• 更新日 : 2024年8月29日

農地売買契約書とは?雛形をもとに内容や注意点を解説

高齢を理由に、家業の農業を引退することを考えている人は少なくないでしょう。子どもが別の職業に就いていて親族に後継者がいない場合は、農地を売却することを検討する必要があります。

しかし一般の土地とは異なり、農地は日本の農業政策に深く関わっているため、農地の売却は農地法によって厳しく規制されています。今回は、農地を売却する際の農地売買契約書のテンプレートを紹介し、農地の売却における注意事項について解説します。

農地売買契約書とは?

農地売買契約書は、農地を売買する際に売主と買主の間で締結される契約書です。農地の売却には許可が必要になるため、契約書には一般の土地売買とは異なる条項を設けなければなりません。

農地法の適用を受ける農地とは耕作の目的に供される土地のことであり、土地登記簿上の地目に関わらず現況で判断されます。

また、土地の一時的な状態や所有者の使用目的などに関わらず、客観的に判断されます。例えば、登記簿上の地目が山林であっても、現況が農地であれば農地法上の農地として扱われます。一方で耕作が行われていても、家庭菜園のような一時的な状態であれば農地とは見なされません。

農地法上の農地の売却は、転用の有無によって農地法3条または5条の許可が必要になります。

農地法3条許可とは

農地の権利移動、つまり売買によって農地の所有者が変わる場合に必要な許可です。

例えば、農家のAさんが農家のBさんに農地を売却し、Bさんが新しい所有者として農業に従事するケースが該当します。売買が成立するためには、市町村の農業委員会に申請して許可を受ける必要があります。

農地法3条の許可を受けずに売買による所有権の移転が行われた場合は契約自体が無効となるだけでなく、3年以下の懲役または300万円以下の罰金という罰則が適用されることもあります。

農地法5条許可とは

農地法5条の許可は農地の売買によって所有者が変わり、かつ、農地を転用する場合に必要になる許可です。

例えば、農家のAさんが駐車場を経営する予定のCさんに農地を売却するケースが該当します。許可権者は原則として知事で、市町村の農業委員会を経由して申請します。

農地以外に転用する目的で、無許可で農地を売買した場合は売買契約自体が無効となり、転用工事中止命令や原状回復命令などの行政処分が行われます。さらに、農地法3条違反の場合と同様の罰則があります。

いずれにしても、農地は行政の許可がなければ適法に売買できないため、農地売買契約書には許可に関する条項を記載する必要があります。

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農地売買契約書の雛形

農地売買契約書の様式は法律で定められていないため、任意の様式でかまいません。ただし、売買契約が有効に成立するためには行政の許可が前提となるため、一定の条項を盛り込む必要があります。

ここでは、農地法3条が適用される農地売買の契約書の雛形(テンプレート)を紹介します。

農地売買契約書に記載すべき事項

農地売買契約書の記載事項は、売買の対象となる物件の表示や売買代金、手付金、公租公課の負担、誠実協議、管轄裁判所などで、一般の土地売買と変わりません。

ただし、以下のような許可に関わる記載事項に注意しましょう。

許可申請のための双方の協力

許可を得るには契約当事者双方が協力して申請しなければならないため、その旨を記載するとともに、一方が協力しなかった場合を想定して契約解除の条項も設けるべきです。

不許可決定の場合

農業委員会に許可を申請しても、条件を満たしていないと判断されれば不許可となります。

不許可が確定した場合を想定して、契約解除についての条項も記載する必要があります。また、すでに交付された手付金の返還についても明記しましょう。

残代金の支払い

農業委員会の許可によって売買が成立するため、売買代金に残代金がある場合は、農地法3条許可を取得した日から一定期日以内に支払うことを明記します。

所有権移転登記手続

売買が成立して所有権が移転した場合、法務局(登記所)に農地の所有権移転登記を申請します。登記申請は売主と買主の共同申請が原則となっているため、許可が得られた場合に売主は直ちに農地を引き渡すことと、登記申請に協力することを記載します。

二重売買などのリスクに備えて、農業委員会から許可が下りる前に所有権移転の仮登記を申請し、農地を押さえておくケースもあります。この場合、許可が下りて本登記を申請すると仮登記の名義人が優先され、仮登記後の二重売買による買主に対抗できます。

農地売買契約を結ぶ際の注意点

農地売買契約書の記載事項のポイントを説明しましたが、その他にどのようなことに注意すればよいのでしょうか。

農地として売買するか、転用して売買するか

前述のとおり、農地として農業従事者に売買する場合は農地法3条の許可、農地以外に転用する目的で売買する場合は農地法5条の許可が必要になります。

農地法3条の許可には、個人の場合、以下の条件があります。

    1. 農地のすべてを効率的に利用すること
      機械や労働力等を適切に利用するための営農計画を持っていること
    2. 必要な農作業に常時従事すること
      農地の取得者が必要な農作業に常時従事(原則、年間150日以上)すること
    3. 一定の面積を経営すること
      農地取得後の農地面積の合計が、原則50アール以上であることが必要
    4. 周辺の農地利用に支障がないこと
      水利調整に参加しない、無農薬栽培の取組が行われている地域で農薬を使用するなどの行為をしないこと

これらの条件を満たしていないと、農業を始めることはできないのです。

農地法5条許可にも厳しい条件があります。農地は農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地、第2種農地、第3種農地の5種類に分類されていますが、転用が認められているのは基本的に第2種農地と第3種農地の2つです。

第2種農地は市街地として発展する可能性のある区域内の農地など、第3種農地は市街地にある農地などが該当します。農地に適したエリアにある農地には、基本的に転用許可が下りません。また、「転用後の事業が申請のとおりに行われるか」なども審査の対象になります。

農地の売買には農業委員会の許可が必要

前述のとおり、農業従事者への農地売買には農地法3条許可が必要で、市町村の農業委員会が許可権者です。

ただし、売買ではなく遺産分割や相続によって権利が移転する場合は許可申請ではなく、農業委員会への届出が必要です。転用目的の売買における許可権者は知事ですが、農林水産大臣が指定する市町村の場合は指定市町村の長が許可権者となります。

収入印紙は必要か

農地売買契約書にも、国税である印紙税が課されます。売買契約金額によって決まる印紙を農地売買契約書に貼付することで納付します。

農地売買契約書について理解しておこう!

農地を売却する際の農地売買契約書について、記載事項と契約の際のポイントを解説しました。

一般の土地と異なり、農地の売買には多くの制限がありますが、条件をクリアできるよう時間をかけて準備すれば不可能ではありません。農地の売買を実現するためには、農地法を正しく理解しておくことが大切です。

よくある質問

農地売買契約書とは何ですか?

一般の土地とは異なる農地を売買するための契約書のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

農地売買契約書にはどのような事項を記載すべきですか?

売買契約の成立には農地法の許可が必要になるため、許可申請に関わる事項を盛り込むことが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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