のルールを遵守しなければなりません。廃掃法や関連法令で定められた各基準を踏まえて、適正な形で廃棄物の処理を行いましょう。
参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律|e-Gov法令検索
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令|e-Gov法令検索
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則|e-Gov法令検索
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
心裡留保とは?民法上の定義や契約における有効性などを解説
「心裡留保」とは、真意とは異なる意思表示を自覚的に行うことです。心裡留保による意思表示は原則有効ですが、条件を満たせば無効となる場合もあります。 また、民法では心裡留保以外にも意思表示のルールが定められていますので、その内容も理解しておきま…
詳しくみる著作財産権とは?認められる権利や契約時に注意すべき点を解説
著作権(著作財産権)とは、著作物を創作した著作者に認められる著作権法上の権利です。思考や感情を作品として表現したものを、さまざまな場面で保護しています。企業活動では著作権に関わることも多く、著作権についての正しい理解が必要です。 本記事では…
詳しくみる人的資本の情報開示とは?義務化の対象や開示項目、方法を解説
人的資本の情報開示とは、従業員等の情報をステークホルダーに開示することです。2023年3月期決算より、上場会社は有価証券報告書において人的資本の情報開示を行うことが義務化されました。内閣官房が公表したガイドラインでは、7分野19項目の開示事…
詳しくみる【2022年5月施行】借地借家法の改正点は?わかりやすく解説
土地や建物の賃借に関する権利義務や手続などを定める「借地借家法」は身近な法律であり、これまで社会の変化や実情に応じて何度か改正が行われてきました。 今回は2022年5月に施行された同法の改正点について、わかりやすく解説します。 改正された借…
詳しくみる下請法違反に該当する行為や罰則は?事例集・チェックシートも紹介
下請法は、下請事業者が不利益を被ることなく公正な取引が行われることを目的として定められた法律です。取り締まりの対象となる取引を限定し、「買いたたき」や「下請代金の減額」などの禁止事項を定めます。 下請事業者と契約を結び、業務を発注する際は、…
詳しくみる特許とは?特許権の出願方法も簡単にわかりやすく解説
特許とは、発明を公開する代わりに、その発明を保護する制度のことです。特許権を得ると、出願から20年間、権利の対象となる発明の実施を独占できます。本記事では、特許や特許権の意味のほか、取得方法や特許侵害にならないようにするポイントなどを解説し…
詳しくみる