- 更新日 : 2024年8月30日
特定商取引法とは?概要や実務上の注意点をわかりやすく紹介
「特定商取引法」では特定の取引に適用されるルールを定め、クーリングオフ制度などにより消費者保護を図っています。
そこで通信販売や訪問販売など、同法で定められた特定の営業方法を行っている企業は同法の内容を理解する必要があります。当記事でわかりやすく説明していきますのでぜひ参考にしてください。
目次
特定商取引法とはどんな法律?
特定商取引法とは、事業者による違法・悪質な勧誘行為等を未然に防ぎ、消費者が安心して商品やサービスの購入・利用ができる環境を作ることを目的とした法律です。私たちの生活に密接に関わる多様な取引の中でも、特に消費者がトラブルに巻き込まれやすいと考えられる取引の形態を対象に、同法で規制をかけています。
本来商品やサービスの購入・利用は、消費者が十分に考えた上でその決断を下すべきです。しかし営業のかけ方次第では、消費者が熟慮する時間を持てない、自由な判断に基づく契約ができないという状況も作り出せてしまいます。そこで、交渉力や情報量に差のある事業者-消費者間に適用される特別なルールを同法で定めているのです。
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特定商取引法の対象になる取引類型
特定商取引法では下表にある7つの取引を定義し、具体的なルールを設けています。
| 同法の適用対象 | 具体例 |
|---|---|
| 訪問販売 | 自宅などに訪問して販売等を行う取引。 カフェや路上、ホテルなどを借りて行う展示販売のうち店舗に類似すると認められない場所での販売等も訪問販売に該当し得る。 |
| 訪問購入 | 自宅などに訪問して物品の購入を行う取引。 事業者が自らの店舗などの場所以外で消費者の物品を購入することを求め、売却により消費者の利益を損なうおそれがある場合に該当し得る。 |
| 電話勧誘販売 | 直接消費者に電話で勧誘し、その電話中に申し込みを受ける取引。 電話をいったん切り、その後郵便や電話などにより消費者から申し込みを受けたとしても、意思決定が電話勧誘により行われたのであれば電話勧誘販売に該当する。 |
| 通信販売 | Web広告や新聞、雑誌等で広告を行い、Web上や電話、郵便等の手段で申し込みを受ける取引。 ※電話勧誘販売にあたる行為は除く。 |
| 連鎖販売取引 | 販売員として個人を勧誘し、さらに次の販売員の勧誘を行わせることで商品等の販売を拡大させていく取引。いわゆるマルチ商法。 「知人を入会させると紹介料3万円がもらえるよ」などと個人を勧誘し、その条件として金銭の負担を負わせる場合に該当する。 |
| 特定継続的役務提供 | 一定期間を超える役務の提供と、それに対する高額な取引金額を設定する取引。 役務の内容として①エステ、②美容医療、③語学教室、④家庭教師、⑤学習塾、⑥結婚相手紹介サービス、⑦パソコン教室の7つがある。取引金額が5万円を超え、1ヶ月または2ヶ月の期間を超える取引が対象になる。 |
| 業務提供誘引販売取引 | 「〇〇の仕事を提供するからこれによって収入が得られるよ」という口実で誘引し、「その仕事のためには〇〇の購入が必要」として商品等を買わせる取引。 例えば、販売されるPCやソフトを使って在宅でWebサイト作成の仕事ができると誘うことなど。 |
特定商取引法で定められている規制
特定商取引法では、上に挙げた取引類型に対し、次のような規制・ルールを課しています。以下で説明する行政規制に従って企業は営業活動を行わなければなりませんし、その次に説明する民事ルールが適用されることも理解の上で消費者との取引に向き合う必要があります。
行政規制
特定商取引法で定められた取引の類型別に規制がかけられており、違反があったときには行政処分(業務改善の指示、業務停止命令や業務禁止命令)の対象となります。
例えば、訪問販売に対しては次のような行政規制がかけられています。
- 事業者名、勧誘目的であること、販売対象の商品の種類などの明示義務
- 契約を交わす意思がないことを示した後の勧誘の継続などの禁止
- 申し込みや契約締結にあたり、取引の詳細を記した書面を交付する義務
通信販売の場合は、次のような規制に注意が必要です。
- 販売価格や代金の支払い方法・時期、商品の引渡し時期など、広告に特定の事項を記載する義務
