- 作成日 : 2022年4月22日
手形保証とは?保証人は誰を選べばよい?
お金を借りる際に保証人を求められることがありますが、手形にも手形債務を保証する手形保証という制度があります。この手形保証をする人を手形保証人と呼ぶことがあります。手形保証は、民事保証とは意味合いが異なります。ここでは、手形保証の基礎知識や民事保証との違い、その独立性、手形保証する際の手形への書き方などを解説します。
手形保証とは?
手形保証とは、手形の債務を保証することです。手形は手元に資金がなくても発行(振り出し)できますが、発行には信用が必要です。手形を発行する者(振出人)の信用が不十分である場合などに、振出人や債務者のために債務の保証を行う手形保証を付けて発行する方法があります。この保証を手形保証、保証人を手形保証人と呼びます。
手形保証人が負う責任は、手形の現金化を肩代わりすることです。手形は場合によって振出人が支払えなくなることがあり、その場合は手形保証人が支払いを行うことになります。手形が第三者に渡ったとしても、振出人と手形保証人は同一の責任を負います。
民事保証との違いと独立性
手形保証と民事保証は、どちらも債務の支払いを担保することを目的としていますが、違いもあります。
民事保証では、保証債務の成立には主たる債権の成立が必要です。主たる債務を履行した場合は、主たる債務の消滅とともに保証債務も消滅します。このように、民事保証には債務に対する附従性がありますが、手形保証にはありません。そのため、手形保証は主たる債権が存在しない場合でも効力を持ちます。このように、両者はそれぞれ独立しているのです。
債権者から見ると、手形振り出しの元になった金銭的な債務についても保証されれば、手形保証が消滅したとしても権利行使ができます。そのため、手形保証とともに手形の原因関係となる金銭債務について民事保証を求め、債権履行の目的を達成しやすくするケースもあります。
手形保証人は誰を選べばよい?
手形保証人は、被保証人以外であれば基本的に誰でもなれます(ただし未成年者や意思能力のない人はなれません)。手形保証人は前述の責任を負うため、手形保証人になることを依頼する場合は、しっかり説明を行った上で同意してもらうことが大切です。
手形保証を行う上での手続き
手形保証は、手形に対して書き込むことで成立します。手形には被保証人が記載されていますが、これに加えて「保証」などの文言を記載し、保証人が署名するという方法です。また、手形の表面に単なる署名を行った場合も保証人とみなされます(手形法第31条第2項、第3項)。
裏書きを利用する方法もあります。手形は一定期間現金化できませんが、裏書きを使って第三者に譲渡することで、現金化が可能です。手形の裏書をすることで手形を譲渡できますが、裏書きには連帯保証の義務も付随します。そのため、手形の振出人が支払えなくなった場合は、裏書人にまで支払いが求められます。また裏書きを利用して、間接的に手形保証とするケースもあります。
手形保証とは手形の現金化に対する保証人を設けること
手形は、手形を発行した振出人が現金で支払うことで現金化されます。現金化を行う時点で振出人に支払能力がない場合に、振出人に代わって支払うとの約束をする契約を手形保証と呼び、その保証をする人を手形保証人と呼びます。
手形保証人を設ける方法は、保証人となる者が手形に署名するだけです。手形の譲渡に使われる裏書きを行えば連帯保証の義務が付随するため、裏書きによって間接的に手形保証とする方法もあります。
よくある質問
手形保証とは何ですか?
手形を発行する者(振出人)の信用が不十分である場合などに、振出人や債務者のために手形債務の保証を行う保証人を付けることです。詳しくはこちらをご覧ください。
民事保証との違いは何ですか?
民事保証では、保証債務の成立には主たる債権の成立が必要です。主たる債務を履行した場合は、主たる債務の消滅とともに保証債務も消滅するという、いわゆる附従性があります。一方で手形保証には附従性がなく、主たる債権が成立しなくても無効でも、手形保証債務は影響を受けません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
個人識別符号とは?法的な定義や事業者が気を付けるべき点を解説
個人識別符号とは、特定の個人を識別できるような文字や番号などのうち、法令に定められているもののことです。事業者が個人情報保護法に則って適切に情報を管理するためには、個人識別符号が含まれるデータを正しく利用・管理することが必要です。今回は、個…
詳しくみるみどりの食料システム法とは?法律の概要や事業者への影響は?
みどりの食料システム法とは、環境と調和のとれた食料システムを確立し、産業の持続的な発展を目指すための法律です。2022年7月1日に施行されました。環境負荷の低減を実現する事業計画を作成し、都道府県知事の認定を受けることで、優遇税制の適用や補…
詳しくみる【2022年5月施行】借地借家法の改正点は?わかりやすく解説
土地や建物の賃借に関する権利義務や手続などを定める「借地借家法」は身近な法律であり、これまで社会の変化や実情に応じて何度か改正が行われてきました。 今回は2022年5月に施行された同法の改正点について、わかりやすく解説します。 改正された借…
詳しくみる優越的地位の濫用とは?規制内容や事業者の注意点をわかりやすく解説
優越的地位の濫用とは、地位を利用して取引相手に不当に不利益を与える行為のことです。独占禁止法では、優越的な地位を利用した不公正な取引として禁止されています。具体的にはどのような行為が該当するのか、例を挙げてまとめました。 また、事業者が注意…
詳しくみる廃掃法とは?改正の背景や改正後の内容について詳しく解説!
廃棄物の管理・処分方法は廃掃法で定められており、特に産業廃棄物の処分は管理票による処分管理の仕組み(マニフェスト制度)が定められていましたが、廃棄物の不適正処理事件を機に改正されました。ここでは、改正内容や改正前と改正後の違いなどについて解…
詳しくみるフリーランス新法で定めるハラスメントとは?具体例や相談先を解説
フリーランス新法とは、フリーランスの働く環境を整備するために制定された法律です。フリーランスに業務を発注する事業者によるハラスメント行為が行われないように、発注事業者にはハラスメント対策の実施が義務付けられています。 本記事では、フリーラン…
詳しくみる