- 事実と異なる内容の広告、誇大広告などの禁止
- 承諾していない消費者へメール広告の禁止
その他にも厳しくルールが設けられていますので、実際に取引を始める前には特定商取引法の規制内容をよく確認しておかなければなりません。
民事ルール
前項の行政規制は、消費者に対して適正な情報を提供することが主な目的です。これに対し、消費者トラブルの救済などを図るために設けられた民事ルールもいくつかあります。
その代表例が「クーリングオフ」です。クーリングオフは、一定期間以内なら無条件で契約の解約ができるという仕組みのことです。
例えば、訪問販売により消費者が契約を交わしたときでも、契約書等を受け取った日から8日以内なら、消費者は契約解除を求めることができます。
クーリングオフの期間については8日または20日間が定められており、次のように取引類型と対応しています。
| クーリングオフの期間 | 8日間 | 20日間 |
|---|---|---|
| 取引類型 |
|
|
※通信販売に対してはクーリングオフが適用されない。
クーリングオフの他にも、様々な民事ルールが定められています。
例えば、事業者が故意に必要な告知をしなかったり真実でない告知をしたりした結果、消費者が勘違いを起こして契約申し込みなどをしても、その意思表示は取り消すことが認められています。
また、契約の中途解約に対する損害賠償額に上限が設けられているなど、取引内容に応じて適用される民事ルールはたくさんあります。
特定商取引法の実務における注意点
特定商取引法の適用を受ける取引を行う企業は、同法に違反することのないよう、法律上のルールを理解して実務に反映させる必要があります。違反してしまうと行政処分の対象となりますし、消費者側からの撤回・解約なども認めないといけなくなります。また、罰則が適用されることもありますし、社会的な評価も落ちてしまうことでしょう。
特に、同法で定められた「書面交付の義務」を果たすことには注意しましょう。これはクーリングオフを法定の期間内に収めるために必要なことです。
8日間または20日間のクーリングオフの期間が定められていますが、その期間は、法律上求められている書面交付の義務を果たしてから起算されます。つまり書面交付を怠るといつまでもクーリングオフができる状態となり、事業者は全額返金のリスクにさらされ続けます。
なお、書面交付に関しては、消費者の承諾があれば電磁的方法に変えることも可能です。つまりわざわざ紙を印刷するのではなく、必要な事項をまとめたデータを作成し、これをメール等で送信する方法でも同法の義務を果たすことができるということです。
この電磁的方法による提供については、消費者庁HPで公表されているガイドラインも参考にするとよいでしょう。
書面交付以外についてのガイドラインもありますので、同法に対する対応について一度確認しておくことをおすすめします。
特定商取引法の直近の法改正
特定商取引法の改正にも注意しましょう。
同法に限った話ではありませんが、たまに法令は改正されてルールが変更されますので、改正のタイミングで見直しが必要となります。
例えば、近年だと2022年6月に改正特定商取引法が施行され、次の点に変更がありました。
- 通信販売における表示の規制強化
- 送り付け商法への対策
- 消費者利益の保護に向けた制度の推進
直近の法改正の詳細については、下記の記事で詳しく解説しています。
特定商取引法を守って信用を落とさないようにしよう
特定商取引法は消費者保護が主な役割です。そのため企業からすると、改正があるたびに法律の内容を理解して取引方法に反映させないといけないなど、負担のかかるルールを取りまとめた法律ともいえます。
そのルールに従わないと行政処分を受けることになり、信用を落として今後の事業活動に大きな悪影響を及ぼすおそれもあります。
しかし、特定商取引法を守り消費者が安心して契約できる環境を整えることは、消費者からの信頼獲得につながります。消費者を困らせないことはもちろん、気持ちよく契約が交わせる方法で取引を行うことを心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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